神様から転生スキルとして鑑定能力とリペア能力を授けられた理由

瀬乃一空

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決戦前夜(1)

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 翌朝、宿を出ると徒歩でグリムヴァルドの森へと向かった。
 馬車に乗っていると目立ちやすいことと、そこを襲撃されたらひとたまりもないことから馬車を降りて距離を取り、歩いて森へ入る。

 二時間ほどでフィルデンが見える丘へと到着。
 岩陰に隠れるとエルンが村の様子を伺った。
「オークが多いですね。しかも組織的に動いてますね」
 オークは思考能力が低く、感情が乏しいため組織的に動くことはないと考えられている。
 しかし、見る限り役割が分担されているように見えた。
「数は?」
 ガルディがエルンの頭越しに見た。
「正確な数はわかりませんが、魔力量から換算すると五十から六十ってところでしょうか。でかいのが多ければ数は少なくなります」
「だったら、村ごと吹き飛ばしてしまえば手っ取り早いだろ」
「そんなことできません……だいいち、村人が残っているかもしれないじゃないですか」
「多少の犠牲は已むを得ん」
「ダメです」
「そうだよな。お前がそんなことに賛成するわけねえよな」とガルディは少々不満気だ。
「まず、村の様子を詳しく知りたいですね」
「じゃあ俺が行く」とガルディ。
「いいえ、私が行くわ。見てて。身を隠す魔法も得意なんだから」とアル。
「バヒムが震えているぞ。何しに来たんだ。だから言ったろ。こいつはダメだって」
 ガルディがバヒムを見て呆れた。
「じゃあバヒムさんに行ってもらいましょう」
「こんな奴で大丈夫か?」
「様子を見てくるだけです。何かあったらみんなで攻め込みましょう」
「おい、バヒムしっかりしろ。俺たちが付いてる。何かあったら骨は拾ってやる」
「へげtgホwんぃ∇どrjgぉごs。おpぐぉえrr……」
 もはや言葉にもならないバヒム。
「そうだ、僕が魔法を掛けてあげます。覚えたばかりの魔法ですが、とっておきです」
 エルンはバヒムの後ろに回ると背中に手を当てた。
「気持ちを穏やかにして、すべてを受け入れてください」
 そして魔力を込める
 するとバヒムは、背中から体中に熱いものが湧いて全身へと広がるのがわかってか目が輝き始めた。
 さらに丸まっていた背中が反り返る。姿勢までよくなった。
 凛々しくなったバヒム。
「うわー……なんだか勇気が湧いてくる気分だ。力が漲ってくるぜ。……エルン、お前って凄い奴だ。やっぱお前は俺の神様だぜ」 
 言葉使いまで変わった。
「どういたしまして。じゃあよろしくね。無理しなくていいから。見てくるだけでいいよ」
「ふん。任せときな。すべて俺が退治してやるぜ。生まれ変わったようだぜ」
 バヒムは急に強気になり、村へ向かって進んでいった。
「あのでかい図体で隠れることなんかできるのか」
「別に見つかったっていいですよ。どうせ殲滅するんだから」
「なるほど」
 ガルディが腕を組んで納得した。
 当然のようにバヒムは見つかって騒ぎとなった。
 村に散らばっていたオークが騒ぎに気付いて集まってきた。 
 しかし、バヒムはたちまちオークをなぎ倒した。
「あの巨体で、あの動きは何だ……すげーぞ。どんな魔法を使ったんだ。エルン」
「魔法なんて掛けてないですよ。暗示を掛けただけですよ。バヒムは世界一強い戦士だ。バヒムに敵う魔族なんていないって。ただそれだけです。内緒ですよ」
 しかし、オークの数は多い。
「俺一人では……」とバヒムは後方に叫んだ。
 二十匹ほど倒したが、次々に集まってきて四十匹以上の集団となった。
「バヒム、離れて」
 バヒムがエルンの声に反応して近くの岩陰に隠れた。
 エルンは立ち上がると、両手を突き出した。
 そしてブランド・ブリッツを発動する。
 閃光とともに光球はオークの集団へと放たれた。
 ドーーーーーーーン……
 命中した瞬間、地響きとともに吹き飛んだ。
 ほとんどのオークは死滅したが、わずかに生き残ったものは悲鳴を上げて村から逃げ出した。
 エルンの攻撃魔法を始めてみたバヒムも腰を抜かした。
 こんな魔法使いから金を奪い取ろうとしたんだと思い、バヒムの背筋に寒気が走った。
 だが、その反面、仲間になれてよかったと心から思った。
「エルンの魔法のおかげだ。魔法ってすごい。俺みたいなものでも立派な戦士になれる。この魔法はいつまで利いているんだ」
「この魔法は一生解けないんですよ。覚えておいてねバヒム」
「本当か? 俺は強くなったんだ。ガルディにだって負けねえ」
 バヒムは口調から目つきまで変わって別人だ。
「でも調子の乗り過ぎはダメだよ」

 エルンたちは村を捜索することにした。
「魔力の反応はないけど、まだ村に残ってるオークがいるかもしれないから気を付けてね」
 三十軒ほどある家を隈なく捜索したが幸いオークの姿はなかった。
 しかし、村人の姿もなかった。どこかへと連れ去られたようだ。
「オークが人間を奴隷とすることは考えられん。自分たちより知能の高いものを使役に使うことは無理だ。つまり、それを操っている奴がこの近くにいることは明らかだ」
「ガルディさんの予想は正しかったわけですね」
「奴ら、村の人たちをどこかにひとまとめにして自国へ送る気だ。そこで奴隷として働かせる気だ。敵国に対しての常套手段だ」
「どこかの洞窟よね、きっと。この先にはたくさんあるわよ」
 アルが言う。
「どこか見当はつかない? アル」
「わかるわけないでしょ」
「この辺のこと詳しいんじゃないの」
「詳しいわけないでしょ」
 アルはしゃあしゃあと言ってのけた。
「でもあの時……」
「そうだ、さっきのオークは、きっと仲間のところへ戻るはずよ。追いかけましょ」
 アルは話をはぐらかす。
「それが最良かもしれん」
 ガルディが同意した。
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