233 / 419
第4話
しおりを挟む
続けて味蕾に広がる鉄の味、鈍器のような物で顔面を突かれたと認めた頃には、尻餅をついて倒れていた。
犬歯がぐらついている。田辺が見上げた時、額に冷たく丸いものが押し付けられた。
「田辺君!」
「田辺!」
「動くな!」
浜岡と斎藤の声に、ぴしゃりと檄を飛びしたのは、田辺を倒した人物とは違う男だ。
エントランスホールの出入り口に二人、合計三人の男に加え、背後から野田と共に行動していた外国人も加わる。
「残念だったな、田辺......」
「まさか、ここまで容赦なく配置されていたとは思いませんでした......」
「違う。彼らは、最初から貴子の部屋を見張っていた」
「......つまり、僕がここを訪ねることは、想定していたと?」
「当然だろう?お前が一度、ここを訪ねた時から見越していた。さて、車を用意してある。それに、乗ってもらおうか」
肩を掴まれ、乱暴に引き上げられる。顎の下には、当たり前のように銃口が添えられていた。
「どこへ連れていくつもりだ?」
斎藤の問いに、野田は口角をあげる。
「とても楽しいところだ。いや、それはお前達次第かな」
マンション前には二台の車が停められていた。ハイエースの後部に三人が詰め込まれ、男が二人乗り込み、銃を突きつける。
「随分、息苦しい空間だな......」
「そうですねえ、ここに女性が一人でも居れば、少しは穏やかな空気になりますかね?」
「おい、私語は慎め」
浜岡のこめかみに、ごつりとした硬い感触が伝わり、苦笑を洩らす。
野田が乗った車から、高く鳴らされたクラクションを出発の合図に、三人と二人を荷台に乗せたハイエースが走り出した。
※※※ ※※※
達也の喉に、死者の歯が迫る。
額を押さえ、右の拳で頬を撃ち抜き、前蹴りの要領で死者を突き放し、どうにか寝具コーナーからの脱出を図るも、それは呻き声をあげて達也を狙う死者により阻まれる。
やはり、八人を相手に、素手で立ち向かうなど無謀な話だった。怯ませることは出来ても、相手は痛覚等持ち合わせていないのだ。痛みで踞ることもない。
「クッソッがぁ!」
両手で押し、少しでも距離を作るも、そこまで広さもない寝具コーナーで達也は徐々に追い詰められていく。壁に詰められれば、必ず押しきられてしまう。まるで、将棋の王将にでもなった気分だった。
ベッドを飛び越え、着地先にいた死者を蹴りつけ、とどめを刺そうとするが、新たな死者が常に達也に迫る。
とにかく、今、早急に必要なのは武器だ。
ベッドを破壊するか、それでは時間があまりにも足りない。ならば、マットに入ったスプリングを取り出す、それも時間が必要だ。そんなことに意識を向けていては、死者の餌食になる。運悪くローラーが着いたベッドもない。
なにもかもが、達也から生を奪う方向へ進んでいっている気がしてならない。
この地獄と化した中間のショッパーズモールで、東という死神に再会したあの瞬間から、自分は、着実に死へと歩んでいたのだろうか。そんな言葉が脳裏に浮かび、頭を振って、それを吹き飛ばした。
犬歯がぐらついている。田辺が見上げた時、額に冷たく丸いものが押し付けられた。
「田辺君!」
「田辺!」
「動くな!」
浜岡と斎藤の声に、ぴしゃりと檄を飛びしたのは、田辺を倒した人物とは違う男だ。
エントランスホールの出入り口に二人、合計三人の男に加え、背後から野田と共に行動していた外国人も加わる。
「残念だったな、田辺......」
「まさか、ここまで容赦なく配置されていたとは思いませんでした......」
「違う。彼らは、最初から貴子の部屋を見張っていた」
「......つまり、僕がここを訪ねることは、想定していたと?」
「当然だろう?お前が一度、ここを訪ねた時から見越していた。さて、車を用意してある。それに、乗ってもらおうか」
肩を掴まれ、乱暴に引き上げられる。顎の下には、当たり前のように銃口が添えられていた。
「どこへ連れていくつもりだ?」
斎藤の問いに、野田は口角をあげる。
「とても楽しいところだ。いや、それはお前達次第かな」
マンション前には二台の車が停められていた。ハイエースの後部に三人が詰め込まれ、男が二人乗り込み、銃を突きつける。
「随分、息苦しい空間だな......」
「そうですねえ、ここに女性が一人でも居れば、少しは穏やかな空気になりますかね?」
「おい、私語は慎め」
浜岡のこめかみに、ごつりとした硬い感触が伝わり、苦笑を洩らす。
野田が乗った車から、高く鳴らされたクラクションを出発の合図に、三人と二人を荷台に乗せたハイエースが走り出した。
※※※ ※※※
達也の喉に、死者の歯が迫る。
額を押さえ、右の拳で頬を撃ち抜き、前蹴りの要領で死者を突き放し、どうにか寝具コーナーからの脱出を図るも、それは呻き声をあげて達也を狙う死者により阻まれる。
やはり、八人を相手に、素手で立ち向かうなど無謀な話だった。怯ませることは出来ても、相手は痛覚等持ち合わせていないのだ。痛みで踞ることもない。
「クッソッがぁ!」
両手で押し、少しでも距離を作るも、そこまで広さもない寝具コーナーで達也は徐々に追い詰められていく。壁に詰められれば、必ず押しきられてしまう。まるで、将棋の王将にでもなった気分だった。
ベッドを飛び越え、着地先にいた死者を蹴りつけ、とどめを刺そうとするが、新たな死者が常に達也に迫る。
とにかく、今、早急に必要なのは武器だ。
ベッドを破壊するか、それでは時間があまりにも足りない。ならば、マットに入ったスプリングを取り出す、それも時間が必要だ。そんなことに意識を向けていては、死者の餌食になる。運悪くローラーが着いたベッドもない。
なにもかもが、達也から生を奪う方向へ進んでいっている気がしてならない。
この地獄と化した中間のショッパーズモールで、東という死神に再会したあの瞬間から、自分は、着実に死へと歩んでいたのだろうか。そんな言葉が脳裏に浮かび、頭を振って、それを吹き飛ばした。
0
あなたにおすすめの小説
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
皆さんは呪われました
禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか?
お勧めの呪いがありますよ。
効果は絶大です。
ぜひ、試してみてください……
その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。
最後に残るのは誰だ……
霊和怪異譚 野花と野薔薇
野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。
静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。
『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。
一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。
語られる怪談はただの物語ではない。
それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。
やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。
日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。
あなたも一席、語りを聞いてみませんか?
完結いたしました。
タイトル変更しました。
旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる
※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。
エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。
表紙イラストは生成AI
(ほぼ)1分で読める怖い話
涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話!
【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】
1分で読めないのもあるけどね
主人公はそれぞれ別という設定です
フィクションの話やノンフィクションの話も…。
サクサク読めて楽しい!(矛盾してる)
⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません
⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください
【電子書籍化】ホラー短編集・ある怖い話の記録~旧 2ch 洒落にならない怖い話風 現代ホラー~
榊シロ
ホラー
【1~4話で完結する、語り口調の短編ホラー集】
ジャパニーズホラー、じわ怖、身近にありそうな怖い話など。
八尺様 や リアルなど、2chの 傑作ホラー の雰囲気を目指しています。現在 150話 越え。
===
エブリスタ・小説家になろう・カクヨムに同時掲載中
【総文字数 800,000字 超え 文庫本 約8冊分 のボリュームです】
【怖さレベル】
★☆☆ 微ホラー・ほんのり程度
★★☆ ふつうに怖い話
★★★ 旧2ch 洒落怖くらいの話
※8/2 Kindleにて電子書籍化しました
『9/27 名称変更→旧:ある雑誌記者の記録』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる