感染

宇宙人

文字の大きさ
150 / 419

第7話

しおりを挟む
    浩太は、妙に納得したみたいだ。体格も良い、真一に食って掛かる度胸もある、そして、今の一連から面倒見の良さも窺える。培ってきたものが、祐介と阿里沙とは違うのだろう。八幡西警察署に行き着くまでの道中で、生き残れた理由が彰一にも必ずある筈だ。
 二人が悪いという訳ではないが、性状が違うのは間違いない。浩太がそう考え終えると同時に、先頭を行く彰一が鋭く声をあげた。

「おい!二人とも急いで来てくれ!」

 阿里沙が声に引かれるように走り出す。少し、反応が遅れた浩太も続き、すぐに周囲との不一致を察した。その一画は集合住宅街であり、まるで臭いの発生源であるように一層、深まっていた。呼吸をすることも憚られそうなその場所は、穴生の商店街に程近い。
 浩太は、反射的に死者の姿を探したが見当たらなかった、こんな所を強襲されるなど堪ったものではない。
 自分の口ではなく、加奈子の口に手を当てていた彰一に追い付いた阿里沙が彰一の目線を辿り、その先にある一軒家を仰ぐ。破壊された玄関は、四人を先へ誘っているかのようだった。生温く湿った風が吹き、近場にあるアパートの一室から扉を揺する音が聞こえ、四人は身を固める。彰一は、左手に包丁を握る。

「......一人いるみたいだけど、どうする?」

「一人なら放っておいて良いだろう。それよりも、こっちだ」

 そう言って、浩太は目の前の一軒家を見上げた。幽霊屋敷や心霊スポット以上の雰囲気に呑まれつつある四人は、静かに喉を鳴らす。これだけ立ち往生しても、一軒家から死者が飛び出す様子もないが、それが薄気味悪さに拍車を掛ける。

「......本当に入るの?」

 阿里沙の呟きに浩太が頷いた。

「ああ......行くしかないだろうな。三人はどうする?」

 浩太が一歩踏み出して振り返った。彰一が首を縦に動かす。

「俺も行く。阿里沙、加奈子を頼む」

 しかし、加奈子は彰一の首に回した腕を放す気はないらしく、程なくして、阿里沙は諦めぎみに溜め息を吐いた。

「......分かったわよ、あたしも同行する。はぁ......随分と好かれてるわね」 

 彰一が不本意そうに返す。

「......もし、死者が来たときにヤバくなるけどな」

「そんときは俺が手を回してやるよ。じゃあ、行くか」

 浩太を再度、先頭にして四人は底の見知れない虚のような一軒家へと踏み込んだ。玄関には残った蝶番を越えると、臭気が一気に増した。眉を寄せた浩太は、色濃く残る臭いの発生源を探る為に、一度見渡していき、右手に映った階段で視線を定めた。階下で乱雑に撒かれた人間の四肢と臓器の一部、それが数多の足跡に囲まれている。玄関から真っ直ぐに延びる廊下はリビングに続いており、そこまで血の跡がべったりと続いていた。さすがに確認をする余裕はなく、浩太は階段を下から上へと眺めていき、両手を拍手のように打ち付けた。何も反応はない。
 最終的な確認を終え、浩太は三人に向けて中に入れ、と右手を軽く動かした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三分で読める一話完結型ショートホラー小説

ROOM
ホラー
一話完結型のショートショートです。 短いけれど印象に残るそんな小説を目指します。 毎日投稿して行く予定です。楽しんでもらえると嬉しいです。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

意味が分かると、分からないと怖い話【体験談+】

緑川
ホラー
ショートショートの寄せ集め。 幻想的から現実味溢れるものなど様々、存在。 出来の良し悪しについては格差あるので悪しからず。

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~

榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】 ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。 八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。 === エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中 【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】 【怖さレベル】 ★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度 ★★☆ ふつうに怖い話 ★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話 ※8/2 Kindleにて電子書籍化しました 『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』

処理中です...