【完結】転生社畜聖女は、前世の記憶と規格外魔力で隣国を再建します

よどら文鳥

文字の大きさ
21 / 33

21

しおりを挟む
 キーファウス殿下たちとの緊急ミーティングも終わり、私はベッドに倒れ込んで泥のように眠りました。

「づがれた……」

 給金を下げてもらう交渉は疲れました。
 あまりやりすぎれば国の名誉を傷つけかねないし、もらいすぎても後が困るし……。
 そもそも、メビルス王国の人たちは私のことを過大評価しすぎている気がするのです。
 ここ最近調子が絶好調のようだし、毎朝の祈りではほとんど疲労すら感じない……。
 むしろ今日の交渉のほうが疲れましたね。

「お金なんて必要な分だけあれば良いのになぁ……」

 前世でお金がどんどん貯まっていきウハウハになっていたときのことを思い出しました。
 欲しいものをいっぱい買いに出かけたいのに、休みが永久にやってこない。
 ようやく休みになったとしても、毎日の過労で起きれず夜を迎えてしまう……。
 そして翌日からまた二十連勤なんてあたりまえでした。
 こうしてお金は増えていくのに好きなことができず、気がついたらそのまま過労死。

 メビルス王国では時間もお金も十分すぎるほどあるので、今度こそ人生を満喫したい!
 ただしこの国は財政面で崩壊寸前のようなので、国家破綻しないようにキーファウス殿下を全力で応援するつもりです。

 気がついたら意識をベッドに預けていました。

 ♦︎

「うぅぅぅうん?」
「気がついたかね?」
「ん……? んんんんんんっ!?」

 見たことのある空間です。
 直前の行動を思い返したら、嫌な予感しかしませんでした。

「まさかの疲労死!?」
「んなわけないじゃろ……。ワシがキミのユメの中に入っておるのだよ」
「そんなこともできるんですね。お久しぶりです」

 どうやら私のユメの中に神様が入り込んでいるそうです。
 夢枕みたいなものでしょうか。

「ずいぶんと謙虚な生活をしているようじゃの」
「いえ、謙虚というよりも、みなさんが讃えすぎなだけかなと……」
「ふぉっふぉっふぉっ! 本来はブブルル王国でもそうなるべきほどの人材だったのじゃよ。メビルス王国ではようやく評価されるようになったようだの」
「あまり自覚はありませんが……」
「よほどブブルル王国で悪い方向に洗脳されてしまったようだしな。ワシがふざけた国に転生させてしまった責任じゃったからな。お詫びに全属性魔法適性付与と魔力は人外にしておいたが、活かされていて良かったわい」

 急に魔法が使えるようになったからひょっとしたらと思っていましたが、神様のおかげだったのですね。
 特に回復魔法のおかげで国王陛下やチュリップを救うことができたので、大変感謝しています。

「神様からのプレゼントだったのですね! ありがとうございます!」

「実はもうひとつ、関与してある。今日はそれを伝えにきたのじゃよ。夢枕ならネタバレしても問題ないしのう」
「ネタバレ……」

 そういえばメビルス王国に来る前には魔法全属性使えることを教えてくれませんでしたね。
 神界のルールなのでしょう。

「キミは元々ブブルル王国の聖女として国に登録されていただろう?」
「はい。ですが、解雇宣言されたのですでに抹消はされているかと」
「いや、しっかりと聖女として登録されていた」
「そんな……」

 衝撃的事実を聞かされて焦っています。
 メビルス王国に呑気に滞在しているのも、すでに国から聖女として抹消されていると思い込んでいたからです。
 これはかなりマズいことになりました。
 もしも私がメビルス王国にいることがバレたら、確実にゴルザーフ国王陛下が奪還を企んでくるでしょう。
 しかも聖女の力を勝手に使いやがってとか言い出して多額の請求までされそうです。
 私のせいでメビルス王国に迷惑が……。
 目を覚ましたらすぐにこの国から消えて身を隠さないと大変なことになってしまう……。

「心配無用。ワシが改ざんしておいた」
「はい!?」
「キミがブブルル王国の聖女として在籍していたことを無いものに書き換えておいた」
「本当ですか!?」

 私の目はさぞ輝いていたことでしょう。
 神様と直接何度も会っていたからこそ、ありえないような事実もすぐに信用できるのです。
 ブブルル王国での在籍がなければ、今までどおりメビルス王国で堂々と生活ができます。

「こればかりはワシが手を加えないとキミが不利になってしまうからの」
「ありがとうございます!! なんとお礼を言えば良いのか……」
「元々ワシがミスして大変な思いをさせてしまったから気にせんで良い。それよりもキミが目を覚ました時間、ブブルル王国付近に上級モンスターが出現する」
「え……!?」
「赤の兆候が出ているからの」

 神様は落ち着きながら話していますが、それを聞いた私の顔は真っ青になっていたことでしょう。
 ユメの中だけど。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

聖女じゃないと追い出されたので、敵対国で錬金術師として生きていきます!

ぽっちゃりおっさん
恋愛
『お前は聖女ではない』と家族共々追い出された私達一家。 ほうほうの体で追い出され、逃げるようにして敵対していた国家に辿り着いた。 そこで私は重要な事に気が付いた。 私は聖女ではなく、錬金術師であった。 悔しさにまみれた、私は敵対国で力をつけ、私を追い出した国家に復讐を誓う!

幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね

柚木ゆず
恋愛
『最近俺達に不幸が多いのは、お前が祈りを怠けているからだ』  王太子レオンとその家族によって理不尽に疑われ、沢山の暴言を吐かれた上で監視をつけられてしまった聖女エリーナ。そんなエリーナとレオン達の人生は、この出来事を切っ掛けに一変することになるのでした――

悪女と呼ばれた聖女が、聖女と呼ばれた悪女になるまで

渡里あずま
恋愛
アデライトは婚約者である王太子に無実の罪を着せられ、婚約破棄の後に断頭台へと送られた。 ……だが、気づけば彼女は七歳に巻き戻っていた。そしてアデライトの傍らには、彼女以外には見えない神がいた。 「見たくなったんだ。悪を知った君が、どう生きるかを。もっとも、今後はほとんど干渉出来ないけどね」 「……十分です。神よ、感謝します。彼らを滅ぼす機会を与えてくれて」 ※※※ 冤罪で父と共に殺された少女が、巻き戻った先で復讐を果たす物語(大団円に非ず) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

捨てられた元聖女ですが、なぜか蘇生聖術【リザレクション】が使えます ~婚約破棄のち追放のち力を奪われ『愚醜王』に嫁がされましたが幸せです~

鏑木カヅキ
恋愛
 十年ものあいだ人々を癒し続けていた聖女シリカは、ある日、婚約者のユリアン第一王子から婚約破棄を告げられる。さらには信頼していた枢機卿バルトルトに裏切られ、伯爵令嬢ドーリスに聖女の力と王子との婚約さえ奪われてしまう。  元聖女となったシリカは、バルトルトたちの謀略により、貧困国ロンダリアの『愚醜王ヴィルヘルム』のもとへと強制的に嫁ぐことになってしまう。無知蒙昧で不遜、それだけでなく容姿も醜いと噂の王である。  そんな不幸な境遇でありながらも彼女は前向きだった。 「陛下と国家に尽くします!」  シリカの行動により国民も国も、そして王ヴィルヘルムでさえも変わっていく。  そしてある事件を機に、シリカは奪われたはずの聖女の力に再び目覚める。失われたはずの蘇生聖術『リザレクション』を使ったことで、国情は一変。ロンダリアでは新たな聖女体制が敷かれ、国家再興の兆しを見せていた。  一方、聖女ドーリスの力がシリカに遠く及ばないことが判明する中、シリカの噂を聞きつけた枢機卿バルトルトは、シリカに帰還を要請してくる。しかし、すでに何もかもが手遅れだった。

【完結】聖女レイチェルは国外追放されて植物たちと仲良く辺境地でサバイバル生活します〜あれ、いつのまにかみんな集まってきた。あの国は大丈夫かな

よどら文鳥
恋愛
「元聖女レイチェルは国外追放と処す」  国王陛下は私のことを天気を操る聖女だと誤解していた。  私レイチェルは植物と対話したり、植物を元気にさせたりする力を持っている。  誤解を解こうとしたが、陛下は話すら聞こうとしてくれない。  聖女としての報酬も微々たる額だし、王都にいてもつまらない。  この際、国外追放されたほうが楽しそうだ。  私はなにもない辺境地に来て、のんびりと暮らしはじめた。  生きていくのに精一杯かと思っていたが、どういうわけか王都で仲良しだった植物たちが来てくれて、徐々に辺境地が賑やかになって豊かになっていく。  楽しい毎日を送れていて、私は幸せになっていく。  ところで、王都から植物たちがみんなこっちに来ちゃったけど、あの国は大丈夫かな……。 【注意】 ※この世界では植物が動きまわります ※植物のキャラが多すぎるので、会話の前『』に名前が書かれる場合があります ※文章がご都合主義の作品です ※今回は1話ごと、普段投稿しているよりも短めにしてあります。

二周目聖女は恋愛小説家! ~探されてますが、前世で断罪されたのでもう名乗り出ません~

今川幸乃
恋愛
下級貴族令嬢のイリスは聖女として国のために祈りを捧げていたが、陰謀により婚約者でもあった王子アレクセイに偽聖女であると断罪されて死んだ。 こんなことなら聖女に名乗り出なければ良かった、と思ったイリスは突如、聖女に名乗り出る直前に巻き戻ってしまう。 「絶対に名乗り出ない」と思うイリスは部屋に籠り、怪しまれないよう恋愛小説を書いているという嘘をついてしまう。 が、嘘をごまかすために仕方なく書き始めた恋愛小説はなぜかどんどん人気になっていく。 「恥ずかしいからむしろ誰にも読まれないで欲しいんだけど……」 一方そのころ、本物の聖女が現れないため王子アレクセイらは必死で聖女を探していた。 ※序盤の断罪以外はギャグ寄り。だいぶ前に書いたもののリメイク版です

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

処理中です...