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第8話
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「なあ、なんか変わったとこあった?」
達也も、この異様な空間に直面して声が少し震えているようだった。浩太は振り返り、肩をすくねる。
「いや、さっぱりだな。確かなのは、暴徒がいないってことくらいか……」
「けど、ここまでは被害が及んでねえってだけで、近付きつつはあるってのは確かだよな……」
関門橋に視線を移し、続けて近場の工業団地へ首を回した。小倉駅周辺の悲惨な光景とは違い、いつもの日常的な風景が広がっている。時刻は朝の八時だが、出勤している人影がないのは仕方がないことだ。
浩太は、はっ、として団地の駐車場を見た。
「なんだよ?急にどうした?」
「達也、見てみろよ、駐車場が空だ」
ひょい、と身を乗り出した達也は、駐車場を一望する。
「ああ、確かに空みてえだな。それが?」
「ここに停まっている車の持ち主達は、団地の住民達じゃないか?」
「なんでそうなる?」
「まず、第一にこの状況がニュースになっているのは間違いないよな?そして、一斉に避難しようとしたらどうなる?」
達也は、しばし考えてから言った。
「パニックになるな。まさか、真一が言ったように集団で……」
「可能性はあるな。だが、住民は避難出来なかった。この先にある何かによってな」
瞬間、拳銃が激鉄で雷管を叩き、弾丸を発射させた甲高い音が二人の耳に届いた。戛然たる音が辺りに残響し、二人は、咄嗟に遮蔽物として車の陰に飛び込んだ。車で待機していた二人にも聞こえたのか、いつでも飛び込めるようにドアが開かれる。
「達也!着弾点は分かるか!」
ボンネットを壁にして、僅かに出した目で襲撃者を探すが、それらしき影はない。
「多分、大丈夫だ。音からして距離も離れてるみてえだし、俺達を狙ったって訳じゃなさそうだ」
「じゃあ、なんの銃声だ?」
「行ってみるしかないねえだろうな……」
二人は、関門橋までの道程を真っ直ぐに見据えて頷いた。通れる道ではないので、トラックは置いていくしかないだろう。真一と下澤も合流する。
「油断するなよ」
浩太は、たった一言を口にした。それだけで四人の空気が張る。
敵は、走り回る暴徒だけではない。生きた人間すらも、脅威になりうる。そんな意味が込められているのが、嫌になるほど伝わってきたからだ。今の銃声が一体何を意味するのか、それを確かめる為に、四人は車の隙間をぬって歩き出した直後、四人が預けていた意識を、すっぱりと切り落とすような銃声が再び鳴り響いた。
「近いな」
下澤の呟きに、三人が揃って頷いた。
慎重な足取りで一歩一歩、確実に歩を進めていき、見えてきたのは、百名以上はいる老若男女の集団だ。それだけの人数がいながら、まるでアクション映画でお馴染みの、人質になった集団のように、膝ま付いて一様に口を閉ざさしている様は、どこか異質だった。
そして、鼻腔を擽る血の匂いと先程の銃声が、ここで何が起きたかを四人に伝えてきた。
関門橋の手前、発生した関門橋封鎖任務に当たっていた数十名を指揮する岩下という男は下澤の同期だ。その足下には男性の死体が数十人に分、転がっていた。薄く煙をあげる銃口が、ピタリと先頭にいた男性の額に合う。
反射のように下澤が叫んだ。
「なにやってんだ、バカ野郎!」
達也も、この異様な空間に直面して声が少し震えているようだった。浩太は振り返り、肩をすくねる。
「いや、さっぱりだな。確かなのは、暴徒がいないってことくらいか……」
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関門橋に視線を移し、続けて近場の工業団地へ首を回した。小倉駅周辺の悲惨な光景とは違い、いつもの日常的な風景が広がっている。時刻は朝の八時だが、出勤している人影がないのは仕方がないことだ。
浩太は、はっ、として団地の駐車場を見た。
「なんだよ?急にどうした?」
「達也、見てみろよ、駐車場が空だ」
ひょい、と身を乗り出した達也は、駐車場を一望する。
「ああ、確かに空みてえだな。それが?」
「ここに停まっている車の持ち主達は、団地の住民達じゃないか?」
「なんでそうなる?」
「まず、第一にこの状況がニュースになっているのは間違いないよな?そして、一斉に避難しようとしたらどうなる?」
達也は、しばし考えてから言った。
「パニックになるな。まさか、真一が言ったように集団で……」
「可能性はあるな。だが、住民は避難出来なかった。この先にある何かによってな」
瞬間、拳銃が激鉄で雷管を叩き、弾丸を発射させた甲高い音が二人の耳に届いた。戛然たる音が辺りに残響し、二人は、咄嗟に遮蔽物として車の陰に飛び込んだ。車で待機していた二人にも聞こえたのか、いつでも飛び込めるようにドアが開かれる。
「達也!着弾点は分かるか!」
ボンネットを壁にして、僅かに出した目で襲撃者を探すが、それらしき影はない。
「多分、大丈夫だ。音からして距離も離れてるみてえだし、俺達を狙ったって訳じゃなさそうだ」
「じゃあ、なんの銃声だ?」
「行ってみるしかないねえだろうな……」
二人は、関門橋までの道程を真っ直ぐに見据えて頷いた。通れる道ではないので、トラックは置いていくしかないだろう。真一と下澤も合流する。
「油断するなよ」
浩太は、たった一言を口にした。それだけで四人の空気が張る。
敵は、走り回る暴徒だけではない。生きた人間すらも、脅威になりうる。そんな意味が込められているのが、嫌になるほど伝わってきたからだ。今の銃声が一体何を意味するのか、それを確かめる為に、四人は車の隙間をぬって歩き出した直後、四人が預けていた意識を、すっぱりと切り落とすような銃声が再び鳴り響いた。
「近いな」
下澤の呟きに、三人が揃って頷いた。
慎重な足取りで一歩一歩、確実に歩を進めていき、見えてきたのは、百名以上はいる老若男女の集団だ。それだけの人数がいながら、まるでアクション映画でお馴染みの、人質になった集団のように、膝ま付いて一様に口を閉ざさしている様は、どこか異質だった。
そして、鼻腔を擽る血の匂いと先程の銃声が、ここで何が起きたかを四人に伝えてきた。
関門橋の手前、発生した関門橋封鎖任務に当たっていた数十名を指揮する岩下という男は下澤の同期だ。その足下には男性の死体が数十人に分、転がっていた。薄く煙をあげる銃口が、ピタリと先頭にいた男性の額に合う。
反射のように下澤が叫んだ。
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