どうやら俺は、魔王を倒した英雄の両親より強いらしい。~オリハルコンを斬ってくっつけたら試験無しで王立学園に入学、いろいろやらかすハメに

試運転中

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Ⅰ 両親が英雄だなんて聞いてない

1-15.

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 演習場での決闘から2日後。セラフィナ王女から〝面会〟のお知らせ書状が届いた。
 王城からの伝令騎士がやってきたときは何事かと思ったが、友人枠でのお誘いとあってだいぶ気が楽になった。

 そして当日。バスチァンとドメに気合のセッティングを施してもらい、お迎えの馬車で登城。うちの邸ってほんっと学園と王城の真ん中ぐらいにあるんだな。作為的に感じるのは気のせいか。

 真昼に星空が降りてきたような、煌々と照らすシャンデリアの下。騎士に従い応接の間へ案内される。
 
「ようこそ、レジクシオン城へ。お会いするのを楽しみにしておりました」

 セラフィナがしずしずと現れた。爽やかなミントグリーンのドレスが、瞳の色によく合っている。

「そう言ってもらえて嬉しいです……でいいのかな、今日は」
「ふふ、面会ですからね。心得があるようで何よりです」

 お茶を用意してくれたということで客間へ。いつも二人の護衛騎士が離れる様子のないことから、「二人きりで」が事実上無理な相手だと、やっと理解する。

 そんながっつりガードを背景に。客間で香りのよい紅茶と、カラフルで香ばしい、謎の丸い焼き菓子にまずは舌鼓。

「これ、美味しいですね。俺は甘いものが苦手なんですが、ちょっと別格かも。このさっくりもっちりした独特の食感がクセになる」
「ティスリカ菓子店の『マカロン』です。王都では大変人気で、なかなか手に入らないのですけれど、今日は運がよく」

 どこで売ってるのか気になってみれば、クラスメートのクッカの実家だ。そういえばこの菓子名、どっかで聞いたことがあるんだが……まあおいといて、早速本題へ。

「こんな席で……いや、こんな席だからこそ率直に。ずっと謝罪をしようと思っていたのに、今日まで来てしまったことをまずお詫びしたく」
「まあ。謝罪をするためのお詫びって、不思議な言い回しですね。わかっていますから、手短にします。『気にしておりません。お忘れになって』」

 俺の半月以上にわたったお悩み案件は、涼やかな微笑とともに去りぬ。

「ありがとうございます。ずっと責任を取らないとって頭にもたげ続けていましたから」
「責任、ですか」
「家訓もありましたんで、これは結婚せざるを得ないなと」

 セラフィナは大きく目を見開き、みどりの瞳をくるくると揺らす。

「……ぷふっ」

 破顔寸前の口元から笑いが漏れる。慌てて扇を開いて隠したものの……真っ赤になった耳をのぞかせて、プルプル震えている。慌てて駆け寄ってくる侍従の人たちを制すと、深呼吸をした。

「……はあ。もう、何てことを言うのかしら。王族であるわたくしの……見たから? ……ぷぷっ。もうダメ。やっぱり無理」

 また扇を開いて中断。何でバカ受けしてるのかわからんが、打って変わって歳相応の女の子な感じで、俺的には親近感がぐっと上がった。
 護衛たちの目が怖かったが、ひとしきり落ち着いたところで再開。

「実は、わたくしのほうこそ、今日は謝罪をしたくて席を設けました。弟ノエルのことです。暴走したのも、あの件を共有したのが発端ですから」

 ああ~、やっと合点がいった。つまり俺が〝見た〟ことを許せなかったのか。シスコン極まったな。それより、そんな些細なことまで共有事項になる王族が怖すぎる。

 セラフィナは少し恥ずかしそうにしながら続ける。

「あの子が強く出るのは、わが国が女王制を取り、わたくしが次期女王となることも関係しています。レジクス王国では代々、男子は王家を離れない限り、女王の守護が役目ですから」

 ひとつずつ言葉をつむぐさまに、ノエルの背負っている重さ、王族の重責が俺にもしっかり伝わってくる。あらためて、あの決闘は俺が悪役でよかったんだと思える。
 
「お互い怪我も無く終わって良かったです。決闘は手を抜くわけにもいきませんでしたし。学園長は責任を持つって言ってくれましたが」
「わたくしも母───女王からケイのことをお聞きして、当日は少し安心して迎えてはおりました。ノエルは知らないままにしてしまい……究極王技を放った時はさすがに心臓が冷えました」

 胸を押さえて、やさしい笑みをたたえながら。でも今はそれに見惚れるタイミングじゃなくて。

「いま『女王』様って言いましたが。ひょっとして、俺の両親のことを」
「ええ。真に伏して謝罪の限りを尽くさねばならないのは、わたくしどものほうなのですよ、ケイ〝様〟」

 そうか、一国の長も知っているのか。両親がほまれなのは本当に嬉しい。だが……
 
「〝様〟はやめてください。俺は何もしていないから、敬うのは間違いです。それに、俺にとっての両親は、山で一緒に笑って過ごしたのが全てなんで。しかし最近は『何で黙ってたんだ』ってぶん殴ってやりたくなりますがね」
「殴っちゃう……のですか、あの救国の英雄を」
「殴ります。おかんは説教です」
「あははははっ……はっ?」

 セラフィナがついに声を出して笑った。周囲の侍従や騎士もぎょっとなってガン見しているし。気が付くなりまた耳が真っ赤になってるし。これ見てるだけで面白い。
 すうっと笑みを引き、王女らしいお顔を整えると、真っすぐに俺を見た。

「本当に不思議な人です。粗野でいて品性を欠かさず。粗雑に見せかけて繊細。粗暴に潜ませた温情。こんなに奥行きがある人物は、わたくし、今までお会いしたことがありません」
「べた褒めで嬉しいです。何より、俺を育ててくれた両親や、家族同然の侍従たちが褒められてるようで」
「その自然に身に着いた謙虚さがまた、素敵です───」

 
 
 ───(視点変更)───

 
 わずか二時間ほどだったが……セラフィナにとって、かつてない愉快な時間。ケイとの約束を果たし終えた彼女は、その余韻にふけっていた。
 
(本当に、信じられない。あんな男性がこの世にいるなんて)
 
 客間の窓から、ケイの乗った馬車が去っていくのが見える。やがて胸の奥から、何とも言えないうれいがこみ上げてきた。
 
(もっと、もっと早く出会っていれば……いえ。出会ったところで、わたくしの人生の道が変わるわけでもありませんのにね)

 英雄が両親などまったく意に介さず、力強く自分の道を往く。セラフィナは、ケイの存在が只々まぶしく思えた。

 客間の扉からノックが響く。護衛騎士が開けると、女王レイアーネが息せき切って現れた。

「お母さま。どうなさったのです、そんなに慌てて」
「ケイは、もう帰ったのですか」
「はい。つい今しがた」
「んもう~っ。だめじゃないの〝セラ〟。私の公務がひと区切りつくまで、引き留めておくようにと頼んだでしょうっ」

 公的な場所で、急に「母子二人きり」の時のようなくだけた話し方をするレイアーネに、セラフィナは少し驚いた。

「申し訳ありません。どうしてもお帰りになると聞かなかったので」
「……そうね、ごめんなさい。無理を言いました」

 レイアーネは肩を落としてため息をつくと、そそくさと客間を後にした。
 
 書記から予定を聞きながら、次の公務へ足を早めるレイアーネ。しかしその心中は穏やかではない。

(くう~……せっかくケン様のご子息にお会いできるチャンスだったのにっ。16年も辛抱したのにぃ。ええい、こうなったら意地でも公務を片づけて、時間を作って……ああ、ケン様ぁ~)

 女王らしからぬ鼻息の荒さで、ずんずんと廊下を歩いていく。そのさまに、すれ違う王城職員たちは何事とばかりに引いていた。
 
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