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第5話
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田辺が首を傾ける。それと同じくして、施設内から喉が裂けそうなほどに大きな悲鳴が聴こえた。
全員が一斉に振り返り、施設の入口へ視線を注ぎ始め、次第に、ぽつぽつと小声が上がる。やがて、息を切らせた捜査官が右腕を抑えつつ現れ、肩を震わせながら叫んだ。
「と......藤堂さん!中に!施設の中に化け物がぁ!」
「落ち着け!何があったのか、ゆっくりと説明しろ!」
鬼胎に満ちた藤堂の両目は、駆け出してきた捜査官の背後に集中している。大仰な素振りで右の袖を捲し上げると、その場にいる数十人へ聞こえるよう声を張った。
「これは、中にいる化け物から噛まれた傷だ!藤堂さん、全員に銃の使用許可を!許可を願いま......!」
捜査官の声は、そこで甲高い金切声に変わった。
突如、背後から現れたのは、腹を破られた一人の男性だった。
露出した臓器は、地面に垂れ下がり、片目を深く抉られ、頬も無惨な傷跡を晒している。
悲惨な男性の姿は、周囲を阿鼻叫喚の地獄絵図へと一瞬で叩き落とした。
狼狽する藤堂を始め、警察官達は、動くことも出来ず、ただただ、醜悪な男性に喉を食い破られ、声も出せずに片腕だけをあげて、助けを求める同僚が喰われていく様を眺めていることしかできなかった。
嗚咽の音が聞こえる。誰かが、凄惨な光景に堪えきれず、吐き出したのだろう。それが、現れた男性を刺激してしまった。
まるで、動物の威嚇のような通苦の獣声を洩らしつつ、真っ白に濁った双眸を警察官達へ向けると共に、これまでとは違ったどよめきが巻き起こった。
その顔は、様変わりしているものの、テレビや雑誌で見ない日はないほど、ありふれた顔だったからだ。男性がゆっくりとした動静で立ち上がり、藤堂が掠れた声を出した。
「と......戸部......総理......?なんだ?なんで、そんな姿でいきているんだ……?」
死者へと転化した戸部が、自身を囲む警察官たちを見回して、一足で走り出す。蜘蛛の子を散らす勢いで、警察官達が逃げ出していく。そんな中、田辺は呆然と事のなり行きを眺めていた。
思考が追い付かない。何故、戸部があの姿で生きた者のように走れるのだろうか。まさか、新崎優菜がいた部屋の扉を開けたのだろうか。死者と成り果てた戸部が、膝をついた田辺を発見し、延吟をたて始めた。それでもなお、田辺は動けない。
「田辺!なにをしてる!」
そう声をあげたのは、斎藤だった。走り寄る戸部をタックルで突き飛ばし、鋭く田辺を睨み付けた。
全員が一斉に振り返り、施設の入口へ視線を注ぎ始め、次第に、ぽつぽつと小声が上がる。やがて、息を切らせた捜査官が右腕を抑えつつ現れ、肩を震わせながら叫んだ。
「と......藤堂さん!中に!施設の中に化け物がぁ!」
「落ち着け!何があったのか、ゆっくりと説明しろ!」
鬼胎に満ちた藤堂の両目は、駆け出してきた捜査官の背後に集中している。大仰な素振りで右の袖を捲し上げると、その場にいる数十人へ聞こえるよう声を張った。
「これは、中にいる化け物から噛まれた傷だ!藤堂さん、全員に銃の使用許可を!許可を願いま......!」
捜査官の声は、そこで甲高い金切声に変わった。
突如、背後から現れたのは、腹を破られた一人の男性だった。
露出した臓器は、地面に垂れ下がり、片目を深く抉られ、頬も無惨な傷跡を晒している。
悲惨な男性の姿は、周囲を阿鼻叫喚の地獄絵図へと一瞬で叩き落とした。
狼狽する藤堂を始め、警察官達は、動くことも出来ず、ただただ、醜悪な男性に喉を食い破られ、声も出せずに片腕だけをあげて、助けを求める同僚が喰われていく様を眺めていることしかできなかった。
嗚咽の音が聞こえる。誰かが、凄惨な光景に堪えきれず、吐き出したのだろう。それが、現れた男性を刺激してしまった。
まるで、動物の威嚇のような通苦の獣声を洩らしつつ、真っ白に濁った双眸を警察官達へ向けると共に、これまでとは違ったどよめきが巻き起こった。
その顔は、様変わりしているものの、テレビや雑誌で見ない日はないほど、ありふれた顔だったからだ。男性がゆっくりとした動静で立ち上がり、藤堂が掠れた声を出した。
「と......戸部......総理......?なんだ?なんで、そんな姿でいきているんだ……?」
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「田辺!なにをしてる!」
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