【完結】婚約者にウンザリしていたら、幼馴染が婚約者を奪ってくれた

よどら文鳥

文字の大きさ
87 / 87

73 子供

しおりを挟む
 サバスと正式な婚約発表してから十年の月日が流れた。
 その期間に、元気な男の子が生まれたのである。
 すくすくと育ち、明日は五歳の誕生日だ。
 顔はサバスを完全継承しているようで、美男子です‼︎
 溺愛しています‼︎

「おかあさまー、あのね、リーリットへの誕生日プレゼント考えたんだよ」
「うんうん、どんなのを選んだのかなー?」

 リーリットとは、オービット様とマーレット様の間に生まれた女の子だ。
 彼女も明日で五歳の誕生日で、息子のガイアと生まれた施設も一緒で幼馴染同士である。
 どうやら、ガイアはリーリットに初恋したようだ。

「おかあさまに教えてもらったクッキーを僕が焼いて、それをあげるのー!」
「そっかー、じゃあ私は見守っているから頑張って作ってみようか」

 何度も言うが、私は息子に溺愛しすぎていて、言われた瞬間に抱きしめたくなってしまった。
 だが、我慢だ我慢。
 今は息子の初恋成就のために協力してあげなければ。

「手伝ってくれないのー?」
「手伝ってもいいけれど、それだと自分だけであげたとは言えないよ。ガイアなら大丈夫だよ。ちゃんと作り方覚えているし、自信を持ってやってごらん」
「うん……リーリットのために頑張ってみるー」

 私は見守るだけだ。
 もちろん、火を使うときはそばで見守るが、それ以外は頑張ってもらおう。

「ライアンよ、ガイアがクッキーを焼いていると聞いたのだが」
「これはダメですよ。リーリットちゃんへの誕生日プレゼントにするそうですからね」
「ふむ……」

 サバスはとても残念そうな表情をしていた。
 あとで私が何か作るか。
 いや、ついでだからガイアにご飯を作らせてみようかな。
 料理の才能がものすごく高く、味覚も優れている。
 溺、いや、やめておこう。

 見事な手際で、綺麗なクッキーが出来上がった。
 もちろん、ガイアが一人で成し遂げたものである。

「おかあさまー、ちゃんとできたかなぁ」
「味見してごらん?」
「それはやめておくよ」
「どうして?」
「だって、一番最初にリーリットに食べてもらいたいんだよ」
「そっか。じゃあクッキー冷ましたら袋に包まないとね」
「おかあさまやってくれないのー?」
「プレゼントだったら自分で全部やらないとねー」
「うん、わかったー!」

 素直で可愛い。
 実はガイアが作っている工程で、私はしっかりと分量や火加減をチェックしていた。
 どれも見事にやっていたから、きっと美味しいクッキーになっているはずだ。
 だから味見はしなくとも概ね問題はない。

「明日が楽しみだよー」
「うん、たくさん美味しいもの用意しておくからね」

 マーレット様たちとは家族ぐるみで仲良くさせてもらっている。
 子供が生まれた日が一緒だったことは偶然だが、彼女たちとは切っても切れないほどの関係になっているのだろう。
 だが、子供たちが結ばれるかどうかは別の話だ。
 私たちは幼馴染同士だからと、政略的な婚約はさせないことにしている。
 ガイアが自ら好きになった女の子と結ばれて欲しいからだ。

 きっとガイアなら大丈夫だ。
 サバス様の容姿を完全継承している上、素直で真面目に育ってくれている私たちの宝物なのだから。

 ♢

「リーリットへ誕生日プレゼントだよ、おめでとう」
「う、うんっありがと‼︎」

 リーリットの顔はマーレット様譲りで可愛らしい。
 そのリーリットが顔を赤らめながらとても喜んでいるようだった。

「はい、これガイアにあげるんだからね。ちゃんと受け取りなさいよ」

 ガイアが受け取ったのは少し網目が雑になっているがしっかりと体温を逃さなさそうなマフラーだった。
 早速ガイアは首元に身につけた。

「あったかいー、ありがとう!」
「ふん、全部私が編んだんだから大事に使いなさいよ!」
「うん、一生大事にするよ」

 私たちは、子供たちのやりとりに微笑みながら、大人同士で食卓を囲む。
 来年も再来年も、いつまでも子供達が仲の良い幼馴染同士でありますように。


---------------
【後書き】

長い間のお付き合いありがとうございます!
結婚してからの二人の動向を追加で書いていくかどうか考え中ですが、書くにしても暫く時間が空きそうなため、一旦は完結とさせていただきます。
尚、矛盾点があった箇所は別サイトで修正&改稿版をひそかに更新中です。
いずれこちらでも修正を加えていきます。

今作では、見ただけで気絶するような容姿ってどんなんだと考えながら執筆していましたが、見当もつきませんでした笑
こういうキャラは今後も別作で書いていきそうです。

最後に新作のお知らせです。

『限界まで力を搾取されてきた聖女は廃棄処分されました~隣国の国王に溺愛された聖女は、どろんこまみれになりながら農作業を毎日楽しんでいます』

今作が楽しめた読者様なら楽しめる作品になっているかと思います。
こちらもぜひよろしくお願いいたします。

今作も最後までありがとうございました。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。

クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。 そんなある日クラスに転校生が入って来た。 幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新不定期です。 よろしくお願いします。

諦めていた自由を手に入れた令嬢

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢シャーロットは婚約者であるニコルソン王太子殿下に好きな令嬢がいることを知っている。 これまで二度、婚約解消を申し入れても国王夫妻に許してもらえなかったが、王子と隣国の皇女の婚約話を知り、三度目に婚約解消が許された。 実家からも逃げたいシャーロットは平民になりたいと願い、学園を卒業と同時に一人暮らしをするはずが、実家に知られて連れ戻されないよう、結婚することになってしまう。 自由を手に入れて、幸せな結婚まで手にするシャーロットのお話です。

【完結】恋人との子を我が家の跡取りにする? 冗談も大概にして下さいませ

水月 潮
恋愛
侯爵家令嬢アイリーン・エヴァンスは遠縁の伯爵家令息のシリル・マイソンと婚約している。 ある日、シリルの恋人と名乗る女性・エイダ・バーク男爵家令嬢がエヴァンス侯爵邸を訪れた。 なんでも彼の子供が出来たから、シリルと別れてくれとのこと。 アイリーンはそれを承諾し、二人を追い返そうとするが、シリルとエイダはこの子を侯爵家の跡取りにして、アイリーンは侯爵家から出て行けというとんでもないことを主張する。 ※設定は緩いので物語としてお楽しみ頂けたらと思います ☆HOTランキング20位(2021.6.21) 感謝です*.* HOTランキング5位(2021.6.22)

わたしのことはお気になさらず、どうぞ、元の恋人とよりを戻してください。

ふまさ
恋愛
「あたし、気付いたの。やっぱりリッキーしかいないって。リッキーだけを愛しているって」  人気のない校舎裏。熱っぽい双眸で訴えかけたのは、子爵令嬢のパティだ。正面には、伯爵令息のリッキーがいる。 「学園に通いはじめてすぐに他の令息に熱をあげて、ぼくを捨てたのは、きみじゃないか」 「捨てたなんて……だって、子爵令嬢のあたしが、侯爵令息様に逆らえるはずないじゃない……だから、あたし」  一歩近付くパティに、リッキーが一歩、後退る。明らかな動揺が見えた。 「そ、そんな顔しても無駄だよ。きみから侯爵令息に言い寄っていたことも、その侯爵令息に最近婚約者ができたことも、ぼくだってちゃんと知ってるんだからな。あてがはずれて、仕方なくぼくのところに戻って来たんだろ?!」 「……そんな、ひどい」  しくしくと、パティは泣き出した。リッキーが、うっと怯む。 「ど、どちらにせよ、もう遅いよ。ぼくには婚約者がいる。きみだって知ってるだろ?」 「あたしが好きなら、そんなもの、解消すればいいじゃない!」  パティが叫ぶ。無茶苦茶だわ、と胸中で呟いたのは、二人からは死角になるところで聞き耳を立てていた伯爵令嬢のシャノン──リッキーの婚約者だった。  昔からパティが大好きだったリッキーもさすがに呆れているのでは、と考えていたシャノンだったが──。 「……そんなにぼくのこと、好きなの?」  予想もしないリッキーの質問に、シャノンは目を丸くした。対してパティは、目を輝かせた。 「好き! 大好き!」  リッキーは「そ、そっか……」と、満更でもない様子だ。それは、パティも感じたのだろう。 「リッキー。ねえ、どうなの? 返事は?」  パティが詰め寄る。悩んだすえのリッキーの答えは、 「……少し、考える時間がほしい」  だった。 ※この作品は、小説家になろう様にも掲載しています。

王家の面子のために私を振り回さないで下さい。

しゃーりん
恋愛
公爵令嬢ユリアナは王太子ルカリオに婚約破棄を言い渡されたが、王家によってその出来事はなかったことになり、結婚することになった。 愛する人と別れて王太子の婚約者にさせられたのに本人からは避けされ、それでも結婚させられる。 自分はどこまで王家に振り回されるのだろう。 国王にもルカリオにも呆れ果てたユリアナは、夫となるルカリオを蹴落として、自分が王太女になるために仕掛けた。 実は、ルカリオは王家の血筋ではなくユリアナの公爵家に正統性があるからである。 ユリアナとの結婚を理解していないルカリオを見限り、愛する人との結婚を企んだお話です。

【完結】精神的に弱い幼馴染を優先する婚約者を捨てたら、彼の兄と結婚することになりました

当麻リコ
恋愛
侯爵令嬢アメリアの婚約者であるミュスカーは、幼馴染みであるリリィばかりを優先する。 リリィは繊細だから僕が支えてあげないといけないのだと、誇らしそうに。 結婚を間近に控え、アメリアは不安だった。 指輪選びや衣装決めにはじまり、結婚に関する大事な話し合いの全てにおいて、ミュスカーはリリィの呼び出しに応じて行ってしまう。 そんな彼を見続けて、とうとうアメリアは彼との結婚生活を諦めた。 けれど正式に婚約の解消を求めてミュスカーの父親に相談すると、少し時間をくれと言って保留にされてしまう。 仕方なく保留を承知した一ヵ月後、国外視察で家を空けていたミュスカーの兄、アーロンが帰ってきてアメリアにこう告げた。 「必ず幸せにすると約束する。どうか俺と結婚して欲しい」 ずっと好きで、けれど他に好きな女性がいるからと諦めていたアーロンからの告白に、アメリアは戸惑いながらも頷くことしか出来なかった。

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。

真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。 一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。 侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。 二度目の人生。 リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。 「次は、私がエスターを幸せにする」 自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。

処理中です...