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第7話
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浩太は、妙に納得したみたいだ。体格も良い、真一に食って掛かる度胸もある、そして、今の一連から面倒見の良さも窺える。培ってきたものが、祐介と阿里沙とは違うのだろう。八幡西警察署に行き着くまでの道中で、生き残れた理由が彰一にも必ずある筈だ。
二人が悪いという訳ではないが、性状が違うのは間違いない。浩太がそう考え終えると同時に、先頭を行く彰一が鋭く声をあげた。
「おい!二人とも急いで来てくれ!」
阿里沙が声に引かれるように走り出す。少し、反応が遅れた浩太も続き、すぐに周囲との不一致を察した。その一画は集合住宅街であり、まるで臭いの発生源であるように一層、深まっていた。呼吸をすることも憚られそうなその場所は、穴生の商店街に程近い。
浩太は、反射的に死者の姿を探したが見当たらなかった、こんな所を強襲されるなど堪ったものではない。
自分の口ではなく、加奈子の口に手を当てていた彰一に追い付いた阿里沙が彰一の目線を辿り、その先にある一軒家を仰ぐ。破壊された玄関は、四人を先へ誘っているかのようだった。生温く湿った風が吹き、近場にあるアパートの一室から扉を揺する音が聞こえ、四人は身を固める。彰一は、左手に包丁を握る。
「......一人いるみたいだけど、どうする?」
「一人なら放っておいて良いだろう。それよりも、こっちだ」
そう言って、浩太は目の前の一軒家を見上げた。幽霊屋敷や心霊スポット以上の雰囲気に呑まれつつある四人は、静かに喉を鳴らす。これだけ立ち往生しても、一軒家から死者が飛び出す様子もないが、それが薄気味悪さに拍車を掛ける。
「......本当に入るの?」
阿里沙の呟きに浩太が頷いた。
「ああ......行くしかないだろうな。三人はどうする?」
浩太が一歩踏み出して振り返った。彰一が首を縦に動かす。
「俺も行く。阿里沙、加奈子を頼む」
しかし、加奈子は彰一の首に回した腕を放す気はないらしく、程なくして、阿里沙は諦めぎみに溜め息を吐いた。
「......分かったわよ、あたしも同行する。はぁ......随分と好かれてるわね」
彰一が不本意そうに返す。
「......もし、死者が来たときにヤバくなるけどな」
「そんときは俺が手を回してやるよ。じゃあ、行くか」
浩太を再度、先頭にして四人は底の見知れない虚のような一軒家へと踏み込んだ。玄関には残った蝶番を越えると、臭気が一気に増した。眉を寄せた浩太は、色濃く残る臭いの発生源を探る為に、一度見渡していき、右手に映った階段で視線を定めた。階下で乱雑に撒かれた人間の四肢と臓器の一部、それが数多の足跡に囲まれている。玄関から真っ直ぐに延びる廊下はリビングに続いており、そこまで血の跡がべったりと続いていた。さすがに確認をする余裕はなく、浩太は階段を下から上へと眺めていき、両手を拍手のように打ち付けた。何も反応はない。
最終的な確認を終え、浩太は三人に向けて中に入れ、と右手を軽く動かした。
二人が悪いという訳ではないが、性状が違うのは間違いない。浩太がそう考え終えると同時に、先頭を行く彰一が鋭く声をあげた。
「おい!二人とも急いで来てくれ!」
阿里沙が声に引かれるように走り出す。少し、反応が遅れた浩太も続き、すぐに周囲との不一致を察した。その一画は集合住宅街であり、まるで臭いの発生源であるように一層、深まっていた。呼吸をすることも憚られそうなその場所は、穴生の商店街に程近い。
浩太は、反射的に死者の姿を探したが見当たらなかった、こんな所を強襲されるなど堪ったものではない。
自分の口ではなく、加奈子の口に手を当てていた彰一に追い付いた阿里沙が彰一の目線を辿り、その先にある一軒家を仰ぐ。破壊された玄関は、四人を先へ誘っているかのようだった。生温く湿った風が吹き、近場にあるアパートの一室から扉を揺する音が聞こえ、四人は身を固める。彰一は、左手に包丁を握る。
「......一人いるみたいだけど、どうする?」
「一人なら放っておいて良いだろう。それよりも、こっちだ」
そう言って、浩太は目の前の一軒家を見上げた。幽霊屋敷や心霊スポット以上の雰囲気に呑まれつつある四人は、静かに喉を鳴らす。これだけ立ち往生しても、一軒家から死者が飛び出す様子もないが、それが薄気味悪さに拍車を掛ける。
「......本当に入るの?」
阿里沙の呟きに浩太が頷いた。
「ああ......行くしかないだろうな。三人はどうする?」
浩太が一歩踏み出して振り返った。彰一が首を縦に動かす。
「俺も行く。阿里沙、加奈子を頼む」
しかし、加奈子は彰一の首に回した腕を放す気はないらしく、程なくして、阿里沙は諦めぎみに溜め息を吐いた。
「......分かったわよ、あたしも同行する。はぁ......随分と好かれてるわね」
彰一が不本意そうに返す。
「......もし、死者が来たときにヤバくなるけどな」
「そんときは俺が手を回してやるよ。じゃあ、行くか」
浩太を再度、先頭にして四人は底の見知れない虚のような一軒家へと踏み込んだ。玄関には残った蝶番を越えると、臭気が一気に増した。眉を寄せた浩太は、色濃く残る臭いの発生源を探る為に、一度見渡していき、右手に映った階段で視線を定めた。階下で乱雑に撒かれた人間の四肢と臓器の一部、それが数多の足跡に囲まれている。玄関から真っ直ぐに延びる廊下はリビングに続いており、そこまで血の跡がべったりと続いていた。さすがに確認をする余裕はなく、浩太は階段を下から上へと眺めていき、両手を拍手のように打ち付けた。何も反応はない。
最終的な確認を終え、浩太は三人に向けて中に入れ、と右手を軽く動かした。
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