どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中

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Ⅰ 両親が英雄だなんて聞いてない

1-12.

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 学園の休校日である今日。ミルマリの御邸での昼食に招待された。
 厳密にはお父上であるピオネム伯爵からのお招きだ。学園長の嫡男で、爵位を引き継いでいるという。
 彼女がやたらと話すので興味を持ったらしいが……微妙に重いのでチャッポも一緒にと誘ったものの、商会の用事でダメだった。

 こんな時のために、バスチァンに連れられあつらえた黒の上下にビシッと身を包み、ドメに髪をオールバックにしてもらい大人な風体に仕上げ完了。ピオネム邸の玄関を抜け、執事の案内で中へ入る。
 
 初めての貴族邸は、思ったより華美な感じが抑えめで、趣味の良さを感じた。こないだまでログハウス住まいだった俺が何を言ってるんだって感じだが。

「ケイっ。今日は来てくれてありがとうっ。その礼服、めっちゃキマッてるね」

 応接室ではミルマリが笑顔で迎えてくれた。
 
「君のドレスほどじゃないよ。春らしいパステルピンクがとても素敵だ」
「むふんっ、嬉しい~。今日こそお返事をもらえたりしてっ」
「まあそれは追い追いに」

 軽く褒め合うのは社交のたしなみ。この辺はバスチァンに鍛えられてるから、初めてでもすんなり出る。
 
 しばし学園のことで談笑。ミルマリがメインでやってる棍術の部会のことをあれこれ聞く。流気も早々に馴染んだこともあってか、振り回す棍がいっそう軽く感じるとか。役に立っているようで、自分のことのように嬉しい。

 ほどなくして彼女のパパ───ピオネム伯爵が現れた。立ち姿からして、ただ者ではない落ち着きと威厳を感じさせる。同年代であろうおとんと比べてしまい、ちょっと笑ってしまう。

「ケイ君、ようこそわが邸へ。いつも娘と仲良くしてもらっていると聞き、ぜひ顔を合わせておこうと思ってな」
「ご令嬢には学園で懇意にしていただいております。本日はお招きに与り、恐悦の至りでございます」
「……へえ~。ケイってそんな堅い挨拶もできるんだ。すご~」
「一応の社交は仕込まれてるんでね。まま付け焼刃だが」

 伯爵は俺の挨拶を受け、上から下まで見定めるように一瞥いちべつした。

「礼服の仕立も良いな。それは王都の店かね」
「ご慧眼けいがんに驚きます。『イラーテ礼装』にて誂えました」
「ほう。あそこは王都古参貴族の御用達ごようたしなのだが……ん、どうやら準備が整ったようだな。続きは昼食をとりながら伺おう」

 ダイニングルームへと向かう中、ミルマリがこそっと声をかけてきた。

「何だか今日、別人みたいじゃない。ほんっと引き出し多いわねケイって」
「まあ、どれも君が見た通りの俺だから、それでいいんじゃないか」
「おじいちゃんもパパも、何か知ってる感じなのがしゃくなのよね~」
 
 昼食の席では伯爵夫人も同席。ゆったりとした気品を感じる貴族女性。おかんよりこちらのほうが断然聖姫っぽい気がする。っていうか……ミルマリってどうも学園長ジマさんに似ているみたいだな。

 和やかに進む昼食タイム。料理はどれも贅が尽くされ、それなりに美味しいものの、俺には普通。バスチァン基準だから仕方がないが。それでも「ソースの香草づかいが素晴らしいですね」と利いた風なことをサラっと挟んでいく。
 
 話題は、主に学園でのミルマリの様子を訊かれる感じ。あまり俺のことを根掘り葉掘りされず、昼食もティータイムへ。気が楽だなあと思っていたところに、その質問はバチっと入ってきた。

「ところでケイ。君は家名も持たず、平民でも特別枠のかたちで入学したとから聞いて居るのだが。ご両親は何故、家名を取らなかったのだね。あれほどの〝功績〟を持ちながら」

 きょとんとするミルマリ。ここでバラしちゃうのか、彼女に。
 俺は慎重に言葉を選んだ。

「お恥ずかしながら。それについて知ったのは、学園に入ってからなんです。山暮らしの中で、二人がその事を話したのは一度も無く」
「ふむ……望むほどに、手に入らないものなど無いはずが。随分と無欲で慎ましい営みだったのだな。それこそが英雄たり得る資格ということか」
「どうでしょう。自分にとっての両親は、あそこで生き生きとしていた姿が全てですから」

 伯爵は夫人と顔を見合わせ、少し神妙な顔をしている。俺なりに想うことはあるが、ここで口にすることじゃない。ただ、この席においてはミルマリに少し同情した。
 
 少しお茶を濁すように談笑したところで、ミルマリが立ち上がった。
 
「ねえ、中庭のお散歩をしない? いまチューリップが見ごろなんだよ」
「いいね。では伯爵、ひとまず失礼いたします」
「うむ、ゆっくりしていくといい」

 
 中庭は八つの区画に仕切られていて、その半分に色とりどりのチューリップが咲き競っていた。

「いろんな色があるんだな。森では見たことがなかったが……この黄色なんて鮮やかでいい」
「あたしはそれ嫌い。やっぱり赤が好き」
(花の色ぐらいで強く言うのは、何となく「らしくない」な)

 パステルピンクのドレスが中庭を背景に一層色鮮やかに映っている。だがミルマリは、花を見ているのかわからない、散漫な足取りで歩いている。

「あたしにも、教えて欲しいな、ケイのご両親のこと」

 ぽつりとつぶやくように言う。学園長には一応釘を刺されていたが、むしろこうなると黙っているのが不自然だな。

「……実は俺も学園長から聞いて初めて知ったんだが。おとんは『剣帝』、おかんは『聖姫』と呼ばれてるって」
「そっ、それ本当なのっ。救国の英雄で、歴史書にも書かれてる人たちじゃないっ」
「みたいだな。だがさっきも話したように、俺にとっては英雄でも貴族でもない、ただのおとんでおかんさ」

 一瞬はかなり驚いたものの、すぐに憂い顔になった。

「ケイってすごいとは思ってたけど、何だか急に遠い人になっちゃったみたい」
「不思議なことを言うな。今もこうして、一番近いところに居るじゃないか」
「もう、そういうんじゃなくって。強いよ、すっごく強い。心が」
「どうだろ。子供の時はおとんにしごかれ過ぎて、頭にハゲが出来たこともあるぞ。それをおかんが聖魔術で治してくれたり」
「あははははっ。何それっ、おっかしぃ~」

 めっちゃツボって笑って、目尻の涙を抑えている。こんなネタがウケるとは思わなかったが。
 ミルマリはくっと青空を見上げると、俺に真っすぐと強い目を向けた。

「あたし、ケイが好き」
「俺も好きだぞ。付き合わんが」
「そのズレたとこも含めてね。だけど、絶対修正してやるんだから」

 おとんの言うところの、武人の決意みたいな目をしてるな。ちょっとドキッとする。

「『ケイ部』も毎日出る。おじいちゃんも言ってたように。まだまだ先があるんでしょ」
「俺のはスタートダッシュだからな。面白く続けるには皆のアイデアが不可欠だ。掛け持ち大変だろうが、頼むぞ」
「むふんっ、まかせて。あたしも魔武両道に励んで、もっといい女になってみせるから」
「じゃあ俺も、いいおとこにならないとな」

 なんだかおかしくなって、二人で笑い合った。
 

 思ったより有意義な数時間はあっという間に過ぎて。用意してもらった帰りの馬車に乗り込むとき、ご家族総出で見送ってくれた。

「ピオネム伯爵、今日はありがとうございました」
「次はディナーに招待しよう。父も所用で外したのを残念がっていた」
「楽しみにしています」
「これからも、娘のよきクラスメートであることを願っている」
 
 俺は無言でうなずき、伯爵が差し出す手を握り返した。

「じゃあねケイ。また明日、学園で」
 
 馬車の窓ごしに手を振る。これで今日のミッションは終わりだ。
 
 マナー的にも問題はない。これなら〝あっち〟も誠心誠意で臨めば大丈夫だろう。
 バタバタしっぱなしだったが、そろそろ、このくすぶってるものにケリをつけないと。
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