【完結】聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶

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47 皇后の間

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わたしは、あの“聖女兼・魔王の妻お披露目会”から数日間、ずっと部屋でごろごろしていた。

目眩と吐き気はすぐ治まったけど、魔王さまが「もう絶対安静」って言い張って、部屋からの外出を完全禁止にされたのだ。

レッスンもなし。浄化対象もなし。
スネク先生からも逃げ放題だけど、することもない。
遊び相手はエアリアさんか、ご飯を運んでくるネズミイくらい。

(暇すぎる……)

この「皇后の間」って名前のお部屋は、魔王さまのお母さんが使ってた場所らしい。
やたら豪華で、床も壁も大理石みたいなマーブル模様、真っ赤なふかふか絨毯、天井高っ!

神父さまの部屋の何倍ゴージャスなんだろう。

なんとなく、落ち着かない。

私は今日も、部屋のすみっこで体育座りしていた。

「ねえリンちゃん、なんでそんな隅っこいるの?」

エアリアさんが笑いながら声をかけてくる。

「……空間が痛いんです」
「へ?」

もうこの部屋のゴージャスさが、精神にダメージくるのよ!
むしろ、エアリアさんのほうが、すっかり慣れ親しんでて、ここに面白い本があるよ。とかここに隠し部屋からあるの。とか知ってて驚いちゃう。

「ねえ、エアリアさん。魔王さまのお母さんって、どんな方だったんですか?」

「うーん、私が来たのはウンディーネよりちょっと前だけどね。皇后さまが亡くなった後だったんだよね」

「亡くなってたんですか……」

魔王さまの家族の話って、聞いたことがない。
言わない理由があるのかなって、なんとなく聞かずにいた。

「噂ではね、病弱だったみたい。魔王さまが生まれてすぐに亡くなったって」

「そっか……寂しかったでしょうね」

「そうだね。スネク先生の帝王学も厳しかったし。でも、前の魔王さま――魔王さまのお父さんが優しい人だったから、救われたかも」

「へぇ……」

てっきり、交流のない親子かと思ってた。
でも、写真とか絵姿もまったく残ってないってどうなんだろ。

「魔界では、写真とかより魔族の方が長生きしちゃうから。保存文化、あんまりないの」

エアリアさんは肩をすくめて、微笑んだ。

「そういえば、魔王さまって昔ね、庭の噴水で水遊びしてたのよ」

「えっ、あの庭ですか? 私が最初に来たときにエアリアさんとあったところ…」

「そうそう。あそこに連れていって、びちゃびちゃになりながら遊ぶ魔王さまを、前の魔王さまが笑って見てたの。あのときだけは“魔王”じゃなくて“お父さん”の顔してたなぁ」

……ほんとだ。想像つかないけど、ちょっとだけ見てみたかったかも。

「でもね、魔王さまには“つらいこと”があって。それ以来、前の魔王さまの話は……禁句になったの」

「……禁句」

「うん。だいたい、人間界でいうと50年くらい前の話だったかな」

50年前――?

その数字に、私は思わずまばたきをした。
ウンディーネさんが、好きだった人と別れて精霊になった時期と、たしか……同じ頃――。

偶然……なのかな。

「リンちゃんって、魔王さまに遠慮してるの?」

「……本人が言いたくなさそうなことを、無理に聞くのはダメかなって」

「ふふ、いい子ね。でも知りたくなったら、私に聞いて。風の精霊はね、いろんな場所でいろんな声を聞くから。情報収集力、魔界トップクラスなのよ?」

えっへん!と胸を張るエアリアさんは、どこか誇らしげだった。

でもその時――

バタン、と部屋の扉が開いて、魔王さまが暗い顔で戻ってきた。

「魔王さま……?」

「伝書鳥から、SOSがあった。マクライアのギルドに向かったんだ」

魔王さまが人間界にいくと、この間みたいに魔王復活とか言われちゃうから、ほぼ行くことはない。トミーさんが有給休暇でいないし、それだけ緊急のことなんだね。


「……彼は、殺されていた」

え!

――嘘、でしょ。

あんなに、あんなに優しい顔でウンディーネさんが話してたのに……。

言葉が出てこなくて、ただただ、空気だけが重くなっていった。
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