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circus man
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(片桐視点)
「えっとそれはつまりどういう?」
俺の困惑した声と、もしゃもしゃ聞こえる咀嚼音とだけが病室に響いていた。
冰澄さんが倒れて、弟が目を覚ましてと怒涛の1日を駆け抜けた五日後、弟と同じ病院にどうやら検査入院してるらしい冰澄さんの病室に北谷と高梨と同様招集をかけられて全員が集まった。病室は重苦しい雰囲気が…、と思ったがまったく重苦しい雰囲気はなく、冰澄さんが元気にりんごを頬張っていたのである。
「…話を聞いていたか?」
「うるせぇクソ谷、混乱してんだよ。」
「こらこらー、冰澄さんの前でやめなよー。それで組長どういうこと?」
「お前も聞いてねーじゃねーか」
高梨を睨め付けつつも、組長と冰澄さんに向き直る。組長は呆れたようなバカを見るような目で俺たちを見ていた。
「とにかく登場人物紹介しますね!」
コロコロと高い声音で冰澄さんが高らかに叫んだ。
「え、はい。お願いします。」
「俺の家の問題なんですけど。まず俺がいるじゃないですか。」
そう言い始めた、冰澄さんは淡々とまるで昨日見たドラマの登場人物紹介のように話をした。
冰澄さんがいて、伯父は波津真也。
その波津真也の後見人は、辻間治仁。
「辻間会長!?!?」
「うるせぇなハゲ」
「黙れクソ谷」
「豪華メンツだねー」
辻間治仁と波津真也と冰澄さんの母親のご両親はどうやら親しい友人だったらしくその縁で後見人になった。
そして波津真也が就職して縁を切った。
「波津真也は冰澄を託す場所に俺を選んだ。理由はまだ詳しくはわからねぇが、とにかく波津真也が辻間会長に頼み込んで俺と冰澄を会うように辻間会長が仕向けたらしい。」
再びりんごを食べ始めた冰澄さんの代わりに組長が簡潔に説明してくれた。それにしても冰澄さん、食欲すごいな。
「そんで、こっからが問題だ。冰澄の母親、…波津雫というらしい、波津雫は、多分、亡くなった可能性の方が高い。それも殺害された。」
「殺害…。いったい、誰に。」
「冰澄の父親で波津雫の恋人の関係者か本人だろう。」
組長は、りんごを食べ続ける冰澄さんをちらりと見てからまた口を開いた。
「冰澄の父親も大方断定できてる。」
「組長、ですがあまりに証拠が少なすぎます」
調べていたのであろう北谷は苦い顔で口を挟んだ。どうやら冰澄さんの父親は相当裏の人間らしい。
「いや、十分だ。…冰澄、お前は父親についての記憶は何かあるか」
「…あまり覚えてないですね、母は、髪が長かったてことくらいしか。…ダリオさんが、自分たちと同じ世界の人間だって言ってたってことはそういうことですよね。」
冰澄さんのその言葉に唾を飲んだ。
「組長、冰澄さんの…父親って」
組長は一瞬口を曇らせたがすぐに目を伏せた。
「ルカ・アンジェリコ、イタリアを拠点にしてるヨーロッパ地方では有名な大富豪だ。それとこっちの世界じゃ知らねぇやつはいねーな」
開いた口が塞がらない。冰澄さんも初めて己に父の名を聞いたのか小首を傾げていた。一般人からしたらただのイタリア人名である。ただ俺たちにとっては違う意味がある。
「おいおい…麗しの大天使様かよ…」
「麗しの、大天使さま?」
高梨のつぶやきに冰澄さんは余計困惑した表情を浮かべる。
「皮肉だ。実際は、真っ黒な悪魔みたいなやつだ。ヨーロッパ市場でも有名だが、裏社会でも結構な有名人だ、容姿こそ麗しだが中身は黒くてしかたがねぇよ。」
「どんな、人ですか?」
「犯罪は日常茶飯事。自分の手は汚さず人を操っては人を消すような人間です。最近は裏オークション、人間も商品になったりするオークションなんですがそっちの方の経営にもてをだしたらしいですよ。証拠を残さずに。ですがね。」
「銃とか、薬とか違法物の密輸もお手の物って感じの人だよ。調べたら写真出てくるんじゃないかな~」
北谷の説明の後に高梨がスマホを弄りだした。たしかに彼の写真は探せば一般人も見つけられる。それほどの豪遊家なのだ。高梨が「ほらね」と呟いてから画面をひっくり返した。
「今年、50近い男には見えねーでしょ」
高梨の言う通り画面に写る男は見目麗しい。綺麗な瞳は、悔しいが冰澄さんも持っているそれである。組長が断定したのもよくわかる。
「こいつが冰澄さんを今更追いかけ回してるんすか?」
「あぁ。噂ではな。どうもそのへんが詳しくわからねぇ。とにかくこいつの動きは監視してる。これからこいつの目的に探り入れるぞ。北谷、続けて頼むぞ」
「承りました。ところで組長話が変わりますが、冰澄さんさえよければ尚也と会いませんか?」
北谷の言葉にそうそうと俺は手を鳴らした。
「尚也、まだ万全じゃないんですけど話はできるまでには回復したんでどうすか。同年代だし…俺からもお願いなんすけど、あいつ友達いなくて…」
「ずっと話したいと思ってたんです!ぜひ!」
満面の笑みが帰ってきたことに安堵して胸を撫で下ろす。
尚也が目覚めてすぐ、北谷と俺が駆けつけた時直也は薄くだが瞼を開閉していた。どうにも我慢しきれず、泣いちまった俺を他所に北谷はくそ甘ったるい告白しやがるしお前それ兄貴の前で言うかと言うようなことばっか言ってそれに混乱させられた。
すぐ3日かけて検査して異常なしが出てからは、見てとるように回復している。
それと同じようになにか吹っ切れた冰澄さんの笑顔を見て、自然と笑みが浮かんだ。
「えっとそれはつまりどういう?」
俺の困惑した声と、もしゃもしゃ聞こえる咀嚼音とだけが病室に響いていた。
冰澄さんが倒れて、弟が目を覚ましてと怒涛の1日を駆け抜けた五日後、弟と同じ病院にどうやら検査入院してるらしい冰澄さんの病室に北谷と高梨と同様招集をかけられて全員が集まった。病室は重苦しい雰囲気が…、と思ったがまったく重苦しい雰囲気はなく、冰澄さんが元気にりんごを頬張っていたのである。
「…話を聞いていたか?」
「うるせぇクソ谷、混乱してんだよ。」
「こらこらー、冰澄さんの前でやめなよー。それで組長どういうこと?」
「お前も聞いてねーじゃねーか」
高梨を睨め付けつつも、組長と冰澄さんに向き直る。組長は呆れたようなバカを見るような目で俺たちを見ていた。
「とにかく登場人物紹介しますね!」
コロコロと高い声音で冰澄さんが高らかに叫んだ。
「え、はい。お願いします。」
「俺の家の問題なんですけど。まず俺がいるじゃないですか。」
そう言い始めた、冰澄さんは淡々とまるで昨日見たドラマの登場人物紹介のように話をした。
冰澄さんがいて、伯父は波津真也。
その波津真也の後見人は、辻間治仁。
「辻間会長!?!?」
「うるせぇなハゲ」
「黙れクソ谷」
「豪華メンツだねー」
辻間治仁と波津真也と冰澄さんの母親のご両親はどうやら親しい友人だったらしくその縁で後見人になった。
そして波津真也が就職して縁を切った。
「波津真也は冰澄を託す場所に俺を選んだ。理由はまだ詳しくはわからねぇが、とにかく波津真也が辻間会長に頼み込んで俺と冰澄を会うように辻間会長が仕向けたらしい。」
再びりんごを食べ始めた冰澄さんの代わりに組長が簡潔に説明してくれた。それにしても冰澄さん、食欲すごいな。
「そんで、こっからが問題だ。冰澄の母親、…波津雫というらしい、波津雫は、多分、亡くなった可能性の方が高い。それも殺害された。」
「殺害…。いったい、誰に。」
「冰澄の父親で波津雫の恋人の関係者か本人だろう。」
組長は、りんごを食べ続ける冰澄さんをちらりと見てからまた口を開いた。
「冰澄の父親も大方断定できてる。」
「組長、ですがあまりに証拠が少なすぎます」
調べていたのであろう北谷は苦い顔で口を挟んだ。どうやら冰澄さんの父親は相当裏の人間らしい。
「いや、十分だ。…冰澄、お前は父親についての記憶は何かあるか」
「…あまり覚えてないですね、母は、髪が長かったてことくらいしか。…ダリオさんが、自分たちと同じ世界の人間だって言ってたってことはそういうことですよね。」
冰澄さんのその言葉に唾を飲んだ。
「組長、冰澄さんの…父親って」
組長は一瞬口を曇らせたがすぐに目を伏せた。
「ルカ・アンジェリコ、イタリアを拠点にしてるヨーロッパ地方では有名な大富豪だ。それとこっちの世界じゃ知らねぇやつはいねーな」
開いた口が塞がらない。冰澄さんも初めて己に父の名を聞いたのか小首を傾げていた。一般人からしたらただのイタリア人名である。ただ俺たちにとっては違う意味がある。
「おいおい…麗しの大天使様かよ…」
「麗しの、大天使さま?」
高梨のつぶやきに冰澄さんは余計困惑した表情を浮かべる。
「皮肉だ。実際は、真っ黒な悪魔みたいなやつだ。ヨーロッパ市場でも有名だが、裏社会でも結構な有名人だ、容姿こそ麗しだが中身は黒くてしかたがねぇよ。」
「どんな、人ですか?」
「犯罪は日常茶飯事。自分の手は汚さず人を操っては人を消すような人間です。最近は裏オークション、人間も商品になったりするオークションなんですがそっちの方の経営にもてをだしたらしいですよ。証拠を残さずに。ですがね。」
「銃とか、薬とか違法物の密輸もお手の物って感じの人だよ。調べたら写真出てくるんじゃないかな~」
北谷の説明の後に高梨がスマホを弄りだした。たしかに彼の写真は探せば一般人も見つけられる。それほどの豪遊家なのだ。高梨が「ほらね」と呟いてから画面をひっくり返した。
「今年、50近い男には見えねーでしょ」
高梨の言う通り画面に写る男は見目麗しい。綺麗な瞳は、悔しいが冰澄さんも持っているそれである。組長が断定したのもよくわかる。
「こいつが冰澄さんを今更追いかけ回してるんすか?」
「あぁ。噂ではな。どうもそのへんが詳しくわからねぇ。とにかくこいつの動きは監視してる。これからこいつの目的に探り入れるぞ。北谷、続けて頼むぞ」
「承りました。ところで組長話が変わりますが、冰澄さんさえよければ尚也と会いませんか?」
北谷の言葉にそうそうと俺は手を鳴らした。
「尚也、まだ万全じゃないんですけど話はできるまでには回復したんでどうすか。同年代だし…俺からもお願いなんすけど、あいつ友達いなくて…」
「ずっと話したいと思ってたんです!ぜひ!」
満面の笑みが帰ってきたことに安堵して胸を撫で下ろす。
尚也が目覚めてすぐ、北谷と俺が駆けつけた時直也は薄くだが瞼を開閉していた。どうにも我慢しきれず、泣いちまった俺を他所に北谷はくそ甘ったるい告白しやがるしお前それ兄貴の前で言うかと言うようなことばっか言ってそれに混乱させられた。
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それと同じようになにか吹っ切れた冰澄さんの笑顔を見て、自然と笑みが浮かんだ。
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