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第23話
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「浜岡さん、献花台の件と度々の支援、ありがとうございます。本当にどうお返しすれば良いのか……」
浜岡は首を振った。
「それは、こちらだけじゃない。ここには来れていない斉藤さんを始め、様々な人の助力があったからだよ。それに見返りなんか求めていないよ。もう充分に頂いているからね」
眉をひそめた浩太は続けざまに首を傾げ、俺達がなにを、と呟く。浜岡は満足そうに頬を弛ませた。
「岡島君、人間という二文字はとても裕福な文字なんだ。どういう意味だと思う?」
まるで、子供への謎かけのように浜岡が尋ねる。その楽しそうな表情は崩れることなく浩太を真っ直ぐに見据える。
柔和な口調とは真逆の意思を宿した双眸に、浩太も本気で熟考したが、やがて、お手上げだと諦念の息をついた。どうにも、浜岡を相手にしていると、いろいろ深く考えてしまい溝に嵌まってしまう。それも浜岡の手の上で転がされているようだが、答えが出ない以上は仕方がない。少しして、浜岡が喋りだす。
「人はね、間に立つことができるから人間なんだよ。今の世の中、人と人の間に立てる人物はそういない。けれど、君達を九州地方から救う為に、こちらの人間は確かに繋がった。繋げることが出きるのは間に立っている人だけ、離れた両手を繋げられるのは、間にいる人だけだ。君達はこちら側を繋いでくれた、それだけで充分だよ」
浩太の心に浜岡の声が、すとんと落ちた。その後、破顔した浜岡は、亜里沙に持参したお菓子を手渡している。
そうだ、人間は繋らなければ意味がない。それが絆というものだ。
だとすれば、浩太や達也、真一、裕介、彰一、亜里沙、加奈子、全員が強く結びついていた。数々の犠牲になった人物達とも、歪であろうと繋がっていた。繋がること、繋げていくこと、それこそが人間なのだ。
浩太は胸の位置を強く掴み、小さな声で囁く。
「俺達は……誰かと繋がっている限り……人間なんだ」
墓前にいた達也が香炉に、それぞれ煙草を供えて浩太の隣に並んだ。その顔付きは九州地方にいたときよりも晴れている。
「なんの話しをしてたんだ?」
「ああ……人間って素晴らしいものなんだって話しだよ」
達也は笑って言う。
「そうだな。その通りだ……だからこそ、俺達は生きていけるんだからな。真一や彰一の分も」
二人は互いに碑石へと拳を掲げた。見えない手が二人の拳に当たった気がする。
亜里沙が花立を彩り、裕介が蝋燭の準備を終え線香を立てていき、全員で手を合わせる。こうして繋がりを保っていれば犠牲になった者でも人間でいられる。
新たな煙草を香炉にさしていると、やがて、久し振りに揃ったということもあり、食事に行こうと田辺が提案した。勿論、異論はない。六人が墓地を去っていく中、浩太はもう一度、碑石を仰ぎ、香炉へと目線を下げる。
さきほど香炉にさした二本の煙草は、まるで誰かが吸ったように、半分ほど灰になっていた。
浩太は、頬を弛ませ肩を揺らし、踵を返すと背面にある二つの墓石に吸い込ませるように言った。
「またくるからよ。大丈夫、絆がある限り、繋がっている限り、俺達の未来は明るいさ」
ざあっ、と吹き抜けた風に混ざった緑の匂いを嗅ぎ、浩太は六人の待つ日常へと歩きだした。
浜岡は首を振った。
「それは、こちらだけじゃない。ここには来れていない斉藤さんを始め、様々な人の助力があったからだよ。それに見返りなんか求めていないよ。もう充分に頂いているからね」
眉をひそめた浩太は続けざまに首を傾げ、俺達がなにを、と呟く。浜岡は満足そうに頬を弛ませた。
「岡島君、人間という二文字はとても裕福な文字なんだ。どういう意味だと思う?」
まるで、子供への謎かけのように浜岡が尋ねる。その楽しそうな表情は崩れることなく浩太を真っ直ぐに見据える。
柔和な口調とは真逆の意思を宿した双眸に、浩太も本気で熟考したが、やがて、お手上げだと諦念の息をついた。どうにも、浜岡を相手にしていると、いろいろ深く考えてしまい溝に嵌まってしまう。それも浜岡の手の上で転がされているようだが、答えが出ない以上は仕方がない。少しして、浜岡が喋りだす。
「人はね、間に立つことができるから人間なんだよ。今の世の中、人と人の間に立てる人物はそういない。けれど、君達を九州地方から救う為に、こちらの人間は確かに繋がった。繋げることが出きるのは間に立っている人だけ、離れた両手を繋げられるのは、間にいる人だけだ。君達はこちら側を繋いでくれた、それだけで充分だよ」
浩太の心に浜岡の声が、すとんと落ちた。その後、破顔した浜岡は、亜里沙に持参したお菓子を手渡している。
そうだ、人間は繋らなければ意味がない。それが絆というものだ。
だとすれば、浩太や達也、真一、裕介、彰一、亜里沙、加奈子、全員が強く結びついていた。数々の犠牲になった人物達とも、歪であろうと繋がっていた。繋がること、繋げていくこと、それこそが人間なのだ。
浩太は胸の位置を強く掴み、小さな声で囁く。
「俺達は……誰かと繋がっている限り……人間なんだ」
墓前にいた達也が香炉に、それぞれ煙草を供えて浩太の隣に並んだ。その顔付きは九州地方にいたときよりも晴れている。
「なんの話しをしてたんだ?」
「ああ……人間って素晴らしいものなんだって話しだよ」
達也は笑って言う。
「そうだな。その通りだ……だからこそ、俺達は生きていけるんだからな。真一や彰一の分も」
二人は互いに碑石へと拳を掲げた。見えない手が二人の拳に当たった気がする。
亜里沙が花立を彩り、裕介が蝋燭の準備を終え線香を立てていき、全員で手を合わせる。こうして繋がりを保っていれば犠牲になった者でも人間でいられる。
新たな煙草を香炉にさしていると、やがて、久し振りに揃ったということもあり、食事に行こうと田辺が提案した。勿論、異論はない。六人が墓地を去っていく中、浩太はもう一度、碑石を仰ぎ、香炉へと目線を下げる。
さきほど香炉にさした二本の煙草は、まるで誰かが吸ったように、半分ほど灰になっていた。
浩太は、頬を弛ませ肩を揺らし、踵を返すと背面にある二つの墓石に吸い込ませるように言った。
「またくるからよ。大丈夫、絆がある限り、繋がっている限り、俺達の未来は明るいさ」
ざあっ、と吹き抜けた風に混ざった緑の匂いを嗅ぎ、浩太は六人の待つ日常へと歩きだした。
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