186 / 419
第13話
しおりを挟む
新たに吸い込まれた空気は、口内へ濃い血の臭いとともに、鼻から侵入する。
もう、その香りに慣れてしまった自分が嫌になる。ほとんど、獣と変わらないな、と乾いた笑みを浮かべ、達也は首を振る。
小金井は死に、浩太や真一はどこにいるかすら分からず、改めて一人なんだと自覚し、目尻を下げれば、自分の腕が目に入る。小金井から託された意思が宿る右手をきつく握り締めると、東と安部にぶつけるまで、一人だろうとも生き抜く覚悟を達也は決めなくてはならない。心細いなど泣き言を口にしている場合ではないのだ。
達也は立ち上がると、逃げるよりも、アパッチが飛び去った方角、つまりは、中間のトンネルがある方へ走り柵に手を掛け、飛び去った原因を探ることにした。あの兵器が敵にある以上、偵察をしておくことに損はない筈だ。うまく事を運べば、関門橋でアパッチを利用した時のように、活路を切り出せるかもしれないという考えからの発想だった。
トンネルの入口を抜けた先は、下り坂になっており、それに伴って雑木林の高さも下がっていく。こちらからは、トンネル付近の様子が良く見える。
そして、達也は目を剥いた。見覚えのあるトラックが、ミサイルによって破壊されたトンネルの前で立ち往生していたのだ。
達也が、夢かもしれないと思うほどに、現実離れした光景だった。信じられずに、自らの頬をつねった程だ。
脇に控えた軽自動車がトンネルの上部に登っていく途中、達也は人違いでも構わないと思考を改めた。なんにせよ、あのトラックには、ここにいるそれなりの理由がある。それが、なんなのか分からない以上、判断材料は理論の中に存在しない。ならば、達也は感情で動くしかない。
自問自答を始め、結果に行き着いた達也のすべきことは、人間として、どう行動するかに傾いた。
あのトラックと車の持ち主を助け出す。
そうと決まれば、達也の役割はなんだ。暴徒を引き寄せること、アパッチへの対処だ。それには、どうすれば良い。
「......そうだ......あれなら......!」
達也はすぐさま、踵を返して走り出した。
※※※ ※※※
サイコパスの定義とはなんだろうか。生まれながらにもったものだとすれば良い例がある。メアリー・ベルという少女がいた。年齢にして僅か十歳の少女は、ある日、友人と三歳の子供を殺めた挙げ句、被害者の母親へ葬儀の日に、子供がいなくなったことへついて質問を繰り返した。
ほどなくして、逮捕されたメアリー・ベルは、将来は看護婦になりたいと答える。理由は、合法的に人へ針が刺せるからというものだ。これだけで、サイコパスは先天的なものだと思われるだろう。
しかし、東の見解は違い、サイコパスは強い悪意を持つ者ではなく、強い悪意を咎める気持ちがない者だというものだった。
ならば、この無法地帯のような九州地方はどうだろう。
もう、その香りに慣れてしまった自分が嫌になる。ほとんど、獣と変わらないな、と乾いた笑みを浮かべ、達也は首を振る。
小金井は死に、浩太や真一はどこにいるかすら分からず、改めて一人なんだと自覚し、目尻を下げれば、自分の腕が目に入る。小金井から託された意思が宿る右手をきつく握り締めると、東と安部にぶつけるまで、一人だろうとも生き抜く覚悟を達也は決めなくてはならない。心細いなど泣き言を口にしている場合ではないのだ。
達也は立ち上がると、逃げるよりも、アパッチが飛び去った方角、つまりは、中間のトンネルがある方へ走り柵に手を掛け、飛び去った原因を探ることにした。あの兵器が敵にある以上、偵察をしておくことに損はない筈だ。うまく事を運べば、関門橋でアパッチを利用した時のように、活路を切り出せるかもしれないという考えからの発想だった。
トンネルの入口を抜けた先は、下り坂になっており、それに伴って雑木林の高さも下がっていく。こちらからは、トンネル付近の様子が良く見える。
そして、達也は目を剥いた。見覚えのあるトラックが、ミサイルによって破壊されたトンネルの前で立ち往生していたのだ。
達也が、夢かもしれないと思うほどに、現実離れした光景だった。信じられずに、自らの頬をつねった程だ。
脇に控えた軽自動車がトンネルの上部に登っていく途中、達也は人違いでも構わないと思考を改めた。なんにせよ、あのトラックには、ここにいるそれなりの理由がある。それが、なんなのか分からない以上、判断材料は理論の中に存在しない。ならば、達也は感情で動くしかない。
自問自答を始め、結果に行き着いた達也のすべきことは、人間として、どう行動するかに傾いた。
あのトラックと車の持ち主を助け出す。
そうと決まれば、達也の役割はなんだ。暴徒を引き寄せること、アパッチへの対処だ。それには、どうすれば良い。
「......そうだ......あれなら......!」
達也はすぐさま、踵を返して走り出した。
※※※ ※※※
サイコパスの定義とはなんだろうか。生まれながらにもったものだとすれば良い例がある。メアリー・ベルという少女がいた。年齢にして僅か十歳の少女は、ある日、友人と三歳の子供を殺めた挙げ句、被害者の母親へ葬儀の日に、子供がいなくなったことへついて質問を繰り返した。
ほどなくして、逮捕されたメアリー・ベルは、将来は看護婦になりたいと答える。理由は、合法的に人へ針が刺せるからというものだ。これだけで、サイコパスは先天的なものだと思われるだろう。
しかし、東の見解は違い、サイコパスは強い悪意を持つ者ではなく、強い悪意を咎める気持ちがない者だというものだった。
ならば、この無法地帯のような九州地方はどうだろう。
0
あなたにおすすめの小説
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/16:『せきゆすとーぶ』の章を追加。2026/1/23の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/15:『しばふ』の章を追加。2026/1/22の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる