【完結】聖女のはずが勇者(仮)に間違われて、魔王さまに溺愛されてます

小豆缶

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51 犯人はトミー?

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「エアリア、どういうことなの!? マクライアを殺したのは……トミーさんなの?」

ウンディーネが怒鳴るように詰め寄る。
水がピシャリと跳ねて、空気が震えた。

「……わからないよ」

エアリアは少しだけ目を伏せ、ゆっくりと息を吐いた。

「九尾一族の里……人がいた形跡は、もう何年もなかった。でも、どこかでトミーさんの香りがしたの。だから、最近一度は立ち寄ったと思う」

そして――ふと迷うような目で続けた。

「たぶん……お墓、だと思うんだけど。そこに……血のついた服が置かれてた。あの事件のとき、トミーさんが着ていたやつ」

「――っ!」

魔王とウンディーネが、同時に息を呑む。

「……あのゴミ山の服……」

魔王が低くつぶやく。

魔界の門事件のあと、トミーが自分で捨てた服。
母親の血がこびりついた、過去そのもの。
でも、それは怨念が宿っていたわけじゃない。
むしろ逆だ。
自分の手で“けじめ”をつけた、唯一の過去。

だから――いくら私が浄化しても、変わらなかった。
“救われた”ものたちの中で、唯一“救われなかった”もの。

「あれを……もう一度、手に取るなんて考えてなかった……」

魔王の言葉が、重く沈む。

「……わたし……どうしたら……」

私は、震える声でつぶやいた。
拾われるはずのない過去を、自分のせいで蘇らせてしまった。
誰も責めないが、無自覚で自分がやってしまったことだ



「九尾一族って……トミーさん以外、今どうしてるの?」
「……正直、俺もそこまで把握できてなかった。
魔王になったばかりで……あの時、トミーは子どもだったのに、“支える”って言ってくれて。
本当は俺が守るべきだったのに、逆に支えられてた」

魔王さまの額に、じわっと汗がにじむ。

「全部背負おうとしないで。そんなの無理よ」

エアリアが、ぴしゃりと叱る。

「魔王さまは、わたしのことだって、精一杯やってくれた。トミーさんだって、きっとちゃんと分かってるはずよ」

ウンディーネも反論する

「……俺、ほんと情けないな」
「そんなことないわ」

エアリアは静かに声をかけた。
その目は、どこか潤んでいる。

わたしは、自分の犯してしまった罪にガタガタ震えていた。
そこにあったのは怨念や行き場がなくなったもの。
自分が“浄化”してしまったこと――そのひとつひとつにどんな心があったのか?出来事があったのかなんて考えてなかった。

思わず自分の肩を、自分の手で抱え込む。

そんな空気の中――

「たっだいまーっ!……って、あれ? なんか重くない? え、会議中? ウンディーネさんも、おかえりなさーい。
マクライアさん、元気してましたか?」

――突然、部屋のドアが開いて。

麦わら帽子にアロハシャツ、サングラスという、どう見ても“魔界の南国バカンス帰り”みたいな格好で、
トミーが、ケロッと帰ってきた。

「トミーさん!?!?!?」
「トミー!」

みんなの声が同時に跳ね上がった。





「えっ!? マクライアさん、亡くなったんですか!?」

トミーが部屋に入るなり叫んだ。

皇后の間。
机の上には地獄山温泉まんじゅう、魔界海サブレ、天界のタルトなど、見たことない魔界土産が山のように積まれていく。

「土産を置くスペースがないですね」

リンは急いで、台を追加して、お茶の準備。
右往左往するわたしの横で、魔王さまは冷静さを取り戻し、いつも通り無表情。

ウンディーネとエアリアは、実態がない。
「私たちも食べられるお菓子がないじゃない!」
そんなお菓子最初から存在しない。
そのため、お茶もお菓子も手をつけられず...

やや不機嫌な顔をしていた。

そして、場の空気がいよいよ固まる。
さあ、お茶の準備できて、和やかな土産話...
とはならないのは当たり前。

まるで警察取り調べ24時のような怒涛の会話が始まる。
「トミーさん、私たちのこと、許せなくて当然だよね。でも……マクライアをやったのって、あなた?」

ウンディーネが、直球を放った。
「ウンディーネさんっ!?!?」

それは直球すぎ!!
私とエアリアが、同時に息をのむ。

魔王さまはじっとトミーを見ている。
嘘をついても、見抜ける目だ。
そのシーンとした空間が痛い。
いつもなら、魔王さまがボケ担当なのに!!


「え、わたし!? ないないないない、ないですってば!!突然何を言い出すかと思えば」

トミーは目を見開き、汗を拭く。

その汗を拭う姿をみて、更にキランとウンディーネの目が光る。
いや、目がじゃっぶんじゃっぶん波打ってる!

トミーはそれをみて、更に両手を振る。

「そ!そうだ!!」

カバンをごそごそ漁り始めた。

「えーと、まずその日、地獄山にいました。はい、証拠。まんじゅう買ったときのレシート!」

取り出したレシートには、マクライアが亡くなる前の時刻がはっきりと印字されていた。

「えっと?地獄山ってそんなに離れてるんですか?時差あります?」

いまいち地理がわからないわたし。

「……魔界と人間界に時差はないわ。このレシートの時間は、人間界の時間と同じよ」

とエアリア。

「でも、すぐ転移で戻って犯行ってこともありえるんじゃ?」

とウンディーネ。

「いやいや、そんな簡単に行き来できるの、魔王さまや精霊クラスだけですよ!? 私、普通の魔族なんで!魔石に入れるのも、精霊だけですし!!」

トミーは焦る。
魔王さまをみると頷いているからそうなんだろう。

トミーはさらに領収書を出す。

「で、その夜は魔界海に行って一泊しました。地獄山から銀河鉄道の夜行で5時間。深夜着でチェックイン」

なんか、こんなシュールな状況じゃなければ、もっと聞いてみたい話だな。
魔界海....荒れ狂ってそうだけど。
地獄山??なんか痛そうなネーミングだけど!
銀河鉄道...猫の車掌さんとか出てきそう。


魔王さまと...行きたいなあ
ちらっとリンが魔王をみると、それに気付いたのかくすくすと微笑む。
少し場が緩くなってほっとする。

だが...

「……これがホテルの領収書?」

わたしは手に取って見つめる。

「……泊まったの、二名?」

その場に沈黙が落ちた。

「一緒に泊まった人物は、証人になるか?」

魔王さまが、鋭い目を向ける。
共犯者の可能性もある。

「……なれますけど。彼女に、そんなことさせるつもりはありません」

トミーは真面目な顔をして、キッと睨む。
一気に雰囲気が深刻な雰囲気に変わる。
だけど、だけど。口滑ってませんか?

「彼女!?」

全員の声が跳ね上がる。

「えっと……彼女さんと……旅行へ?」

わたしはおそるおそる尋ねる。
トミーは、しまったという顔になり――ピタリと口を閉ざした。

「黙秘します」
「はっっっやしい!!」

ウンディーネが机をバンッと叩いた。

「だって、あなた“里に帰る”って言ってたじゃない! 」
「私も見てきたのよ。あなたの里、もう誰もいなかった。家は崩れて、草が生い茂って……!」

エアリアの追撃の声に、空気が変わる。
トミーの表情が、一気に冷えた。

「――俺のこと、勝手に調べたんですね?」

まっすぐこちらを見据えるトミーの目に、さっきまでの陽気さは一片も残っていなかった。

「誰だって、知られたくない過去くらいあるでしょう。俺にだって……守りたかったものくらい、あるんですよ」

低い声。抑えられた怒りと、なにか別の想いが滲んでいた。




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