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凪編
【凪編】49:xx16年8月16日
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濡れた瞳を真ん丸にしている乃亜を、ましろはにっこりとした笑顔で見る。
完全に虚を突かれたような顔であるが、
はらはらと涙を流して泣いている顔よりはるかにいい。
「……え、旅行……?」
「そ、旅行」
「……誰が、行くんです?」
「乃亜と私と静と煉矢さん」
「は、はい……?」
聞き間違いかのように尋ねてきたが重ねて言うと一層の混乱が表情に広がった。
ましろはそれにくすりと笑い、乃亜の髪を二度三度と撫でて、立ち上がった。
「ちょっと静にも言ってくるから、席外すね」
「え、え、いえ、あの、ましろ……っ」
戸惑いと混乱が入り乱れて目を瞬かせる乃亜をそのままに
ましろはリビングを出て、ドアを後ろ手に閉め、静の自室へと向かう。
短い廊下を行き、こんこんとノックを一応して、
中から声があると同時にドアを開けた。
「ましろ、どうした?」
静はパソコンの前に座り、なにやらと作業をしているようだった。
やはり顔色はあまりよくない。
それを内心気にしつつ、さきほど乃亜に告げた時と同じようににこりと笑っていった。
「静、旅行行こう」
「は?」
やはり兄妹だ。目を丸くして驚く顔などそっくりである。
ましろは重ねて言った。
「乃亜と私と、静と、煉矢さんの四人で」
「……、待て、なにがどうしてそうなる?」
だが乃亜よりは多少回復ははやかったようだ。
訝し気に眉を寄せ、こちらの真意を測ろうとしているが
ましろは晴れやかに笑みを浮かべ、腕を組んだ。
「理由としてはリフレッシュだよね。
私が言えた義理じゃないけど、ここ数か月、心をすり減らしてたんでしょ」
「……ああ」
「身体の回復だって、まずは心が整わないと、ちゃんと効果は出ない。
身をもって経験してますもの、そのあたりは」
「説得力が違うな、お前が言うと」
「で、これが一番大きいんだけどさ」
デスクチェアの手すりに肘をつき、頬杖をついて苦笑いを浮かべる静に、
ましろは一歩二歩と近づき、人差し指を立て静に突きつける。
顔の正面に差し迫った指とましろの顔、思わず目が丸くなる。
「今のこの家の環境が、乃亜の精神衛生にいいって思える?」
「う……」
それには静も目を泳がせるほかにない。
ぐるりと迷う視線に、ましろは手を下げ、そしてそのまま、静の首に両腕を回した。
「リフレッシュも、心の回復も、乃亜だけじゃないよ」
「ましろ?」
「あなたにとっても、だよ、静」
「……」
乃亜だけではない。
詳しいこと、静が今なにを考え、なにを悩んでいるのか、
それをましろは聞いていない。
けれどひどくショックなことがあって、
それはおそらく乃亜のことが深く関係しているのは分かる。
ここまで静の表情が暗く、気落ちしている様子を見るのは、
幼い頃に、乃亜を保護しながらも、妹の惨状を知って泣いていたとき以来だ。
ましろの背中に腕がまわされ、
どこかすがるように、髪に擦り寄るような感触を感じる。
ましろも同じように、静の頭に頬を寄せ、髪を撫でた。
「いつもと違う場所に行けば、きっといろんなものが見える。
乃亜のことも、自分のことも、含めてね」
「……、そう、だな……」
「今度は、私が支えるよ。傍にいるから」
病気で苦しんでいた自分にかけてくれた言葉を告げる。
静はそれに気づいているかは分からない。
けれど抱きしめてくる腕に力がこもったことを感じ、ましろはもう一度頬を寄せ、
ぎゅっと抱きしめ返した。
もう少し、愛しい人のぬくもりの中にいたいが、そうもしていられない。
ましろが離れようとしたことを察した静も腕の力が弱くなる。
「それじゃ、旅行の件、よろしくね」
「……ああ、わかった。
ありがとう、ましろ」
申し訳ないような、けれど先ほどよりは表情はやわらかい。
ましろは安堵して離れ、出て行こうとドアに足を向けたが
そこでぴたりと止まった。
「煉矢さんにも連絡しておいてほしいのと、
あと、ちょっと直接伝えたいことがあるんだよね。
CORDのID、教えて欲しいから、聞いておいてくれない?」
「ん、ああ、別にそれは構わないが……。
しかし、旅行に煉矢も誘うのか?」
「そう。乃亜のことにしても、あなた一人より、心強いでしょう?」
まさか乃亜が恋心を抱いているからなどど当然言えるはずもない。
当たり障りなく、しかし的を射たことを告げれば
静は苦笑いを深くした。
「……否定できないのが痛いところだな」
「頼もしい親友でいいじゃないか」
「それもまた、否定できないな」
「ふふ、じゃあよろしくね。場所はこれから私と乃亜で決めるから」
ましろは来た時と同じように軽い足取りで部屋を出て行く。
静は一人残され、その後ろ姿を微笑みとともに見送っていた。
本当に彼女には敵わない。返す返す、静はそう思う。
いくらも情けない姿をさらし続けている自分だから、
今更取り繕いようもないし、するつもりもないのは聊か情けないが
ましろならば仕方がない、つい、そう思ってしまう。
抱き締めながら、優しく、諭すように言ってくれた言葉を思い返す。
" 乃亜のことも、自分のことも、含めてね "
ましろは当然察したのだ。
自分が乃亜に対して、以前のように接することができていないと。
それは態度だけの話ではなく、心でもそうだ。
乃亜の腕の故障、ヴァイオリンに対する思い、そして家出。
ちらと静は自室の端にある、乃亜のヴァイオリンを見る。
あれ以上、乃亜に身体を壊してほしくなくて、
ヴァイオリンを取り上げた。
しかしそれが結果的に、心を深く、傷つけたのだと、静は考えている。
自分がしたことで、愛する妹を、絶望の淵からどん底へと突き落とした。
薬師の施設で、乃亜がここに帰ると言ったとき、情けないことに泣きそうになった。
それほどのことをした自分を、それでも選んでくれたことにだ。
けれどあくまでこちらに気を使ってのことかもしれない。
そう思うと、素直に喜べなかった。
そのせいもあり、以来、以前のように接することができていない。
普段と違う場所なら、ましろはそういった。
たしかにそうかもしれない。
否、そうであると願いたい。
静は祈るように目を閉じ、溜息を吐き出した。
「……煉矢に連絡を入れるか」
CORDアプリを立ち上げ、煉矢とのチャットルームを開く。
先日乃亜の家出騒動の時、混乱の果てに煉矢に連絡をした。
今思い返すと完全にパニックになっていたが、
それでも相手が煉矢だったこともあり、
思考を冷静な方へと導いてくれたのは本当にありがたかった。
薬師から連絡を貰った時にすぐに煉矢にも連絡を入れた。
電話口で心底、安堵したような息を吐き出していたのは印象深い。
『ましろから、四人で旅行に行こうと提案された』
どう説明しようかと迷ったが、とりあえず用件だけを先に送る。
既読が付いたことから確認したのだろうが
返信に間が空いた。
手がふさがっているのか、それとも混乱しているのか。
後者の気が大変にしている。気持ちは分かる。
『何故そうなったのかまったく分からん』
全面的に同意である。
『乃亜の心の休息にはそれがいい、
リフレッシュして、心が回復しないと身体も回復が遅いからと
自身の経験を交えて話されたな』
『彼女が言うと説得力が違うな……』
なにか先ほど自分も同じことを言っていた気がして、静は小さく笑った。
『しかし、俺もか?』
『ああ、ましろの中ではすでにカウントされているようだった』
『都合はつけようと思えばつけられると思うが……』
『それと、ましろがお前に直接伝えたいことがあるそうだ。
CORDのIDを伝えても構わないか?』
『それは別段、構わない。
……しかし、お前の彼女は本当に17歳か?お前よりよほど冷静な』
『自覚していることを皆まで言うな。
……ちなみに、まだ誕生日前だけどな』
『自分で傷口に塩を塗ってどうする』
長年の親友とのやりとりは、いつもこのようにどこか軽快になっていく。
静は久方ぶりに少し心が軽くなったのを感じていた。
静から、というよりも、彼の彼女であるましろから
旅行に行こうという提案を受けた直後、煉矢は自室にて思わず声を上げていた。
静にもCORDで伝えた通り、なぜそうなった、というのが正直なところだ。
だが冷静になり、深く考えれば、
悪い提案ではないようにも思えた。
リフレッシュ目的。
たしかに、乃亜のことを考えればそれは理にかなっている。
自分が含まれているのは、おそらく静のフォローだ。
乃亜は勿論だが、あの妹を溺愛している兄が、さきの出来事で受けたダメージは計り知れない。
そんな男一人では不安もあるだろうし、あの兄妹をよく知る自分に白羽の矢を立てたのだろうと考えれば納得も出来る。
煉矢はベッドに横になり天井を見つめながら、
一週間前の出来事を思い返していた。
乃亜が家からいなくなったと聞いて、生きた心地がしなかった。
薬師の施設にいたということを聞いて、心の底から安堵した。
出来ることなら無事な姿を一目見たかった。
けれど、そのことで、また彼女を追い詰めるようなことになったら。
どうしてもそれが頭をよぎり、連絡は相変わらずしていない。
会いたい気持ちは募っている。
彼女とはアメリカで別れたきり、会っていない。
しかし、その気持ちに素直に従って、彼女がまた傷つくことになるのはいけない。
静から連絡を受けて一時間ほど経過した頃、
スマートフォンが震えた。
CORDアプリで、友達登録の通知だった。
雪見ましろ、と書かれたそれ。承諾して自分も追加の操作をする。
果たして彼女の言いたいこととはなんだ。
ましろのことについては、静から以前から話をきいていたし、
乃亜と親しくなってからは、乃亜からも話を聞いている。
おそらくましろも同様だろう。
お互いに会ったことはないが、
以前からの知り合いのような、そんな気がしている。
『雪見ましろです。静から旅行の件は聞きました?』
メッセージが飛んできた。
煉矢は少し考えて返信を打つ。
『聞いた。それと敬語はいらない。
静にもそうなら、俺にそうする必要ないぞ』
長い付き合いになるような気がしているし、
話を聞くに、なんだか年齢では推し量れないような大きさがある女性だ。
『分かった、ありがとう。
旅行だけど、次の日程で問題ない?静と乃亜は大丈夫だって聞いてるのと、
なるべく早くのほうがいいと思うから』
そうして続いた日付は確かに目前だった。
8/18~8/21。
三泊とはなかなかに豪勢な話だ。
別段経済的には余裕があるので気にはならないが、
せいぜい一泊程度かと思っていた。
スケジュールアプリを念のため見返してみたが、予定はない。
『予定は問題ない。ただ、ひとついいか?』
『うん、なに?』
どうしてもこれだけは言っておかなければならない。
『乃亜が、俺が同行することを望まないなら、俺は遠慮させてもらう。そこは必ず、確認してくれ』
もし今でも、連絡しないで欲しいと考えているなら、
それは最優先にしてほしい。
乃亜が今以上に傷つくことは、心の底から避けてほしい。
嫌だと言われて、自分の心が傷つくかもしれないが、それでもそれが一番の思いだった。
『分かった。ありがとう』
ましろからの返事には、礼が付け加えられていた。
その言葉に、ましろが乃亜のことを真摯に考えていることが察せ、少し安堵する。
スマートフォンを持つ手を額に当て、
再度天井を見つめる。
「……乃亜」
愛しい人の名前を、祈るようにつぶやいた。
旅行の相談をしてくるからとましろが静の自室へと向かった。
一度ましろは静に承諾させたと言って戻ってきて、
そのあと二人で場所について確認をした。
幸い、都心から車で2時間ほどの場所に、よいコテージの宿泊プランがあった。
自然に囲まれ、穏やかに過ごせそうな良い場所だ。
急遽空きができたのか、それとも盆休み明けだからか、
3泊素泊まりの固定プランだったが、その分1泊あたりの料金は通常より安い。
それを静に伝え確認しに向かったのだ。
ひとりダイニングに残った乃亜は、まだいまひとつ旅行について咀嚼しきれていない。
だがましろの言いたいことも分からないわけではないのだ。
確かにここしばらくの自分は、どこかおかしかったと思う。
ヴァイオリンが思うように弾けず、
けれど全面的に認めることも出来ず、
ただひたすらに、すがるようにヴァイオリンを弾き続けた。
自分の身体がおかしいことには気づいていた。
けれどそれさえ認めたくなかった。
その結果どうなるかなど、今思い返せば理解できるのに。
心はひどく疲弊して、壊れかけたのは間違いない。
今でもヴァイオリンが弾けないことには不安がひどくある。
身体が回復しても、同じように弾けないのではという不安も健在だ。
そして、それ以上に、今は兄と、煉矢のことが不安だった。
静は明らかに自分に対して態度が変わってしまった。
あれだけ身勝手なことをした自分になのだから当然。
乃亜はそれを甘んじて受けている。
それはひどく悲しいけれど、仕方がないと自分に言い聞かせた。
薬師の施設にいた方が良かったのではないか、と何度も思った。
けれどあの時、もし薬師の施設にいたら、
二度と静と一緒に暮らせないような、そんな予感がしたのだ。
面と向かって、それを告げられない限りは、
乃亜にとって、この家こそが自分の家だと信じたいのだ。
だからその選択によって自分が苦しむのはいい。
しかし、兄が苦しげにしているのは、耐え難かった。
そして、煉矢のこともそうだ。
彼との連絡は、いっさいしていない。
自分からそれを拒絶したのだから当然だ。
思い出すと胸が張り裂けそうになる。
乃亜はぎゅっと手を握ってそれに耐えた。
左手はサポーターで固定され動かなかったが、無意識に入った力が、
僅かに左手首に鈍痛をもたらした。
処方された鎮痛剤によって慢性的な痛みからは解放されているが、
力が無理にはいるとやはり鈍く痛む。
「乃亜」
ましろが戻ってきて顔をあげた。
「日程とか、場所とか大丈夫そうだよ。
……煉矢さんもね」
「……」
今はその名前を聞くだけでつらい。
唇の裏をかみしめ、眉を寄せる。涙が出そうだ。
「煉矢さんさ、乃亜が今は会いたくないようなら
遠慮するって言ってたよ」
「……っ!」
驚いて隣の椅子に腰掛けたましろをみた。
ましろは優しい笑みのままだった。
「乃亜のことを本当に考えてくれてるんだとおもう。
……煉矢さんとは、アメリカで別れて以来、会ってないんでしょ?」
「……あ、って、ません……っ」
会って失望されるのが怖い。
そんな思いで連絡さえ拒絶したのだ。
必死にこらえすぎて、身体が震える。
力みそうになる両手に、ましろが自身のそれを重ねてきた。
「乃亜が会いたくないようなら遠慮する。
……でもこれってさ、言い換えると、それがないなら、会いたいってことなんだよ」
「っ?!」
「煉矢さんも、乃亜に会いたいって、思ってくれてるんだよ」
驚き顔を上げた瞬間にこらえ続けたそれは限界に達した。
あんな一方的な言い方をしたのに、そんな風に思ってくれているなんて考えられない。
けれどそれは乃亜の心の奥に押し込めきれない想いを決壊させるには十分すぎた。
ましろは乃亜の手に自分の手を重ねたまま、
一方の手を背中に回して続ける。
「ねぇ、乃亜。
煉矢さんとも、きっと色々あったんだと思う。
それを話してとは言わないよ。
でもそういう色々、一回全部置いておいて、素直な気持ち聞かせて?
乃亜は、煉矢さんに、会いたくない?」
あれほど消えてほしい、消してほしいと願ったのに、一切色褪せない思い出が蘇る。
同じ家で一緒に過ごしたことも、
料理をしたり、コーヒーを飲みながら他愛なく話した。
大学では自身の勤めを淡々とこなしている姿を盗み見て、
その姿にときめきを覚えさえした。
自覚のない疲れに気付いてくれて、街に連れ出してくれた。
あのときもらったペンダントは大事な宝物になった。
イベントの終わり、過去を思い出すような出来事もあったが、
守るように抱きしめてくれた。
あの時のように、守ると強く言ってくれた。
最後の日、リビングでヴァイオリンを奏で、
それを見たこともないくらい柔らかな表情で見ていてくれた。
あの笑顔が、忘れられない。
「……い、たい……」
「うん」
「煉矢さんに……、会いたい……!」
ずっと堪えていたであろう、乃亜の願い。
かすれた声でそれを言い切った乃亜を、ましろは抱きしめた。
その夜。
煉矢のスマートフォンが再び震えた。
入浴を終えたタイミングで震えたそれを取り上げると、CORDの通知。
相手はましろだった。
確認してほしいと伝えたことの結果だろうか。
そう思うと少し怖さもある。
『大丈夫だったから、当日よろしく』
チャットルームを開くと、それは杞憂だったらしく、柄にもなくほっとした。
了解の返事を打ち込もうとする前に、新しいメッセージが続けて表示された。
『どうか、乃亜の心の灯台になってあげて。
あなたじゃなきゃ、乃亜の心はきっと晴れない』
返信を打っていた指先がぴたりと止まる。
煉矢はそのメッセージを見続ける。
その意味、ましろが自分にそれを託した意図、
その一切と共に、深い思考の海へと沈むほかなかった。
完全に虚を突かれたような顔であるが、
はらはらと涙を流して泣いている顔よりはるかにいい。
「……え、旅行……?」
「そ、旅行」
「……誰が、行くんです?」
「乃亜と私と静と煉矢さん」
「は、はい……?」
聞き間違いかのように尋ねてきたが重ねて言うと一層の混乱が表情に広がった。
ましろはそれにくすりと笑い、乃亜の髪を二度三度と撫でて、立ち上がった。
「ちょっと静にも言ってくるから、席外すね」
「え、え、いえ、あの、ましろ……っ」
戸惑いと混乱が入り乱れて目を瞬かせる乃亜をそのままに
ましろはリビングを出て、ドアを後ろ手に閉め、静の自室へと向かう。
短い廊下を行き、こんこんとノックを一応して、
中から声があると同時にドアを開けた。
「ましろ、どうした?」
静はパソコンの前に座り、なにやらと作業をしているようだった。
やはり顔色はあまりよくない。
それを内心気にしつつ、さきほど乃亜に告げた時と同じようににこりと笑っていった。
「静、旅行行こう」
「は?」
やはり兄妹だ。目を丸くして驚く顔などそっくりである。
ましろは重ねて言った。
「乃亜と私と、静と、煉矢さんの四人で」
「……、待て、なにがどうしてそうなる?」
だが乃亜よりは多少回復ははやかったようだ。
訝し気に眉を寄せ、こちらの真意を測ろうとしているが
ましろは晴れやかに笑みを浮かべ、腕を組んだ。
「理由としてはリフレッシュだよね。
私が言えた義理じゃないけど、ここ数か月、心をすり減らしてたんでしょ」
「……ああ」
「身体の回復だって、まずは心が整わないと、ちゃんと効果は出ない。
身をもって経験してますもの、そのあたりは」
「説得力が違うな、お前が言うと」
「で、これが一番大きいんだけどさ」
デスクチェアの手すりに肘をつき、頬杖をついて苦笑いを浮かべる静に、
ましろは一歩二歩と近づき、人差し指を立て静に突きつける。
顔の正面に差し迫った指とましろの顔、思わず目が丸くなる。
「今のこの家の環境が、乃亜の精神衛生にいいって思える?」
「う……」
それには静も目を泳がせるほかにない。
ぐるりと迷う視線に、ましろは手を下げ、そしてそのまま、静の首に両腕を回した。
「リフレッシュも、心の回復も、乃亜だけじゃないよ」
「ましろ?」
「あなたにとっても、だよ、静」
「……」
乃亜だけではない。
詳しいこと、静が今なにを考え、なにを悩んでいるのか、
それをましろは聞いていない。
けれどひどくショックなことがあって、
それはおそらく乃亜のことが深く関係しているのは分かる。
ここまで静の表情が暗く、気落ちしている様子を見るのは、
幼い頃に、乃亜を保護しながらも、妹の惨状を知って泣いていたとき以来だ。
ましろの背中に腕がまわされ、
どこかすがるように、髪に擦り寄るような感触を感じる。
ましろも同じように、静の頭に頬を寄せ、髪を撫でた。
「いつもと違う場所に行けば、きっといろんなものが見える。
乃亜のことも、自分のことも、含めてね」
「……、そう、だな……」
「今度は、私が支えるよ。傍にいるから」
病気で苦しんでいた自分にかけてくれた言葉を告げる。
静はそれに気づいているかは分からない。
けれど抱きしめてくる腕に力がこもったことを感じ、ましろはもう一度頬を寄せ、
ぎゅっと抱きしめ返した。
もう少し、愛しい人のぬくもりの中にいたいが、そうもしていられない。
ましろが離れようとしたことを察した静も腕の力が弱くなる。
「それじゃ、旅行の件、よろしくね」
「……ああ、わかった。
ありがとう、ましろ」
申し訳ないような、けれど先ほどよりは表情はやわらかい。
ましろは安堵して離れ、出て行こうとドアに足を向けたが
そこでぴたりと止まった。
「煉矢さんにも連絡しておいてほしいのと、
あと、ちょっと直接伝えたいことがあるんだよね。
CORDのID、教えて欲しいから、聞いておいてくれない?」
「ん、ああ、別にそれは構わないが……。
しかし、旅行に煉矢も誘うのか?」
「そう。乃亜のことにしても、あなた一人より、心強いでしょう?」
まさか乃亜が恋心を抱いているからなどど当然言えるはずもない。
当たり障りなく、しかし的を射たことを告げれば
静は苦笑いを深くした。
「……否定できないのが痛いところだな」
「頼もしい親友でいいじゃないか」
「それもまた、否定できないな」
「ふふ、じゃあよろしくね。場所はこれから私と乃亜で決めるから」
ましろは来た時と同じように軽い足取りで部屋を出て行く。
静は一人残され、その後ろ姿を微笑みとともに見送っていた。
本当に彼女には敵わない。返す返す、静はそう思う。
いくらも情けない姿をさらし続けている自分だから、
今更取り繕いようもないし、するつもりもないのは聊か情けないが
ましろならば仕方がない、つい、そう思ってしまう。
抱き締めながら、優しく、諭すように言ってくれた言葉を思い返す。
" 乃亜のことも、自分のことも、含めてね "
ましろは当然察したのだ。
自分が乃亜に対して、以前のように接することができていないと。
それは態度だけの話ではなく、心でもそうだ。
乃亜の腕の故障、ヴァイオリンに対する思い、そして家出。
ちらと静は自室の端にある、乃亜のヴァイオリンを見る。
あれ以上、乃亜に身体を壊してほしくなくて、
ヴァイオリンを取り上げた。
しかしそれが結果的に、心を深く、傷つけたのだと、静は考えている。
自分がしたことで、愛する妹を、絶望の淵からどん底へと突き落とした。
薬師の施設で、乃亜がここに帰ると言ったとき、情けないことに泣きそうになった。
それほどのことをした自分を、それでも選んでくれたことにだ。
けれどあくまでこちらに気を使ってのことかもしれない。
そう思うと、素直に喜べなかった。
そのせいもあり、以来、以前のように接することができていない。
普段と違う場所なら、ましろはそういった。
たしかにそうかもしれない。
否、そうであると願いたい。
静は祈るように目を閉じ、溜息を吐き出した。
「……煉矢に連絡を入れるか」
CORDアプリを立ち上げ、煉矢とのチャットルームを開く。
先日乃亜の家出騒動の時、混乱の果てに煉矢に連絡をした。
今思い返すと完全にパニックになっていたが、
それでも相手が煉矢だったこともあり、
思考を冷静な方へと導いてくれたのは本当にありがたかった。
薬師から連絡を貰った時にすぐに煉矢にも連絡を入れた。
電話口で心底、安堵したような息を吐き出していたのは印象深い。
『ましろから、四人で旅行に行こうと提案された』
どう説明しようかと迷ったが、とりあえず用件だけを先に送る。
既読が付いたことから確認したのだろうが
返信に間が空いた。
手がふさがっているのか、それとも混乱しているのか。
後者の気が大変にしている。気持ちは分かる。
『何故そうなったのかまったく分からん』
全面的に同意である。
『乃亜の心の休息にはそれがいい、
リフレッシュして、心が回復しないと身体も回復が遅いからと
自身の経験を交えて話されたな』
『彼女が言うと説得力が違うな……』
なにか先ほど自分も同じことを言っていた気がして、静は小さく笑った。
『しかし、俺もか?』
『ああ、ましろの中ではすでにカウントされているようだった』
『都合はつけようと思えばつけられると思うが……』
『それと、ましろがお前に直接伝えたいことがあるそうだ。
CORDのIDを伝えても構わないか?』
『それは別段、構わない。
……しかし、お前の彼女は本当に17歳か?お前よりよほど冷静な』
『自覚していることを皆まで言うな。
……ちなみに、まだ誕生日前だけどな』
『自分で傷口に塩を塗ってどうする』
長年の親友とのやりとりは、いつもこのようにどこか軽快になっていく。
静は久方ぶりに少し心が軽くなったのを感じていた。
静から、というよりも、彼の彼女であるましろから
旅行に行こうという提案を受けた直後、煉矢は自室にて思わず声を上げていた。
静にもCORDで伝えた通り、なぜそうなった、というのが正直なところだ。
だが冷静になり、深く考えれば、
悪い提案ではないようにも思えた。
リフレッシュ目的。
たしかに、乃亜のことを考えればそれは理にかなっている。
自分が含まれているのは、おそらく静のフォローだ。
乃亜は勿論だが、あの妹を溺愛している兄が、さきの出来事で受けたダメージは計り知れない。
そんな男一人では不安もあるだろうし、あの兄妹をよく知る自分に白羽の矢を立てたのだろうと考えれば納得も出来る。
煉矢はベッドに横になり天井を見つめながら、
一週間前の出来事を思い返していた。
乃亜が家からいなくなったと聞いて、生きた心地がしなかった。
薬師の施設にいたということを聞いて、心の底から安堵した。
出来ることなら無事な姿を一目見たかった。
けれど、そのことで、また彼女を追い詰めるようなことになったら。
どうしてもそれが頭をよぎり、連絡は相変わらずしていない。
会いたい気持ちは募っている。
彼女とはアメリカで別れたきり、会っていない。
しかし、その気持ちに素直に従って、彼女がまた傷つくことになるのはいけない。
静から連絡を受けて一時間ほど経過した頃、
スマートフォンが震えた。
CORDアプリで、友達登録の通知だった。
雪見ましろ、と書かれたそれ。承諾して自分も追加の操作をする。
果たして彼女の言いたいこととはなんだ。
ましろのことについては、静から以前から話をきいていたし、
乃亜と親しくなってからは、乃亜からも話を聞いている。
おそらくましろも同様だろう。
お互いに会ったことはないが、
以前からの知り合いのような、そんな気がしている。
『雪見ましろです。静から旅行の件は聞きました?』
メッセージが飛んできた。
煉矢は少し考えて返信を打つ。
『聞いた。それと敬語はいらない。
静にもそうなら、俺にそうする必要ないぞ』
長い付き合いになるような気がしているし、
話を聞くに、なんだか年齢では推し量れないような大きさがある女性だ。
『分かった、ありがとう。
旅行だけど、次の日程で問題ない?静と乃亜は大丈夫だって聞いてるのと、
なるべく早くのほうがいいと思うから』
そうして続いた日付は確かに目前だった。
8/18~8/21。
三泊とはなかなかに豪勢な話だ。
別段経済的には余裕があるので気にはならないが、
せいぜい一泊程度かと思っていた。
スケジュールアプリを念のため見返してみたが、予定はない。
『予定は問題ない。ただ、ひとついいか?』
『うん、なに?』
どうしてもこれだけは言っておかなければならない。
『乃亜が、俺が同行することを望まないなら、俺は遠慮させてもらう。そこは必ず、確認してくれ』
もし今でも、連絡しないで欲しいと考えているなら、
それは最優先にしてほしい。
乃亜が今以上に傷つくことは、心の底から避けてほしい。
嫌だと言われて、自分の心が傷つくかもしれないが、それでもそれが一番の思いだった。
『分かった。ありがとう』
ましろからの返事には、礼が付け加えられていた。
その言葉に、ましろが乃亜のことを真摯に考えていることが察せ、少し安堵する。
スマートフォンを持つ手を額に当て、
再度天井を見つめる。
「……乃亜」
愛しい人の名前を、祈るようにつぶやいた。
旅行の相談をしてくるからとましろが静の自室へと向かった。
一度ましろは静に承諾させたと言って戻ってきて、
そのあと二人で場所について確認をした。
幸い、都心から車で2時間ほどの場所に、よいコテージの宿泊プランがあった。
自然に囲まれ、穏やかに過ごせそうな良い場所だ。
急遽空きができたのか、それとも盆休み明けだからか、
3泊素泊まりの固定プランだったが、その分1泊あたりの料金は通常より安い。
それを静に伝え確認しに向かったのだ。
ひとりダイニングに残った乃亜は、まだいまひとつ旅行について咀嚼しきれていない。
だがましろの言いたいことも分からないわけではないのだ。
確かにここしばらくの自分は、どこかおかしかったと思う。
ヴァイオリンが思うように弾けず、
けれど全面的に認めることも出来ず、
ただひたすらに、すがるようにヴァイオリンを弾き続けた。
自分の身体がおかしいことには気づいていた。
けれどそれさえ認めたくなかった。
その結果どうなるかなど、今思い返せば理解できるのに。
心はひどく疲弊して、壊れかけたのは間違いない。
今でもヴァイオリンが弾けないことには不安がひどくある。
身体が回復しても、同じように弾けないのではという不安も健在だ。
そして、それ以上に、今は兄と、煉矢のことが不安だった。
静は明らかに自分に対して態度が変わってしまった。
あれだけ身勝手なことをした自分になのだから当然。
乃亜はそれを甘んじて受けている。
それはひどく悲しいけれど、仕方がないと自分に言い聞かせた。
薬師の施設にいた方が良かったのではないか、と何度も思った。
けれどあの時、もし薬師の施設にいたら、
二度と静と一緒に暮らせないような、そんな予感がしたのだ。
面と向かって、それを告げられない限りは、
乃亜にとって、この家こそが自分の家だと信じたいのだ。
だからその選択によって自分が苦しむのはいい。
しかし、兄が苦しげにしているのは、耐え難かった。
そして、煉矢のこともそうだ。
彼との連絡は、いっさいしていない。
自分からそれを拒絶したのだから当然だ。
思い出すと胸が張り裂けそうになる。
乃亜はぎゅっと手を握ってそれに耐えた。
左手はサポーターで固定され動かなかったが、無意識に入った力が、
僅かに左手首に鈍痛をもたらした。
処方された鎮痛剤によって慢性的な痛みからは解放されているが、
力が無理にはいるとやはり鈍く痛む。
「乃亜」
ましろが戻ってきて顔をあげた。
「日程とか、場所とか大丈夫そうだよ。
……煉矢さんもね」
「……」
今はその名前を聞くだけでつらい。
唇の裏をかみしめ、眉を寄せる。涙が出そうだ。
「煉矢さんさ、乃亜が今は会いたくないようなら
遠慮するって言ってたよ」
「……っ!」
驚いて隣の椅子に腰掛けたましろをみた。
ましろは優しい笑みのままだった。
「乃亜のことを本当に考えてくれてるんだとおもう。
……煉矢さんとは、アメリカで別れて以来、会ってないんでしょ?」
「……あ、って、ません……っ」
会って失望されるのが怖い。
そんな思いで連絡さえ拒絶したのだ。
必死にこらえすぎて、身体が震える。
力みそうになる両手に、ましろが自身のそれを重ねてきた。
「乃亜が会いたくないようなら遠慮する。
……でもこれってさ、言い換えると、それがないなら、会いたいってことなんだよ」
「っ?!」
「煉矢さんも、乃亜に会いたいって、思ってくれてるんだよ」
驚き顔を上げた瞬間にこらえ続けたそれは限界に達した。
あんな一方的な言い方をしたのに、そんな風に思ってくれているなんて考えられない。
けれどそれは乃亜の心の奥に押し込めきれない想いを決壊させるには十分すぎた。
ましろは乃亜の手に自分の手を重ねたまま、
一方の手を背中に回して続ける。
「ねぇ、乃亜。
煉矢さんとも、きっと色々あったんだと思う。
それを話してとは言わないよ。
でもそういう色々、一回全部置いておいて、素直な気持ち聞かせて?
乃亜は、煉矢さんに、会いたくない?」
あれほど消えてほしい、消してほしいと願ったのに、一切色褪せない思い出が蘇る。
同じ家で一緒に過ごしたことも、
料理をしたり、コーヒーを飲みながら他愛なく話した。
大学では自身の勤めを淡々とこなしている姿を盗み見て、
その姿にときめきを覚えさえした。
自覚のない疲れに気付いてくれて、街に連れ出してくれた。
あのときもらったペンダントは大事な宝物になった。
イベントの終わり、過去を思い出すような出来事もあったが、
守るように抱きしめてくれた。
あの時のように、守ると強く言ってくれた。
最後の日、リビングでヴァイオリンを奏で、
それを見たこともないくらい柔らかな表情で見ていてくれた。
あの笑顔が、忘れられない。
「……い、たい……」
「うん」
「煉矢さんに……、会いたい……!」
ずっと堪えていたであろう、乃亜の願い。
かすれた声でそれを言い切った乃亜を、ましろは抱きしめた。
その夜。
煉矢のスマートフォンが再び震えた。
入浴を終えたタイミングで震えたそれを取り上げると、CORDの通知。
相手はましろだった。
確認してほしいと伝えたことの結果だろうか。
そう思うと少し怖さもある。
『大丈夫だったから、当日よろしく』
チャットルームを開くと、それは杞憂だったらしく、柄にもなくほっとした。
了解の返事を打ち込もうとする前に、新しいメッセージが続けて表示された。
『どうか、乃亜の心の灯台になってあげて。
あなたじゃなきゃ、乃亜の心はきっと晴れない』
返信を打っていた指先がぴたりと止まる。
煉矢はそのメッセージを見続ける。
その意味、ましろが自分にそれを託した意図、
その一切と共に、深い思考の海へと沈むほかなかった。
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