【完結】聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶

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13 魔王参戦

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ウンディーネはじーっとリンを見つめる。

「うーん、リンちゃんは、メイドさんっていうより……」

ウンディーネが首をかしげた。

「なにかありましたか?」
魔王さまが興味深げに反応する。

「うーん……まあ、そのうち分かると思うわ。それより……」

ウンディーネはふいっと腰に手を当てる。
そして、キリッとした顔になる。

「あなたとトミー! 台所にガラクタ投げ込むのやめてちょうだい。魔石が完全に埋もれてたじゃない!」

魔王さまに指輪突きつけてウンディーネは怒り出す。

「そうだぞ! 俺の手じゃモップくらいしか持てねーんだからな! 足の踏み場がねえってどういう状況だ!」

ネズミイもまるでカスタマーセンターに苦情を入れるクレーマーのような勢いで魔王に詰め寄る。
ちなみに彼の手は、身体に比べて極端に小さい。
確かに、モップを挟む以外の用途はちょっと想像できない。

「だから、これからはリンが一緒にやってくれるよ」

あれ? トミーさんが、台所の掃除をさせるとは思わなかったんじゃ?
今朝言ってた“無理のない範囲でできることを”っていう設定はバグってない??

でも、ここに居させてもらうんだし、がんばるしかない。

「まあ、瘴気が消えたのは助かったよ」

ネズミイは天井から床にちらっと目を落として、ホッとした表情を見せる。

「魔界の門の綻びから、ドロドロの人間の怨念が入り込んでたな」
「人間界では、最近“聖女”が大量発生してるそうですね。正しく浄化できていないのかもしれません」

魔王さまが静かにうなずく。

「ふん、人間界で真面目に聖女なんかやってたら——私みたいになっちゃうわよ」

ウンディーネがゲンナリした顔でため息をつく。

……私みたいに??

どういうこと、それ?

私の疑問顔に気づいたのか、ウンディーネはふっと笑って、片目をつぶる。

「いろいろあるのよ。これから長い付き合いになるでしょうし、ゆっくり話すわね、リンちゃん」

ウインクした気がしたけど……気のせいじゃない気もする。




そこからは、まさかの——

「俺もやるよ。三角巾はどこだい?」

と、魔王さまがエプロンと三角巾を着用して、まさかの“大掃除参加”を表明。

おっと、これは、魔王史に残る日かもしれない。

「洗剤とか鍋磨きのスポンジとかがあれば欲しいです」


物置からガラクタを引っ張り出して、洗剤や鍋磨きグッズを探してもらう。途中「ドンガラガッチャーン!」という爆音がしたけど……今夜、寝るスペースあるかな??

ゴミの山から、魔王さまは嬉しそうに洗剤たちを持ってきて、ウンディーネと私は、せっせと泡立てた洗剤で食器を洗っていく。

魔王さまは、洗い上がった食器を魔法で水を弾きながら、それを私がふきあげた棚に戻す。

そして、ネズミイはというと——ひたすら床掃除。
モップ片手に床の石畳を磨き続ける姿は、もはや職人の風格。

段々と、くすんでいた床に、かすかな光沢が戻ってくる。

「おお……やればできるじゃないか!」

一同、達成感に包まれる。





「ご飯はどうしましょうか? 食材もないようですし」

私がそう尋ねると、魔王さまは腕を組んでうなった。

「そういえば……最近ずっと“カツアゲ弁当”だったな」

「カツアゲ……?」

耳を疑うネーミングが飛び出した。

「魔界商店街にある店の名前が“カツアゲ亭”なんだ。悪魔っぽくて人気らしいよ。弁当はまあ、ギリギリ人間でも食べられる」

なんだかいろんな意味でアクが強そうだ。
次なる課題は、台所だけじゃない。
魔界での“まともな食生活”の確保である。
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