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第18話
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※※※ ※※※
浩太と達也は、足音を忍ばせながら、一段一段、着実に階段を登っていき、ようやく四階の踊り場に腰を落ち着けた。
滴る汗にすら気を配り、磨り減った神経は、限りなく摩耗されていく。これほどの緊張を保っていられるのは、あと数十分が限界だろうと、浩太が皮肉のように口角をあげた。
「......なんだよ?なんか楽しいことでも思い出したのか?」
目敏く言った達也は、踊り場の手摺に体を預ける。
「さあ、どうだかな。なんで、口元が緩むのか、俺にもわからない」
胸元を探りつつ、浩太は答える。
やがて、目当ての煙草を引き出し、一本を達也へ渡した。
その際に、彰一との会話が記憶の片隅をかすり、ああ、そうか、と口元の緩め、あの時の緊張と似ているからかと思った。
もう、あのような話しを彰一と交わせないと気付かされ、くわえた煙草のフィルターを噛む。
そんな浩太に、顔の前で煙を燻らせ、達也が言った。
「......今度は沈んでるな。不安か?」
「......不安じゃないときなんか無かった。お前もそうだろ?」
「まあな......」
あと、一つ階段を登れば、生死を賭けた闘いが始まる。今までの、どの場面よりも、激しいものになるだろう。
達也は足元に煙草を捨てると、踵で踏みつけ、最後に残った煙を吹き出す。
「最後の一服、堪能したか?」
浩太に問い掛けられ、縁起でもないことを言うな、とばかりに眉を寄せてみせたが、空になったケースを投げつけられる。
「変な顔すんなよ。今のが最後の一本ずつだって意味だ」
苦笑いを浮かべた浩太は、半分ほどを残して床に置いた。その意味を図りかねた達也が首を傾けるも、浩太は何も口にせず、しばらく眺めていた。僅かな時間、目を閉じて胸中で呟く。
彰一、あとは、お前の分だよ。これだけ残したんだ、力を借してくれるよな。
ふと、目を開くと同時に、マガジンを確認する。装填は充分、予備も二つある。カールグフタフの準備を手早く済ませ、互いに頷きあった二人は、一段目に右足を掛けて登り始めた。
もう、引き返すことはできない。引き返すつもりなど毛頭ない。ただ、目線を逸らさず、大勝負に向かうのみだ。とうとう階段を登り終えた二人は、壁に背中を壁に着けて半身を乗り出して様子を窺う。
アパッチは、ホバリングを続けたまま、二人の正面に位置していた。しかし、距離が離れすぎている上に、夥しい数の死者がアパッチを操縦する運転手へ手を伸ばしながら、呻き、ひしめき合っており、さきほどのチェインガンによる攻撃にあったであろう死体も、足の踏み場がないほど、かなりの数がある。
浩太と達也は、足音を忍ばせながら、一段一段、着実に階段を登っていき、ようやく四階の踊り場に腰を落ち着けた。
滴る汗にすら気を配り、磨り減った神経は、限りなく摩耗されていく。これほどの緊張を保っていられるのは、あと数十分が限界だろうと、浩太が皮肉のように口角をあげた。
「......なんだよ?なんか楽しいことでも思い出したのか?」
目敏く言った達也は、踊り場の手摺に体を預ける。
「さあ、どうだかな。なんで、口元が緩むのか、俺にもわからない」
胸元を探りつつ、浩太は答える。
やがて、目当ての煙草を引き出し、一本を達也へ渡した。
その際に、彰一との会話が記憶の片隅をかすり、ああ、そうか、と口元の緩め、あの時の緊張と似ているからかと思った。
もう、あのような話しを彰一と交わせないと気付かされ、くわえた煙草のフィルターを噛む。
そんな浩太に、顔の前で煙を燻らせ、達也が言った。
「......今度は沈んでるな。不安か?」
「......不安じゃないときなんか無かった。お前もそうだろ?」
「まあな......」
あと、一つ階段を登れば、生死を賭けた闘いが始まる。今までの、どの場面よりも、激しいものになるだろう。
達也は足元に煙草を捨てると、踵で踏みつけ、最後に残った煙を吹き出す。
「最後の一服、堪能したか?」
浩太に問い掛けられ、縁起でもないことを言うな、とばかりに眉を寄せてみせたが、空になったケースを投げつけられる。
「変な顔すんなよ。今のが最後の一本ずつだって意味だ」
苦笑いを浮かべた浩太は、半分ほどを残して床に置いた。その意味を図りかねた達也が首を傾けるも、浩太は何も口にせず、しばらく眺めていた。僅かな時間、目を閉じて胸中で呟く。
彰一、あとは、お前の分だよ。これだけ残したんだ、力を借してくれるよな。
ふと、目を開くと同時に、マガジンを確認する。装填は充分、予備も二つある。カールグフタフの準備を手早く済ませ、互いに頷きあった二人は、一段目に右足を掛けて登り始めた。
もう、引き返すことはできない。引き返すつもりなど毛頭ない。ただ、目線を逸らさず、大勝負に向かうのみだ。とうとう階段を登り終えた二人は、壁に背中を壁に着けて半身を乗り出して様子を窺う。
アパッチは、ホバリングを続けたまま、二人の正面に位置していた。しかし、距離が離れすぎている上に、夥しい数の死者がアパッチを操縦する運転手へ手を伸ばしながら、呻き、ひしめき合っており、さきほどのチェインガンによる攻撃にあったであろう死体も、足の踏み場がないほど、かなりの数がある。
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