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23 ゴミ山の聖域
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トミーさん肝煎りの「リンさんの適職」とは、このガラクタゴミ山の整理。
「瘴気を浄化できるリンさんなら、鏡みたいにゴミ山も浄化できるはず!いや絶対!」
と、トミーさんはすごい圧をわたしの両肩にかけてくる。
「城のはたき掃除も落ち着きましたからね。毎日ではなくていいです。それよりもコレ!コレをぜひ減らしてください」
そう言われると、それ以外の仕事をする気分にもなれず、トミーさんから指令を受けた私はゴミ山部屋に籠ることになる。
「今日からこのガラクタ山の片付け、私も一緒にするわよ」
ウンディーネもポツンと一人になってしまったわたしが心配なのだろう。
魔王城でも一人だが、この部屋は本当にわたし以外の人は入ってこなくなった。
スペースに置かれた3人で寝ていたお布団がなくなった代わりに、ちょこんと置かれた作業机とウンディーネさんの魔石が台所から移動されてきた。
そんなウンディーネさんも、魔王城のお水の管理のお手伝いもしているから、時々お出かけしてしまう。
「……なんかこう……窓際族って、こういう感じなのかな」
本当に居場所がないのだ。
シーンとした部屋に一人でいるのは嫌だ
――もう、魔王さまたちと眠ることもないんだ。
それが現実だと。
ここが、わたしの部屋。
誰も近寄らない、呪いのゴミ山と一緒に人目につかないように生活していく。
なまじ、温かい空間を知ってしまったから、余計につらい。
私の人生自体、孤児院で常に人がいて、むしろ一人になりたくてもなれたことがなかった。
だから、いざ一人だと言われても、人がいない空間が余計に苦しくなる。
魔石に腰かけたウンディーネさんが声をかける
「しばらくみんなが慣れるまでは、安全が一番だから。ここはいわく物だらけだから、魔物も魔族も恐れて寄ってこないわ。蔑ろにしているんじゃないのよ。魔族は人間に対していい感情がないから、リンちゃんは極力、みんなの目に触れない方がいいって思っているのよ。」
わたしはなんとか、から元気を出さないといけないと笑顔を作る。
「お掃除は、プロのメイドさんたちが戻ってきたから本当にお城はピカピカに戻りましたし、庭も庭師さんに任せて、噴水は物語に出てくるお庭みたいです。わたしはわたしの出来ることをするだけです」
ご飯も、わたしが台所に立つことはなくなり、厨房長のオーガさんが作ってくれるようになった。
「オレは食うもんなくなったら人間でも食うぞ」
微笑みもなく初対面で言われ、べそべそ泣いて帰る。でも、ネズミイさんいわく「あれは魔界のデレ隠し」らしい。
夜中にこっそりおにぎりが届いた。
「……厨房長、言いすぎたってすごく気にしてたぞ。リンがちゃんと食ってるか気にしてたぜ」
……優しい人なんだ。気にしてくれる人もちゃんといる。
「午後はスネクとお勉強でしょ? 少しずつゴミ山を減らすわよ」
ウンディーネさんが指示する。
私もここできちんと居場所を見つけて、生きていかないとね。
勇者ではないのだから、魔王さんを討伐することもない。
でも、それを納得してくれる環境ではない。
だけど、ここはきちんと私の出来ることを探してくれる人たちがいるんだから。
わたしは、ゴミ山に手を突っ込み、引き抜いてみる。
最初に取り出したのはティーセット。
「“飲み続けるティーセット”ね。お茶を注ぐと、延々と“わんこティー”状態で止まらなくなるわ。苦しみながらのティータイム……」
「え、それは普通に地獄では?お客様にだせませんし、壊してみましょうか?」
ガシャアアァン!!
容赦なく叩き割ってみる。
すると、いきなり割れたティーセットから、黒いもやもやがふわり
ウンディーネさんが焦って眉をひそめる。
「なんだろう、黒い埃が…?」
むぎゅ。
わたしは、無意識に掴んで、握りつぶしてみる。
ぼふっ。
「あ、消えました」
「……無自覚浄化ね」
ウンディーネの顔が少し引きつる。
次に取り出したのは、一本の口紅。
「“鏡に映ると10倍可愛く見える口紅”。つけると手放せなくなって、あちこちにリップ跡をつけるようになるの」
「可愛くなるんですか!それ、ちょっとだけ使ってみたいです!」
ぬりぬり。あ、ちょっとはみ出たかも。
鏡を見ないで塗るのは無理じゃない?
「鏡、鏡……あ、これ? “美しさを吸い取る鏡”? ……まぁ、美しい人は吸い取られるけど、吸い取られる心配がなければ映ればいいのよね」
その瞬間。
鏡に映ったのは――
口裂け女みたいな私の笑顔!
「ぎゃーーーー!!」
私と鏡、同時に悲鳴。
そして、
パリンッ!!
「……あれ??口紅も鏡もくだけた」
「もっと丁寧に塗りなさい。そういうのはスネクに任せたほうがいいわ」
ウンディーネさんが頭を抱えながら、冷静にアドバイスしてきた。
続いて、ぽいっと置かれた謎の機械。
「これは、“呪われた体重計”。食べてなくても増える、水飲んでも増える、空気吸っても増える。もう体重が減ることはないわ」
「トミーさんから体重を増やすように言われているんです。そんな素敵なアイテムが!!」
わたし、喜んで乗る。
メーターがカタカタ動いて……止まらない。
ぐるぐるぐるぐる、針が振り切れて――
ぶしゅううう。
「……黒い煙、出ましたね?」
パタパタ扇いだら、煙がふっと消えた。
「……やっぱり無自覚、おそるべし」
ウンディーネさんが、ため息をつきながら帳簿を開く。
「なんだか、整理しようと思ったけど……処分品ばっかりね」
「廃棄、廃棄、ぜんぶ廃棄……」
机の上の帳簿には、次々と線が引かれていく。
こうして今日も、わたしの“ゴミ山の聖域”は、じわじわと安全になっていったのだった。
でも、この時、誰も知らなかった。――この“聖域”が、過去を開く鍵になることを
「瘴気を浄化できるリンさんなら、鏡みたいにゴミ山も浄化できるはず!いや絶対!」
と、トミーさんはすごい圧をわたしの両肩にかけてくる。
「城のはたき掃除も落ち着きましたからね。毎日ではなくていいです。それよりもコレ!コレをぜひ減らしてください」
そう言われると、それ以外の仕事をする気分にもなれず、トミーさんから指令を受けた私はゴミ山部屋に籠ることになる。
「今日からこのガラクタ山の片付け、私も一緒にするわよ」
ウンディーネもポツンと一人になってしまったわたしが心配なのだろう。
魔王城でも一人だが、この部屋は本当にわたし以外の人は入ってこなくなった。
スペースに置かれた3人で寝ていたお布団がなくなった代わりに、ちょこんと置かれた作業机とウンディーネさんの魔石が台所から移動されてきた。
そんなウンディーネさんも、魔王城のお水の管理のお手伝いもしているから、時々お出かけしてしまう。
「……なんかこう……窓際族って、こういう感じなのかな」
本当に居場所がないのだ。
シーンとした部屋に一人でいるのは嫌だ
――もう、魔王さまたちと眠ることもないんだ。
それが現実だと。
ここが、わたしの部屋。
誰も近寄らない、呪いのゴミ山と一緒に人目につかないように生活していく。
なまじ、温かい空間を知ってしまったから、余計につらい。
私の人生自体、孤児院で常に人がいて、むしろ一人になりたくてもなれたことがなかった。
だから、いざ一人だと言われても、人がいない空間が余計に苦しくなる。
魔石に腰かけたウンディーネさんが声をかける
「しばらくみんなが慣れるまでは、安全が一番だから。ここはいわく物だらけだから、魔物も魔族も恐れて寄ってこないわ。蔑ろにしているんじゃないのよ。魔族は人間に対していい感情がないから、リンちゃんは極力、みんなの目に触れない方がいいって思っているのよ。」
わたしはなんとか、から元気を出さないといけないと笑顔を作る。
「お掃除は、プロのメイドさんたちが戻ってきたから本当にお城はピカピカに戻りましたし、庭も庭師さんに任せて、噴水は物語に出てくるお庭みたいです。わたしはわたしの出来ることをするだけです」
ご飯も、わたしが台所に立つことはなくなり、厨房長のオーガさんが作ってくれるようになった。
「オレは食うもんなくなったら人間でも食うぞ」
微笑みもなく初対面で言われ、べそべそ泣いて帰る。でも、ネズミイさんいわく「あれは魔界のデレ隠し」らしい。
夜中にこっそりおにぎりが届いた。
「……厨房長、言いすぎたってすごく気にしてたぞ。リンがちゃんと食ってるか気にしてたぜ」
……優しい人なんだ。気にしてくれる人もちゃんといる。
「午後はスネクとお勉強でしょ? 少しずつゴミ山を減らすわよ」
ウンディーネさんが指示する。
私もここできちんと居場所を見つけて、生きていかないとね。
勇者ではないのだから、魔王さんを討伐することもない。
でも、それを納得してくれる環境ではない。
だけど、ここはきちんと私の出来ることを探してくれる人たちがいるんだから。
わたしは、ゴミ山に手を突っ込み、引き抜いてみる。
最初に取り出したのはティーセット。
「“飲み続けるティーセット”ね。お茶を注ぐと、延々と“わんこティー”状態で止まらなくなるわ。苦しみながらのティータイム……」
「え、それは普通に地獄では?お客様にだせませんし、壊してみましょうか?」
ガシャアアァン!!
容赦なく叩き割ってみる。
すると、いきなり割れたティーセットから、黒いもやもやがふわり
ウンディーネさんが焦って眉をひそめる。
「なんだろう、黒い埃が…?」
むぎゅ。
わたしは、無意識に掴んで、握りつぶしてみる。
ぼふっ。
「あ、消えました」
「……無自覚浄化ね」
ウンディーネの顔が少し引きつる。
次に取り出したのは、一本の口紅。
「“鏡に映ると10倍可愛く見える口紅”。つけると手放せなくなって、あちこちにリップ跡をつけるようになるの」
「可愛くなるんですか!それ、ちょっとだけ使ってみたいです!」
ぬりぬり。あ、ちょっとはみ出たかも。
鏡を見ないで塗るのは無理じゃない?
「鏡、鏡……あ、これ? “美しさを吸い取る鏡”? ……まぁ、美しい人は吸い取られるけど、吸い取られる心配がなければ映ればいいのよね」
その瞬間。
鏡に映ったのは――
口裂け女みたいな私の笑顔!
「ぎゃーーーー!!」
私と鏡、同時に悲鳴。
そして、
パリンッ!!
「……あれ??口紅も鏡もくだけた」
「もっと丁寧に塗りなさい。そういうのはスネクに任せたほうがいいわ」
ウンディーネさんが頭を抱えながら、冷静にアドバイスしてきた。
続いて、ぽいっと置かれた謎の機械。
「これは、“呪われた体重計”。食べてなくても増える、水飲んでも増える、空気吸っても増える。もう体重が減ることはないわ」
「トミーさんから体重を増やすように言われているんです。そんな素敵なアイテムが!!」
わたし、喜んで乗る。
メーターがカタカタ動いて……止まらない。
ぐるぐるぐるぐる、針が振り切れて――
ぶしゅううう。
「……黒い煙、出ましたね?」
パタパタ扇いだら、煙がふっと消えた。
「……やっぱり無自覚、おそるべし」
ウンディーネさんが、ため息をつきながら帳簿を開く。
「なんだか、整理しようと思ったけど……処分品ばっかりね」
「廃棄、廃棄、ぜんぶ廃棄……」
机の上の帳簿には、次々と線が引かれていく。
こうして今日も、わたしの“ゴミ山の聖域”は、じわじわと安全になっていったのだった。
でも、この時、誰も知らなかった。――この“聖域”が、過去を開く鍵になることを
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