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ストリートビューの「先」
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大学生の直樹は、深夜の退屈しのぎに、地図アプリの「ストリートビュー」で街並みを眺めるのが好きだった。 地方の実家から、かつて住んでいたアパート、あるいは行ったこともない異国の路地裏まで。画面をスワイプするだけで世界中を旅できる。
ある夜、彼は自分の住んでいるアパートの周辺を眺めていた。 ふと見ると、最新のアップデートで『ライブ・ビュー・プラス』という見慣れないアイコンが追加されていることに気づいた。
「ベータ版の試験運用中? リアルタイムの映像が見れるのか……?」
興味を惹かれ、直樹はそのアイコンをタップした。 画面が切り替わり、今まさに彼が住んでいるアパートの外観が映し出された。 「すごいな、本当に今の映像だ。街灯が切れてるのもそのまま映ってる」
彼は画面を操作し、カメラの角度を自分の部屋の窓へと向けた。 二階の端、205号室。カーテンの隙間から、スマホをいじっている自分の後ろ姿が小さく見えた。 「へぇ、プライバシーも何もないな」 苦笑いしながら、彼は画面をさらに拡大(ズーム)してみた。
すると、奇妙なことに気づいた。 ストリートビューの中の自分の背後、クローゼットの横にある姿見の鏡に、「何か」が映っているのだ。
「……誰かいる?」
直樹はスマホの画面を凝視した。 鏡の中に映っているのは、天井から逆さまに吊り下がった、髪の長い女だった。 女は、画面越しに直樹をじっと見つめている。
「うわっ!」
直樹は飛び上がるようにして振り返った。 しかし、現実の部屋の鏡には何も映っていない。クローゼットの横にも誰もいない。 「なんだ、AIの合成ミスか。心臓に悪いな……」
ホッとしてスマホに目を戻した。 すると、画面の中の女が、ゆっくりと鏡の中から這い出してきた。 それは画面の中で直樹の背後に立ち、耳元で何かを囁いている。
直樹は震える手で、ストリートビューのタイムラインを「一分前」に戻した。 一分前の映像では、女はまだ鏡の中にいる。 次に「一分先」というボタンがあることに気づいた。 「……未来も見れるのか?」
恐る恐る、そのボタンを押した。 画面の中の直樹は、恐怖に顔を歪めながらスマホを落としていた。 そして、その背後にいる女が、直樹の首に手をかけ、ゆっくりとひねり上げている映像が流れた。
「やめろ、こんなの嘘だ!」
直樹はスマホを放り出し、玄関へ走った。 しかし、ドアノブに手をかけた瞬間、通知音が鳴り響いた。 床に落ちたスマホの画面に、新しいメッセージが表示されている。
『ライブ・ビュー・プラス:同期が完了しました』
その瞬間、直樹の視界が急激に反転した。 体が勝手に動き、意識とは無関係に部屋の中央へと引き戻される。 抵抗しようとしても、自分の手足が自分のものではないように動く。
彼は、自分が「画面の中で見た通りの動き」を強制されていることに気づいた。 スマホを拾い、恐怖に顔を歪め、そして……。
ふと、窓の外に、青白い光を放つ「Googleの撮影車」のような車が、音もなく走り去っていくのが見えた。 車の上に設置された全方位カメラが、くるくると回っている。
直樹は最後に、自分のスマホの画面を見た。 そこには、絶命した自分の死体と、その傍らで楽しそうにスマホを操作し、「直樹のふり」をしてSNSに投稿を始める女の姿が映っていた。
次の瞬間、彼の視界は完全にシャットダウンされ、アプリの読み込み中を示す「ぐるぐる」というアイコンだけが脳裏に焼き付いた。
ある夜、彼は自分の住んでいるアパートの周辺を眺めていた。 ふと見ると、最新のアップデートで『ライブ・ビュー・プラス』という見慣れないアイコンが追加されていることに気づいた。
「ベータ版の試験運用中? リアルタイムの映像が見れるのか……?」
興味を惹かれ、直樹はそのアイコンをタップした。 画面が切り替わり、今まさに彼が住んでいるアパートの外観が映し出された。 「すごいな、本当に今の映像だ。街灯が切れてるのもそのまま映ってる」
彼は画面を操作し、カメラの角度を自分の部屋の窓へと向けた。 二階の端、205号室。カーテンの隙間から、スマホをいじっている自分の後ろ姿が小さく見えた。 「へぇ、プライバシーも何もないな」 苦笑いしながら、彼は画面をさらに拡大(ズーム)してみた。
すると、奇妙なことに気づいた。 ストリートビューの中の自分の背後、クローゼットの横にある姿見の鏡に、「何か」が映っているのだ。
「……誰かいる?」
直樹はスマホの画面を凝視した。 鏡の中に映っているのは、天井から逆さまに吊り下がった、髪の長い女だった。 女は、画面越しに直樹をじっと見つめている。
「うわっ!」
直樹は飛び上がるようにして振り返った。 しかし、現実の部屋の鏡には何も映っていない。クローゼットの横にも誰もいない。 「なんだ、AIの合成ミスか。心臓に悪いな……」
ホッとしてスマホに目を戻した。 すると、画面の中の女が、ゆっくりと鏡の中から這い出してきた。 それは画面の中で直樹の背後に立ち、耳元で何かを囁いている。
直樹は震える手で、ストリートビューのタイムラインを「一分前」に戻した。 一分前の映像では、女はまだ鏡の中にいる。 次に「一分先」というボタンがあることに気づいた。 「……未来も見れるのか?」
恐る恐る、そのボタンを押した。 画面の中の直樹は、恐怖に顔を歪めながらスマホを落としていた。 そして、その背後にいる女が、直樹の首に手をかけ、ゆっくりとひねり上げている映像が流れた。
「やめろ、こんなの嘘だ!」
直樹はスマホを放り出し、玄関へ走った。 しかし、ドアノブに手をかけた瞬間、通知音が鳴り響いた。 床に落ちたスマホの画面に、新しいメッセージが表示されている。
『ライブ・ビュー・プラス:同期が完了しました』
その瞬間、直樹の視界が急激に反転した。 体が勝手に動き、意識とは無関係に部屋の中央へと引き戻される。 抵抗しようとしても、自分の手足が自分のものではないように動く。
彼は、自分が「画面の中で見た通りの動き」を強制されていることに気づいた。 スマホを拾い、恐怖に顔を歪め、そして……。
ふと、窓の外に、青白い光を放つ「Googleの撮影車」のような車が、音もなく走り去っていくのが見えた。 車の上に設置された全方位カメラが、くるくると回っている。
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