291 / 419
第11話
しおりを挟む
中腰の態勢から顔をあげ、再び、マンションを見上げる為に、振り返る寸前、こめかみに硬い感触があり、東は動きを止めた。
「......悪いことは言わない。そのリュックサックを渡して、どこかへ行け」
声からして三十代ほどだろうか。ちらり、と横目で盗み見れば、東に銃を向けている男の背後に、二人組みが立っていた。
なんとも僥倖だと、口角を捻りつつ両手を挙げる。
「おっかねえなぁ......よお、この車はアンタラのものか?」
男は、鼻を鳴らして答えた。
「それが、どうした?」
「こんな時でも、綺麗にしてるなんざ、よっぽど車が好きなんだろうなってよ」
くっくっ、と喉の奥を響かせた東に男は眉間を狭めた。トリガーに掛かった指に僅かな力がかかる。
「随分な余裕だな?いますぐ、頭を撃ち抜かれたいか?」
「そうすりゃ、銃声で集まってきちまうぞ?」
「ああ、そうだな。だから......」
男は言い終わると同時に、銃口を東の右足に向けて発砲した。ガクリ、と項垂れるように膝をつけば、続けざまに顔面を蹴りあげられ、仰向けに倒れると、胸と腹部に四発の弾丸が撃ちこまれた。
硝煙を揺らせる拳銃は、日本の警察がもつタイプのものだ。ニューナンブM60を腹に差し込みなおし、男は肩をすくねた。
「悪く思うなよ。こっちも生き残りたいんでな」
二人組のうち、一人が前に出た。
「おい、早いとこ移動するぞ。さっきの爆音もあるし、ここにいたら危険だ」
「ああ、そうだな。その前に......」
仰向けの東の脇に爪先をいれ、伏臥させる。
目当てのリュックサックを一息に剥ぎ取ると、ポケットから車の鍵を取り出し、最後の一人である女性に投げた。
「準備だけしてろ。どんだけ役立たずでも、それくらいなら出来るだろ?」
冷たい口調で、男は言った。
女性は、両手を胸の前で組んで、こくり、と深く頷く。年齢にして二十代前半といったところだろう。
瞳に怯えの色を残しつつ、東のリュックサックを探る二人を横目に鍵穴に差し込んだ。
「うわああああああああ!」
突如、響いた悲鳴に、女性は弾かれるように振り返った。
東を撃った男の右手から、小指と薬指が失われている。もう一人は、なにが起きたのか理解できていないのか、尻餅をつき、リュックサックへ視線を送っている。
「いっ......いてえ!くそっ!ちくしょう!どうなってんだよぉ!」
右手を抑えながら、鋭くリュックサックを睨みつけた男は右足をあげ、蹴り飛ばす寸前、降り提がる右足を何者かに捕らえられ息を止めた。
車の鍵を受けた女、更には、尻餅をついた男すらが驚愕のあまり、声を出せなかった。胸と腹に銃痕を残した東が、伏した状態のまま、左手で男の右足を掴んでいたからだ。
ほんの数瞬の間は、次の瞬間に絶叫に変わった。二本の指が欠けた男の右足首が、あらぬ方向へねじ曲げられた。
「......悪いことは言わない。そのリュックサックを渡して、どこかへ行け」
声からして三十代ほどだろうか。ちらり、と横目で盗み見れば、東に銃を向けている男の背後に、二人組みが立っていた。
なんとも僥倖だと、口角を捻りつつ両手を挙げる。
「おっかねえなぁ......よお、この車はアンタラのものか?」
男は、鼻を鳴らして答えた。
「それが、どうした?」
「こんな時でも、綺麗にしてるなんざ、よっぽど車が好きなんだろうなってよ」
くっくっ、と喉の奥を響かせた東に男は眉間を狭めた。トリガーに掛かった指に僅かな力がかかる。
「随分な余裕だな?いますぐ、頭を撃ち抜かれたいか?」
「そうすりゃ、銃声で集まってきちまうぞ?」
「ああ、そうだな。だから......」
男は言い終わると同時に、銃口を東の右足に向けて発砲した。ガクリ、と項垂れるように膝をつけば、続けざまに顔面を蹴りあげられ、仰向けに倒れると、胸と腹部に四発の弾丸が撃ちこまれた。
硝煙を揺らせる拳銃は、日本の警察がもつタイプのものだ。ニューナンブM60を腹に差し込みなおし、男は肩をすくねた。
「悪く思うなよ。こっちも生き残りたいんでな」
二人組のうち、一人が前に出た。
「おい、早いとこ移動するぞ。さっきの爆音もあるし、ここにいたら危険だ」
「ああ、そうだな。その前に......」
仰向けの東の脇に爪先をいれ、伏臥させる。
目当てのリュックサックを一息に剥ぎ取ると、ポケットから車の鍵を取り出し、最後の一人である女性に投げた。
「準備だけしてろ。どんだけ役立たずでも、それくらいなら出来るだろ?」
冷たい口調で、男は言った。
女性は、両手を胸の前で組んで、こくり、と深く頷く。年齢にして二十代前半といったところだろう。
瞳に怯えの色を残しつつ、東のリュックサックを探る二人を横目に鍵穴に差し込んだ。
「うわああああああああ!」
突如、響いた悲鳴に、女性は弾かれるように振り返った。
東を撃った男の右手から、小指と薬指が失われている。もう一人は、なにが起きたのか理解できていないのか、尻餅をつき、リュックサックへ視線を送っている。
「いっ......いてえ!くそっ!ちくしょう!どうなってんだよぉ!」
右手を抑えながら、鋭くリュックサックを睨みつけた男は右足をあげ、蹴り飛ばす寸前、降り提がる右足を何者かに捕らえられ息を止めた。
車の鍵を受けた女、更には、尻餅をついた男すらが驚愕のあまり、声を出せなかった。胸と腹に銃痕を残した東が、伏した状態のまま、左手で男の右足を掴んでいたからだ。
ほんの数瞬の間は、次の瞬間に絶叫に変わった。二本の指が欠けた男の右足首が、あらぬ方向へねじ曲げられた。
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2026/1/14:『でんしれんじ』の章を追加。2026/1/21の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/13:『こえ』の章を追加。2026/1/20の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/12:『あけてはいけない』の章を追加。2026/1/19の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/11:『みきさー』の章を追加。2026/1/18の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/10:『つかまれる』の章を追加。2026/1/17の朝8時頃より公開開始予定。
2026/1/9:『ゆうじんのかお』の章を追加。2026/1/16の朝4時頃より公開開始予定。
2026/1/8:『ついてきたもの』の章を追加。2026/1/15の朝4時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる