12 / 26
12
しおりを挟む
公爵様がディラウ家に訪問される日なので、義兄様と一緒に『用事があるので実家に一度帰る』と言って家をでた。
実家へ帰ると、既に公爵様がいらしていたので直ぐに跪く。
「顔を上げたまえ。早速だがライト君。例の設置と準備は万全かね?」
「はい。公爵様の言われたとおりの場所に設置しております」
「よし。これで完璧だ。あとは餌が罠に引っかかれば完璧だな」
二人とも嫌らしい笑い方をしていて不気味だ。
私には具体的に何をしているのかまでは告げられていない。
ただ、今までどおりにしていてくれればいいとだけ言われていた。
「ジュリエル嬢に対する嫌がらせはなくなったかい?」
「はい。義兄様のおかげさまで」
「そうか、良かったな。だがな……酷な頼みをして申し訳ないのだが、数時間だけでいいのだ。囮として我慢できないかね? 普段のドルチャ家の様子が知りたいのだ」
つまり、地獄のような仕打ちをもう一度味わえというのか。
流石にそれは私も避けたい気持ちでいっぱいだったが、避けては通れない。
「数時間でしたら……なんとか」
「公爵様、酷すぎます。ジュリエルがようやく安全になったばかりなのですから」
「無論、確実に守れるように厳重に監視をする。それにほら、いざとなったらライト君が守れるであろう? 確か国の格闘術大会で四位だっただろう?」
「まぁ……正当防衛が認められるのであれば……そうじゃなくても必ずジュリエルのことは守りますけどね」
義兄様がかっこいい事を言って、つい照れてしまった。さらに私の心臓の鼓動が速くなってしまった気がする。
なんなのだろうこの気持ちは。義理のお兄様にドキドキしてしまうなんて……。
恐怖心は残っているけれど、心配だった気持ちは嘘のように消えていった。
「私、やります。これも国のためになるのですから」
「そこまで私は言った覚えはなかったが……何故わかるのだ?」
「今までがそうでしたから。公爵様の行った行動が何かしらで国に大きな影響を与え、お父様もそんな公爵様についていった……。だからこそ、お父様も偉大な存在になれたのですから」
「ふ……照れるな。理不尽な頼みですまぬが協力してくれるか? 命の危険になるようなことは絶対にならないように全力で援護は行う」
「俺もいつでも助けられるようにする。必ずジュリエルを守るから」
公爵様と義兄様の優しい言葉で、もうひと踏ん張り、身体を張って頑張ってみようと誓った。
「おっと……言い忘れていた。今頃シャロン嬢は喜んでおるだろうな」
「公爵様……既に何かされていたのですか?」
また公爵様が嫌らしい顔をしていた。
「勿論だ。君たちが帰ってくる日に照準を当てて使いの者に『国の最高機関で健康診断を受けろ』と命じる書類を送った。それだけではない。まだまだ色々とあの家にとって都合が良くなりそうな事を総力を上げて支援しているのだよ」
「公爵様は優しいですからな。これほど援助を受けていただける男爵家は幸せ者ですな!」
「そうだろう。私の気遣いだからな。ふっふっふ……」
義兄様達は間違いなく良からぬ事を企んでいるのは直ぐに察した。
この二人は絶対に敵に回してはいけないと思う……。
どんな嫌がらせ……じゃなくて、支援をしたのだろうか。
実家へ帰ると、既に公爵様がいらしていたので直ぐに跪く。
「顔を上げたまえ。早速だがライト君。例の設置と準備は万全かね?」
「はい。公爵様の言われたとおりの場所に設置しております」
「よし。これで完璧だ。あとは餌が罠に引っかかれば完璧だな」
二人とも嫌らしい笑い方をしていて不気味だ。
私には具体的に何をしているのかまでは告げられていない。
ただ、今までどおりにしていてくれればいいとだけ言われていた。
「ジュリエル嬢に対する嫌がらせはなくなったかい?」
「はい。義兄様のおかげさまで」
「そうか、良かったな。だがな……酷な頼みをして申し訳ないのだが、数時間だけでいいのだ。囮として我慢できないかね? 普段のドルチャ家の様子が知りたいのだ」
つまり、地獄のような仕打ちをもう一度味わえというのか。
流石にそれは私も避けたい気持ちでいっぱいだったが、避けては通れない。
「数時間でしたら……なんとか」
「公爵様、酷すぎます。ジュリエルがようやく安全になったばかりなのですから」
「無論、確実に守れるように厳重に監視をする。それにほら、いざとなったらライト君が守れるであろう? 確か国の格闘術大会で四位だっただろう?」
「まぁ……正当防衛が認められるのであれば……そうじゃなくても必ずジュリエルのことは守りますけどね」
義兄様がかっこいい事を言って、つい照れてしまった。さらに私の心臓の鼓動が速くなってしまった気がする。
なんなのだろうこの気持ちは。義理のお兄様にドキドキしてしまうなんて……。
恐怖心は残っているけれど、心配だった気持ちは嘘のように消えていった。
「私、やります。これも国のためになるのですから」
「そこまで私は言った覚えはなかったが……何故わかるのだ?」
「今までがそうでしたから。公爵様の行った行動が何かしらで国に大きな影響を与え、お父様もそんな公爵様についていった……。だからこそ、お父様も偉大な存在になれたのですから」
「ふ……照れるな。理不尽な頼みですまぬが協力してくれるか? 命の危険になるようなことは絶対にならないように全力で援護は行う」
「俺もいつでも助けられるようにする。必ずジュリエルを守るから」
公爵様と義兄様の優しい言葉で、もうひと踏ん張り、身体を張って頑張ってみようと誓った。
「おっと……言い忘れていた。今頃シャロン嬢は喜んでおるだろうな」
「公爵様……既に何かされていたのですか?」
また公爵様が嫌らしい顔をしていた。
「勿論だ。君たちが帰ってくる日に照準を当てて使いの者に『国の最高機関で健康診断を受けろ』と命じる書類を送った。それだけではない。まだまだ色々とあの家にとって都合が良くなりそうな事を総力を上げて支援しているのだよ」
「公爵様は優しいですからな。これほど援助を受けていただける男爵家は幸せ者ですな!」
「そうだろう。私の気遣いだからな。ふっふっふ……」
義兄様達は間違いなく良からぬ事を企んでいるのは直ぐに察した。
この二人は絶対に敵に回してはいけないと思う……。
どんな嫌がらせ……じゃなくて、支援をしたのだろうか。
102
あなたにおすすめの小説
姉の所為で全てを失いそうです。だから、その前に全て終わらせようと思います。もちろん断罪ショーで。
しげむろ ゆうき
恋愛
姉の策略により、なんでも私の所為にされてしまう。そしてみんなからどんどんと信用を失っていくが、唯一、私が得意としてるもので信じてくれなかった人達と姉を断罪する話。
全12話
【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください
ゆうき
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。
義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。
外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。
彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。
「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」
――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。
⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎
【完結】何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので魔法で言えないようにしてみた
堀 和三盆
恋愛
「ずるいですわ、ずるいですわ、お義姉様ばかり! 私も伯爵家の人間になったのだから、そんな素敵な髪留めが欲しいです!」
ドレス、靴、カバン等の値の張る物から、婚約者からの贈り物まで。義妹は気に入ったものがあれば、何でも『ずるい、ずるい』と言って私から奪っていく。
どうしてこうなったかと言えば……まあ、貴族の中では珍しくもない。後妻の連れ子とのアレコレだ。お父様に相談しても「いいから『ずるい』と言われたら義妹に譲ってあげなさい」と、話にならない。仕方なく義妹の欲しがるものは渡しているが、いい加減それも面倒になってきた。
――何でも欲しがる義妹が『ずるい』とうるさいので。
ここは手っ取り早く魔法使いに頼んで。
義妹が『ずるい』と言えないように魔法をかけてもらうことにした。
幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ
猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。
そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。
たった一つボタンを掛け違えてしまったために、
最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。
主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?
【完結】女王と婚約破棄して義妹を選んだ公爵には、痛い目を見てもらいます。女王の私は田舎でのんびりするので、よろしくお願いしますね。
五月ふう
恋愛
「シアラ。お前とは婚約破棄させてもらう。」
オークリィ公爵がシアラ女王に婚約破棄を要求したのは、結婚式の一週間前のことだった。
シアラからオークリィを奪ったのは、妹のボニー。彼女はシアラが苦しんでいる姿を見て、楽しそうに笑う。
ここは南の小国ルカドル国。シアラは御年25歳。
彼女には前世の記憶があった。
(どうなってるのよ?!)
ルカドル国は現在、崩壊の危機にある。女王にも関わらず、彼女に使える使用人は二人だけ。賃金が払えないからと、他のものは皆解雇されていた。
(貧乏女王に転生するなんて、、、。)
婚約破棄された女王シアラは、頭を抱えた。前世で散々な目にあった彼女は、今回こそは幸せになりたいと強く望んでいる。
(ひどすぎるよ、、、神様。金髪碧眼の、誰からも愛されるお姫様に転生させてって言ったじゃないですか、、、。)
幸せになれなかった前世の分を取り返すため、女王シアラは全力でのんびりしようと心に決めた。
最低な元婚約者も、継妹も知ったこっちゃない。
(もう婚約破棄なんてされずに、幸せに過ごすんだーー。)
婚約者を義妹に奪われましたが貧しい方々への奉仕活動を怠らなかったおかげで、世界一大きな国の王子様と結婚できました
青空あかな
恋愛
アトリス王国の有名貴族ガーデニー家長女の私、ロミリアは亡きお母様の教えを守り、回復魔法で貧しい人を治療する日々を送っている。
しかしある日突然、この国の王子で婚約者のルドウェン様に婚約破棄された。
「ロミリア、君との婚約を破棄することにした。本当に申し訳ないと思っている」
そう言う(元)婚約者が新しく選んだ相手は、私の<義妹>ダーリー。さらには失意のどん底にいた私に、実家からの追放という仕打ちが襲い掛かる。
実家に別れを告げ、国境目指してトボトボ歩いていた私は、崖から足を踏み外してしまう。
落ちそうな私を助けてくれたのは、以前ケガを治した旅人で、彼はなんと世界一の超大国ハイデルベルク王国の王子だった。そのままの勢いで求婚され、私は彼と結婚することに。
一方、私がいなくなったガーデニー家やルドウェン様の評判はガタ落ちになる。そして、召使いがいなくなったガーデニー家に怪しい影が……。
※『小説家になろう』様と『カクヨム』様でも掲載しております
嫁ぎ先(予定)で虐げられている前世持ちの小国王女はやり返すことにした
基本二度寝
恋愛
小国王女のベスフェエラには前世の記憶があった。
その記憶が役立つ事はなかったけれど、考え方は王族としてはかなり柔軟であった。
身分の低い者を見下すこともしない。
母国では国民に人気のあった王女だった。
しかし、嫁ぎ先のこの国に嫁入りの準備期間としてやって来てから散々嫌がらせを受けた。
小国からやってきた王女を見下していた。
極めつけが、周辺諸国の要人を招待した夜会の日。
ベスフィエラに用意されたドレスはなかった。
いや、侍女は『そこにある』のだという。
なにもかけられていないハンガーを指差して。
ニヤニヤと笑う侍女を見て、ベスフィエラはカチンと来た。
「へぇ、あぁそう」
夜会に出席させたくない、王妃の嫌がらせだ。
今までなら大人しくしていたが、もう我慢を止めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる