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「あなた、名前は?」
「ヴィレーナと申します。数日前からこちらでお世話になっており――」
「あなたが噂の……。で、どうやって陛下を? 陛下の心臓は貫かれたはず……と聞いたけど」
「メガヒールという回復魔法で治癒しました」
「な……!?」
どうしてこの女性が悔しがっているのかが不思議です。
堂々と玉座の間に入り、私よりも少し年上っぽく、彼女が例の王宮魔術師のロレレという方としか思えません。
「ロレレよ。あまり嫉妬するでない。助けてもらい大変感謝しているのだぞ」
「いえ、申しわけありません……」
やはりロレレでしたね。
チュリップが言っていたように、あまり関わらないほうが良いような気もします。
やたらと殺気を私に向けてくるのです。
ロレレが玉座の間から退室しようとしたとき、私の真横に立った瞬間にさらに強烈な殺気を放たれ小声で耳打ちしてきました。
「邪魔すんじゃないわよ。調子に乗るな」
どういう意味で言われたのか、良くわかりませんでした。
少しだけ考えて納得できました。
あぁ、なるほど。
ロレレが活躍するはずだった行為を私が奪ってしまったから怒っているのですね。
でも、あのときは陛下の命があと数十秒もつかどうかの瀬戸際状態でした。
ロレレがどこにいたのかは知りませんが、近くにいなかったとしたら助けられたとは思えません。
それとも別のことで怒っているのでしょうか。
まぁ怒られるのは慣れていますので気にしませんけど。
「すまぬな。ロレレは王宮一番の魔導士で光属性を含む四属性の魔法を使えるのだ。だがプライドが高くてな。特に魔力が強い者に対しては容赦ないのだよ」
「私の魔力は強いとなぜわかるのですか?」
「余にメガヒールを使い、平然としていたのだろう? 光属性魔法は魔力の消費が激しいそうだ。ロレレでもメガヒールを発動したあとは魔力切れで三日は寝込むと言っておった」
しっかり本を読んでおかないと……。
このまま魔法を無意識に使ったら、さすがにまずい気がしてきました。
国王陛下が頭を下げてくるだけでもとんでもないことなのに、これ以上ひれ伏されたらたまったものではありません。
せっかくメビルス王国が楽しくて優しい国だとわかったのですから、これからはのんびりと過ごしたいです。
「ところで、陛下は誰かに命を狙われていたのですか?」
「立場上、私の命を狙う者は多い。常にこのような状況は想定していた。かと言って護衛を増やすほどの資金面もないのでな」
「大変ですね……」
「ま、心当たりはいるがな。ある程度の防御魔法さえあればたやすく捕まえるのだが……」
ロレレに頼まないあたりなにかあるのでしょう。
防御魔法と言えば、思い出したことがあります。
「もし良ければですが……」
私は、昨晩魔法教則本で覚えたことを陛下に確認してみました。
すると、陛下は驚きながらもお願いをしてきたのです。
「まさか! そんなこともできるのか!?」
あっ!
他にも魔法が使えることを黙っておくのをすっかり忘れていました……。
だって、国王陛下の命が危険だと聞いたら黙っているなんてできないじゃないですか……。
まぁこれは光属性魔法ですし問題はないでしょう。
「おそらく大丈夫だと思います。ただ、効果がそんなに長続きしないのが欠点ですが。ある程度魔力を込めれば明日の昼くらいまでなら保つかと……」
「ふむ。試してもらってもよろしいか?」
「はい。では――」
私は陛下に今回の魔法を発動しました。
陛下は色々と模索していますが、やがて納得してくれたようで満面の笑みを浮かべています。
「素晴らしい。これならばむしろ余が囮になって暗殺者もろとも自ら捕まえることもできよう」
さすが、国王の座に着く前までは騎士団をしていたと言うだけのことはあります。
今回発動する魔法のことは、私と陛下、そして横にいたチュリップと宰相、そしてキーファウス殿下だけの秘密ということで、誰にも公言しないことになりました。
まさかのその日の夜中に結果が出るとは思いませんでしたが……。
♢
「やはり其方だったか……なんとも情けない」
陛下は、ロープでグルグル巻きにして捕らえた人物を見ながら呆れています。
国王陛下の広々とした自室に駆けつけると、すでに事件は終息したような状況でした。
「く……。こんなはずでは」
カイン騎士団長とチュリップは、少しばかり笑みを浮かべています。
私はなにがなんだか全くわからないまま、グルグル巻きに捕らえられ悔しそうにしているロレレを見ることしかできませんでした。
「ヴィレーナと申します。数日前からこちらでお世話になっており――」
「あなたが噂の……。で、どうやって陛下を? 陛下の心臓は貫かれたはず……と聞いたけど」
「メガヒールという回復魔法で治癒しました」
「な……!?」
どうしてこの女性が悔しがっているのかが不思議です。
堂々と玉座の間に入り、私よりも少し年上っぽく、彼女が例の王宮魔術師のロレレという方としか思えません。
「ロレレよ。あまり嫉妬するでない。助けてもらい大変感謝しているのだぞ」
「いえ、申しわけありません……」
やはりロレレでしたね。
チュリップが言っていたように、あまり関わらないほうが良いような気もします。
やたらと殺気を私に向けてくるのです。
ロレレが玉座の間から退室しようとしたとき、私の真横に立った瞬間にさらに強烈な殺気を放たれ小声で耳打ちしてきました。
「邪魔すんじゃないわよ。調子に乗るな」
どういう意味で言われたのか、良くわかりませんでした。
少しだけ考えて納得できました。
あぁ、なるほど。
ロレレが活躍するはずだった行為を私が奪ってしまったから怒っているのですね。
でも、あのときは陛下の命があと数十秒もつかどうかの瀬戸際状態でした。
ロレレがどこにいたのかは知りませんが、近くにいなかったとしたら助けられたとは思えません。
それとも別のことで怒っているのでしょうか。
まぁ怒られるのは慣れていますので気にしませんけど。
「すまぬな。ロレレは王宮一番の魔導士で光属性を含む四属性の魔法を使えるのだ。だがプライドが高くてな。特に魔力が強い者に対しては容赦ないのだよ」
「私の魔力は強いとなぜわかるのですか?」
「余にメガヒールを使い、平然としていたのだろう? 光属性魔法は魔力の消費が激しいそうだ。ロレレでもメガヒールを発動したあとは魔力切れで三日は寝込むと言っておった」
しっかり本を読んでおかないと……。
このまま魔法を無意識に使ったら、さすがにまずい気がしてきました。
国王陛下が頭を下げてくるだけでもとんでもないことなのに、これ以上ひれ伏されたらたまったものではありません。
せっかくメビルス王国が楽しくて優しい国だとわかったのですから、これからはのんびりと過ごしたいです。
「ところで、陛下は誰かに命を狙われていたのですか?」
「立場上、私の命を狙う者は多い。常にこのような状況は想定していた。かと言って護衛を増やすほどの資金面もないのでな」
「大変ですね……」
「ま、心当たりはいるがな。ある程度の防御魔法さえあればたやすく捕まえるのだが……」
ロレレに頼まないあたりなにかあるのでしょう。
防御魔法と言えば、思い出したことがあります。
「もし良ければですが……」
私は、昨晩魔法教則本で覚えたことを陛下に確認してみました。
すると、陛下は驚きながらもお願いをしてきたのです。
「まさか! そんなこともできるのか!?」
あっ!
他にも魔法が使えることを黙っておくのをすっかり忘れていました……。
だって、国王陛下の命が危険だと聞いたら黙っているなんてできないじゃないですか……。
まぁこれは光属性魔法ですし問題はないでしょう。
「おそらく大丈夫だと思います。ただ、効果がそんなに長続きしないのが欠点ですが。ある程度魔力を込めれば明日の昼くらいまでなら保つかと……」
「ふむ。試してもらってもよろしいか?」
「はい。では――」
私は陛下に今回の魔法を発動しました。
陛下は色々と模索していますが、やがて納得してくれたようで満面の笑みを浮かべています。
「素晴らしい。これならばむしろ余が囮になって暗殺者もろとも自ら捕まえることもできよう」
さすが、国王の座に着く前までは騎士団をしていたと言うだけのことはあります。
今回発動する魔法のことは、私と陛下、そして横にいたチュリップと宰相、そしてキーファウス殿下だけの秘密ということで、誰にも公言しないことになりました。
まさかのその日の夜中に結果が出るとは思いませんでしたが……。
♢
「やはり其方だったか……なんとも情けない」
陛下は、ロープでグルグル巻きにして捕らえた人物を見ながら呆れています。
国王陛下の広々とした自室に駆けつけると、すでに事件は終息したような状況でした。
「く……。こんなはずでは」
カイン騎士団長とチュリップは、少しばかり笑みを浮かべています。
私はなにがなんだか全くわからないまま、グルグル巻きに捕らえられ悔しそうにしているロレレを見ることしかできませんでした。
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