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魔物退治(1)
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「この道を行くのか」
「ええ、地図にはこの道をまっすぐに行くようにって」
「あの不動産屋、とんでもねえ野郎だ」
「どうして?」
「お前、聞いてねえのか?」
「何をですか?」
「出るんだよ」
「何が?」
「何かが」
「嘘でしょ。僕はそんなの信じません。今までも出たとか見たとかいう話はいっぱいありましたが全部嘘でした」
「ここはお前がいた世界とは違うんだ。幽霊もいればアンディッドもいる。魔犬も魔獣もドラゴンも……」
——確かにそうだけど……——
二人が街を出てしばらく歩くと急に人気がなくなった。
やがて森へと入る。
歩を進めるにしたがって鬱蒼としてくる。いかにも何かが出そうな雰囲気だ。
ガルディがいなければ恐怖に慄くところだ。
ふと気になって振り向くと……ガルディの姿がない。
——嘘っ。逃げた?——
と思ったら、はるか遠くの方からとぼとぼとやってくる。
「なにぐずぐず歩いてるんですか。日が暮れちゃいますよ」
ガルディが遠くの方で何か叫んでいる。
「この森には魔物が出るんだって」
「ぼぼぼぼ僕は信じません」
「信じなければ出ないとでも思っているのか? 噂ってのは結構あてになるもんだ。特にこの世界は」
「だったらガルディさんが退治すればいいでしょ。そのための用心棒でしょ」
「退治できるような魔物じゃねえんだ。実体がねえんだ。どんな名刀でも斬れねえんだ」
「とにかく早く来てください」
ガルディが周囲の様子を窺いながらとぼとぼとやってくる。
自慢の尻尾もとぐろを巻いて背中に張り付いている。心理状態は結構わかりやすい。
「しっかりしてください。用心棒なんですから」
「ここに出没する魔物はな、悪霊のような魔物でな、取り憑かれたら最後、気が触れて死んでしまうそうだ」
「気が触れる?……なんで早く言ってくれなかったんですか」
「そんなこと言えるわけねえだろ。俺、ガルディ様だぞ」
何だかちぐはぐだ。
「あの村へ行くには他の人はどうしてるんですか」
「この道は通らねえ。遠回りして別の道を通る。だが、三倍はかかる」
「ではどうするんですか?」
「命が惜しけりゃ戻った方がいい」
「ではそうしましょう。ガルディさんがそれほど恐れるのなら僕ではどうすることもできませんから」
エルンは今来た道を引き返すことにした。
引き返そうとしたとき、ガルディが叫んだ。
「ああ、遅かった。やっぱり噂は本当だった。出やがった」
ガルディはエルンの背後に何かを見つけた。
反応するかのようにエルンは振り返った。
そして見上げた。
巨大な影がエルンとガルディを見下ろしている。
——なるほど、これではガルディがいかに屈強な戦士といえど戦える相手ではないな——
黒い煙のような、影のような形はあるけど無いような……
「どうするんですか?」
「逃げるしかないだろ」
言い終えないうちにガルディは駆け出した。
「やっぱり逃げるんだ……」
早い。
猛獣のような速度でたちまちその背中は小さくなった。
しかし、エルンはなぜか恐怖というものを感じなかった。何か違うと思った。殺意とか悪意とかを一切感じなかった。
エルンは、「これは魔物ではない」とそう感じた。では何か……
寂しさとか悲しみとか、そのような類の強い念が具現化したもののような……
エルンはその巨大な影の前に立つと冷静を装って見上げた。
その影もエルンを見下ろしていた。
視線がぶつかり、しばらく見つめあった。
襲ってくるような気配はない。
——やはりそうだ——
影はエルンを誘うかのようにゆっくりと移動を始めた。
「ええ、地図にはこの道をまっすぐに行くようにって」
「あの不動産屋、とんでもねえ野郎だ」
「どうして?」
「お前、聞いてねえのか?」
「何をですか?」
「出るんだよ」
「何が?」
「何かが」
「嘘でしょ。僕はそんなの信じません。今までも出たとか見たとかいう話はいっぱいありましたが全部嘘でした」
「ここはお前がいた世界とは違うんだ。幽霊もいればアンディッドもいる。魔犬も魔獣もドラゴンも……」
——確かにそうだけど……——
二人が街を出てしばらく歩くと急に人気がなくなった。
やがて森へと入る。
歩を進めるにしたがって鬱蒼としてくる。いかにも何かが出そうな雰囲気だ。
ガルディがいなければ恐怖に慄くところだ。
ふと気になって振り向くと……ガルディの姿がない。
——嘘っ。逃げた?——
と思ったら、はるか遠くの方からとぼとぼとやってくる。
「なにぐずぐず歩いてるんですか。日が暮れちゃいますよ」
ガルディが遠くの方で何か叫んでいる。
「この森には魔物が出るんだって」
「ぼぼぼぼ僕は信じません」
「信じなければ出ないとでも思っているのか? 噂ってのは結構あてになるもんだ。特にこの世界は」
「だったらガルディさんが退治すればいいでしょ。そのための用心棒でしょ」
「退治できるような魔物じゃねえんだ。実体がねえんだ。どんな名刀でも斬れねえんだ」
「とにかく早く来てください」
ガルディが周囲の様子を窺いながらとぼとぼとやってくる。
自慢の尻尾もとぐろを巻いて背中に張り付いている。心理状態は結構わかりやすい。
「しっかりしてください。用心棒なんですから」
「ここに出没する魔物はな、悪霊のような魔物でな、取り憑かれたら最後、気が触れて死んでしまうそうだ」
「気が触れる?……なんで早く言ってくれなかったんですか」
「そんなこと言えるわけねえだろ。俺、ガルディ様だぞ」
何だかちぐはぐだ。
「あの村へ行くには他の人はどうしてるんですか」
「この道は通らねえ。遠回りして別の道を通る。だが、三倍はかかる」
「ではどうするんですか?」
「命が惜しけりゃ戻った方がいい」
「ではそうしましょう。ガルディさんがそれほど恐れるのなら僕ではどうすることもできませんから」
エルンは今来た道を引き返すことにした。
引き返そうとしたとき、ガルディが叫んだ。
「ああ、遅かった。やっぱり噂は本当だった。出やがった」
ガルディはエルンの背後に何かを見つけた。
反応するかのようにエルンは振り返った。
そして見上げた。
巨大な影がエルンとガルディを見下ろしている。
——なるほど、これではガルディがいかに屈強な戦士といえど戦える相手ではないな——
黒い煙のような、影のような形はあるけど無いような……
「どうするんですか?」
「逃げるしかないだろ」
言い終えないうちにガルディは駆け出した。
「やっぱり逃げるんだ……」
早い。
猛獣のような速度でたちまちその背中は小さくなった。
しかし、エルンはなぜか恐怖というものを感じなかった。何か違うと思った。殺意とか悪意とかを一切感じなかった。
エルンは、「これは魔物ではない」とそう感じた。では何か……
寂しさとか悲しみとか、そのような類の強い念が具現化したもののような……
エルンはその巨大な影の前に立つと冷静を装って見上げた。
その影もエルンを見下ろしていた。
視線がぶつかり、しばらく見つめあった。
襲ってくるような気配はない。
——やはりそうだ——
影はエルンを誘うかのようにゆっくりと移動を始めた。
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