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第78話 皇太子現る ★リオ SIDE
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「ねぇ、君!ちょっと待って?」
私は頭を深く下げたまま、視線を合わせない様に後退りながら知ってる人達の気配を探した。うーん、誰も近くに居ないわね……
「君、名前を教えてくれないか?」
「…………………………」
視線を合わせていないので、高貴な人が誰に話かけているのか不明というテイで……いつまで逃げていられるやら?と思いつつ微動だにしない。根性だけは負けないもんね。
あのドアノブはフェイクで、『純白の魔力』を感知したタイミングで、その人間を転移魔法で拐う罠だったのだろう。ここまで周到に準備していたのだから、1人でどうにかせず、時間を稼ぐしか無いだろう。
こっそりと逆さまになった景色を見渡すと、幸いな事に城の敷地内だと思われる。誰か知り合いが通ってくれないかしら……
「お嬢様!こちらにいらっしゃいましたか!」
あ、遠くから聞こえるのはリリアンヌの声だわ。この頭を下げた状態からどうやって逃げたら良いんだろう?そう思っていたら、急にリリアンヌが私を抱き締めて来た。リリアンヌのふくよかな胸に顔を埋め……世の殿方が羨ましがる格好になっている。
「お嬢様、大丈夫ですよ?お菓子を用意しましょうね?ほら、リリを見てくださいね~?」
チラッとリリアンヌを見上げる。安心して、リリアンヌをギュウギュウと抱き締めた。
「あぁ、怖がらせてしまっていたのか?悪かったな?君の名前を教えてくれないか?」
「申し訳御座いません、高貴なお方と存じますが、お嬢様は少しお疲れの様ですので、次回、会う事がありましたらお声がけくださいませんでしょうか?」
リリアンヌは少し怒ってる声で答えている。皇太子だと知ってる筈なのに、凄い度胸だなぁ……なんて呑気に思っていると、「嬢ちゃん!」と爺やの声がした。
「あれ?爺さんは……確か、叔母さんの旦那だったか?久しぶりだな」
「あぁ、あの阿保皇子の息子か。名前は……覚えておらんがのぉ」
爺やの方が凄いわね……リリアンヌも肝が据わってると思ったけど、爺やは皇子に喧嘩を売ってるわよね?
「あはは、相変わらずだな。叔母さんは元気か?」
「答える義理は無いでのぉ。嬢ちゃん、我が家に帰ろうなぁ。婆さんが待っておるでのぉ」
「はぁ?その娘は爺さんと関係があるのか?」
「この嬢ちゃんは、ワシの愛弟子じゃ。そして『賢者』が後見人になった娘。お主なんぞに手は出させん」
「チッ。爺さんと叔母さんが絡んでるんじゃ、手が出せないな。王太子の婚約者程度なら拐って帰ろうかと思ったが」
「お主は戦争でもするつもりか?ワシの目が黒いうちは簡単には落とさせん。返り討ちにしてくれるわい」
「冗談!我が国は帝国とは言え、全力で立ち向かっても爺さん1人すら倒せんだろうよ」
「良く分かっておるではないか。こちらには魔導師団もあるでのぉ。今の魔導師団はワシ10人分程度の力はあるでなぁ?帝国程度なら3日もあれば潰せるからのぉ」
「そんなに威嚇しないでくれよ。あんたらと敵対する気は無い。その娘が王太子妃になるのか?」
「それがどうした」
「はぁ……それじゃ帝国に勝ち目は無いだろ。我が帝国に『純白の魔力』の娘を迎え入れるのが最優先事項だったのだから。そこの娘、我が妃になる気は無いか?」
「無い」
こう言う事はハッキリと断らないとね。少しでも気があると思わせたらしつこいんだから。
「うわっ……皇太子の俺にその態度かよ。何か気に障ったかのか?謝るから許してくれよ?」
許す訳が無い。カミルの婚約者程度なら拐うと言ったよね?何より大事な婚約者を下に見た事を後悔させてやりたいぐらいよ。プイッとそっぽを向いて、爺やに甘える仕草をする。
「おぅおぅ、早よぉ帰ろうな。今日は婆さんの特製グラタンが出るらしいからのぉ。ホッホッホ」
爺やはとても上機嫌だ。そんなに婆やの特製グラタンが楽しみなのだろうか?さすが愛妻家ね。
「リューはどうした?」
私はフルフルと頭を振る。この皇子の前であまり喋りたく無い。ここに居たく無いと爺やに早く帰る様に促す。
「帰ろ?」
「そうじゃのぉ。リリアンヌ、王太子とリューには言伝を頼んで良いかのぉ?あぁ、デュークが居たら彼奴でも良いからの」
「かしこまりました『賢者』様。どうぞお気を付けて」
私はリリアンヌにコクンと頷き、爺やに全ての魔法をかけて貰って飛行魔法で爺やの家に向かった。
「爺さん、こっちに!リオちゃん、早くお家に入りましょうね」
婆やが扉を大きく開けて待っている。そんなに慌ててどうしたのかしら?
「大丈夫?リオちゃん、顔色が凄く悪いわ」
え?私の顔色?話すのはさっきから億劫ではあったけど、あの皇子が気に入らないだけだと思っていたわ。あれー?爺やから離れると、少しクラクラするわね?
「婆さん、部屋は出来ておるかの?」
「えぇ、整えましたよぉ。リオちゃんのお部屋は可愛らしいお部屋にしましたからねぇ。後で見てごらんなさい?そして今日は、直ぐにご飯にするからゆっくり休みましょうね?」
私はコクンと頷く。何だか力が入らない。夕食に婆や特製グラタンを食べた所で、私の護衛としてサイラスとリューが到着した。
「リオ様、本日から数日はこちらにいらして欲しいとカミル殿下からの伝言です。明日の昼には顔を出すとの事でしたが……大丈夫ですか?」
サイラスから見ても顔色が悪いのかしら?喋るのが億劫だから、頷くだけで意思を示す。
「リオ様、私は部屋の中を。サイラス殿は部屋の外を一晩中お守り致しますので、ごゆっくりおやすみください。昼間はリオ様の親衛隊が参ります」
「リオちゃんの親衛隊?」
「はい、奥方様。サイラス殿の元部下で、リオ様に心酔した者が近衛騎士として陛下のお許しを得たのですが、本人達が近衛騎士では無く、『親衛隊』と呼んで欲しいと……」
「そ、その、申し訳ありません……近衛騎士隊長であった私がリオ様の専属護衛騎士となりましたので、他の近衛騎士達はカミル殿下とリオ様の当番制の近衛騎士になったのですが……彼奴らもリオ様をお守りしたいと譲りませんで……」
「ブハッ!あははは!リオちゃん、愛され過ぎねぇ!カミルちゃんが拗ねちゃうんじゃないの?はははは!」
「婆さんが珍しくハマっておるのぉ。嬢ちゃんは皆を魅了するだけの魅力があるって事だのぉ。まぁ、あの時は1000人以上をほぼ1人で治療したのじゃ。分からんでも無いがのぉ」
「そうですね。あの日……我々、元第二王子の近衛騎士達はリオ様に命を救われ、新たな人生をリオ様の元でリオ様の為に捧げようと決めました。我々の命は間違い無く、あの日に散る運命だったのですから……」
「話しには聞いていたけど、そんなに酷かったの?」
「酷かった程度の言葉では言い表せない程です。本当に悲惨と言いますか……私は自分が脇腹や手足を失ったのを、この目でしっかり見てましたから……感覚は麻痺しておりましたが、もう助からないだろうと覚悟もしておりました」
「えぇ?そんな状態の貴方をリオちゃんは治しちゃったの?爺さんなら治せるかも知れないけど……」
「はい。2度も治療していただきました。1度目は肋骨も見えておりましたし、内臓も痛んでおりました。2度目は血を失い過ぎて、意識すら無かった……そんな私が生きていられるのも、リオ様のお陰です。本来なら、罵詈雑言を浴びせた第二王子の近衛騎士なんて助ける必要も無かったはずです。それなのに、第二王子達を守る為に傷ついた体を2度も……」
「純粋な『純白の魔力』のみで治療しとるからのぉ。ワシの治癒魔法より威力が高いのじゃよ。あの怪我では、ワシでも数回はエクストラヒールをかけないと治せなかったと思うぞ?」
「なるほどねぇ……近衛騎士達がリオちゃんに心酔する気持ちがやっと分かったわぁ。リオちゃんは助けたかっただけなんですものね。女神の愛し子なのも理解出来るわねぇ」
えぇ、私は助けたかっただけ……駄目だわ眠い。ウトウトしていると、リューが気づいてくれた。
「リオ様?お疲れの様ですね。部屋までお運びしましょう。そのまま寝ては風邪を引いてしまいます」
「そうね。婆が案内するわね」
リューに抱えられ、私の為に用意したという部屋のベッドに寝かされた。婆やとリューで着替えさせてくれ、私は我慢出来ずに深く眠りに落ちて行く。
「リオちゃん、ゆっくりおやすみなさいねぇ」
遠くで婆やの声が聞こえる。とても温かい気持ちで眠りにつく事が出来た。
私は頭を深く下げたまま、視線を合わせない様に後退りながら知ってる人達の気配を探した。うーん、誰も近くに居ないわね……
「君、名前を教えてくれないか?」
「…………………………」
視線を合わせていないので、高貴な人が誰に話かけているのか不明というテイで……いつまで逃げていられるやら?と思いつつ微動だにしない。根性だけは負けないもんね。
あのドアノブはフェイクで、『純白の魔力』を感知したタイミングで、その人間を転移魔法で拐う罠だったのだろう。ここまで周到に準備していたのだから、1人でどうにかせず、時間を稼ぐしか無いだろう。
こっそりと逆さまになった景色を見渡すと、幸いな事に城の敷地内だと思われる。誰か知り合いが通ってくれないかしら……
「お嬢様!こちらにいらっしゃいましたか!」
あ、遠くから聞こえるのはリリアンヌの声だわ。この頭を下げた状態からどうやって逃げたら良いんだろう?そう思っていたら、急にリリアンヌが私を抱き締めて来た。リリアンヌのふくよかな胸に顔を埋め……世の殿方が羨ましがる格好になっている。
「お嬢様、大丈夫ですよ?お菓子を用意しましょうね?ほら、リリを見てくださいね~?」
チラッとリリアンヌを見上げる。安心して、リリアンヌをギュウギュウと抱き締めた。
「あぁ、怖がらせてしまっていたのか?悪かったな?君の名前を教えてくれないか?」
「申し訳御座いません、高貴なお方と存じますが、お嬢様は少しお疲れの様ですので、次回、会う事がありましたらお声がけくださいませんでしょうか?」
リリアンヌは少し怒ってる声で答えている。皇太子だと知ってる筈なのに、凄い度胸だなぁ……なんて呑気に思っていると、「嬢ちゃん!」と爺やの声がした。
「あれ?爺さんは……確か、叔母さんの旦那だったか?久しぶりだな」
「あぁ、あの阿保皇子の息子か。名前は……覚えておらんがのぉ」
爺やの方が凄いわね……リリアンヌも肝が据わってると思ったけど、爺やは皇子に喧嘩を売ってるわよね?
「あはは、相変わらずだな。叔母さんは元気か?」
「答える義理は無いでのぉ。嬢ちゃん、我が家に帰ろうなぁ。婆さんが待っておるでのぉ」
「はぁ?その娘は爺さんと関係があるのか?」
「この嬢ちゃんは、ワシの愛弟子じゃ。そして『賢者』が後見人になった娘。お主なんぞに手は出させん」
「チッ。爺さんと叔母さんが絡んでるんじゃ、手が出せないな。王太子の婚約者程度なら拐って帰ろうかと思ったが」
「お主は戦争でもするつもりか?ワシの目が黒いうちは簡単には落とさせん。返り討ちにしてくれるわい」
「冗談!我が国は帝国とは言え、全力で立ち向かっても爺さん1人すら倒せんだろうよ」
「良く分かっておるではないか。こちらには魔導師団もあるでのぉ。今の魔導師団はワシ10人分程度の力はあるでなぁ?帝国程度なら3日もあれば潰せるからのぉ」
「そんなに威嚇しないでくれよ。あんたらと敵対する気は無い。その娘が王太子妃になるのか?」
「それがどうした」
「はぁ……それじゃ帝国に勝ち目は無いだろ。我が帝国に『純白の魔力』の娘を迎え入れるのが最優先事項だったのだから。そこの娘、我が妃になる気は無いか?」
「無い」
こう言う事はハッキリと断らないとね。少しでも気があると思わせたらしつこいんだから。
「うわっ……皇太子の俺にその態度かよ。何か気に障ったかのか?謝るから許してくれよ?」
許す訳が無い。カミルの婚約者程度なら拐うと言ったよね?何より大事な婚約者を下に見た事を後悔させてやりたいぐらいよ。プイッとそっぽを向いて、爺やに甘える仕草をする。
「おぅおぅ、早よぉ帰ろうな。今日は婆さんの特製グラタンが出るらしいからのぉ。ホッホッホ」
爺やはとても上機嫌だ。そんなに婆やの特製グラタンが楽しみなのだろうか?さすが愛妻家ね。
「リューはどうした?」
私はフルフルと頭を振る。この皇子の前であまり喋りたく無い。ここに居たく無いと爺やに早く帰る様に促す。
「帰ろ?」
「そうじゃのぉ。リリアンヌ、王太子とリューには言伝を頼んで良いかのぉ?あぁ、デュークが居たら彼奴でも良いからの」
「かしこまりました『賢者』様。どうぞお気を付けて」
私はリリアンヌにコクンと頷き、爺やに全ての魔法をかけて貰って飛行魔法で爺やの家に向かった。
「爺さん、こっちに!リオちゃん、早くお家に入りましょうね」
婆やが扉を大きく開けて待っている。そんなに慌ててどうしたのかしら?
「大丈夫?リオちゃん、顔色が凄く悪いわ」
え?私の顔色?話すのはさっきから億劫ではあったけど、あの皇子が気に入らないだけだと思っていたわ。あれー?爺やから離れると、少しクラクラするわね?
「婆さん、部屋は出来ておるかの?」
「えぇ、整えましたよぉ。リオちゃんのお部屋は可愛らしいお部屋にしましたからねぇ。後で見てごらんなさい?そして今日は、直ぐにご飯にするからゆっくり休みましょうね?」
私はコクンと頷く。何だか力が入らない。夕食に婆や特製グラタンを食べた所で、私の護衛としてサイラスとリューが到着した。
「リオ様、本日から数日はこちらにいらして欲しいとカミル殿下からの伝言です。明日の昼には顔を出すとの事でしたが……大丈夫ですか?」
サイラスから見ても顔色が悪いのかしら?喋るのが億劫だから、頷くだけで意思を示す。
「リオ様、私は部屋の中を。サイラス殿は部屋の外を一晩中お守り致しますので、ごゆっくりおやすみください。昼間はリオ様の親衛隊が参ります」
「リオちゃんの親衛隊?」
「はい、奥方様。サイラス殿の元部下で、リオ様に心酔した者が近衛騎士として陛下のお許しを得たのですが、本人達が近衛騎士では無く、『親衛隊』と呼んで欲しいと……」
「そ、その、申し訳ありません……近衛騎士隊長であった私がリオ様の専属護衛騎士となりましたので、他の近衛騎士達はカミル殿下とリオ様の当番制の近衛騎士になったのですが……彼奴らもリオ様をお守りしたいと譲りませんで……」
「ブハッ!あははは!リオちゃん、愛され過ぎねぇ!カミルちゃんが拗ねちゃうんじゃないの?はははは!」
「婆さんが珍しくハマっておるのぉ。嬢ちゃんは皆を魅了するだけの魅力があるって事だのぉ。まぁ、あの時は1000人以上をほぼ1人で治療したのじゃ。分からんでも無いがのぉ」
「そうですね。あの日……我々、元第二王子の近衛騎士達はリオ様に命を救われ、新たな人生をリオ様の元でリオ様の為に捧げようと決めました。我々の命は間違い無く、あの日に散る運命だったのですから……」
「話しには聞いていたけど、そんなに酷かったの?」
「酷かった程度の言葉では言い表せない程です。本当に悲惨と言いますか……私は自分が脇腹や手足を失ったのを、この目でしっかり見てましたから……感覚は麻痺しておりましたが、もう助からないだろうと覚悟もしておりました」
「えぇ?そんな状態の貴方をリオちゃんは治しちゃったの?爺さんなら治せるかも知れないけど……」
「はい。2度も治療していただきました。1度目は肋骨も見えておりましたし、内臓も痛んでおりました。2度目は血を失い過ぎて、意識すら無かった……そんな私が生きていられるのも、リオ様のお陰です。本来なら、罵詈雑言を浴びせた第二王子の近衛騎士なんて助ける必要も無かったはずです。それなのに、第二王子達を守る為に傷ついた体を2度も……」
「純粋な『純白の魔力』のみで治療しとるからのぉ。ワシの治癒魔法より威力が高いのじゃよ。あの怪我では、ワシでも数回はエクストラヒールをかけないと治せなかったと思うぞ?」
「なるほどねぇ……近衛騎士達がリオちゃんに心酔する気持ちがやっと分かったわぁ。リオちゃんは助けたかっただけなんですものね。女神の愛し子なのも理解出来るわねぇ」
えぇ、私は助けたかっただけ……駄目だわ眠い。ウトウトしていると、リューが気づいてくれた。
「リオ様?お疲れの様ですね。部屋までお運びしましょう。そのまま寝ては風邪を引いてしまいます」
「そうね。婆が案内するわね」
リューに抱えられ、私の為に用意したという部屋のベッドに寝かされた。婆やとリューで着替えさせてくれ、私は我慢出来ずに深く眠りに落ちて行く。
「リオちゃん、ゆっくりおやすみなさいねぇ」
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