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第15話
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「やれやれ、怒らせてしまいましたねぇ......もう、紅茶を頂ける雰囲気ではないですねぇ」
名残おしそうにテーブルについたカップの跡をなぞった。当然だろう、という言葉を斎藤は飲み込んだ。
父親を大量殺人犯呼ばわりされて怒らない娘がどこにいる。そもそも、浜岡の目的が見えてこないことにも、拭いきれない違和感を感じる。
隣で怪しく笑顔を続ける友人に、斎藤は尋ねた。
「浜岡、お前はここに何をしにきたんだ?彼女を怒らせるために、わざわざ足を運んだのか?」
浜岡は、少し悩んだ素振りをしてから返す。
「うーーん、まあ、なんというか、下準備をしにきた、といったところですかね」
「......下準備?」
「はい、下準備です」
貴子を怒らせることが下準備になるのだろうか。意味不明な発言ばかりを繰り返す浜岡は、悪びれる様子もなく台所にいる貴子に声を掛けた。
「すみません、紅茶を頂けたら......」
厚顔無恥とはこのことだ。
貴子は犬歯を剥き出しにするほどに、怒りを露にしたが、それが怒声に変わる直前に、斎藤の携帯電話が鳴り始めた。
ぐっ、と喉を締めた貴子に一礼を挟み、電話に出た斎藤は、二言、三言、会話を交わすと、電話を切って二人を一瞥して言った。
「田辺が出たそうだ」
浜岡がニヤリと口角を上げる。
「田辺君なら、ここに向かうでしょうね。では、下まで迎えに行ってきます」
浜岡は、斎藤の制止も無視して、スタスタと部屋を出ていった。残された斎藤は、居心地の悪さに耐えきれずに口を開いた。
「あの......紅茶を頂ても?」
※※※ ※※※
浜岡は、一人廊下を歩きながら、時計を確認した。
田辺が到着するのは、約三十分はかかるだろう。挑発により、頭に血がのぼった貴子のクールダウンには調度良い時間だ。男性は頭に血がのぼると、周りが見えなくなることが多いが、女性は逆によく見えるようになる。口喧嘩は女性の方が強いと言われる由縁はそこにある。これで、貴子は浜岡の言葉に耳を借さなくとも、田辺の言葉には真剣に意識を向けるだろう。
浜岡の経験から成せる心理を突いた下準備は完了したが、浜岡にとっても、田辺がどういう話を三人に語るのかという点に不安を隠せなかった。というのも、相手が巨大すぎるのだ。一国民が国を相手にしてどこまでやれるのだろうか。浜岡は、不安をかきけすように頭を振った。
「とにかく、今は田辺君と合流することを優先して......それから......」
浜岡の呟きは、長い廊下に吸い込まれていく。
その様子を向かいのマンションの一室から眺めている男達には気付かずに、浜岡はエレベーターに乗った。
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浜岡は、少し悩んだ素振りをしてから返す。
「うーーん、まあ、なんというか、下準備をしにきた、といったところですかね」
「......下準備?」
「はい、下準備です」
貴子を怒らせることが下準備になるのだろうか。意味不明な発言ばかりを繰り返す浜岡は、悪びれる様子もなく台所にいる貴子に声を掛けた。
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貴子は犬歯を剥き出しにするほどに、怒りを露にしたが、それが怒声に変わる直前に、斎藤の携帯電話が鳴り始めた。
ぐっ、と喉を締めた貴子に一礼を挟み、電話に出た斎藤は、二言、三言、会話を交わすと、電話を切って二人を一瞥して言った。
「田辺が出たそうだ」
浜岡がニヤリと口角を上げる。
「田辺君なら、ここに向かうでしょうね。では、下まで迎えに行ってきます」
浜岡は、斎藤の制止も無視して、スタスタと部屋を出ていった。残された斎藤は、居心地の悪さに耐えきれずに口を開いた。
「あの......紅茶を頂ても?」
※※※ ※※※
浜岡は、一人廊下を歩きながら、時計を確認した。
田辺が到着するのは、約三十分はかかるだろう。挑発により、頭に血がのぼった貴子のクールダウンには調度良い時間だ。男性は頭に血がのぼると、周りが見えなくなることが多いが、女性は逆によく見えるようになる。口喧嘩は女性の方が強いと言われる由縁はそこにある。これで、貴子は浜岡の言葉に耳を借さなくとも、田辺の言葉には真剣に意識を向けるだろう。
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「とにかく、今は田辺君と合流することを優先して......それから......」
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