丘の上の王様とお妃様

よしき

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丘の上の王様とお妃様 5

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  私が、1.5カラットのダイヤモンドのついた指輪を外すことが出来ず、そのまま夜が明けでも、眠ることができなかった。
  もちろん、王さんへのモヤモヤした思いのせいであることは、間違いないのだけれど...
  私は、もう一つ。大変重大なことに気がついたのである。それは、昨日のあの時に、近藤のおじさんがいたことである。

「どうしよう、今日の昼には街中にこの指輪の事が知れ渡っているはず...」
  近藤のおじさんは、いい人であることは、分かっている。そして、夫婦仲がとてもよく、近藤のおばさんも親切な事は百も承知である。
  しかし、近藤のおばさんは、とある別名がある。それは、
「歩くラジオ」
である。
  つまり、近藤のおじさんのことだから、私と王さんに起こった出来事を、昨日の内に自分の妻へ『いい話』として話しているはずで。
  その『いい話』は、昨日の内に近藤のおばさんのスマホから数人に話が拡散される。さらにその『いい話』を聞いた方たちが、又まだ知らない知人にスマホで拡散して...
  朝の段階で、約100人もの奥様方がその『いい話』を知っていることになるのだ。さらに『いい話』は、朝食の時に家族に伝わり、更にその家族が各自の職場や学校、隣近所に広まる。こうして昼前には、街中の人達が『いい話』を少しずつ変わりながらも知ることとなるのだ。
   そして、興味本意なお客さまが、坂を登って喫茶店「坂の上」にやってくる...それだけは、間違いなくやってくる未来である。
  だって、ここは田舎街なのだ。皆、静に穏やかに暮らしているように見えて、実は刺激を欲している。一つの刺激が与えられれば、皆しばらくの間は想像力をフルに働かせることができる。もちろん、当の本人達の前では愛想笑いを浮かべ、影では真実から遥かにかけ離れた『噂』となってドンドン一人歩きをし始める...
  私は、寝不足で思考回路が働かないが、その恐ろしい事が、現在進行形だと言うことだけは、ハッキリと分かっている。            
  寝不足と、これから起こる『恐ろしい現実』を想像するだけで、私の頭痛と眩暈が酷くなっている事を実感させられていた。
  そんな私に残された細やかな選択肢は、ただ一つだけ...
「とにかく。しばらくは、お店をお休みにして、街の人達が落ち着くまで待つこと」
という、なんとも心もとない『居留守』という作戦しかなかった。

  そんな訳で、日の出前に店の入り口に、
「一身上の都合で、しばらくお休みいたします」の張り紙を貼り出した。
   約一週間。ほとぼりが覚め、街が落ち着いた頃になったら、また店を再開すればいい。もちろん、それでもやってくる方々も多い事は予想されるが。
「しばらくは、カップ麺とレトルト食品や缶づめとかあるから、なんとかなるでしょう。」
  そして、私は、久しぶりの休暇を満喫しようと、思ったのだ。王さんは、今日来るだろうけれど。でも、今の私のモヤモヤした気持ちを落ち着かせ、とりあえず返事を先伸ばしすることができるし...

  私は、店の二階にある自分の部屋のベツドの上に、ゴロンと寝転んだ。
「王さんには、気の毒だけれど、今日のお店はお休みですよよ...」  
  そう言うと、不思議と安心した様な気がして。それと同時に一気に眠気に襲われた私は、まるでキラキラと輝く指輪の魔法にかけられたかのように、眠りに落ちていった。
   
  





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