189 / 419
第16話
しおりを挟む
トラックは速度を上昇させた。左手に回転寿司の店舗が見えるということは、もう中腹を過ぎた辺りだろう。
まだだ、まだ、足りない。軽自動車から再びクラクションが鳴らされた。出過ぎている、そのような警告だ。その度に、彰一もアクセルを踏まなければならないのだから、 車体の限界を迎えつつあるのだろう。
浩太は、真一にM16のチェックを任せながらも、目線だけは押し寄せる死者から外さなかった。車内に、はっきりとオイルが焦げる匂いが漂い始める。トラックの全面的は、あちこちに凹みが目立ち、その様相は廃車同然だ。見た目にも、中身でも、もはやどうやって走っているのか分からない。
「......二人でどれだけ保つと思う?」
「死ぬつもりはないけど......引き付けられて三十分が限界だと思うぜ」
浩太は、喉の奥で小さく笑った。
「随分、盛った上に死ぬつもりはない......か。俺も同意見だな」
「そりゃあな、あいつらなら、なんとか助けてくれるぜ」
「でも、怒るだろうな」
「......ああ、多分、祐介辺りは本気で怒ると思うぜ。個人的にはそっちのほうが怖い」
そんな言葉に、浩太は声をあげて爆笑した。死者の返り血で全身が重味を増していく中での笑いだ。
真一は、ついに気が触れたのかと不安げに盗み見たが、次第に吊られてしまう。外での凄惨な光景とのギャップが可笑しくて堪らなかった。こんな現場に身を投げ出そうとしていながら、生き残った際の心配をしている心持ちが、どことなく、キチガイ染みているみたいだった。
「......さてと、そんじゃあ、そろそろスピードも良い頃だろ」
強引に強行を足した突破のお陰だろう。既に中間のショッパーズモールの一部は顔を覗かせている。だが、同時にトラックはいつ停まってもおかしくはない。そして、囲んでいる死者の数も増してきている。アパッチが、ただ静観しているだけなのは、関門橋でのミスを犯さない為だろう。事実、アパッチからの攻撃がないぶん、手痛い状況に追い込まれていた。
真一は、浩太の言葉に対して頷いて、銃を膝の上に置く。
「......合図はいるか?」
浩太は首を振り、真一側のミラーから、後ろの軽自動車を一目見た。
「ああ、頼むよ」
ついに、トラックのスピードは、目に見えて急速に下がり始めた。数秒後には、四人が乗るプレオに抜かれてしまうだろう。その前に、二人はトラックの速度を出来るだけ上げ続け、飛び降りる算段をたてていた。二人はドアハンドルへ同時に手を掛ける。
深呼吸を挟み、真一がまさに声を出そうとした時、猛烈な甲高い音が鳴り響いた。
まだだ、まだ、足りない。軽自動車から再びクラクションが鳴らされた。出過ぎている、そのような警告だ。その度に、彰一もアクセルを踏まなければならないのだから、 車体の限界を迎えつつあるのだろう。
浩太は、真一にM16のチェックを任せながらも、目線だけは押し寄せる死者から外さなかった。車内に、はっきりとオイルが焦げる匂いが漂い始める。トラックの全面的は、あちこちに凹みが目立ち、その様相は廃車同然だ。見た目にも、中身でも、もはやどうやって走っているのか分からない。
「......二人でどれだけ保つと思う?」
「死ぬつもりはないけど......引き付けられて三十分が限界だと思うぜ」
浩太は、喉の奥で小さく笑った。
「随分、盛った上に死ぬつもりはない......か。俺も同意見だな」
「そりゃあな、あいつらなら、なんとか助けてくれるぜ」
「でも、怒るだろうな」
「......ああ、多分、祐介辺りは本気で怒ると思うぜ。個人的にはそっちのほうが怖い」
そんな言葉に、浩太は声をあげて爆笑した。死者の返り血で全身が重味を増していく中での笑いだ。
真一は、ついに気が触れたのかと不安げに盗み見たが、次第に吊られてしまう。外での凄惨な光景とのギャップが可笑しくて堪らなかった。こんな現場に身を投げ出そうとしていながら、生き残った際の心配をしている心持ちが、どことなく、キチガイ染みているみたいだった。
「......さてと、そんじゃあ、そろそろスピードも良い頃だろ」
強引に強行を足した突破のお陰だろう。既に中間のショッパーズモールの一部は顔を覗かせている。だが、同時にトラックはいつ停まってもおかしくはない。そして、囲んでいる死者の数も増してきている。アパッチが、ただ静観しているだけなのは、関門橋でのミスを犯さない為だろう。事実、アパッチからの攻撃がないぶん、手痛い状況に追い込まれていた。
真一は、浩太の言葉に対して頷いて、銃を膝の上に置く。
「......合図はいるか?」
浩太は首を振り、真一側のミラーから、後ろの軽自動車を一目見た。
「ああ、頼むよ」
ついに、トラックのスピードは、目に見えて急速に下がり始めた。数秒後には、四人が乗るプレオに抜かれてしまうだろう。その前に、二人はトラックの速度を出来るだけ上げ続け、飛び降りる算段をたてていた。二人はドアハンドルへ同時に手を掛ける。
深呼吸を挟み、真一がまさに声を出そうとした時、猛烈な甲高い音が鳴り響いた。
0
あなたにおすすめの小説
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
霊和怪異譚 野花と野薔薇
野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。
静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。
『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。
一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。
語られる怪談はただの物語ではない。
それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。
やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。
日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。
あなたも一席、語りを聞いてみませんか?
完結いたしました。
タイトル変更しました。
旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。
表紙イラストは生成AI
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる