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自由貿易国家編
求められるのは、伝説の霊薬
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カースドドラゴンの背に乗り、無事にパルフェノン郊外へと戻ってきた玄白。
ちなみに玄白本人は平然としていたのであるが、その背中に動じようしていたミハルとマクシミリアンの二人はというと。
『生きた心地がしなかった』
そう呟いていたという。
そして玄白は久しぶりに我が家に戻り、掃除と片付けを終える頃には、すでに日がどっぷりと暮れ始めている。
手伝いのマクシミリアンやミハルのお陰で、明日にでも診療所は再会する。
そして、窓を開けて掃除をしている玄白を見て、近所の人たちも色々と差し入れを持ってくる。
まあ、玄白が元気そうである事、また診療所が再開することを喜んでいる人々が大半であり、彼女が作り出す霊薬エリクシールを手に入れようなどと、下衆な企みをするものがいないわけでもないのだが。
玄白が持っている身分証はシルバー、女神に寵愛を受けた証でもあり、この国では社会に等しい力を持つ。
そのようなものに、欲の皮をつっぱらせて近寄るものは存在せず、迂闊に手を出せは女神や精霊の怒りを買うだろうと、腫れ物には触らずと眺めているものも多い。
そして仲良くなれば、ひょっとしたらエリクシールを手に入れられるのではと考えるものもあるが、そもそもエリクシールは日持ちがしない。
このパルフェノンで入手しても、効果の切れる五日目までに届けられる場所は限られている。
結果として、玄白はパルフェノンで、ようやくのんびりとした時間を手に入れることができたのである。
「さて。味噌を取り扱っている商人を探しに行くとするか」
パルフェノンに帰ってきた翌日には、玄白は商業ギルドに顔を出す。
普段なら滅多にここには来ないのだが、年に一度の診療所の契約更新時には訪れるようにしている。
そして、久しぶりに戻ってきたこともあり、診療再開のことも伝えようとやってきたのは良かったのだが。
「スギタ先生!! 無事にお戻りになりましたか」
受付嬢が入り口から入ってくる玄白を見て、思わず声をかけてしまった。
その様子から只事ではないと感じた玄白は、真っ直ぐに自分の名前を呼んだ受付の元に向かった。
「まあ、そんなに長い旅でもなかったが? 今日は、診療再開と、あとは味噌という調味料について調べたいと思ってやってきたのじゃが」
「そ、そうでしたか。いえ、旅の冒険者から霊峰でドラゴン討伐依頼を出したという話を聞きましたので。それから音沙汰がないと聞きました。無事でよかったです」
「そうかそうか。まあ、話はまとまったことじゃから安心せい。昼からは診療も再開するのでな。まあ、それはおまけとして、済まんが『味噌』という調味料を取り扱っている商人を知らないか?」
「味噌……調味料ですね。西方のバーバリオス王国で、300年前に勇者さまが降臨した時に齎したものであることはご存知です。ですが、その産地と言いますか、取り扱っている村がダンジョンスタンビートで全滅してしまい。今では倉庫などで保存している商人がいるかいないか、そんな感じであると伝えられています」
淡々と説明してくれる受付。
その話を聞きながら、玄白は味噌が入手可能かもという期待を持ち、そして急降下で落ち込んでしまった。
「ここから西、霊峰麓の村で、サバの味噌煮を取り扱っている商人というのがいると聞いてな。それで、ひょっとしたら買うことができるのではと淡い期待をしていたのじゃが」
「西から……心当たりの商人でしたら、いないわけではありませんが。実は、お願いがありましで」
「お願いじゃと?」
「はい。あと数刻でですね、諸島連合国から来たメギストスという錬金術師と、旅の商人が錬金術勝負をすることになりまして。ぜひとも、スギタ先生には審査員をお願いしたいのですが」
突然の申し出に、玄白は目を丸くする。
なぜ、わしが審査員をと問い返すも、審査対象が魔法薬関係であり、なおかつ公平さを記すために、錬金術ギルドのものに審査を頼むことができないという。
「よろしくお願いします!! その味噌を取り扱っているかも知れない商人についてですけど、そこの護衛の方が錬金術勝負をするのですよ?」
「よかろう、このわし杉田玄白、全てにおいて公明正大な審査をすると約束しようではないか!!」
面倒臭そうな顔の玄白であったが、味噌が関わると掌を返した。
そしてすぐさま審査員先まで案内されると、早速、錬金術勝負が開始された。
「さて、わし以外の審査員は……と」
右を見ても左を見ても、商業ギルドの重鎮であったり、宮廷魔導師であったりと、とにかく豪華な顔ぶれであるが。
「のう、なぜ、審査員席にデスペラード国王が座っておるのじゃ?」
右端に座っているドワーフの鍛治師を指差し、玄白は隣の魔術師に問いかける。すると魔術師も困った顔をしながら、一言だけ。
「お祭り騒ぎが好きですからね……というのと、祖父である先先代国王の病を癒せる薬を探しているとかで。この錬金術勝負も、ひょっとしたら霊薬エリクシールを作れる錬金術師がいるかもと参加したそうです」
「ふむ。成る程」
玄白は、普段の治療では、エリクシールという名前を出していない。
そして大公の病ともなると、御殿医が全てを取り仕切っているので、町医者である玄白にまで声が掛かることはない。
その結果、このような場所にまで顔を出して、エリクシールを探しているのだそうで。
「お、始まりましたよ!!」
「おお、それでは真面目に鑑定させてもらうとしようか」
解体新書を取り出して目の前に置くと、玄白はその表紙に手を当てたまま、錬金術勝負を眺めていた。
ちなみに玄白本人は平然としていたのであるが、その背中に動じようしていたミハルとマクシミリアンの二人はというと。
『生きた心地がしなかった』
そう呟いていたという。
そして玄白は久しぶりに我が家に戻り、掃除と片付けを終える頃には、すでに日がどっぷりと暮れ始めている。
手伝いのマクシミリアンやミハルのお陰で、明日にでも診療所は再会する。
そして、窓を開けて掃除をしている玄白を見て、近所の人たちも色々と差し入れを持ってくる。
まあ、玄白が元気そうである事、また診療所が再開することを喜んでいる人々が大半であり、彼女が作り出す霊薬エリクシールを手に入れようなどと、下衆な企みをするものがいないわけでもないのだが。
玄白が持っている身分証はシルバー、女神に寵愛を受けた証でもあり、この国では社会に等しい力を持つ。
そのようなものに、欲の皮をつっぱらせて近寄るものは存在せず、迂闊に手を出せは女神や精霊の怒りを買うだろうと、腫れ物には触らずと眺めているものも多い。
そして仲良くなれば、ひょっとしたらエリクシールを手に入れられるのではと考えるものもあるが、そもそもエリクシールは日持ちがしない。
このパルフェノンで入手しても、効果の切れる五日目までに届けられる場所は限られている。
結果として、玄白はパルフェノンで、ようやくのんびりとした時間を手に入れることができたのである。
「さて。味噌を取り扱っている商人を探しに行くとするか」
パルフェノンに帰ってきた翌日には、玄白は商業ギルドに顔を出す。
普段なら滅多にここには来ないのだが、年に一度の診療所の契約更新時には訪れるようにしている。
そして、久しぶりに戻ってきたこともあり、診療再開のことも伝えようとやってきたのは良かったのだが。
「スギタ先生!! 無事にお戻りになりましたか」
受付嬢が入り口から入ってくる玄白を見て、思わず声をかけてしまった。
その様子から只事ではないと感じた玄白は、真っ直ぐに自分の名前を呼んだ受付の元に向かった。
「まあ、そんなに長い旅でもなかったが? 今日は、診療再開と、あとは味噌という調味料について調べたいと思ってやってきたのじゃが」
「そ、そうでしたか。いえ、旅の冒険者から霊峰でドラゴン討伐依頼を出したという話を聞きましたので。それから音沙汰がないと聞きました。無事でよかったです」
「そうかそうか。まあ、話はまとまったことじゃから安心せい。昼からは診療も再開するのでな。まあ、それはおまけとして、済まんが『味噌』という調味料を取り扱っている商人を知らないか?」
「味噌……調味料ですね。西方のバーバリオス王国で、300年前に勇者さまが降臨した時に齎したものであることはご存知です。ですが、その産地と言いますか、取り扱っている村がダンジョンスタンビートで全滅してしまい。今では倉庫などで保存している商人がいるかいないか、そんな感じであると伝えられています」
淡々と説明してくれる受付。
その話を聞きながら、玄白は味噌が入手可能かもという期待を持ち、そして急降下で落ち込んでしまった。
「ここから西、霊峰麓の村で、サバの味噌煮を取り扱っている商人というのがいると聞いてな。それで、ひょっとしたら買うことができるのではと淡い期待をしていたのじゃが」
「西から……心当たりの商人でしたら、いないわけではありませんが。実は、お願いがありましで」
「お願いじゃと?」
「はい。あと数刻でですね、諸島連合国から来たメギストスという錬金術師と、旅の商人が錬金術勝負をすることになりまして。ぜひとも、スギタ先生には審査員をお願いしたいのですが」
突然の申し出に、玄白は目を丸くする。
なぜ、わしが審査員をと問い返すも、審査対象が魔法薬関係であり、なおかつ公平さを記すために、錬金術ギルドのものに審査を頼むことができないという。
「よろしくお願いします!! その味噌を取り扱っているかも知れない商人についてですけど、そこの護衛の方が錬金術勝負をするのですよ?」
「よかろう、このわし杉田玄白、全てにおいて公明正大な審査をすると約束しようではないか!!」
面倒臭そうな顔の玄白であったが、味噌が関わると掌を返した。
そしてすぐさま審査員先まで案内されると、早速、錬金術勝負が開始された。
「さて、わし以外の審査員は……と」
右を見ても左を見ても、商業ギルドの重鎮であったり、宮廷魔導師であったりと、とにかく豪華な顔ぶれであるが。
「のう、なぜ、審査員席にデスペラード国王が座っておるのじゃ?」
右端に座っているドワーフの鍛治師を指差し、玄白は隣の魔術師に問いかける。すると魔術師も困った顔をしながら、一言だけ。
「お祭り騒ぎが好きですからね……というのと、祖父である先先代国王の病を癒せる薬を探しているとかで。この錬金術勝負も、ひょっとしたら霊薬エリクシールを作れる錬金術師がいるかもと参加したそうです」
「ふむ。成る程」
玄白は、普段の治療では、エリクシールという名前を出していない。
そして大公の病ともなると、御殿医が全てを取り仕切っているので、町医者である玄白にまで声が掛かることはない。
その結果、このような場所にまで顔を出して、エリクシールを探しているのだそうで。
「お、始まりましたよ!!」
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