感染

宇宙人

文字の大きさ
279 / 419

第19話

しおりを挟む
    このままでは、カールグフタフを発射したとしても、死者の壁に阻まれてしまうだろう。たった一発の希望を無駄にする訳にはいかない。声をひそめて、達也が尋ねる。

「こりゃ、かなり厳しいな......どうするよ浩太」

「......なあ、屋上から狙うのはありと思うか?」

「屋上?鍵もねえのに、どうやっていくんだ?」

「もちろん、こいつでだ」

 浩太は、とん、と軽くM16の銃身を叩いて言った。呆れたように、吐息を短くついた達也が返す。

「そんなもん、奴等に気付かれちまうだろうが......そうなると、アパッチを撃墜させるどころの話しじゃなくなっちまう」

「だからこそだ。だからこそ、都合が良いんだろ」

 言葉の趣旨が、どうにもはっきりとしない。得心の行かない達也は、再びアパッチと死者の大群を一瞥する。

「なあ、浩太、どういう意味で言ってんのか、教えてくれよ。このままじゃ堂々巡りみたいなもんじゃねえか」 

「なら、端的に言うぞ?お前は屋上に走って扉をぶち壊せ!」

 次の瞬間、浩太は身を乗りだし、銃撃を開始した。
    この馬鹿が、などと悪態をつく暇もなく、達也は言われた通りに屋上へと駆ける。浩太は、扉を壊せと言った。ならば、達也も応えるまでだ。屋上への扉の錠をAK74の5.56ミリ弾が破壊する。
    同時に踊り場から浩太が声を張り上げた。

「そのまま出て、給水タンクに登れ!」

 そこでようやく達也にも理解が及んだ。通常、巨大な施設には、施設内を巡るポンプが存在する。加えて、定期的な内面掃除の為に、梯子が確実に備わっているものだ。達也が、タンクを取り囲む柵を一気に飛び越えると、アパッチが急速な上昇をしようとプロペラの回転数を上げ始めたのか、金切音が激しくなる。 

 ここだ。ここしかない! 

 梯子を昇りきるや、浩太に手を貸すことなく、カール・グフタフを肩に添え、プロペラ音と位置だけを頼りに狙いを定めた。
 絶対に外せない一撃、達也も今だけは外界から切り離された。雑音も伸吟も浩太の声でさえも遮断して、たった一瞬に全てを懸ける。
    黒い塊が屋上の枠外から垣間見えた時、梯子を昇りながら浩太が叫んだ。

「撃て!達也ァァァ!」

 達也もまた、震える指先で引き金に指を掛けた。外す訳にはいかない。これは、命をとした覚悟の一発、そして、希望への架け橋だ。

 すう、と深く吸い込んだ空気が肺に満たされると、達也は声を振り上げた。

「堕ちろおぉぉぉ!」

 九州地方へ絶望を振り撒く切っ掛けともいえる八十四ミリの巨大な弾丸は、希望の弾丸へと変貌を遂げ、強烈な後方爆風と、七人の様々な思いと共に撃ちだされた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

三分で読める一話完結型ショートホラー小説

ROOM
ホラー
一話完結型のショートショートです。 短いけれど印象に残るそんな小説を目指します。 毎日投稿して行く予定です。楽しんでもらえると嬉しいです。

女子切腹同好会

しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。 はたして、彼女の行き着く先は・・・。 この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。 また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。 マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。 世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。

【1分読書】意味が分かると怖いおとぎばなし

響ぴあの
ホラー
【1分読書】 意味が分かるとこわいおとぎ話。 意外な事実や知らなかった裏話。 浦島太郎は神になった。桃太郎の闇。本当に怖いかちかち山。かぐや姫は宇宙人。白雪姫の王子の誤算。舌切りすずめは三角関係の話。早く人間になりたい人魚姫。本当は怖い眠り姫、シンデレラ、さるかに合戦、はなさかじいさん、犬の呪いなどなど面白い雑学と創作短編をお楽しみください。 どこから読んでも大丈夫です。1話完結ショートショート。

終焉列島:ゾンビに沈む国

ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。 最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。 会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

あなたのサイコパス度が分かる話(短編まとめ)

ミィタソ
ホラー
簡単にサイコパス診断をしてみましょう

霊和怪異譚 野花と野薔薇

野花マリオ
ホラー
その“語り”が始まったとき、世界に異変が芽吹く。 静かな町、ふとした日常、どこにでもあるはずの風景に咲きはじめる、奇妙な花々――。 『霊和怪異譚 野花と野薔薇』は、不思議な力を持つ語り部・八木楓と鐘技友紀以下彼女達が語る怪異を描く、短編連作形式の怪異譚シリーズ。 一話ごとに異なる舞台、異なる登場人物、異なる恐怖。それでも、語りが始まるたび、必ず“何か”が咲く――。 語られる怪談はただの物語ではない。 それを「聞いた者」に忍び寄る異変、染みわたる不安。 やがて読者自身の身にも、“あの花”が咲くかもしれない。 日常にひっそりと紛れ込む、静かで妖しいホラー。 あなたも一席、語りを聞いてみませんか? 完結いたしました。 タイトル変更しました。 旧 彼女の怪異談は不思議な野花を咲かせる ※この物語はフィクションです。実在する人物、企業、団体、名称などは一切関係ありません。 エブリスタにも公開してますがアルファポリス の方がボリュームあります。 表紙イラストは生成AI

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語

jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
 中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ  ★作品はマリーの語り、一人称で進行します。

処理中です...