感染

宇宙人

文字の大きさ
151 / 419

第8話

しおりを挟む
「......これは酷いな。なんか、めぼしいものはあった?」

「いや、何もない。とりあえず、武器の用意だけはしっかりな」

「リビングは......やめとくか......」 

 彰一はリビングへ繋がる廊下を辿って言葉を切ると、包丁の刃先で二階を指した。声を出さずに、浩太が首肯し、先を歩きだす。壁や段差、手摺に至るまで飛び散った朱色は、時間の経過からか黒に変色を始めている。
 ギシリ......
 僅かな軋みさえ、四人の耳は正確には捉えていた。
 二階には、扉が二つあり、一つが開け放たれている。
    子供部屋のようだ。開いた窓から入る風がサワサワと浩太の髪を撫でる。

「......俺は向こうを調べてくる。良いか?くれぐれも慎重にな」

「ああ、分かってるよ。そっちも気を付けろよ」

 彰一と阿里沙、加奈子を残し、浩太は閉ざされた扉へ近付いていく。固唾を飲んで見守る彰一は、浩太がドアノブを回して開くまでは油断が出来ないとばかりに滲む手汗を拭わなかった。耳の横で構えたナイフを頭よりも高く上げつつ浩太がドアノブを握り、一呼吸おいてから一気に扉を開くと同時にナイフを降り下ろした。
 しかし、刃は空を切り、勢い余って膝をつく。部屋は採光する為の窓以外は一切が閉ざされており、中には誰もいなかった。
    ふう、と安堵の息を吐いた彰一が、ようやく手汗を拭って言った。

「ビビらすなよ。なんかいたのかと思った......」

 姿はないが、転がるように入った部屋から声が返ってくる。

「悪かったな!ここは、寝室みたいだ!みた所、めぼしいものはないな。いや、これは......」

「今度は何だよ……」

 部屋から出てきた浩太の手には、長方形の箱がある。怪訝そうな彰一をよそに、上蓋を開くと中には棒状の紙を丸めたものが数本残っている。煙草だ。

「......掘り出しものだろ?」

 ニヤリ、と悪戯な笑みを浮かべた浩太は、箱を揺すり、半分ほど飛び出した一本を彰一に向け、苦笑混じりに彰一は抜いてくわえる。

「良いのかよ?仮にも公務員ってやつだろ?」

「しっかり咥えてる奴が、そういうこと言うなよ」

 浩太は、ポケットからライターを取りだし火を点けると、彰一に渡す。慣れた手付きで煙草を吹かし始めた彰一に浩太が笑う。 

「やっぱり、吸ってたんだな」

「......今更、咎めるとか無しだからな?」

 浩太は、はっ、と鼻で一笑すると意地の悪い笑みを浮かべる。

「誰に教わったんだ?」

 彰一は、ゆっくりと煙を吐くと灰を床に落としてから短く言った。

「......親父」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

三分で読める一話完結型ショートホラー小説

ROOM
ホラー
一話完結型のショートショートです。 短いけれど印象に残るそんな小説を目指します。 毎日投稿して行く予定です。楽しんでもらえると嬉しいです。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし

響ぴあの
ホラー
【1分読書】 意味が分かるとこわいおとぎ話。 意外な事実や知らなかった裏話。 浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。 どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

怪奇蒐集帳(短編集)

naomikoryo
ホラー
この世には、知ってはいけない話がある。  怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——  どれもがただの作り話かもしれない。  だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。  本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。  最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

処理中です...