75 / 77
風の行方編
【風の行方編】74:xx17年11月19日
しおりを挟む
午前中は晴れていたが昼頃を過ぎてから徐々に曇り空が広がってきた11月の半ば。
キャメル色のコートの下に、チャコールカラーのニットワンピースを着こみ、
耳にはクリスタルガラスのイアリングをつけ、乃亜は煉矢との待ち合わせの駅へと向かっていた。
結局、あのメッセージには上手く返信が出来なかった。
なにか気を悪くしていないといいが、という不安はあるけれど
今までに見せたことのない彼の言葉に戸惑いのほうが大きかった。
電車のドアの上にある行き先表示のパネルが
次の到着駅を指し示している。待ち合わせの駅だ。
電車が止まり階段を降りていく。
事前に確認したところ、幸いなことに改札口はひとつだけだった。
それであれば迷うことはない。
階段を降り改札へ向かうと、抜けたところにその人がすでに立っていた。
向こうもこちらに気付いたようで、軽く手を上げてくれた。
交通ICカードで改札を抜け、黒のチェスターコートを着た煉矢の元に駆けよった。
「お待たせしました、煉矢さん」
「いや、俺もひとつ前の電車だったから、気にしないでいい」
その柔らかな笑みはいつもと変わらない。
それに心底安堵した。
だがいつもと同じなのはここまでだった。
煉矢はそっと乃亜の耳元に手を伸ばした。
「今日も付けてくれてるんだな」
「え、あ……、は、はい……」
指先が耳に触れる。
否、煉矢が触れたのは贈られたイアリングだ。
それは分かっているが、突然のことにただ心臓が跳ねた。
見つめられる眼差しが甘い。
跳ねた心臓は急速に頬を赤く染めていった。
「じゃあ行くか」
「は、い……」
何事もなかったかのように、どこか少し機嫌が良い雰囲気で
彼は当たり前のように肩に触れ、目が泳いでしまう。
今年に入り、幾度か一緒に出掛けることがあった。
そのたびに乃亜はもちろん、彼の仕草や眼差し、言動にときめきを覚えていた。
しかしそれでも繰り返しそれを経験することで
いくらか、本当にわずかながらでも、慣れ、というものを感じてきていたのだ。
だがここにきて、ひどく直接的な様相に変わったような気がする。
感じられる雰囲気や、こちらに向けられる瞳、接触や、距離感。
以前会った時はこうではなかったと思うのに。
ひたすらそれに内心混乱を覚えながら、
乃亜は煉矢にエスコートされるように道なりを進む。
駅前の広場を出て、バス通りを少し歩いたあと、裏通りにひとつ入った場所にそれはあった。
一見、昔ながらの区民ホールという雰囲気もあるが
二階のエントランスに入ると中は近代的な雰囲気に整えられていた。
入口の横に本日のイベントとして、チケットに書かれていたイベント名が書かれていた。
中に入るとすでに何人もの客が集まっていた。
三味線とはいってもイベントの内容が斬新だからか
年齢層は幅広く、自分たちと同じくらいの客も幾人もいる。
受付、と書かれたそこに向かい、
二人はそれぞれチケットを差し出して入場の手続きを済ませた。
まだ開始までは多少時間があった。
来場している客はすでに劇場内にいるのか、ロビーまでくるとさほど人はいない。
「ノア!レン!」
劇場内の方からの声に二人は顔を向ける。
今日自分たちを招待したニックが、満面の笑みで手を振って駆け寄ってきた。
「ニックさ、ん……っ?」
思わず声が上ずったのは、身体が突然移動させられたからだった。
煉矢がまるで守るように乃亜の肩を抱き、自身に引き寄せたのである。
それを見たニックは少し驚くも、それを見て、ふうん?と挑発的に目が光った。
「二人とも来てくれて嬉しいよ」
「ああ、招待感謝する」
にこやかに会話をしているはずなのに、なにかうすら寒さを感じた。
乃亜は煉矢に突然肩を引き寄せられたことも動揺しながら、
とりあえずニックに伝えるべきことを伝えることにした。
「……、えと、兄さんたちがいけなくて申し訳ないと」
「用事があるならしょうがないよ。
二人はきてくれたし、乃亜はコンクール前なのに『僕の為』にありがとね?」
ぴくり、と煉矢の眉が僅かに反応を示した。
乃亜の肩を抱く手に力が入る。
「なにか参考に『なれば』いいな、乃亜」
「……は、はい」
何故だろう。
煉矢もニックも大変笑顔であるはずなのに、とても怖い。
乃亜は内心冷や汗をかいた。
「こんな場所でウロウロしていていいのか?お前、ほぼ主演だろう?」
「準主演くらいだよ。まだ時間はあるしお喋りできるから大丈夫!」
「……」
舌打ちのようなものが聞こえたような気がするが、気のせいだと信じたい。
二人の謎の空気感にどきどきしていると、ニックがぱっとこちらに視線を向けた。
「それより乃亜、そのイヤリングとっても君に似合ってるね!
君の魅力を引き立ててて、ぴったり!」
「あ、ありがとうございます」
「去年の誕生日にな。乃亜もよくつけてくれている」
「……へぇ?」
得意げな様子でそう言い、肩に触れる手が耳に触れた。
それに違う意味でドキドキとしていた心臓が純粋に跳ね、頬を赤く染めた。
オリーブ色の瞳の奥がまた光る。
「乃亜の誕生日いつなの?」
「え、あ、い、1/20です……」
「1月なんだ!じゃあ乃亜、誕生日にデートしよう?」
「えっ」
「僕、1月中はまだ日本にいる予定だしさ!ね、今度は二人っきりで会いたいな」
少し屈んで乃亜の瞳を間近で見つめる。
目元に朱が差し、柔らかな笑みを浮かべる彼に乃亜は目を逸らせないでいる。
煉矢はついに我慢がしきれなくなり、口をひらいた。
「おい、ニック……」
「ニックさん、あの、ごめんなさい。
誕生日は……誕生日は、予定が、入る、と……思うので……」
「!」
まさか乃亜が断るとは思わなかった。
煉矢はそれに驚き視線を乃亜へと向けると、彼女は頬を染めながら
ちらとこちらに視線を一瞬向けた。
思い上がりか。
ただの自惚れか。
誕生日は、煉矢と過ごすから、と。
まるでそう訴えているような仕草に思え、
胸の内に湧き上がっていた黒い独占欲が満たされ、
すっと光が差し込んだ心地になった。
「……そっか、残念」
「ごめんなさい……」
「ううん、いきなりごめんね」
ニックは少し寂し気な笑みを一瞬浮かべ、すぐににこりと笑った。
屈んでいた姿勢を戻して、煉矢に目を向けた。
「ねぇ、レン、少しだけ僕と話してくれない?」
思いもよらない提案に、煉矢は怪訝な目を向けた。
最初はなにを考えているのかと思ったが、ニックの表情は真剣だった。
戸惑う乃亜に待っていてくれるように話し、
二人はロビーの端、乃亜から離れた場所に移動した。
「...So, what's up? Out of nowhere.」
(……それで、なんだ。いきなり)
おそらく聞かれたくないことを話すのだろうことを察して英語で振れば、
彼は壁に寄り掛かりながら苦笑いを浮かべた。
「Jumping right to the point? No small talk or anything?」
(いきなり本題に入っちゃう?少し雑談とかないの?)
「Nope. I've got Noah waiting alone. And you're about to go on stage too, right?」
(ない。乃亜を一人待たせてる。お前ももうすぐ本番だろうが)
「Well, yeah.」
(まーね)
ニックは、はぁ、と溜息を吐いた。
先ほどのような明るさは息をひそめ、眉をハの字に落としている。
「I was kind of hoping, just maybe, it'd be like when we were in the States.」
(ワンチャン、アメリカにいたときと同じだったらと思ってたのにな)
どこか自嘲気味だ。
煉矢はそれに眉をひそめた。
「Because, Ren, you were like Noah's big brother. What a shame.」
(レン、乃亜のお兄ちゃんって感じだったから。惜しいなぁ)
「...Hold on, Nick, are you serious about...」
(……おい、ニック、お前本気で)
「I am. I seriously love Noah's violin.」
(本気だよ。本気で乃亜のヴァイオリンを愛してるんだ)
「..Only her violin?」
(……ヴァイオリンだけだと)
「No way. Noah is super cute and charming.
So... if I could, I would've wanted to whisk her away to the States.」
(まさか。乃亜はとっても可愛いし魅力的さ。
だから……できたら、アメリカに攫って行きたかったよ)
やはりそうだった。
煉矢はニックの言葉に苛立ちも感じるが、同時に納得もした。
ニックの乃亜への情熱的なアピールは、決して彼女の音楽に対してのものだけに見えなかった。
自分もまた、乃亜へ深い想いがあるから余計に察したのかもしれない。
眉を顰める煉矢に、ニックは顔を向け、笑みを消して続けた。
「Ren, you're a really kind and good guy.
You're super talented, and you care about your friends.
So, this is a piece of advice for a guy like you.」
(レン、君はとても親切でいい人だ。
とても優秀だし、友達思いだし。だからそんな君に忠告だよ)
「Advice?」
(忠告?)
ニックは、視線を逸らした。
こちらから目を逸らしたというよりも、彼にとって背中側にいる乃亜を示している。
彼女はスマートフォンを取り出して時間をつぶしているようだ。
「Noah's talent is the real deal. It won't be long before she captivates the world.
If you plan on staying by Noah's side,
if you take your eyes off her for even a second,
she'll be somewhere you can't reach.
But the music world isn't always kind. Noah, she has a delicate side, doesn't she?」
(乃亜の才能は本物だ。そう遠くない未来に彼女は世界を魅了する。
もし君が、乃亜の隣に居続けたとしても、ちょっと目を離した隙に、
彼女は君の手の届かない所に行ってしまうよ。
でも音楽の世界は優しいばかりじゃない。乃亜は、ちょっと脆いところあるでしょ)
「Yeah...」
(ああ……)
「That's what I'm worried about.
That she might get broken by cruel words, like what happened with Ava.」
(僕はそれが心配なんだよ。
無慈悲な言葉の暴力に、壊されちゃうんじゃないかって。アヴァの時みたいにさ)
ニックは眉を寄せ、額を抱える。
それは煉矢にとってもあまり思い出したくない記憶だ。
愉快なことが多かった短期留学での記憶だが、唯一、思い出したくないのがあの女の記憶。
特に、乃亜が参加したイベントの最終日では、あまりにも幼い思考回路で心底軽蔑した。
なにより、その身勝手な言い分で乃亜にひどい言葉を浴びせかけた。
思い返すとはらわたが煮えくり返りそうだ。
過去のトラウマがぶり返したのだろう乃亜は顔面蒼白で震えていた。
ニックは乃亜の過去を知らない。
だがそれでも尋常ではない怯えように、そういった結論には至っているのだろう。
彼は顔を上げ、改めて煉矢に向き合った。
どこか揺れるオリーブ色の瞳は苦く笑い、煉矢の肩をぽんと叩いた。
「So, don't take your eyes off her and protect her. I'm counting on you.」
(だから、目を離さず守ってあげて。頼んだよ)
それで話は終わりだというように、
こちらがなにかを言う前に、ニックはにこりと笑って踵を返し、
乃亜の元へと駆けて行った。
乃亜に一言二言話しかけ、乃亜は戸惑いつつも頷く様子を見せる。
そして片腕を高く振り上げ、廊下の向こうへと姿を消していった。
その様子はもういつものニックだった。
その後、二人はまもなく開演のアナウンスと共に席についた。
空席もあるが多くの人が座席についている。
二人が座ったのは後ろから二番目の端の席だった。
すぐに会場内は暗くなり、イベントは開演した。
50代から60代ほどの三味線奏者の演奏を皮切りに、ニックが登場して二人での共演。
更にニックのソロ演奏や、エレキギターやドラムとのセッションは
まるでロックバンドのような迫力があった。
またピアノやコントラバスとの共演に関してはクラシックのような雰囲気さえ感じさせる。
それらの演奏は確かに素晴らしかったと思うが、
煉矢はどこか集中しきれずにいた。先ほどのニックの話が頭から離れない。
隣に座る乃亜の様子を見る。
乃亜は繰り広げられるステージを食い入るように見ている。
瞳を見開き、そのあらゆる音を聞き逃さず、
すべて吸収し、自分の中へ飲み込もうとするように。
集中しているなんて言葉では言い表せないほど、
彼女は全身でそのステージに身をゆだねているようだ。
" Noah's talent is the real deal. It won't be long before she captivates the world. "
(乃亜の才能は本物だ。そう遠くない未来に彼女は世界を魅了する)
煉矢は音楽の素人だ。
乃亜のヴァイオリンが素晴らしいことは理解しているつもりだったが
それでもあくまで、素人としての、曖昧な見解に過ぎなかった。
それは静も、ましろも同じだ。
しかしニックは違う。
彼は本物のアーティストであり、乃亜と同じ優れた才能を持ち、それを日々磨いている。
乃亜と同じ、音楽に深く傾倒し、その世界を生きている者。
そんな、乃亜と同じ世界にいる者が、乃亜の才能を認め、将来を確信するようなことを告げた。
今まで煉矢が、曖昧に感じていたことが、確かな形を持ってたたきつけられたのだ。
" she'll be somewhere you can't reach. "
(彼女は君の手の届かない所に行ってしまうよ)
先のブロック本選でも見せた乃亜の演奏は、全身が震えるほどのものだった。
彼女はその大きな才能を、ついに開花させたのではと考えている。
自分の手の届かないところへ行ってしまう。
そのヴァイオリンという大きな翼を持って、羽ばたいて。
こちらを振り返ることなく。
ステージで見せた、あの自信に満ちた表情で。
ぞくりと震えが背中を走った。
もう一度乃亜に視線を向ける。
彼女は集中しきり、こちらが目を向けていることには一切気付いていない。
彼女からの想いは感じ取っている。
しかし、音楽を前にした時、その中にいる時、ヴァイオリンを奏でているとき、
それは確かに、存在してくれているのか。
そんな身勝手な思いを打ち消すように煉矢は強く手を握った。
馬鹿らしい。
そんな風に考えることはあまりにも愚かで烏滸がましい。
何より、今の乃亜は、自分のものではないのだ。
少し前までお互いに掛け替えのない存在だと感じられていた。
けれどその名も無き絆が、ひどく煉矢を不安にさせていた。
彼女がその翼で遠くへ行こうとしても、引き止める資格すらない。
ただ黙って、見送るしかできない現実に、改めて、気づいた。
一時間半ほどのステージは観客たちの大喝采をもって幕を閉じた。
乃亜としても内容は大変興味深かったし、刺激を多くもらえた。
やはりニックの演奏は素晴らしいと思ったし、
色々と考えながらも、それでも来たことは間違いではなかった。
来場客が次々と退場していく中、乃亜は隣の煉矢に声をかける。
彼はぼんやりとステージを眺めているだけで、動こうとしなかったからだ。
その表情は浮かない。
「煉矢さん……?」
「……ああ、帰るか」
彼はどこか心ここに在らずだった。
開演前にニックとなにを話していたのか、それは乃亜は知らないし
内容については想像もできない。
ただ、ニックからデートに誘われ、自分はそれを断った。
誕生日は、予定が入る。
きっと、この人と過ごすことになる。
そう暗に込めた想いは、通じているだろうか。
先のメッセージでも、嫉妬のような言葉をかけられた。
乃亜は肘掛けに置かれた煉矢の手に、自らのそれを重ねた。
乃亜がこうして触れるのは初めてだった。
当然彼は驚き、視線をこちらに向けてくる。
乃亜は目が合うと同時に視線を落とした。
手に触れるというだけでいくらも勇気が必要だったのだ。視線には応えられる気がしない。
「……ニックさんと、何を話していたか、私は知りません。
なので、あなたがなにを考えているか、分かりませんが……。
ただ……私は、あなたと……」
乃亜の頬は急速に赤くなる。
まるで告白のように聞こえてしまうのは分かっている。
けれどどうしても、疑ってほしくなかった。
今更彼への想いは揺らぐことなどない。それを伝えたかった。
待っていてほしい、と告げたのは自分だ。
考えようによっては、大変に身勝手である。
しかし、それでも、どこか辛そうに見える煉矢に、なにか言葉をかけたかった。
「……だから……、……傍に……」
掠れるような声で、周囲のざわめきにかき消されそうだったけれど、確かに口にしたそれ。
真っ赤な顔で、震える手で。
乃亜はそれ以上は耐えられず、立ち上がろうとしたがその手を煉矢に取られた。
熱く、大きな手だった。
はっとして視線を向けると、眉を寄せた煉矢がまっすぐにこちらを見ている。
「乃亜、コンクールが終わったあとに、時間をくれ」
「……え?」
捕まれた手に力がこもった。
「悪いがそれが、お前を待つ限界だ」
「煉矢さん……」
「もう、それ以上は待てない」
「は……はい」
煉矢の瞳には今までにないほど深く色濃い熱があった。
乃亜はそれに吸い込まれそうなのをなんとかこらえ、小さく頷いた。
キャメル色のコートの下に、チャコールカラーのニットワンピースを着こみ、
耳にはクリスタルガラスのイアリングをつけ、乃亜は煉矢との待ち合わせの駅へと向かっていた。
結局、あのメッセージには上手く返信が出来なかった。
なにか気を悪くしていないといいが、という不安はあるけれど
今までに見せたことのない彼の言葉に戸惑いのほうが大きかった。
電車のドアの上にある行き先表示のパネルが
次の到着駅を指し示している。待ち合わせの駅だ。
電車が止まり階段を降りていく。
事前に確認したところ、幸いなことに改札口はひとつだけだった。
それであれば迷うことはない。
階段を降り改札へ向かうと、抜けたところにその人がすでに立っていた。
向こうもこちらに気付いたようで、軽く手を上げてくれた。
交通ICカードで改札を抜け、黒のチェスターコートを着た煉矢の元に駆けよった。
「お待たせしました、煉矢さん」
「いや、俺もひとつ前の電車だったから、気にしないでいい」
その柔らかな笑みはいつもと変わらない。
それに心底安堵した。
だがいつもと同じなのはここまでだった。
煉矢はそっと乃亜の耳元に手を伸ばした。
「今日も付けてくれてるんだな」
「え、あ……、は、はい……」
指先が耳に触れる。
否、煉矢が触れたのは贈られたイアリングだ。
それは分かっているが、突然のことにただ心臓が跳ねた。
見つめられる眼差しが甘い。
跳ねた心臓は急速に頬を赤く染めていった。
「じゃあ行くか」
「は、い……」
何事もなかったかのように、どこか少し機嫌が良い雰囲気で
彼は当たり前のように肩に触れ、目が泳いでしまう。
今年に入り、幾度か一緒に出掛けることがあった。
そのたびに乃亜はもちろん、彼の仕草や眼差し、言動にときめきを覚えていた。
しかしそれでも繰り返しそれを経験することで
いくらか、本当にわずかながらでも、慣れ、というものを感じてきていたのだ。
だがここにきて、ひどく直接的な様相に変わったような気がする。
感じられる雰囲気や、こちらに向けられる瞳、接触や、距離感。
以前会った時はこうではなかったと思うのに。
ひたすらそれに内心混乱を覚えながら、
乃亜は煉矢にエスコートされるように道なりを進む。
駅前の広場を出て、バス通りを少し歩いたあと、裏通りにひとつ入った場所にそれはあった。
一見、昔ながらの区民ホールという雰囲気もあるが
二階のエントランスに入ると中は近代的な雰囲気に整えられていた。
入口の横に本日のイベントとして、チケットに書かれていたイベント名が書かれていた。
中に入るとすでに何人もの客が集まっていた。
三味線とはいってもイベントの内容が斬新だからか
年齢層は幅広く、自分たちと同じくらいの客も幾人もいる。
受付、と書かれたそこに向かい、
二人はそれぞれチケットを差し出して入場の手続きを済ませた。
まだ開始までは多少時間があった。
来場している客はすでに劇場内にいるのか、ロビーまでくるとさほど人はいない。
「ノア!レン!」
劇場内の方からの声に二人は顔を向ける。
今日自分たちを招待したニックが、満面の笑みで手を振って駆け寄ってきた。
「ニックさ、ん……っ?」
思わず声が上ずったのは、身体が突然移動させられたからだった。
煉矢がまるで守るように乃亜の肩を抱き、自身に引き寄せたのである。
それを見たニックは少し驚くも、それを見て、ふうん?と挑発的に目が光った。
「二人とも来てくれて嬉しいよ」
「ああ、招待感謝する」
にこやかに会話をしているはずなのに、なにかうすら寒さを感じた。
乃亜は煉矢に突然肩を引き寄せられたことも動揺しながら、
とりあえずニックに伝えるべきことを伝えることにした。
「……、えと、兄さんたちがいけなくて申し訳ないと」
「用事があるならしょうがないよ。
二人はきてくれたし、乃亜はコンクール前なのに『僕の為』にありがとね?」
ぴくり、と煉矢の眉が僅かに反応を示した。
乃亜の肩を抱く手に力が入る。
「なにか参考に『なれば』いいな、乃亜」
「……は、はい」
何故だろう。
煉矢もニックも大変笑顔であるはずなのに、とても怖い。
乃亜は内心冷や汗をかいた。
「こんな場所でウロウロしていていいのか?お前、ほぼ主演だろう?」
「準主演くらいだよ。まだ時間はあるしお喋りできるから大丈夫!」
「……」
舌打ちのようなものが聞こえたような気がするが、気のせいだと信じたい。
二人の謎の空気感にどきどきしていると、ニックがぱっとこちらに視線を向けた。
「それより乃亜、そのイヤリングとっても君に似合ってるね!
君の魅力を引き立ててて、ぴったり!」
「あ、ありがとうございます」
「去年の誕生日にな。乃亜もよくつけてくれている」
「……へぇ?」
得意げな様子でそう言い、肩に触れる手が耳に触れた。
それに違う意味でドキドキとしていた心臓が純粋に跳ね、頬を赤く染めた。
オリーブ色の瞳の奥がまた光る。
「乃亜の誕生日いつなの?」
「え、あ、い、1/20です……」
「1月なんだ!じゃあ乃亜、誕生日にデートしよう?」
「えっ」
「僕、1月中はまだ日本にいる予定だしさ!ね、今度は二人っきりで会いたいな」
少し屈んで乃亜の瞳を間近で見つめる。
目元に朱が差し、柔らかな笑みを浮かべる彼に乃亜は目を逸らせないでいる。
煉矢はついに我慢がしきれなくなり、口をひらいた。
「おい、ニック……」
「ニックさん、あの、ごめんなさい。
誕生日は……誕生日は、予定が、入る、と……思うので……」
「!」
まさか乃亜が断るとは思わなかった。
煉矢はそれに驚き視線を乃亜へと向けると、彼女は頬を染めながら
ちらとこちらに視線を一瞬向けた。
思い上がりか。
ただの自惚れか。
誕生日は、煉矢と過ごすから、と。
まるでそう訴えているような仕草に思え、
胸の内に湧き上がっていた黒い独占欲が満たされ、
すっと光が差し込んだ心地になった。
「……そっか、残念」
「ごめんなさい……」
「ううん、いきなりごめんね」
ニックは少し寂し気な笑みを一瞬浮かべ、すぐににこりと笑った。
屈んでいた姿勢を戻して、煉矢に目を向けた。
「ねぇ、レン、少しだけ僕と話してくれない?」
思いもよらない提案に、煉矢は怪訝な目を向けた。
最初はなにを考えているのかと思ったが、ニックの表情は真剣だった。
戸惑う乃亜に待っていてくれるように話し、
二人はロビーの端、乃亜から離れた場所に移動した。
「...So, what's up? Out of nowhere.」
(……それで、なんだ。いきなり)
おそらく聞かれたくないことを話すのだろうことを察して英語で振れば、
彼は壁に寄り掛かりながら苦笑いを浮かべた。
「Jumping right to the point? No small talk or anything?」
(いきなり本題に入っちゃう?少し雑談とかないの?)
「Nope. I've got Noah waiting alone. And you're about to go on stage too, right?」
(ない。乃亜を一人待たせてる。お前ももうすぐ本番だろうが)
「Well, yeah.」
(まーね)
ニックは、はぁ、と溜息を吐いた。
先ほどのような明るさは息をひそめ、眉をハの字に落としている。
「I was kind of hoping, just maybe, it'd be like when we were in the States.」
(ワンチャン、アメリカにいたときと同じだったらと思ってたのにな)
どこか自嘲気味だ。
煉矢はそれに眉をひそめた。
「Because, Ren, you were like Noah's big brother. What a shame.」
(レン、乃亜のお兄ちゃんって感じだったから。惜しいなぁ)
「...Hold on, Nick, are you serious about...」
(……おい、ニック、お前本気で)
「I am. I seriously love Noah's violin.」
(本気だよ。本気で乃亜のヴァイオリンを愛してるんだ)
「..Only her violin?」
(……ヴァイオリンだけだと)
「No way. Noah is super cute and charming.
So... if I could, I would've wanted to whisk her away to the States.」
(まさか。乃亜はとっても可愛いし魅力的さ。
だから……できたら、アメリカに攫って行きたかったよ)
やはりそうだった。
煉矢はニックの言葉に苛立ちも感じるが、同時に納得もした。
ニックの乃亜への情熱的なアピールは、決して彼女の音楽に対してのものだけに見えなかった。
自分もまた、乃亜へ深い想いがあるから余計に察したのかもしれない。
眉を顰める煉矢に、ニックは顔を向け、笑みを消して続けた。
「Ren, you're a really kind and good guy.
You're super talented, and you care about your friends.
So, this is a piece of advice for a guy like you.」
(レン、君はとても親切でいい人だ。
とても優秀だし、友達思いだし。だからそんな君に忠告だよ)
「Advice?」
(忠告?)
ニックは、視線を逸らした。
こちらから目を逸らしたというよりも、彼にとって背中側にいる乃亜を示している。
彼女はスマートフォンを取り出して時間をつぶしているようだ。
「Noah's talent is the real deal. It won't be long before she captivates the world.
If you plan on staying by Noah's side,
if you take your eyes off her for even a second,
she'll be somewhere you can't reach.
But the music world isn't always kind. Noah, she has a delicate side, doesn't she?」
(乃亜の才能は本物だ。そう遠くない未来に彼女は世界を魅了する。
もし君が、乃亜の隣に居続けたとしても、ちょっと目を離した隙に、
彼女は君の手の届かない所に行ってしまうよ。
でも音楽の世界は優しいばかりじゃない。乃亜は、ちょっと脆いところあるでしょ)
「Yeah...」
(ああ……)
「That's what I'm worried about.
That she might get broken by cruel words, like what happened with Ava.」
(僕はそれが心配なんだよ。
無慈悲な言葉の暴力に、壊されちゃうんじゃないかって。アヴァの時みたいにさ)
ニックは眉を寄せ、額を抱える。
それは煉矢にとってもあまり思い出したくない記憶だ。
愉快なことが多かった短期留学での記憶だが、唯一、思い出したくないのがあの女の記憶。
特に、乃亜が参加したイベントの最終日では、あまりにも幼い思考回路で心底軽蔑した。
なにより、その身勝手な言い分で乃亜にひどい言葉を浴びせかけた。
思い返すとはらわたが煮えくり返りそうだ。
過去のトラウマがぶり返したのだろう乃亜は顔面蒼白で震えていた。
ニックは乃亜の過去を知らない。
だがそれでも尋常ではない怯えように、そういった結論には至っているのだろう。
彼は顔を上げ、改めて煉矢に向き合った。
どこか揺れるオリーブ色の瞳は苦く笑い、煉矢の肩をぽんと叩いた。
「So, don't take your eyes off her and protect her. I'm counting on you.」
(だから、目を離さず守ってあげて。頼んだよ)
それで話は終わりだというように、
こちらがなにかを言う前に、ニックはにこりと笑って踵を返し、
乃亜の元へと駆けて行った。
乃亜に一言二言話しかけ、乃亜は戸惑いつつも頷く様子を見せる。
そして片腕を高く振り上げ、廊下の向こうへと姿を消していった。
その様子はもういつものニックだった。
その後、二人はまもなく開演のアナウンスと共に席についた。
空席もあるが多くの人が座席についている。
二人が座ったのは後ろから二番目の端の席だった。
すぐに会場内は暗くなり、イベントは開演した。
50代から60代ほどの三味線奏者の演奏を皮切りに、ニックが登場して二人での共演。
更にニックのソロ演奏や、エレキギターやドラムとのセッションは
まるでロックバンドのような迫力があった。
またピアノやコントラバスとの共演に関してはクラシックのような雰囲気さえ感じさせる。
それらの演奏は確かに素晴らしかったと思うが、
煉矢はどこか集中しきれずにいた。先ほどのニックの話が頭から離れない。
隣に座る乃亜の様子を見る。
乃亜は繰り広げられるステージを食い入るように見ている。
瞳を見開き、そのあらゆる音を聞き逃さず、
すべて吸収し、自分の中へ飲み込もうとするように。
集中しているなんて言葉では言い表せないほど、
彼女は全身でそのステージに身をゆだねているようだ。
" Noah's talent is the real deal. It won't be long before she captivates the world. "
(乃亜の才能は本物だ。そう遠くない未来に彼女は世界を魅了する)
煉矢は音楽の素人だ。
乃亜のヴァイオリンが素晴らしいことは理解しているつもりだったが
それでもあくまで、素人としての、曖昧な見解に過ぎなかった。
それは静も、ましろも同じだ。
しかしニックは違う。
彼は本物のアーティストであり、乃亜と同じ優れた才能を持ち、それを日々磨いている。
乃亜と同じ、音楽に深く傾倒し、その世界を生きている者。
そんな、乃亜と同じ世界にいる者が、乃亜の才能を認め、将来を確信するようなことを告げた。
今まで煉矢が、曖昧に感じていたことが、確かな形を持ってたたきつけられたのだ。
" she'll be somewhere you can't reach. "
(彼女は君の手の届かない所に行ってしまうよ)
先のブロック本選でも見せた乃亜の演奏は、全身が震えるほどのものだった。
彼女はその大きな才能を、ついに開花させたのではと考えている。
自分の手の届かないところへ行ってしまう。
そのヴァイオリンという大きな翼を持って、羽ばたいて。
こちらを振り返ることなく。
ステージで見せた、あの自信に満ちた表情で。
ぞくりと震えが背中を走った。
もう一度乃亜に視線を向ける。
彼女は集中しきり、こちらが目を向けていることには一切気付いていない。
彼女からの想いは感じ取っている。
しかし、音楽を前にした時、その中にいる時、ヴァイオリンを奏でているとき、
それは確かに、存在してくれているのか。
そんな身勝手な思いを打ち消すように煉矢は強く手を握った。
馬鹿らしい。
そんな風に考えることはあまりにも愚かで烏滸がましい。
何より、今の乃亜は、自分のものではないのだ。
少し前までお互いに掛け替えのない存在だと感じられていた。
けれどその名も無き絆が、ひどく煉矢を不安にさせていた。
彼女がその翼で遠くへ行こうとしても、引き止める資格すらない。
ただ黙って、見送るしかできない現実に、改めて、気づいた。
一時間半ほどのステージは観客たちの大喝采をもって幕を閉じた。
乃亜としても内容は大変興味深かったし、刺激を多くもらえた。
やはりニックの演奏は素晴らしいと思ったし、
色々と考えながらも、それでも来たことは間違いではなかった。
来場客が次々と退場していく中、乃亜は隣の煉矢に声をかける。
彼はぼんやりとステージを眺めているだけで、動こうとしなかったからだ。
その表情は浮かない。
「煉矢さん……?」
「……ああ、帰るか」
彼はどこか心ここに在らずだった。
開演前にニックとなにを話していたのか、それは乃亜は知らないし
内容については想像もできない。
ただ、ニックからデートに誘われ、自分はそれを断った。
誕生日は、予定が入る。
きっと、この人と過ごすことになる。
そう暗に込めた想いは、通じているだろうか。
先のメッセージでも、嫉妬のような言葉をかけられた。
乃亜は肘掛けに置かれた煉矢の手に、自らのそれを重ねた。
乃亜がこうして触れるのは初めてだった。
当然彼は驚き、視線をこちらに向けてくる。
乃亜は目が合うと同時に視線を落とした。
手に触れるというだけでいくらも勇気が必要だったのだ。視線には応えられる気がしない。
「……ニックさんと、何を話していたか、私は知りません。
なので、あなたがなにを考えているか、分かりませんが……。
ただ……私は、あなたと……」
乃亜の頬は急速に赤くなる。
まるで告白のように聞こえてしまうのは分かっている。
けれどどうしても、疑ってほしくなかった。
今更彼への想いは揺らぐことなどない。それを伝えたかった。
待っていてほしい、と告げたのは自分だ。
考えようによっては、大変に身勝手である。
しかし、それでも、どこか辛そうに見える煉矢に、なにか言葉をかけたかった。
「……だから……、……傍に……」
掠れるような声で、周囲のざわめきにかき消されそうだったけれど、確かに口にしたそれ。
真っ赤な顔で、震える手で。
乃亜はそれ以上は耐えられず、立ち上がろうとしたがその手を煉矢に取られた。
熱く、大きな手だった。
はっとして視線を向けると、眉を寄せた煉矢がまっすぐにこちらを見ている。
「乃亜、コンクールが終わったあとに、時間をくれ」
「……え?」
捕まれた手に力がこもった。
「悪いがそれが、お前を待つ限界だ」
「煉矢さん……」
「もう、それ以上は待てない」
「は……はい」
煉矢の瞳には今までにないほど深く色濃い熱があった。
乃亜はそれに吸い込まれそうなのをなんとかこらえ、小さく頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います
こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。
※「小説家になろう」にも投稿しています
【書籍化決定】アシュリーの願いごと
ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」
もしかして。そう思うことはありました。
でも、まさか本当だっただなんて。
「…それならもう我慢する必要は無いわね?」
嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。
すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。
愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。
「でも、もう変わらなくてはね」
この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。
だって。私には願いがあるのだから。
✻基本ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
✻1/19、タグを2つ追加しました
✻1/27、短編から長編に変更しました
✻2/2、タグを変更しました
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
君に恋していいですか?
櫻井音衣
恋愛
卯月 薫、30歳。
仕事の出来すぎる女。
大食いで大酒飲みでヘビースモーカー。
女としての自信、全くなし。
過去の社内恋愛の苦い経験から、
もう二度と恋愛はしないと決めている。
そんな薫に近付く、同期の笠松 志信。
志信に惹かれて行く気持ちを否定して
『同期以上の事は期待しないで』と
志信を突き放す薫の前に、
かつての恋人・浩樹が現れて……。
こんな社内恋愛は、アリですか?
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
妾に恋をした
はなまる
恋愛
ミーシャは22歳の子爵令嬢。でも結婚歴がある。夫との結婚生活は半年。おまけに相手は子持ちの再婚。 そして前妻を愛するあまり不能だった。実家に出戻って来たミーシャは再婚も考えたが何しろ子爵領は超貧乏、それに弟と妹の学費もかさむ。ある日妾の応募を目にしてこれだと思ってしまう。
早速面接に行って経験者だと思われて採用決定。
実際は純潔の乙女なのだがそこは何とかなるだろうと。
だが実際のお相手ネイトは妻とうまくいっておらずその日のうちに純潔を散らされる。ネイトはそれを知って狼狽える。そしてミーシャに好意を寄せてしまい話はおかしな方向に動き始める。
ミーシャは無事ミッションを成せるのか?
それとも玉砕されて追い出されるのか?
ネイトの恋心はどうなってしまうのか?
カオスなガストン侯爵家は一体どうなるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる