感染

宇宙人

文字の大きさ
278 / 419

第18話

しおりを挟む
                        ※※※  ※※※

    浩太と達也は、足音を忍ばせながら、一段一段、着実に階段を登っていき、ようやく四階の踊り場に腰を落ち着けた。
    滴る汗にすら気を配り、磨り減った神経は、限りなく摩耗されていく。これほどの緊張を保っていられるのは、あと数十分が限界だろうと、浩太が皮肉のように口角をあげた。

「......なんだよ?なんか楽しいことでも思い出したのか?」

 目敏く言った達也は、踊り場の手摺に体を預ける。

「さあ、どうだかな。なんで、口元が緩むのか、俺にもわからない」

 胸元を探りつつ、浩太は答える。
    やがて、目当ての煙草を引き出し、一本を達也へ渡した。
    その際に、彰一との会話が記憶の片隅をかすり、ああ、そうか、と口元の緩め、あの時の緊張と似ているからかと思った。
 もう、あのような話しを彰一と交わせないと気付かされ、くわえた煙草のフィルターを噛む。
    そんな浩太に、顔の前で煙を燻らせ、達也が言った。

「......今度は沈んでるな。不安か?」 

「......不安じゃないときなんか無かった。お前もそうだろ?」

「まあな......」

 あと、一つ階段を登れば、生死を賭けた闘いが始まる。今までの、どの場面よりも、激しいものになるだろう。
    達也は足元に煙草を捨てると、踵で踏みつけ、最後に残った煙を吹き出す。

「最後の一服、堪能したか?」

 浩太に問い掛けられ、縁起でもないことを言うな、とばかりに眉を寄せてみせたが、空になったケースを投げつけられる。 

「変な顔すんなよ。今のが最後の一本ずつだって意味だ」 

 苦笑いを浮かべた浩太は、半分ほどを残して床に置いた。その意味を図りかねた達也が首を傾けるも、浩太は何も口にせず、しばらく眺めていた。僅かな時間、目を閉じて胸中で呟く。

 彰一、あとは、お前の分だよ。これだけ残したんだ、力を借してくれるよな。

    ふと、目を開くと同時に、マガジンを確認する。装填は充分、予備も二つある。カールグフタフの準備を手早く済ませ、互いに頷きあった二人は、一段目に右足を掛けて登り始めた。
    もう、引き返すことはできない。引き返すつもりなど毛頭ない。ただ、目線を逸らさず、大勝負に向かうのみだ。とうとう階段を登り終えた二人は、壁に背中を壁に着けて半身を乗り出して様子を窺う。
 アパッチは、ホバリングを続けたまま、二人の正面に位置していた。しかし、距離が離れすぎている上に、夥しい数の死者がアパッチを操縦する運転手へ手を伸ばしながら、呻き、ひしめき合っており、さきほどのチェインガンによる攻撃にあったであろう死体も、足の踏み場がないほど、かなりの数がある。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三分で読める一話完結型ショートホラー小説

ROOM
ホラー
一話完結型のショートショートです。 短いけれど印象に残るそんな小説を目指します。 毎日投稿して行く予定です。楽しんでもらえると嬉しいです。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

意味が分かると、分からないと怖い話【体験談+】

緑川
ホラー
ショートショートの寄せ集め。 幻想的から現実味溢れるものなど様々、存在。 出来の良し悪しについては格差あるので悪しからず。

霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。 表紙イラストは生成AI

皆さんは呪われました

禰津エソラ
ホラー
あなたは呪いたい相手はいますか? お勧めの呪いがありますよ。 効果は絶大です。 ぜひ、試してみてください…… その呪いの因果は果てしなく絡みつく。呪いは誰のものになるのか。 最後に残るのは誰だ……

(ほぼ)1分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ1分で読める怖い話! 【ホラー・ミステリーでTOP10入りありがとうございます!】 1分で読めないのもあるけどね 主人公はそれぞれ別という設定です フィクションの話やノンフィクションの話も…。 サクサク読めて楽しい!(矛盾してる) ⚠︎この物語で出てくる場所は実在する場所とは全く関係御座いません ⚠︎他の人の作品と酷似している場合はお知らせください

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

処理中です...