どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中

文字の大きさ
7 / 39
Ⅰ 両親が英雄だなんて聞いてない

1-6.

しおりを挟む
 一年生が各クラスごとに別れてぞろぞろと学園内見学へ。クラスはAからFまで六つ。さっきのユスティの話からすれば、Fは一番下ってことになるな。
 俺……筆記試験を受けてないのに、インチキじゃん。チャッポも気は弱いけど、きっと勉学は優秀なんだろうな。で、今腕にしがみついてくるミルマリは……やめておこう。女子には秘密が多いのだ。

 学舎外の施設を順番に見ていってるんだが、かなり広くて結構歩く。
 チャッポはこの涼しい春先なのにもう汗をかいている。あちこち細かく目を光らせながら歩いてるせいだろう。さすがだが……いかんな。鍛えてやりたくなる。

「大講堂もそうだし、かなり巨大な建物が多いから、維持費が大変そうだね」
「そういう商い視点、好きだな。特殊な魔素の波長もあちこちから出てるし。設備費自体も相当だろう」
「ね、ケイって、ひょっとして空気中の魔素が〝読める〟の?」
「まあ、肌感ぐらいには」
「すごっ。じゃあさ、子供のときの魔術選択って、何を採ったの」
「何も採ってない。俺、魔術を使えないから」
「「え゛?」」

 チャッポとミルマリが絶句したところで、アガ先生が、円形状の巨大な施設の前で止まった。
  
「ここが大演武場だ。お前らが試験を受けた演習場は授業用。こっちは主に『武技王戦』や『魔術演武会』など、来賓に向けたイベントを行う場所になる」

 来賓向け……ということは、公式に技を競いあうのか。15歳から大人の部になるっておとんが言ってたから、この学園での評価が実質の王国ランクと思っていいだろう。

「はーい先生っ。中が見たいです!」
「うん……ミルマリか。見学の時間が押している。今日はお預けだな」
「ええ~、ここがいっちばん学園内ですごいところなのに」

 確かに。いろいろ施設を見てるけど、ここは妙に複雑な魔素の構成を感じる。
 アガ先生、つるつる頭を撫でながらちょっと思考タイム。頭にお日さまが反射している。

「ふむ。ここはお前たちの日頃の成果を発表する舞台でもあるしな。よし、手早くいくぞ」

 やいやいぞろぞろ、少し薄暗い、参加者用の通用道を通っていく。この辺が競技者の控室とかになってるみたいだな。
 先に差し込んでいる光のところへ出ると……そこには、広大で幾何学的に仕切られた、石造りの舞台が整っていた。
 
「……おお、でかい。これはすごいな」
「でっしょー。学園長おじいちゃん自慢の大演武場。さっき先生が言ってた二大大会になると、各国の王族も観に来たりするんだよっ」

 なるほど、やったら複雑に飛び交う魔素の原因は、主に防護とかセキュリティ関係ってことだな。

「アガ先生。少し演武を試したいです」

 青みを帯びたロン毛の子が、何やら物申している。

「む、グリオンか。まったく、今年の一年は要望が多いな。お前、得物を持っていないのに何をやるつもりなんだ」
「槍ならありますよ、ここに」

 グリオンが右手を振り出すと、そこにぶわわっと青い槍が伸びた。
 
「ふ~ん……よし、いいだろう。オレも『北方槍技』は興味があるしな。やってみろ」
「うお、すっげえ。もう形現マテリアルできんのかよ」
「さっすが四大公爵の一角、ゲンフ家。それに……イケメン~」

 アガ先生さっきから押しに弱すぎだな。
 女子と男子で質が違うざわめきを覚えつつ。形現マテリアルかあ。う~ん、確かに面白いんだけど……

「実戦向きじゃないんだよな、あれって」

 ついぽろっと口に出してしまったのを、グリオンの視線に捉えられた。

「先生。つきましては、演武の相手をそこの彼にお願いしたいんですが」

 槍先をすっと俺に向けるグリオン。むう、初対面の人間を武器で指し示すとは。この四大公爵家のやつらってみんな失礼だよな。いいとこの子なのに、普段は何を教わってるんだ。
 
「おいおい、それは認められん。今は安全域セーフフィールドを展開していないんだ」
「先生、俺なら構いませんよ。どうせ当たらないから、安全もへったくれもないし」

 グリオンの端正な顔が一瞬ゆがむ。

「随分な自信だね。じゃあ、やろうかっ」

 突然ジャンプして演武台へ。身軽そう。ちょっと期待できるかもしれない。とりあえずやらせてみて判断するか。
 しかしギルレイにしろ、相手の力量を測る能力が無さ過ぎな気がする。こういうのは技術じゃなくて肌感だからなんともいえないが。チャッポを1としたらこのグリオンは12ぐらいかな。俺は、そうだな───

「君、ギルレイを学園から追い払ったと聞いたけど」
 
 舞台に上がるなり、身に覚えのないことを言われる。
 
「いいや。勝手に走り去っていったのは見たが。それより今朝がたの話なのに、よく知ってるな」
「彼は四大公爵家で唯一の同期だからね。逐一行動は見せてもらっている」
「そりゃまあ、お熱いことで」
「何か変な手品で驚かせたらしいね。学園にもそうやって入学したのかな」
「もういいから、その槍で突いてこいよ。そしたらわかるから」
 
 踏み込み一番からの連続突き。開始合図のマナーすら無いとは。つくづくなってないなあ。
 やっぱりまったく大したことが無い。適当にかわしてたら、だんだんグリオンの顔に余裕がなくなって来た。
 
「目はっ、良いみたいだねっ」
「毎日ブルーベリーを食べてるから」
戯言ざれごとをっ」

 連突を引き、一旦後ろへ下がる。

「はあ、はあ……なるほど。不遜な態度を取るだけあるね。これほどの人間がいるなんて。君って、他所の国から来たのかい?」
「おとんもおかんもれっきとしたこの国の……ん~まあ微妙なとこあるけど。ただまあ、こないだまで山に住んでたから」
「山だとっ」
「いいから早く終わろうぜ。俺、次の見学に行きたいんだよ」
「くそっ、この僕が、こんな山猿にっ……北方の氷獄、今こそ我が槍先に凍気を呼び起こさんっ……」

 なんかまたブツブツ言い始めた。本日二回目。

「……貫けっ、ゲンフ三型、【凍結蒼牙】っっ!」

 結構大きな氷つぶてが数個束になって飛んできた。無意味な武技を習ってるなあ。流行か。
 適当に手で払って、

「んなあっ!?」

 さっと距離を詰めて槍を奪い取り、目の前で叩き折る。はい、戦意喪失。
 膝を折り、打ちひしがれるグリオン。

「そ、そんなバカな……形現マテリアルは魔術でしか打ち消せないはずだ。それを、素手で折るなんてっ」
「固定観念にとらわれすぎじゃないか。魔術だろうが鉄槍だろうが、それぞれに〝折り方〟があるだけだ。教えないけどな」

 地面を見つめ続ける彼を放って、俺も真似をして皆のところへジャンプする。

「……っと。お疲れさまでした~。じゃあアガ先生。行きましょうか」
「う、うむ。おい、全員先に出ていろ。オレはグリオンを連れて行く」

 しばらく皆しいんとして、動かずにいたが……突然せきを切ったようにわあっと俺を取り囲んだ。

「ちょっとお前、すごすぎじゃないのかっ。グリオンってジュニア槍技王国杯で連年の優勝者なんだぜっ」
「そうなんだ。そっちのほうがすごいんじゃないか」
「素手って……武技は拳なのか」
「いや、一番得意なのは剣」
 
 チャッポとミルマリも大興奮。
 
「すごかったねケイ君。あの流れるような体さばき……僕、見惚れちゃったよ」 
「めちゃくちゃカッコよかった! ね、だから早く付き合っちゃおうよ」
「〝だから〟って流れには乗れんが、褒めてくれてありがとう」

 やいやいと賑やかされつつ、通用道を戻っていく。
 ちょっとムキになってしまって、いかんなあ。おとんがいたら絶対説教だったろうな。器量が足りんって。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ダンジョンに行くことができるようになったが、職業が強すぎた

ひまなひと
ファンタジー
主人公がダンジョンに潜り、ステータスを強化し、強くなることを目指す物語である。 今の所、170話近くあります。 (修正していないものは1600です)

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

処理中です...