感染

宇宙人

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第11話

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    中腰の態勢から顔をあげ、再び、マンションを見上げる為に、振り返る寸前、こめかみに硬い感触があり、東は動きを止めた。

「......悪いことは言わない。そのリュックサックを渡して、どこかへ行け」

 声からして三十代ほどだろうか。ちらり、と横目で盗み見れば、東に銃を向けている男の背後に、二人組みが立っていた。
 なんとも僥倖だと、口角を捻りつつ両手を挙げる。

「おっかねえなぁ......よお、この車はアンタラのものか?」

 男は、鼻を鳴らして答えた。

「それが、どうした?」

「こんな時でも、綺麗にしてるなんざ、よっぽど車が好きなんだろうなってよ」

 くっくっ、と喉の奥を響かせた東に男は眉間を狭めた。トリガーに掛かった指に僅かな力がかかる。

「随分な余裕だな?いますぐ、頭を撃ち抜かれたいか?」

「そうすりゃ、銃声で集まってきちまうぞ?」 

「ああ、そうだな。だから......」

 男は言い終わると同時に、銃口を東の右足に向けて発砲した。ガクリ、と項垂れるように膝をつけば、続けざまに顔面を蹴りあげられ、仰向けに倒れると、胸と腹部に四発の弾丸が撃ちこまれた。
 硝煙を揺らせる拳銃は、日本の警察がもつタイプのものだ。ニューナンブM60を腹に差し込みなおし、男は肩をすくねた。

「悪く思うなよ。こっちも生き残りたいんでな」

 二人組のうち、一人が前に出た。

「おい、早いとこ移動するぞ。さっきの爆音もあるし、ここにいたら危険だ」

「ああ、そうだな。その前に......」

 仰向けの東の脇に爪先をいれ、伏臥させる。
    目当てのリュックサックを一息に剥ぎ取ると、ポケットから車の鍵を取り出し、最後の一人である女性に投げた。

「準備だけしてろ。どんだけ役立たずでも、それくらいなら出来るだろ?」

 冷たい口調で、男は言った。
 女性は、両手を胸の前で組んで、こくり、と深く頷く。年齢にして二十代前半といったところだろう。
    瞳に怯えの色を残しつつ、東のリュックサックを探る二人を横目に鍵穴に差し込んだ。

「うわああああああああ!」

 突如、響いた悲鳴に、女性は弾かれるように振り返った。
 東を撃った男の右手から、小指と薬指が失われている。もう一人は、なにが起きたのか理解できていないのか、尻餅をつき、リュックサックへ視線を送っている。

「いっ......いてえ!くそっ!ちくしょう!どうなってんだよぉ!」

 右手を抑えながら、鋭くリュックサックを睨みつけた男は右足をあげ、蹴り飛ばす寸前、降り提がる右足を何者かに捕らえられ息を止めた。
    車の鍵を受けた女、更には、尻餅をついた男すらが驚愕のあまり、声を出せなかった。胸と腹に銃痕を残した東が、伏した状態のまま、左手で男の右足を掴んでいたからだ。
 ほんの数瞬の間は、次の瞬間に絶叫に変わった。二本の指が欠けた男の右足首が、あらぬ方向へねじ曲げられた。
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