【完結】転生社畜聖女は、前世の記憶と規格外魔力で隣国を再建します

よどら文鳥

文字の大きさ
1 / 33

しおりを挟む
「無能な聖女ヴィレーナは、本日付で解雇とする」

 冷酷な目で国王陛下は私を睨みつけてきました。
 神様から授かった力ですら無能と言われてしまい反論したい気持ちはあります。
 しかし、国で一番権力のあるお方に対して文句は言えないため、おとなしく従うしかありません。
 たとえ国からは解雇されても神様からの指名は全うすることはできるのだから。

「ゴルザーフ陛下のお望みとあらば承知いたしました。それでは王宮から出ていきます」
「バカなことを言うな。今まで与えてきた給金分はキッチリと精算してもらうぞ。息絶えるまで働いてもらうからな」
「はい?」

 いくら国王陛下とはいえ、言っている意味が理解できません。
 このままでは、二度目の人生も社畜モード突入です。
 すでに社畜のような生活ではありましたが、前世と比べれば幾分マシな毎日でした。
 ただし、タダ働きは嫌です。

「前国王陛下からは、聖なる力を毎日放出する条件で王宮に滞在する許可をいただけました。ブブルル王国の主要箇所にモンスターの誕生をさせない結界を作るという契約になっていたはずです。それに加え、ゴルザーフ陛下の指示どおり、王宮で使用人業務もやっていました。なにか至らない点でもありましたか?」

 あー、反論してしまいました。
 国家反逆罪とかになって牢獄行きになってしまうかヒヤヒヤです。
 しかしゴルザーフ陛下は私に対して、『無駄な足掻きだ』といった表情で嘲笑ってきます。
 周りにいる護衛や執事長もクスクスと笑っていて……。

「父上はお亡くなりになった。過去の契約など無効だ。そもそも、ヴィレーナ……、そなたが聖女というのは実は嘘なのだろう? 魔法の適性すらないではないか」

「私には魔法の適性はありません。しかし、魔法と聖なる力は異なるものであって――」
「言い訳は聞かぬ。実際のところ父上世代では聖女などいなくともモンスターの出現などごく稀であり、騎士隊でどうにでも対処はできたと聞いている。つまり、無駄な金をヴィレーナに支払ってしまったということだ」
「…………」

 せっかく異世界転生というワクワクするようなイベントを経験できたと思っていたのに、転生前と同じ運命になってしまうのですね。

 一度目の人生では、高校卒業後の就職先で週に六十時間労働の日々。
 唯一の楽しみはファンタジー系のラノベ小説を読むことでした。
 魔法が使えたら良いのになぁと、よく妄想するくらいどハマりでしたね。
 しかし、ついに読書もできなくなるくらいの労働になっていき、ついに過労死。

 成人直前で人生が終わったかと思ったら、神様のおかげで新しい肉体、当時は十四歳という設定で転生させてもらいました。
 髪色は天然色の金でサラサラストレート。顔も転生前とは比べ物にならないくらい可愛いし(おっぱいは縮んだ)多少の名残惜しさはあったもののすぐに慣れました。
 そのときに与えられた聖なる力。

 この力を国中に解放して、どこからともなく現れるモンスターの出現を食い止めることが神様からの使命でした。
 当時は、まるでラノベの世界だとウキウキワクワク。

 王都から少し離れた平原に転生し、すぐに都合良く先代の国王陛下に拾っていただきました。
 当時の陛下は私に聖なる力があることを知っていたようで、毎朝聖なる力を放出して国を安全にしてほしいと頼まれ、王宮で過ごす環境になりました。

 ただし聖女としてだけでなく、お偉い様たちの身の回りのお世話をして、王宮内の掃除をせっせとこなすことも求められましたけどね。
 主にゴルザーフから。

 休みはありませんでしたが、身体が疲れ切ることもなかったですし、ラノベ世界を堪能できていたため張り切っていました。
 決してリッチな生活を送れるわけではなかったものの、王様たちが残された食事を食べることができたので食には困らなかったのです。
 唯一残念なことは、聖女として聖なる力は使えるものの、私には魔法が使えませんでした。

 あれから二年経ち、十六になった私は転生前と変わらないような生活をしています。

 そんな今までの人生を思い出しながら無言でいたらゴルザーフ陛下が、『ドンッ!!』と勢いよく机を叩きました。

「なにも言わぬということは認めるのだな?」

 ここで反論して国家反逆罪などで牢獄行きや処刑されるよりは、素直に従ったほうが良いでしょう。
 神様から授かった聖なる力のことだけは、最後まで力はあると貫き通しましたが、聖女以外の仕事のできが悪いことに関しては認めました。
 周りの使用人たちは長年仕える超ベテラン。
 対して私は素人のペーペーですからね。

「せめて、寝床と食事だけは今までどおりいただけませんか……?」
「使える道具が死んでは困るからな。認める。ただし、寝床は今までの部屋は使わせぬ。今後は使わなくなった物置き部屋を使え」
「かしこまりました」

 窓もなく、日中も暗くてなおかつホコリだらけのあの部屋ですか……。
 まぁ綺麗に掃除すればなんとかなるでしょう。
 こうして私の無償社畜生活が始まりました。
 神様からの指名があるため、聖なる力は今までどおり使うことにします。

 ♢

 ブブルル王国に転生するとき、神様が教えてくれたのです。
『この異世界は我々(神様たち)の手違いでモンスターが勝手に誕生してしまう世界にしてしまった』と言っていました。
 基本的に神様は地上世界を見守るだけで手出しはしないそうです。
 ただ、罪滅ぼしとして、今私がいる世界には定期的に聖女を送り込んでいるのだと。
 今までは平和だった場所だけれど、今後モンスターがより出現しやすくなる場所になるようで、私は配属されたのです。
 魔法も存在する世界で、私にも魔法が使えるのかなぁとワクワクしましたが、残念ながら叶いませんでした。

 王宮の使用人たちは水魔法で掃除をせっせとこなしますが、私はそうはいかず、水を汲んで掃除をします。
 今もタダ働きで客室の掃除をしているところです。

「おい、ゴミ聖女。このゴミはなんだ!?」

 執事長と侍女が入ってきて、いきなり執事長の怒声がとんできます。
 彼が指差した場所は、私がピカピカに磨いたばかりの床です。
 こんなところに固まったホコリなどなかったはずですが。
 これは執事長による嫌がらせでしょう。

「あら、わたくしが後始末をしてあげますわ。……おっとっと!!」
「きゃ!」

 侍女が持っていたバケツの水が、私にかけられてしまいました。

「あららら……ごめんなさいねぇ~。それ、用足し場で使った水なのでばっちーです。床が用足し場になってしまいましたね。これもついでに拭いといてください」
「うぅぅぅぅ……汚い……」
「あなたがいけないのですよ。しっかり掃除しないから。まぁこれでより一層綺麗に掃除ができるでしょう♪」

 聖女としての仕事を解雇されてから、前よりも私へのあたりが厳しくなりました。
 毎日このようなことばかり起きていて、正直辛いです。
 それでも神様からいただいた生きるチャンスは大事にしたいので、どんな過酷でも耐えてみせます。
 念願の異世界ライフだし、楽しいことだってありますから。……きっと。

 しかし、私への仕打ちはどんどんエスカレートしていき、ついに精神的に限界が近づいてきました。
 過労ではないと思いますが、掃除をしている最中に急に意識が朦朧としてきて、その場に倒れてしまいました。

 あぁ、これは一度目の過労死のときと感覚が似ていますね。

 ごめんなさい、神様。
 せっかく与えてくださったチャンスを無駄にしてしまって。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜

三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。 「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」 ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。 「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」 メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。 そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。 「頑張りますね、魔王さま!」 「……」(かわいい……) 一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。 「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」 国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……? 即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。 ※小説家になろうさんにも掲載

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

処理中です...