【完結】転生社畜聖女は、前世の記憶と規格外魔力で隣国を再建します

よどら文鳥

文字の大きさ
9 / 33

9【ブブルル王国Side】

しおりを挟む
 ブブルル王国王宮、ヴィレーナが住居として使用していた物置き部屋にて。
 ゴルザーフ国王はヴィレーナが急に姿を消したと聞き、慌てていた。

「執事長よ、ヴィレーナはどうした?」
「それが……。急にフッと消えてしまいまして」
「くだらん」

 ゴルザーフ国王は、『なにをくだらないことを言っているのだ』といわんばかりの表情で嘲笑っていた。
 だが、執事長の真剣な表情をながめ、事実であることを理解した。

「戯言を! 人が急に消えるような魔法など存在するわけがないだろう」
「し、しかし現実に……」
「むぅ……。特殊な固有魔法でも持っていたのか。だが、今まで逃げるようなことのなかった女だ。どうして今になって……」
「なぜあんなゴミのような女の失踪で焦られているのです?」

 ゴルザーフ国王は、『ヴィレーナに関しては道具として扱っていい、過労死したら燃やせばそれでいいほどゴミだから好きにしろ』と執事長や侍女たちに命じていた。
 ゴルザーフ国王のは、宝物を失ってしまったような表情を浮かべていた。
 執事長が気になるのも当然だった。

「馬鹿者! これからがあのゴミの利用価値を最大限に活かせるときなのだ。ようやくメビルス王国の王が妥協し、王金貨二千枚でひと月ほど貸し出すという契約が成立したばかりだ。当初の予定よりは割引となったが、それでも十分すぎるほどの臨時収入だ」
「王金貨二千枚もですか!?」
「そうだ。契約に関しては王金貨をメビルス王国へ取りに行き再びこちらへ戻ってきてからだ。全くもって馬鹿なメビルスの王だ。意味のない力を大金を出して要求するなど……」

 王宮に二千枚もの大金が入るとなれば、特別ボーナスも当然あるだろうと執事長は確信していた。
 だからこそ、ゴルザーフ国王同様に、執事長も焦りの表情を浮かべる。

「それは一大事です! 私どもも全力で王宮、いえ、王都中くまなく探します」
「あたりまえだ。息絶えるまで働いてもらうつもりだったが、まさかメビルスの王がこんな理不尽な交渉を受け入れるとは想定外だったからな……。なんとしてでも見つけ連れ戻すのだ」
「かしこまりました! ただちに!」
「おのれ……。こんなことになるのならもう少しだけ手厚くしておくべきだったのかもしれぬ……」

 王宮に仕え、なおかつヴィレーナの顔を知っている者たち全員で捜索が始まった。
 王金貨二千枚というワードを皆が知り、各自特別ボーナスに期待しただけに、全力の捜索になったのである。
 しかし、いつまでたってもヴィレーナを発見することはできなかった。
 神様の手によってヴィレーナが消え、ブブルル王国へ転移したことなど誰も知らない。

 ♢

 完全な行方不明となったまま、ヴィレーナが消えた日から十日が過ぎた。
 すでにゴルザーフ国王は、ヴィレーナが逃げたことに対してのストレスが限界だった。
 今までなにをしても逃げることがなかったからこそ、そのようなことは絶対にありえないと思い込んでいたからこそショックは大きい。

 それどころか、さらにブブルル王国には悲劇は起こる。
 長年ものあいだヴィレーナが毎日発動し続けていた結界も、効果がなくなってしまったのである。

「大変です陛下!!」
「どうしたのだ? まさか、ヴィレーナが死体で発見されたわけじゃあるまいな!?」
「もっと状況は悪いかもしれません! モンスターが……、モンスターが……」
「モンスター?」
「はい……。モンスターが出現する前兆の青色の光が王都近郊に出現しまして」
「くだらん」

 ゴルザーフ国王は、『なにをくだらないことを言っているのだ』といわんばかりの表情で嘲笑っていた。
 だが、王宮騎士団の真剣な表情をながめ、事実であることを理解した。

「馬鹿な……! 今まで王都近辺では十年以上そんなこと起きなかったではないか! 起きてもメビルス王国近郊の辺境地に出現する程度だったはず」
「しかし現実に……」
「と、とにかく緊急配備だ! 王宮所属の騎士団および魔導士全員で現地に向かい、被害が出る前に退治せよと伝えるのだ!」
「は、はい!」

 メビルス王国のカイン率いる騎士団であれば、モンスターの中でも最弱しかでないと言われる青色の前兆ならば、全く問題なく対処できる。
 しかし、モンスター討伐対策訓練などを全くせずに平和ボケして弱体化した騎士団や魔導士たちでは、総出であっても荷が重いのであった。

「くそう……。我が国ではモンスターに対する対策経費が全くかからなかったから優雅でいれたものを……。だが、たまたまの偶然だろう。起きても十年後だろうからあまり深く考える必要はない……か」

 ゴルザーフ国王は、ただの偶然だと言う過程で気に留めることはなかった。
 しかしそれから数日後、再び悪夢の前兆が王都近郊に出現することなど、誰も知らない。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

追放聖女の再就職 〜長年仕えた王家からニセモノと追い出されたわたしですが頑張りますね、魔王さま!〜

三崎ちさ
恋愛
メリアは王宮に勤める聖女、だった。 「真なる聖女はこの世に一人、エミリーのみ! お前はニセモノだ!」 ある日突然いきりたった王子から国外追放、そして婚約破棄もオマケのように言い渡される。 「困ったわ、追放されても生きてはいけるけど、どうやってお金を稼ごうかしら」 メリアには病気の両親がいる。王宮で聖女として働いていたのも両親の治療費のためだった。国の外には魔物がウロウロ、しかし聖女として活躍してきたメリアには魔物は大した脅威ではない。ただ心配なことは『お金の稼ぎ方』だけである。 そんな中、メリアはひょんなことから封印されていたはずの魔族と出会い、魔王のもとで働くことになる。 「頑張りますね、魔王さま!」 「……」(かわいい……) 一方、メリアを独断で追放した王子は父の激昂を招いていた。 「メリアを魔族と引き合わせるわけにはいかん!」 国王はメリアと魔族について、何か秘密があるようで……? 即オチ真面目魔王さまと両親のためにお金を稼ぎたい!ニセモノ疑惑聖女のラブコメです。 ※小説家になろうさんにも掲載

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜

ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。 しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。 生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。 それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。 幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。 「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」 初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。 そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。 これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。 これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。 ☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆

【完結】転生白豚令嬢☆前世を思い出したので、ブラコンではいられません!

白雨 音
恋愛
エリザ=デュランド伯爵令嬢は、学院入学時に転倒し、頭を打った事で前世を思い出し、 《ここ》が嘗て好きだった小説の世界と似ている事に気付いた。 しかも自分は、義兄への恋を拗らせ、ヒロインを貶める為に悪役令嬢に加担した挙句、 義兄と無理心中バッドエンドを迎えるモブ令嬢だった! バッドエンドを回避する為、義兄への恋心は捨て去る事にし、 前世の推しである悪役令嬢の弟エミリアンに狙いを定めるも、義兄は気に入らない様で…??  異世界転生:恋愛 ※魔法無し  《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、ありがとうございます☆

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

偽聖女と追放された私は、辺境で定食屋をはじめます~こっそり生活魔法で味付けしていたら、氷の騎士団長様が毎日通ってくるんですけど!?~

咲月ねむと
恋愛
【アルファポリス女性向けHOTランキング1位達成作品!!】 あらすじ 「役立たずの偽聖女め、この国から出て行け!」 ​聖女として召喚されたものの、地味な【生活魔法】しか使えず「ハズレ」の烙印を押されたエリーナ。 彼女は婚約者である王太子に婚約破棄され、真の聖女と呼ばれる義妹の陰謀によって国外追放されてしまう。 ​しかし、エリーナはめげなかった。 実は彼女の【生活魔法】は、一瞬で廃墟を新築に変え、どんな食材も極上の味に変えるチートスキルだったのだ! ​北の辺境の地へ辿り着いたエリーナは、念願だった自分の定食屋『陽だまり亭』をオープンする。 すると、そこへ「氷の騎士団長」と恐れられる冷徹な美形騎士・クラウスがやってきて――。 ​「……味がする。お前の料理だけが、俺の呪いを解いてくれるんだ」 ​とある呪いで味覚を失っていた彼は、エリーナの料理にだけ味を感じると判明。 以来、彼は毎日のように店に通い詰め、高額な代金を置いていったり、邪魔する敵を排除したりと、エリーナを過保護なまでに溺愛し始める。 ​最強の騎士団長と騎士たちに胃袋を掴んで守られながら、エリーナは辺境で幸せなスローライフを満喫中?

処理中です...