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第8話
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恐らく、ショッパーズモールに侵入したのは、警報ベルで暴徒を引き寄せることで救助に成功したトラックと軽自動車の持ち主だろう。注意深く確認していけば、東より先に出会えるかもしれないが、味方になってくれると願うしかない上に、常に暴徒の存在にも気を配る必要がある。かなり分は悪いが、逆転を引き寄せることができる賭けだ。
達也は、連絡通路からショッパーズモール内に戻り、寝具コーナーに差し掛かり、一気に鉄錆の臭いが強くなる。間違いなく、近くにいる。
心臓部分を服の上から掴み、歩みを止めた。東の助力などは望めない。ならば、素手でどうにか立ち向かうしかない。鈍い痛みが走る両拳を握り込むと、壁に背中をつけ、寝具コーナーを覗き込み、達也は息を呑んだ。
そこまで広くはない売場面積に、八人の暴徒が犇めいていた。いずれも、短い獣声を発っしつつ、目的も定まらない濁った双眸を思い思いの方向へ向けている。しかし、横切れば必ず白濁とした瞳は、一斉に目的をもつことになるだろう。素手で八人の暴徒を相手にするなど、自殺行為だ。
達也は、外から聞こえる暴徒の声から、一階には降りられないと判断し、三階への階段を一見する。ここからならば、見付からずに登れるだろう。
その時、達也の背中を、まるで気の合う友人にするような軽さで東が押し、よろけて一歩を踏み出す。その一歩は、これまで達也が歩んできた中で、最悪の歩みとなった。
統率がとれた一団のような動きで、十六の白い眼球全てに、達也の姿が写った。
「東!テメエ......!」
口の中での呟きは、暴徒の猛りの声が押し潰した。
※※※ ※※※
「おい......真一、無事か?」
「ああ......一応な......」
ショッパーズモールの出入り口を破り、アパッチの追跡を逃れた自衛官二人は、互いの無事を確かめ合うや、弾丸が入った鞄を引っ付かんでドアを蹴り落とした。
ここは、ちょうど道路に面した一号館北口にあるゲームセンターだ。メダルゲームが主流となっている一階には、トラックの衝突によって、外から入ってくる死者と、もともとモール内にいた死者が押し寄せつつあった。
浩太は、トラックから飛び降り、すぐさま、衝突で広がった出入り口へ銃撃を開始しながら、徐々に助手席へにじりよっていく。
数で押し切られるのは時間の問題だろう。同じく飛び降りた真一が、奥のスロットコーナーから走り寄る死者数人に銃撃を浴びせて叫んだ。
「浩太!お前の側にエスカレーターがある!そこから二階に登れ!」
「分かった!」
言いながら、浩太は手榴弾のピンを抜き、死者の大群へ投げつけ、爆発を合図にエスカレーターを駆けあがった。以前、達也に対して自身が言ったように、出し惜しみは無しだ。
真一がエスカレーターを登りきるまで、浩太が援護する。横幅が狭いお陰で一気に死者が集まるようなことはないが、これではイタチゴッコだ。
達也は、連絡通路からショッパーズモール内に戻り、寝具コーナーに差し掛かり、一気に鉄錆の臭いが強くなる。間違いなく、近くにいる。
心臓部分を服の上から掴み、歩みを止めた。東の助力などは望めない。ならば、素手でどうにか立ち向かうしかない。鈍い痛みが走る両拳を握り込むと、壁に背中をつけ、寝具コーナーを覗き込み、達也は息を呑んだ。
そこまで広くはない売場面積に、八人の暴徒が犇めいていた。いずれも、短い獣声を発っしつつ、目的も定まらない濁った双眸を思い思いの方向へ向けている。しかし、横切れば必ず白濁とした瞳は、一斉に目的をもつことになるだろう。素手で八人の暴徒を相手にするなど、自殺行為だ。
達也は、外から聞こえる暴徒の声から、一階には降りられないと判断し、三階への階段を一見する。ここからならば、見付からずに登れるだろう。
その時、達也の背中を、まるで気の合う友人にするような軽さで東が押し、よろけて一歩を踏み出す。その一歩は、これまで達也が歩んできた中で、最悪の歩みとなった。
統率がとれた一団のような動きで、十六の白い眼球全てに、達也の姿が写った。
「東!テメエ......!」
口の中での呟きは、暴徒の猛りの声が押し潰した。
※※※ ※※※
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「ああ......一応な......」
ショッパーズモールの出入り口を破り、アパッチの追跡を逃れた自衛官二人は、互いの無事を確かめ合うや、弾丸が入った鞄を引っ付かんでドアを蹴り落とした。
ここは、ちょうど道路に面した一号館北口にあるゲームセンターだ。メダルゲームが主流となっている一階には、トラックの衝突によって、外から入ってくる死者と、もともとモール内にいた死者が押し寄せつつあった。
浩太は、トラックから飛び降り、すぐさま、衝突で広がった出入り口へ銃撃を開始しながら、徐々に助手席へにじりよっていく。
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「浩太!お前の側にエスカレーターがある!そこから二階に登れ!」
「分かった!」
言いながら、浩太は手榴弾のピンを抜き、死者の大群へ投げつけ、爆発を合図にエスカレーターを駆けあがった。以前、達也に対して自身が言ったように、出し惜しみは無しだ。
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