【完結】転生社畜聖女は、前世の記憶と規格外魔力で隣国を再建します

よどら文鳥

文字の大きさ
6 / 33

しおりを挟む
 料理を待つ間、先に入浴をさせていただき、汗を流しました。
 そして王家の方々が使用するという食堂部屋へ案内されまして……。

 食卓テーブルにずらりと並んだ料理の数々。
 まるでブッフェですね。
 しかも、まだ誰も手をつけた形跡がなく、できたての熱々です。
 いただきますと言ってから順番に食べていきます。

「お、おいしい……!」

 パンも柔らかいですし、肉も柔らかくジューシー。味も今まで食べていたものより濃いめです。
 都内で社畜をしていたときに、年に数回の休日で焼肉店で食べた味を思い出します。
 異世界の食事は、調味料が貴重な分、基本的に薄味ですからね。

「それにしても、私が先に食べてしまって良かったのですか?」

 王宮にお泊まりする間、私の面倒を見てくださるという侍女(チュリップさんというらしい)に尋ねます。
 しかし、彼女はふふっと笑みを浮かべながらそんなことはないと言ってきました。

「全てヴィレーナ様にご用意したものですよ。遠慮せず召し上がってください」
「これ全部を私にですか!?」
「もちろんです」

 これは大変なことになりました。
 私は出されたものは全て食べなきゃもったいない精神があります。

 食べようと思えばフードファイターほどではありませんがそれなりにお腹に入りますが、さすがに十人前はあるであろう食事を完食する自信はありません。

 それでもできるかぎりお腹に詰め込みます。

「ぐ……ふっふぅぅぅうううっ!」

 半分の時点で、もう無理です。
 もう少し私のお腹には頑張って欲しいのですが、すでに限界突破中。

「よほどお腹が空いていたのですね」

 そうではなく、とんでもない量を用意されていたから頑張っただけです。

「明日の朝も用意してくださると聞きましたが。こんなにたくさんの料理が?」
「そうですね」
「いえ、この残したものを明日出してくだされば充分です!」
「恩人に対してそんなことをしたら、私たちが怒られてしまいますよ……」
「恩人って……」
「すでに王宮中で噂ですよ。モンスター襲来寸前だったところをヴィレーナ様の力で王都を守ってくださったのだと。それからカイン騎士団長の命も救ってくださったのでしょう」

 噂の浸透が早すぎるような……。
 ブブルル王国ではこれくらいはやって当然だと思われていたため、こんなに大騒ぎすることもなかったのですが。
 ともかく、料理の多さはなんとかしないといけません。

「残すのはもったいないので……」
「残飯は、私たち侍女の賄いになりますから、どうぞご安心ください」

 さすがにこれ以上はなにも言えませんでした。
 王家のポリシーに干渉するのもどうかと思いますし。それでも、『今日のディナーの五分の一でも充分すぎるほどです』とだけ伝えておきました。
 私がこんなに高待遇を受けてしまって良いのかどうか悩ましいです。

 入浴と、食べ切れないほどの食事を堪能させていただき、最後にスイートルームレベルの客室へ案内されました。
 徹底的に綺麗にされた部屋、別の部屋に用足しルームや簡易的な入浴部屋まであり、極め付けはベッド。
 キングサイズクラスの巨大なベッドがカーテン付きで用意されていて、大の字になって寝たとしてもはみ出ることはないでしょう。

 転生前の都内でこんな部屋を借りたら、一泊ウン十万はするでしょうね。
 もう聖女活動とカイン騎士団長を助けた報酬以上の待遇を受けているような気がします。
 お礼も含めて、明日の朝も聖なる力を発動しておきましょう。

 自分から進んでやりたくなってしまうなんて気持ちは初めてでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね

柚木ゆず
恋愛
『最近俺達に不幸が多いのは、お前が祈りを怠けているからだ』  王太子レオンとその家族によって理不尽に疑われ、沢山の暴言を吐かれた上で監視をつけられてしまった聖女エリーナ。そんなエリーナとレオン達の人生は、この出来事を切っ掛けに一変することになるのでした――

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

【完結】聖女レイチェルは国外追放されて植物たちと仲良く辺境地でサバイバル生活します〜あれ、いつのまにかみんな集まってきた。あの国は大丈夫かな

よどら文鳥
恋愛
「元聖女レイチェルは国外追放と処す」  国王陛下は私のことを天気を操る聖女だと誤解していた。  私レイチェルは植物と対話したり、植物を元気にさせたりする力を持っている。  誤解を解こうとしたが、陛下は話すら聞こうとしてくれない。  聖女としての報酬も微々たる額だし、王都にいてもつまらない。  この際、国外追放されたほうが楽しそうだ。  私はなにもない辺境地に来て、のんびりと暮らしはじめた。  生きていくのに精一杯かと思っていたが、どういうわけか王都で仲良しだった植物たちが来てくれて、徐々に辺境地が賑やかになって豊かになっていく。  楽しい毎日を送れていて、私は幸せになっていく。  ところで、王都から植物たちがみんなこっちに来ちゃったけど、あの国は大丈夫かな……。 【注意】 ※この世界では植物が動きまわります ※植物のキャラが多すぎるので、会話の前『』に名前が書かれる場合があります ※文章がご都合主義の作品です ※今回は1話ごと、普段投稿しているよりも短めにしてあります。

聖女じゃないと追い出されたので、敵対国で錬金術師として生きていきます!

ぽっちゃりおっさん
恋愛
『お前は聖女ではない』と家族共々追い出された私達一家。 ほうほうの体で追い出され、逃げるようにして敵対していた国家に辿り着いた。 そこで私は重要な事に気が付いた。 私は聖女ではなく、錬金術師であった。 悔しさにまみれた、私は敵対国で力をつけ、私を追い出した国家に復讐を誓う!

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

無能だと言われ続けた聖女は、自らを封印することにしました

天宮有
恋愛
国を守る聖女として城に住んでいた私フィーレは、元平民ということもあり蔑まれていた。 伝統だから城に置いているだけだと、国が平和になったことで国王や王子は私の存在が不愉快らしい。 無能だと何度も言われ続けて……私は本当に不必要なのではないかと思い始める。 そうだ――自らを封印することで、数年ぐらい眠ろう。 無能と蔑まれ、不必要と言われた私は私を封印すると、国に異変が起きようとしていた。

捨てられた元聖女ですが、なぜか蘇生聖術【リザレクション】が使えます ~婚約破棄のち追放のち力を奪われ『愚醜王』に嫁がされましたが幸せです~

鏑木カヅキ
恋愛
 十年ものあいだ人々を癒し続けていた聖女シリカは、ある日、婚約者のユリアン第一王子から婚約破棄を告げられる。さらには信頼していた枢機卿バルトルトに裏切られ、伯爵令嬢ドーリスに聖女の力と王子との婚約さえ奪われてしまう。  元聖女となったシリカは、バルトルトたちの謀略により、貧困国ロンダリアの『愚醜王ヴィルヘルム』のもとへと強制的に嫁ぐことになってしまう。無知蒙昧で不遜、それだけでなく容姿も醜いと噂の王である。  そんな不幸な境遇でありながらも彼女は前向きだった。 「陛下と国家に尽くします!」  シリカの行動により国民も国も、そして王ヴィルヘルムでさえも変わっていく。  そしてある事件を機に、シリカは奪われたはずの聖女の力に再び目覚める。失われたはずの蘇生聖術『リザレクション』を使ったことで、国情は一変。ロンダリアでは新たな聖女体制が敷かれ、国家再興の兆しを見せていた。  一方、聖女ドーリスの力がシリカに遠く及ばないことが判明する中、シリカの噂を聞きつけた枢機卿バルトルトは、シリカに帰還を要請してくる。しかし、すでに何もかもが手遅れだった。

「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」とやりがい搾取されたのでやめることにします。

木山楽斗
恋愛
平民であるフェルーナは、類稀なる魔法使いとしての才を持っており、聖女に就任することになった。 しかしそんな彼女に待っていたのは、冷遇の日々だった。平民が聖女になることを許せない者達によって、彼女は虐げられていたのだ。 さらにフェルーナには、本来聖女が受け取るはずの報酬がほとんど与えられていなかった。 聖女としての忙しさと責任に見合わないような給与には、流石のフェルーナも抗議せざるを得なかった。 しかし抗議に対しては、「平民が聖女になれただけでも感謝しろ」といった心無い言葉が返ってくるだけだった。 それを受けて、フェルーナは聖女をやめることにした。元々歓迎されていなかった彼女を止める者はおらず、それは受け入れられたのだった。 だがその後、王国は大きく傾くことになった。 フェルーナが優秀な聖女であったため、その代わりが務まる者はいなかったのだ。 さらにはフェルーナへの仕打ちも流出して、結果として多くの国民から反感を招く状況になっていた。 これを重く見た王族達は、フェルーナに再び聖女に就任するように頼み込んだ。 しかしフェルーナは、それを受け入れなかった。これまでひどい仕打ちをしてきた者達を助ける気には、ならなかったのである。

処理中です...