【完結】聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶

文字の大きさ
23 / 70

23 ゴミ山の聖域

しおりを挟む
トミーさん肝煎りの「リンさんの適職」とは、このガラクタゴミ山の整理。

「瘴気を浄化できるリンさんなら、鏡みたいにゴミ山も浄化できるはず!いや絶対!」

と、トミーさんはすごい圧をわたしの両肩にかけてくる。

「城のはたき掃除も落ち着きましたからね。毎日ではなくていいです。それよりもコレ!コレをぜひ減らしてください」

そう言われると、それ以外の仕事をする気分にもなれず、トミーさんから指令を受けた私はゴミ山部屋に籠ることになる。

「今日からこのガラクタ山の片付け、私も一緒にするわよ」

ウンディーネもポツンと一人になってしまったわたしが心配なのだろう。
魔王城でも一人だが、この部屋は本当にわたし以外の人は入ってこなくなった。
スペースに置かれた3人で寝ていたお布団がなくなった代わりに、ちょこんと置かれた作業机とウンディーネさんの魔石が台所から移動されてきた。
そんなウンディーネさんも、魔王城のお水の管理のお手伝いもしているから、時々お出かけしてしまう。

「……なんかこう……窓際族って、こういう感じなのかな」

本当に居場所がないのだ。
シーンとした部屋に一人でいるのは嫌だ

――もう、魔王さまたちと眠ることもないんだ。

それが現実だと。
ここが、わたしの部屋。
誰も近寄らない、呪いのゴミ山と一緒に人目につかないように生活していく。

なまじ、温かい空間を知ってしまったから、余計につらい。
私の人生自体、孤児院で常に人がいて、むしろ一人になりたくてもなれたことがなかった。
だから、いざ一人だと言われても、人がいない空間が余計に苦しくなる。

魔石に腰かけたウンディーネさんが声をかける

「しばらくみんなが慣れるまでは、安全が一番だから。ここはいわく物だらけだから、魔物も魔族も恐れて寄ってこないわ。蔑ろにしているんじゃないのよ。魔族は人間に対していい感情がないから、リンちゃんは極力、みんなの目に触れない方がいいって思っているのよ。」

わたしはなんとか、から元気を出さないといけないと笑顔を作る。
「お掃除は、プロのメイドさんたちが戻ってきたから本当にお城はピカピカに戻りましたし、庭も庭師さんに任せて、噴水は物語に出てくるお庭みたいです。わたしはわたしの出来ることをするだけです」


ご飯も、わたしが台所に立つことはなくなり、厨房長のオーガさんが作ってくれるようになった。

「オレは食うもんなくなったら人間でも食うぞ」

微笑みもなく初対面で言われ、べそべそ泣いて帰る。でも、ネズミイさんいわく「あれは魔界のデレ隠し」らしい。

夜中にこっそりおにぎりが届いた。

「……厨房長、言いすぎたってすごく気にしてたぞ。リンがちゃんと食ってるか気にしてたぜ」 

……優しい人なんだ。気にしてくれる人もちゃんといる。

「午後はスネクとお勉強でしょ? 少しずつゴミ山を減らすわよ」

ウンディーネさんが指示する。
私もここできちんと居場所を見つけて、生きていかないとね。
勇者ではないのだから、魔王さんを討伐することもない。
でも、それを納得してくれる環境ではない。

だけど、ここはきちんと私の出来ることを探してくれる人たちがいるんだから。

 
わたしは、ゴミ山に手を突っ込み、引き抜いてみる。
最初に取り出したのはティーセット。

「“飲み続けるティーセット”ね。お茶を注ぐと、延々と“わんこティー”状態で止まらなくなるわ。苦しみながらのティータイム……」
「え、それは普通に地獄では?お客様にだせませんし、壊してみましょうか?」

ガシャアアァン!!

容赦なく叩き割ってみる。
すると、いきなり割れたティーセットから、黒いもやもやがふわり
ウンディーネさんが焦って眉をひそめる。

「なんだろう、黒い埃が…?」

むぎゅ。

わたしは、無意識に掴んで、握りつぶしてみる。

ぼふっ。

「あ、消えました」
「……無自覚浄化ね」
ウンディーネの顔が少し引きつる。

 
次に取り出したのは、一本の口紅。

「“鏡に映ると10倍可愛く見える口紅”。つけると手放せなくなって、あちこちにリップ跡をつけるようになるの」

「可愛くなるんですか!それ、ちょっとだけ使ってみたいです!」

ぬりぬり。あ、ちょっとはみ出たかも。
鏡を見ないで塗るのは無理じゃない?

「鏡、鏡……あ、これ? “美しさを吸い取る鏡”? ……まぁ、美しい人は吸い取られるけど、吸い取られる心配がなければ映ればいいのよね」

その瞬間。
鏡に映ったのは――
口裂け女みたいな私の笑顔!

「ぎゃーーーー!!」

私と鏡、同時に悲鳴。
そして、

パリンッ!!

「……あれ??口紅も鏡もくだけた」
「もっと丁寧に塗りなさい。そういうのはスネクに任せたほうがいいわ」

ウンディーネさんが頭を抱えながら、冷静にアドバイスしてきた。

 

続いて、ぽいっと置かれた謎の機械。

「これは、“呪われた体重計”。食べてなくても増える、水飲んでも増える、空気吸っても増える。もう体重が減ることはないわ」
「トミーさんから体重を増やすように言われているんです。そんな素敵なアイテムが!!」

わたし、喜んで乗る。
メーターがカタカタ動いて……止まらない。
ぐるぐるぐるぐる、針が振り切れて――

ぶしゅううう。

「……黒い煙、出ましたね?」

パタパタ扇いだら、煙がふっと消えた。

「……やっぱり無自覚、おそるべし」

 

ウンディーネさんが、ため息をつきながら帳簿を開く。
「なんだか、整理しようと思ったけど……処分品ばっかりね」
「廃棄、廃棄、ぜんぶ廃棄……」

机の上の帳簿には、次々と線が引かれていく。

 

こうして今日も、わたしの“ゴミ山の聖域”は、じわじわと安全になっていったのだった。

でも、この時、誰も知らなかった。――この“聖域”が、過去を開く鍵になることを
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

ざまぁに失敗したけど辺境伯に溺愛されています

木漏れ日
恋愛
天才魔術師セディが自分の番である『異界渡りの姫』を召喚したとき、16歳の少女奈緒はそれに巻き込まれて、壁外という身分を持たない人々が住む場所に落ちました。 少女は自分を異世界トリップに巻き込んだ『異界渡り姫』に復讐しようとして失敗。なぜかロビン辺境伯は少女も『異界渡りの姫』だと言って溺愛するのですが…… 陰陽の姫シリーズ『図書館の幽霊って私のことですか?』と連動しています。 どちらからお読み頂いても話は通じます。

冷酷騎士団長に『出来損ない』と捨てられましたが、どうやら私の力が覚醒したらしく、ヤンデレ化した彼に執着されています

放浪人
恋愛
平凡な毎日を送っていたはずの私、橘 莉奈(たちばな りな)は、突然、眩い光に包まれ異世界『エルドラ』に召喚されてしまう。 伝説の『聖女』として迎えられたのも束の間、魔力測定で「魔力ゼロ」と判定され、『出来損ない』の烙印を押されてしまった。 希望を失った私を引き取ったのは、氷のように冷たい瞳を持つ、この国の騎士団長カイン・アシュフォード。 「お前はここで、俺の命令だけを聞いていればいい」 物置のような部屋に押し込められ、彼から向けられるのは侮蔑の視線と冷たい言葉だけ。 元の世界に帰ることもできず、絶望的な日々が続くと思っていた。 ──しかし、ある出来事をきっかけに、私の中に眠っていた〝本当の力〟が目覚め始める。 その瞬間から、私を見るカインの目が変わり始めた。 「リリア、お前は俺だけのものだ」 「どこへも行かせない。永遠に、俺のそばにいろ」 かつての冷酷さはどこへやら、彼は私に異常なまでの執着を見せ、甘く、そして狂気的な愛情で私を束縛しようとしてくる。 これは本当に愛情なの? それともただの執着? 優しい第二王子エリアスは私に手を差し伸べてくれるけれど、カインの嫉妬の炎は燃え盛るばかり。 逃げ場のない城の中、歪んだ愛の檻に、私は囚われていく──。

《完結》戦利品にされた公爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
戦いの《戦利品》として公爵邸に連れて行かれた公爵令嬢の運命は?

酒飲み聖女は気だるげな騎士団長に秘密を握られています〜完璧じゃなくても愛してるって正気ですか!?〜

鳥花風星
恋愛
太陽の光に当たって透けるような銀髪、紫水晶のような美しい瞳、均整の取れた体つき、女性なら誰もが羨むような見た目でうっとりするほどの完璧な聖女。この国の聖女は、清楚で見た目も中身も美しく、誰もが羨む存在でなければいけない。聖女リリアは、ずっとみんなの理想の「聖女様」でいることに専念してきた。 そんな完璧な聖女であるリリアには誰にも知られてはいけない秘密があった。その秘密は完璧に隠し通され、絶対に誰にも知られないはずだった。だが、そんなある日、騎士団長のセルにその秘密を知られてしまう。 秘密がばれてしまったら、完璧な聖女としての立場が危うく、国民もがっかりさせてしまう。秘密をばらさないようにとセルに懇願するリリアだが、セルは秘密をばらされたくなければ婚約してほしいと言ってきた。 一途な騎士団長といつの間にか逃げられなくなっていた聖女のラブストーリー。 ◇氷雨そら様主催「愛が重いヒーロー企画」参加作品です。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

処理中です...