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朝食(必死の説得で食べきれる量にしていただけました)を堪能させてもらったあとのことです。
キーファウス殿下に呼び出されまして、再び玉座の間へ入りました。
「今朝方、一瞬だが金色の光が放たれたような気がしたのだが……」
「はい。昨日よりもしっかりとした聖なる力、つまり結界とでも言いましょうか。結界を発動しました」
「聖女とは、昨日の今日で力が使えるのか?」
「そうですね。一日三度くらいまでなら可能かと思います」
「な!?」
一日に四回力を解放したことがあります。
聖なる力は生命力のようなものらしく、全ての力を使い切ってしまうと死んでしまうようです。
神様に最初の転生時に忠告されたことがありました。
心配されると遠慮されそうなので、聖なる力を使い切ると死ぬことはキーファウス殿下たちには黙っておきます。
「無理をしたのではないか? 身体は大丈夫なのか?」
想定外にもキーファウス殿下は私の身体のことをやたらと心配してきます。
国にとってで考えれば、使える力はギリギリまで使わせるものかと思っていましたが、どうやら私の勘違いだったようですね。
いえ、今思い返してみればそれはブブルル王国だけだったのかもしれません。
「ありがとうございます。一日一度であれば、私の負担はほとんどありませんからご心配不要ですよ」
「そうか……、だが無理はしないでほしい。頼んでもいないのに本当に感謝する。ところで報酬は用意させてもらった」
「へ!? もう充分すぎるほどいただきましたよ」
「まさか一晩泊めたことが報酬だとでも?」
「違うのですか!?」
「王都を救った者を一晩泊めただけで返しては笑われてしまうだろう」
キーファウス殿下はそう言ってきますが、あんなにふかふかのベッドで寝れたのに、これ以上なにかもらうのはさすがにどうかと思いました。
ですが、断ればキーファウス殿下の顔に泥を塗りかねないと思い、大人しく報酬を受け取ることにします。
「王太子殿下のご好意は、ありがたく頂戴したいと思います」
「そうか。ではまずはカインを救ってくれたお礼を。宰相よ、例のものを」
「かしこまりました」
キーファウス殿下の横に起立の姿勢で立っているのは、六十を過ぎているであろうきちんと整った白髪と髭を生やした男性です。
私に近づき、彼がずっと持っていた重そうな大きな巾着袋を手渡されました。
「重いのでご注意ください」
「はい」
受け取りましたが、重さをほとんど感じませんでした。
体感的には文庫本を一冊手にとったような感覚です。
物理の法則に違和感が……。
そう思っていたら、もっとぶっとんだことを言われてしまいました。
「中には金貨と銀貨がそれぞれ百枚入っている」
「えっ!?」
銀貨は概ね一万円、金貨は十万円くらいの価値があります。
それが百枚ずつって……。
「さすがにもらいすぎですよ……」
「それくらいのことをヴィレーナ殿はしてくれたのだ。受け取る権利は充分にある」
「は……、はぁ……」
「それとは別に、昨日聖なる力で結界を作ってくれた謝礼を」
全部ひっくるめてのお礼じゃないのですか!?
もう充分すぎるほど受け取っています。
さすがにこれ以上は本当に受け取るわけにはいきませんよ。
キーファウス殿下が私に尋ねてきました。
「こちらの謝礼に関しては、ヴィレーナ殿に決めてもらいたいのだが」
「は、はい。どのようなものを?」
「爵位を授与し貴族街にある家を与えるか、私の財産の半分を渡したい」
「どちらも受け取れませんよっ!」
思わず率直に言ってしまいました。
たった一度の結界で貴族になってしまうなんて、今までのことを考えたらありえません。しかも、爵位の授与って女の私がされるものなのでしょうか……。
爵位も困りますが、キーファウス殿下の財産を半分も奪うなどもってのほかです。
「どちらにせよ、昨日聖なる力をヴィレーナ殿が使わなかったら、私の財産どころか命もなくなっていただろう。屋敷も、王宮も、なにもかもだ」
「だからと言って、そんなに受け取れません」
爵位と家を断ったのには理由がありまして、貴族になったら使用人と執事は絶対に雇わなければならなくなるでしょう。
しかし、私の稼ぎでは給金を支払う余裕などありません。
他の人に迷惑をかけてまで立派な家を受け取るわけにはいかなかったのです。
私が聖女だと知られ、さぞお金を持っていると思われていたのかと思いますが、自分の家を持てるほどのお金がありません。
「……そうか。では、少し趣旨を変えて図々しいとは思うが、私の頼みを聞いてくれぬか?」
「頼みですか? それはむしろなんでも聞きますよ。こんなにお礼を受け取っていますし出来る限りのことは」
「この国にいる気はないか? むしろいて欲しいのだ」
これって頼みというよりも、報酬ですよね。
部外者の私がメビルス王国に居続けてもいいなどと言ってくれたことがどれほど嬉しいことか……。
これは素直に報酬を受け取っておくことにします。
キーファウス殿下に呼び出されまして、再び玉座の間へ入りました。
「今朝方、一瞬だが金色の光が放たれたような気がしたのだが……」
「はい。昨日よりもしっかりとした聖なる力、つまり結界とでも言いましょうか。結界を発動しました」
「聖女とは、昨日の今日で力が使えるのか?」
「そうですね。一日三度くらいまでなら可能かと思います」
「な!?」
一日に四回力を解放したことがあります。
聖なる力は生命力のようなものらしく、全ての力を使い切ってしまうと死んでしまうようです。
神様に最初の転生時に忠告されたことがありました。
心配されると遠慮されそうなので、聖なる力を使い切ると死ぬことはキーファウス殿下たちには黙っておきます。
「無理をしたのではないか? 身体は大丈夫なのか?」
想定外にもキーファウス殿下は私の身体のことをやたらと心配してきます。
国にとってで考えれば、使える力はギリギリまで使わせるものかと思っていましたが、どうやら私の勘違いだったようですね。
いえ、今思い返してみればそれはブブルル王国だけだったのかもしれません。
「ありがとうございます。一日一度であれば、私の負担はほとんどありませんからご心配不要ですよ」
「そうか……、だが無理はしないでほしい。頼んでもいないのに本当に感謝する。ところで報酬は用意させてもらった」
「へ!? もう充分すぎるほどいただきましたよ」
「まさか一晩泊めたことが報酬だとでも?」
「違うのですか!?」
「王都を救った者を一晩泊めただけで返しては笑われてしまうだろう」
キーファウス殿下はそう言ってきますが、あんなにふかふかのベッドで寝れたのに、これ以上なにかもらうのはさすがにどうかと思いました。
ですが、断ればキーファウス殿下の顔に泥を塗りかねないと思い、大人しく報酬を受け取ることにします。
「王太子殿下のご好意は、ありがたく頂戴したいと思います」
「そうか。ではまずはカインを救ってくれたお礼を。宰相よ、例のものを」
「かしこまりました」
キーファウス殿下の横に起立の姿勢で立っているのは、六十を過ぎているであろうきちんと整った白髪と髭を生やした男性です。
私に近づき、彼がずっと持っていた重そうな大きな巾着袋を手渡されました。
「重いのでご注意ください」
「はい」
受け取りましたが、重さをほとんど感じませんでした。
体感的には文庫本を一冊手にとったような感覚です。
物理の法則に違和感が……。
そう思っていたら、もっとぶっとんだことを言われてしまいました。
「中には金貨と銀貨がそれぞれ百枚入っている」
「えっ!?」
銀貨は概ね一万円、金貨は十万円くらいの価値があります。
それが百枚ずつって……。
「さすがにもらいすぎですよ……」
「それくらいのことをヴィレーナ殿はしてくれたのだ。受け取る権利は充分にある」
「は……、はぁ……」
「それとは別に、昨日聖なる力で結界を作ってくれた謝礼を」
全部ひっくるめてのお礼じゃないのですか!?
もう充分すぎるほど受け取っています。
さすがにこれ以上は本当に受け取るわけにはいきませんよ。
キーファウス殿下が私に尋ねてきました。
「こちらの謝礼に関しては、ヴィレーナ殿に決めてもらいたいのだが」
「は、はい。どのようなものを?」
「爵位を授与し貴族街にある家を与えるか、私の財産の半分を渡したい」
「どちらも受け取れませんよっ!」
思わず率直に言ってしまいました。
たった一度の結界で貴族になってしまうなんて、今までのことを考えたらありえません。しかも、爵位の授与って女の私がされるものなのでしょうか……。
爵位も困りますが、キーファウス殿下の財産を半分も奪うなどもってのほかです。
「どちらにせよ、昨日聖なる力をヴィレーナ殿が使わなかったら、私の財産どころか命もなくなっていただろう。屋敷も、王宮も、なにもかもだ」
「だからと言って、そんなに受け取れません」
爵位と家を断ったのには理由がありまして、貴族になったら使用人と執事は絶対に雇わなければならなくなるでしょう。
しかし、私の稼ぎでは給金を支払う余裕などありません。
他の人に迷惑をかけてまで立派な家を受け取るわけにはいかなかったのです。
私が聖女だと知られ、さぞお金を持っていると思われていたのかと思いますが、自分の家を持てるほどのお金がありません。
「……そうか。では、少し趣旨を変えて図々しいとは思うが、私の頼みを聞いてくれぬか?」
「頼みですか? それはむしろなんでも聞きますよ。こんなにお礼を受け取っていますし出来る限りのことは」
「この国にいる気はないか? むしろいて欲しいのだ」
これって頼みというよりも、報酬ですよね。
部外者の私がメビルス王国に居続けてもいいなどと言ってくれたことがどれほど嬉しいことか……。
これは素直に報酬を受け取っておくことにします。
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