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「んん……、んんんっ!?」
「気がついたか?」
目を覚ましまして、ただいま異世界。
どうやら馬車に揺られて移動中のようですね。
私は荷台でごろん状態で、声をかけてきたお方は馬を操縦しています。
かなりの値がつきそうで頑丈そうな重装備で鎧を身につけていますね。
「えぇと……、どうして私は馬車に?」
いきなり誘拐されていると推測できなくもありません。
かなり長い間寝ていたようですし、完全無防備だったのですから。
「覚えていないのか?」
「まったく……」
「どうやったのかは知らないが、助かった。命の恩人に報いたい」
「恩人? 私がですか?」
「まさかモンスターの真上に落ちてくるんだものな。長く騎士をしてきているがこんなことは初めてだ」
「はい!?」
「しかもモンスターの急所に直撃し、その隙に魔法で始末することができた。礼を言う」
こらこら神様。
転移させていただいたことはありがたいのですが、もう少し王道パターンの転移をしてほしいですね……。
たとえば目が覚めたら木の下だとか。
モンスターの真上に転移って、どういう意図なのでしょうか。
ともあれ、この人のお役に立てたのならまぁ良しとしておきます。
おっと、お名前を聞いてどこへ連れていかれるのか、聞かなければいけませんでしたね。
「私はヴィレーナと申します」
「あぁ、知っている」
「へ?」
「俺はメビルス王国騎士団長のカインだ」
その名前はどこかで聞いたような記憶があります。
私は第二の人生で起きた出来事を思い出してみると、過去に彼と一瞬だけ顔を合わせたことありました。
直接会話どころか挨拶もしたことはありませんでしたけれどね。
「メビルス王国の国王陛下がブブルル王国になにかの交渉で来られたときに、護衛として同行していましたか?」
「ものすごい記憶力だな。俺などモブのような存在だったから、認識すらされていないと思っていたが」
「いえ、先ほど知っていると言ってくださらなかったら思い出せなかったかと……」
「たいしたものだ。なお、先ほどの質問だが、メビルス王国王都の王宮へ向かっていた」
「私を王宮へ?」
「キミは気を失っていたからな。王宮の有能医師に診てもらう必要があると思ったまでだ」
それは勘違いですって!
私は神様の力によって、一時的に昏睡状態になっていただけなのですよ。
怪我もしていないようだし……。
「元気ですから大丈夫ですよ」
「だが、キミが嫌でなければ王宮には連れていきたい。どうだろう?」
私は転移したばかりで、この先のするべきことがまだ決まっていません。
自由な状態であるため、断る理由はないです。
ただ、ひとつだけ気になることがありまして。
この流れは最初にブブルル王国で起きたことを思い出します。
王宮での聖女活動がはじまるキッカケでした。
その結果、社畜聖女になってしまったわけですから、少々トラウマというものが残っています。
失礼だと思いつつも、つい聞いてしまいました。
「聖女のことでしょうか?」
しかし、カイン騎士団長の答えは違いました。
声を出しながら、私のほうに振り向き、くすりと笑みを浮かべてきました。
「いや、単純にお礼がしたい」
「お礼?」
「このとおり今は俺は一人で遠方で鍛錬をしていた。だが、不運にもモンスターの群れに襲われてしまってな。初級種族とはいえ、さすがに五十体を相手にしてしまえば力も限界だった。最後の一体を相手に身体が限界だったが、そこでキミが降ってきたのだよ。俺に勝機を与えてくれた」
うへぇぇぇえええ!
カイン騎士団長がかなりの強者だということが良くわかりました。
モンスター一体一体の力は、たとえ初級種族であっても百獣の王ライオンよりも強いです。
ブブルル王国の騎士団でも、モンスターを相手にする場合初級種族であっても束になって戦うと聞いたことがあります。
それをたった一人で五十体も相手にするなんて……。
きっと、神様はカイン騎士団長のピンチを想定してイレギュラーな場所に転移させたのでしょう。
だとすれば……。
「私はなにもしていませんから、お礼なんていただけませんよ」
「どうやったのかは知らないが、キミの魔法だろう? そうでなければあんな危険な場所に現れるわけがない」
「そうではなくてですね……それに私、魔法使えませんよ」
「またまた冗談を。キミからは恐ろしいくらいの魔力を感じるが……。まぁ黙秘義務かなにかか、聞かなかったことにしておこう。ブブルル王国の聖女だものな。もしも急ぎ帰らなければならないのならば、行き先を変更し、ブブルル王国まで連れていくが」
「いえ。メビルス王国の王宮へお願いします!」
もう二度とあの国へは戻りたくありません。
それにメビルス王国とブブルル王国は馬を使っても、二週間ほどかかる距離です。
カイン騎士団長の手間をとらせるわけにもいかないので。
お礼と言えば、王族が残された晩餐などを少し分けていただけることでしょう。
今の私は一文無しですし、食事を戴ける(かもしれない)のは大変ありがたいことです。
ここはひとつ、カイン騎士団長のお言葉に甘えさせていただくことにしました。
「よろしくお願いいたします」
「そんなにかしこまらなくても良いが」
移動中、カイン騎士団長と色々と話をさせていただきました。
もうブブルル王国の聖女ではなく、今の私は求職中ですとお伝えしたらとても驚かれていましたね。
日が暮れるころにはメビルス王国の王都へたどり着き、無事に王宮へ案内されました。
さて、勝手に、『晩餐の残り物でおいしい食事』と妄想してしまいましたが、いったいなにをされるのか楽しみです。
「気がついたか?」
目を覚ましまして、ただいま異世界。
どうやら馬車に揺られて移動中のようですね。
私は荷台でごろん状態で、声をかけてきたお方は馬を操縦しています。
かなりの値がつきそうで頑丈そうな重装備で鎧を身につけていますね。
「えぇと……、どうして私は馬車に?」
いきなり誘拐されていると推測できなくもありません。
かなり長い間寝ていたようですし、完全無防備だったのですから。
「覚えていないのか?」
「まったく……」
「どうやったのかは知らないが、助かった。命の恩人に報いたい」
「恩人? 私がですか?」
「まさかモンスターの真上に落ちてくるんだものな。長く騎士をしてきているがこんなことは初めてだ」
「はい!?」
「しかもモンスターの急所に直撃し、その隙に魔法で始末することができた。礼を言う」
こらこら神様。
転移させていただいたことはありがたいのですが、もう少し王道パターンの転移をしてほしいですね……。
たとえば目が覚めたら木の下だとか。
モンスターの真上に転移って、どういう意図なのでしょうか。
ともあれ、この人のお役に立てたのならまぁ良しとしておきます。
おっと、お名前を聞いてどこへ連れていかれるのか、聞かなければいけませんでしたね。
「私はヴィレーナと申します」
「あぁ、知っている」
「へ?」
「俺はメビルス王国騎士団長のカインだ」
その名前はどこかで聞いたような記憶があります。
私は第二の人生で起きた出来事を思い出してみると、過去に彼と一瞬だけ顔を合わせたことありました。
直接会話どころか挨拶もしたことはありませんでしたけれどね。
「メビルス王国の国王陛下がブブルル王国になにかの交渉で来られたときに、護衛として同行していましたか?」
「ものすごい記憶力だな。俺などモブのような存在だったから、認識すらされていないと思っていたが」
「いえ、先ほど知っていると言ってくださらなかったら思い出せなかったかと……」
「たいしたものだ。なお、先ほどの質問だが、メビルス王国王都の王宮へ向かっていた」
「私を王宮へ?」
「キミは気を失っていたからな。王宮の有能医師に診てもらう必要があると思ったまでだ」
それは勘違いですって!
私は神様の力によって、一時的に昏睡状態になっていただけなのですよ。
怪我もしていないようだし……。
「元気ですから大丈夫ですよ」
「だが、キミが嫌でなければ王宮には連れていきたい。どうだろう?」
私は転移したばかりで、この先のするべきことがまだ決まっていません。
自由な状態であるため、断る理由はないです。
ただ、ひとつだけ気になることがありまして。
この流れは最初にブブルル王国で起きたことを思い出します。
王宮での聖女活動がはじまるキッカケでした。
その結果、社畜聖女になってしまったわけですから、少々トラウマというものが残っています。
失礼だと思いつつも、つい聞いてしまいました。
「聖女のことでしょうか?」
しかし、カイン騎士団長の答えは違いました。
声を出しながら、私のほうに振り向き、くすりと笑みを浮かべてきました。
「いや、単純にお礼がしたい」
「お礼?」
「このとおり今は俺は一人で遠方で鍛錬をしていた。だが、不運にもモンスターの群れに襲われてしまってな。初級種族とはいえ、さすがに五十体を相手にしてしまえば力も限界だった。最後の一体を相手に身体が限界だったが、そこでキミが降ってきたのだよ。俺に勝機を与えてくれた」
うへぇぇぇえええ!
カイン騎士団長がかなりの強者だということが良くわかりました。
モンスター一体一体の力は、たとえ初級種族であっても百獣の王ライオンよりも強いです。
ブブルル王国の騎士団でも、モンスターを相手にする場合初級種族であっても束になって戦うと聞いたことがあります。
それをたった一人で五十体も相手にするなんて……。
きっと、神様はカイン騎士団長のピンチを想定してイレギュラーな場所に転移させたのでしょう。
だとすれば……。
「私はなにもしていませんから、お礼なんていただけませんよ」
「どうやったのかは知らないが、キミの魔法だろう? そうでなければあんな危険な場所に現れるわけがない」
「そうではなくてですね……それに私、魔法使えませんよ」
「またまた冗談を。キミからは恐ろしいくらいの魔力を感じるが……。まぁ黙秘義務かなにかか、聞かなかったことにしておこう。ブブルル王国の聖女だものな。もしも急ぎ帰らなければならないのならば、行き先を変更し、ブブルル王国まで連れていくが」
「いえ。メビルス王国の王宮へお願いします!」
もう二度とあの国へは戻りたくありません。
それにメビルス王国とブブルル王国は馬を使っても、二週間ほどかかる距離です。
カイン騎士団長の手間をとらせるわけにもいかないので。
お礼と言えば、王族が残された晩餐などを少し分けていただけることでしょう。
今の私は一文無しですし、食事を戴ける(かもしれない)のは大変ありがたいことです。
ここはひとつ、カイン騎士団長のお言葉に甘えさせていただくことにしました。
「よろしくお願いいたします」
「そんなにかしこまらなくても良いが」
移動中、カイン騎士団長と色々と話をさせていただきました。
もうブブルル王国の聖女ではなく、今の私は求職中ですとお伝えしたらとても驚かれていましたね。
日が暮れるころにはメビルス王国の王都へたどり着き、無事に王宮へ案内されました。
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