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第120話 邪魔するんかい! ★ジャン SIDE
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今回で最後になるか分からないが、帝国で3回目のスタンピードの予定日となった。昼過ぎから魔物が湧く予定なので、それまでは各自肩慣らしや訓練の時間だ。
帝国にいらっしゃる度に、『練習装置』のお手本を強請られる聖女様も大変だと思うが、今回はカミル殿下に魔剣での『最速』もお願いしていた。我が国には魔剣士は居ないので、珍しいのだ。
聖女様の魔剣は見せたく無いと言うカミル殿下の牽制が入り、自分も使えるから自分がやると自ら進んで披露してくださった。
さすがと言うべきだろう、あの上級の最速を危なげなくクリアする様は、『未来の最強夫婦』だと言われても仕方ないと思う。なのに……
「カミル、魔剣である必要無いでしょう?身体強化だけでもクリアしてたじゃない」
「ん?まぁ、そうだけどね。魔剣を使ってる所を見てみたいってお願いされたから、久々に魔剣としてやってみたんだよ。それに、あまり驚かせない方が良いかなぁって思ったんだ」
「え?驚く様な事かしら?」
「あぁ、そうだね。リオを基準にすると王国では普通になりつつあるから仕方ないね。『練習装置』のお陰で、殆どの騎士や魔導師が『リオレベル』になりつつあるからね……」
やっぱり王国を敵に回すわけにはいかないな……話しを聞いていたテオやエドの顔が引き攣ってるけど、大丈夫か?敵に回さなきゃ大丈夫だと信じたいな。
「カミル~、それでもリオに追いつけるニンゲンは居ないよ~。恐らく今後も出て来ないよ~」
「そうだね、ソラ。僕の数十倍は強いからね。師匠ですら今では敵わないかも知れないね?」
「そうだね~。リオも経験値が高くなって来たしね~。まぁ、圧倒的な強さだから、小手先の技なんて要らないんだけどね~」
「そうですなぁ、ソラ殿。王国でのスタンピードの頃と比べると、何倍も威力が増しておりますから、今ではゴリ押しで何でも倒せてしまえそうですな」
「オイラもそう思うよ~、デューク。アレで何故、何も出来ないって言えるんだろうね~」
「志が高いのかも知れませんなぁ。あちらの世界の事は全く分かりませんが、『あの程度』では生きて行けなかったのかも知れませんな」
「どれだけ大変な世界だったんだろうね~?すっごく気になるな~。リオに聞いても、きっと「私が要領悪いからー」とか言ってそうだよね~」
そこまでなのか?聖女様はストイックだと聞いてはいたが、あそこまで何でも出来て、まだ足りないと仰るのか……俺程度の努力じゃまだまだ足りないんだな……
「あぁ……ソラ殿は賢い上に相変わらず辛辣ですな……さすが聖女様と契約なさった精霊、言葉の切れ味まで似ておられる……」
「リオとは考え方も行動も近いものがあるからね~。ハッキリとモノを言わないと伝わらないのが面倒だからキツい言葉遣いになるとか~。効率重視な所もそうかも~」
「確かにそうね?カミルは言い回しが上手いわよね。私もソラも、要点だけ伝えようとするから……カミルもシルビーも考え方は近いんだけど、伝え方が上手いのは見習いたいわね」
辛辣な言葉遣いも素敵だけどなぁ。ハッキリと気持ちを伝えられる強さは、俺も欲しいと思うからな。
「リオは今のままでも充分素敵だよ。無理しなくても良いからね」
「ここまで来ると凄いですね。俺はお2人に会う度に砂糖を吐いてますよね」
「ジャン~、これは恒例行事だよ~」
「間違い無いね~。オイラもやっと慣れた~」
「精霊にも『砂糖を吐く』が伝わるのね……『砂を吐く』でも伝わったのかしら?」
「え!?気になったのそっち~?」
心の声をドリーが代弁してくれたな……今のは俺もつい聖女様に突っ込んでしまいそうになったからな。
「安定のちょいズレだね~。本当に微妙にズラして来るよね~」
「斬新でそっちに驚くよね……」
「え?」
「なんでもないよ、リオ。そろそろお昼ご飯を食べて、スタンピードが始まるまではゆっくりしよう?」
カミル殿下はありのままの聖女様で過ごして欲しいのだろう。少し天然で、愛嬌はあるけど辛辣で……確かに良い女だよなぁ。俺も彼女欲しい……
「ジャン、一緒に食べるかい?」
ちょっとビクッとしてしまったが、気付かれなかったかな。カミル殿下と聖女様には絶対に嫌われては駄目だからな。帝国の平和の為にも、俺が頑張らねばだ。
「はい。聖女様の御披露目パーティーの事も相談して宜しいでしょうか?」
「あぁ、勿論だよ。僕もそろそろ話しを進めておくべきだと思っていたんだ」
⭐︎⭐︎⭐︎
「有意義な時間をありがとうございました……」
「ふふっ、ジャンは素直で面白いのね」
「いえいえ、あそこまで考えて行動なさっているとは思わず、大変失礼致しました……」
カミル殿下と聖女様は、スタンピードが終わった後のスケジュールも細かく組んでおられた。王国に皇帝を迎え入れてからの方が帝国で動きやすいからなど、理由もしっかりあって、俺の考えていた事なんて上辺だけしか見ようとしていなくて……本当に恐れ入った。
「ジャンはこれから勉強して行けば良いよ。僕達より若いんだしね。さぁ、そろそろスタンピードの時間だよ。ソラ、ドリー、問題無さそうかい?」
「大丈夫だよ~。位置も時間もほぼズレは無いよ~」
「ありがとう、ソラ。じゃあ後10分ぐらい余裕があるかな。リオ、調子はどう?」
「私は大丈夫なんだけど……魔導師達、大丈夫?」
「ん?帝国の魔導師?」
「えぇ、グッタリしてる様に見えたのだけど……あれ?デューク?デュークは何処に居るの?」
「ソラ、ドリー!デュークを探せるかい?」
「気配が無いね~。何故気が付かなかったんだろ~?」
「本当だ~!赤のお兄ちゃん2人とも居ないよ~?」
「え?テオも?ついさっきまで居たわよね?」
「これは不味いな。防御壁を張れる魔導師は何人いるんだろうか?」
「カミル、ちょっと試して見ても良い?」
「何か気になる事でも?」
「見えて無いだけかも知れないわ。声も聞こえて無いだけかも知れない。外から隠密魔法をかけられ……」
「リオ?」
「あそこ見て!カミル!ほんの少しだけ空間が赤いの分かるかしら?」
「うわっ!本当だ……何だあれ?」
「リオ~、アレ、気持ち悪い~……オイラもドリーもちょっと苦しいよ~」
「ソラ、ドリー、少し離れていて!ジャン、精霊達に防御膜を張れる?カミル、皆んなを少し後ろに下げて」
「了解」
パーッと皆んなが移動した。体調の悪そうな者や、グッタリしている者も、近くの騎士や元気な者達が移動するのを手伝って、速やかに移動出来た様だ。
「じゃあ、行くわよー!」
聖女様は、赤い空間の前に跪き、祈りのポーズを取っていた。時間の経過と共に、白いキラキラした光が聖女様から溢れ出し、聖女様の周りから我々の方まで白いキラキラの光が押し寄せて来た。
「グァ――――――ッ!!」
赤い空間から苦しそうに呻くデュークとテオドールが現れた。膝を地面に付き、腕でバランスを取ってる様だが、プルプルしているのが分かる。体中に大汗を掻いているのか、テカっているな。
そして、俺の近くに居たグッタリしていた魔導師からは『黒いモヤ』が分離している様に見えた。安心しかけたその時、地面がグラッと揺れた。
「リオ!スタンピードが始まってしまう!」
聖女様はスクッと立ち上がり、両手で天を仰いだ。すると、ぶわ――――――っと白い光が降り注ぎ、『黒いモヤ』を消滅させていった。デューク殿もテオも、グッタリしていた魔導師達も立ち上がっていた。
「魔導師団、防御壁を張れ!」
「「「はっ!!」」」
「はぁ――――、何とかなったわね……一気に片付けるわよ!皆んな全力でサポートをお願いね!」
聖女様は額に汗を滲ませ、かなり疲れている様に見えるが、何事も無かったかの様に振る舞った。これこそ救世主の姿なのだろう。本人は無意識なんだろうけどな。
「防御壁、張り終わりました!上級300発は受けてみせますぞー!」
デューク殿が敢えてテンション高く声を上げた。王国の人材は、本当に素晴らしいな……俺も育てなきゃだよな。羨ましがってばかりでは手に入らない事も知ったからな。
「上級魔法300発、『狭間』に向かって行くわよー!」
「「お――――!!!」」
テオや魔導師団の者達も声を上げ、皆んなでお互いを鼓舞する。聖女様の魔法は防御壁の内側へ凄い勢いで叩き込まれて行ったのだった。
⭐︎⭐︎⭐︎
「ソラ、数はどうだい?」
「現時点で150万匹殲滅済みで、残り50万匹ぐらいだと思うよ~」
「今回は200万匹?また前回より増えてるね……」
「『相手』も考えてるって事じゃないの~?」
「やっぱり、面倒な事になりそうだよね……」
「教会に行く事を言っているの~?」
「あぁ。王太子としてはリオに行って貰わなければならないのだけどね。僕個人としては乗り気になれなくて」
「そんなの当たり前でしょ~?オイラだって、リオがどうしてもって言うから渋々了承したんだからね~?」
「そうか、ソラもそうなんだね?」
「カミル~、大事な人や仲間が危険に晒されるかも知れないって思ったら、やめて欲しいと思うのは当たり前の事だよ~?」
「うん、そうだよね……愛しいリオに任せるしか無いのは心苦しいけど、僕はリオの近くで守れたらと思うよ」
「オイラも2人の側に居るよ~。オイラの全てをかけてでも、2人を守りたいと思っているよ~」
「うん、ありがとうソラ。リオを守るって気持ちが大事なんだよね。何も出来なくても、盾ぐらいにはなれるだろうからね」
「カミル~、リオが悲しむ事は駄目だよ~。皆んな無事で帰って来なきゃリオが泣いちゃうんだからね~」
「ふふっ、そうだね、それは駄目だね。皆んなで生き残る方法を模索して行こうか。僕達には考える頭があるからね」
「そうだね~。戦略はジーさんとか得意でしょ~?相談してみるのもアリだよね~」
「うん、そうしようか。前向きに考えれば、やれる事はまだ沢山あるんだね。準備を怠らずに頑張ろうね、ソラ」
「おっけ~。そろそろ今回のスタンピードも終わるよ~。リオがちょっとヤバめだから、終わったら横抱きにして~?オイラがカミルごとリオの部屋に飛ばすから、救護班を呼んで~?」
「分かった。今回は最初の聖女スキルがキツかったんだろうね。デューク達が無事で良かった……今更だけど」
「本当にね~……リオが祈らなかったら、魔導師達も『黒いモヤ』に飲み込まれていたのかもね~?」
「まさか、スタンピード開始ギリギリに殲滅するのを邪魔して来るとは思わなかったからね」
「リオのお陰だね~。早く休ませてあげよ~ね~」
「そうだね。あー、ジャン!僕達は先に帰るよ」
「カミル殿下!やはり聖女様は少し無理をなさっておられましたか?」
「最初の聖女スキルがキツかったんだと思う。前に1人だけ浄化した時も、キツかったって言ってたからね。今回は複数の人間にかけなきゃならなかったから、広範囲を浄化したしね」
「分かりました。殲滅はほぼ終わった様ですので、後は騎士達と確認してから報告書を上げますね。今回もありがとうございました」
「あぁ。ここからが正念場だからね。お互い頑張ろう」
カミル殿下は聖女様に駆け寄り、お姫様抱っこをすると聖女様は少し顔を赤くして抗議していたが、ソラ殿に転移魔法を使われた様で消えてしまった。
今回はイレギュラーとは言え、聖女様に無理をさせる事となってしまって不甲斐ないな……テオ達魔導師から聴取して、詳しい内容を上げなければ。
ただ、毎回置いていかれてしまうデューク殿がどんどん帝国に馴染んでいるのだが、良いのだろうか?と思っていたりする……テオが世話を焼いてるらしいから、困ってはいないと言っていたが……まぁ、気にするだけ無駄なんだろうな。うん、見なかった事にしよう。
帝国にいらっしゃる度に、『練習装置』のお手本を強請られる聖女様も大変だと思うが、今回はカミル殿下に魔剣での『最速』もお願いしていた。我が国には魔剣士は居ないので、珍しいのだ。
聖女様の魔剣は見せたく無いと言うカミル殿下の牽制が入り、自分も使えるから自分がやると自ら進んで披露してくださった。
さすがと言うべきだろう、あの上級の最速を危なげなくクリアする様は、『未来の最強夫婦』だと言われても仕方ないと思う。なのに……
「カミル、魔剣である必要無いでしょう?身体強化だけでもクリアしてたじゃない」
「ん?まぁ、そうだけどね。魔剣を使ってる所を見てみたいってお願いされたから、久々に魔剣としてやってみたんだよ。それに、あまり驚かせない方が良いかなぁって思ったんだ」
「え?驚く様な事かしら?」
「あぁ、そうだね。リオを基準にすると王国では普通になりつつあるから仕方ないね。『練習装置』のお陰で、殆どの騎士や魔導師が『リオレベル』になりつつあるからね……」
やっぱり王国を敵に回すわけにはいかないな……話しを聞いていたテオやエドの顔が引き攣ってるけど、大丈夫か?敵に回さなきゃ大丈夫だと信じたいな。
「カミル~、それでもリオに追いつけるニンゲンは居ないよ~。恐らく今後も出て来ないよ~」
「そうだね、ソラ。僕の数十倍は強いからね。師匠ですら今では敵わないかも知れないね?」
「そうだね~。リオも経験値が高くなって来たしね~。まぁ、圧倒的な強さだから、小手先の技なんて要らないんだけどね~」
「そうですなぁ、ソラ殿。王国でのスタンピードの頃と比べると、何倍も威力が増しておりますから、今ではゴリ押しで何でも倒せてしまえそうですな」
「オイラもそう思うよ~、デューク。アレで何故、何も出来ないって言えるんだろうね~」
「志が高いのかも知れませんなぁ。あちらの世界の事は全く分かりませんが、『あの程度』では生きて行けなかったのかも知れませんな」
「どれだけ大変な世界だったんだろうね~?すっごく気になるな~。リオに聞いても、きっと「私が要領悪いからー」とか言ってそうだよね~」
そこまでなのか?聖女様はストイックだと聞いてはいたが、あそこまで何でも出来て、まだ足りないと仰るのか……俺程度の努力じゃまだまだ足りないんだな……
「あぁ……ソラ殿は賢い上に相変わらず辛辣ですな……さすが聖女様と契約なさった精霊、言葉の切れ味まで似ておられる……」
「リオとは考え方も行動も近いものがあるからね~。ハッキリとモノを言わないと伝わらないのが面倒だからキツい言葉遣いになるとか~。効率重視な所もそうかも~」
「確かにそうね?カミルは言い回しが上手いわよね。私もソラも、要点だけ伝えようとするから……カミルもシルビーも考え方は近いんだけど、伝え方が上手いのは見習いたいわね」
辛辣な言葉遣いも素敵だけどなぁ。ハッキリと気持ちを伝えられる強さは、俺も欲しいと思うからな。
「リオは今のままでも充分素敵だよ。無理しなくても良いからね」
「ここまで来ると凄いですね。俺はお2人に会う度に砂糖を吐いてますよね」
「ジャン~、これは恒例行事だよ~」
「間違い無いね~。オイラもやっと慣れた~」
「精霊にも『砂糖を吐く』が伝わるのね……『砂を吐く』でも伝わったのかしら?」
「え!?気になったのそっち~?」
心の声をドリーが代弁してくれたな……今のは俺もつい聖女様に突っ込んでしまいそうになったからな。
「安定のちょいズレだね~。本当に微妙にズラして来るよね~」
「斬新でそっちに驚くよね……」
「え?」
「なんでもないよ、リオ。そろそろお昼ご飯を食べて、スタンピードが始まるまではゆっくりしよう?」
カミル殿下はありのままの聖女様で過ごして欲しいのだろう。少し天然で、愛嬌はあるけど辛辣で……確かに良い女だよなぁ。俺も彼女欲しい……
「ジャン、一緒に食べるかい?」
ちょっとビクッとしてしまったが、気付かれなかったかな。カミル殿下と聖女様には絶対に嫌われては駄目だからな。帝国の平和の為にも、俺が頑張らねばだ。
「はい。聖女様の御披露目パーティーの事も相談して宜しいでしょうか?」
「あぁ、勿論だよ。僕もそろそろ話しを進めておくべきだと思っていたんだ」
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「有意義な時間をありがとうございました……」
「ふふっ、ジャンは素直で面白いのね」
「いえいえ、あそこまで考えて行動なさっているとは思わず、大変失礼致しました……」
カミル殿下と聖女様は、スタンピードが終わった後のスケジュールも細かく組んでおられた。王国に皇帝を迎え入れてからの方が帝国で動きやすいからなど、理由もしっかりあって、俺の考えていた事なんて上辺だけしか見ようとしていなくて……本当に恐れ入った。
「ジャンはこれから勉強して行けば良いよ。僕達より若いんだしね。さぁ、そろそろスタンピードの時間だよ。ソラ、ドリー、問題無さそうかい?」
「大丈夫だよ~。位置も時間もほぼズレは無いよ~」
「ありがとう、ソラ。じゃあ後10分ぐらい余裕があるかな。リオ、調子はどう?」
「私は大丈夫なんだけど……魔導師達、大丈夫?」
「ん?帝国の魔導師?」
「えぇ、グッタリしてる様に見えたのだけど……あれ?デューク?デュークは何処に居るの?」
「ソラ、ドリー!デュークを探せるかい?」
「気配が無いね~。何故気が付かなかったんだろ~?」
「本当だ~!赤のお兄ちゃん2人とも居ないよ~?」
「え?テオも?ついさっきまで居たわよね?」
「これは不味いな。防御壁を張れる魔導師は何人いるんだろうか?」
「カミル、ちょっと試して見ても良い?」
「何か気になる事でも?」
「見えて無いだけかも知れないわ。声も聞こえて無いだけかも知れない。外から隠密魔法をかけられ……」
「リオ?」
「あそこ見て!カミル!ほんの少しだけ空間が赤いの分かるかしら?」
「うわっ!本当だ……何だあれ?」
「リオ~、アレ、気持ち悪い~……オイラもドリーもちょっと苦しいよ~」
「ソラ、ドリー、少し離れていて!ジャン、精霊達に防御膜を張れる?カミル、皆んなを少し後ろに下げて」
「了解」
パーッと皆んなが移動した。体調の悪そうな者や、グッタリしている者も、近くの騎士や元気な者達が移動するのを手伝って、速やかに移動出来た様だ。
「じゃあ、行くわよー!」
聖女様は、赤い空間の前に跪き、祈りのポーズを取っていた。時間の経過と共に、白いキラキラした光が聖女様から溢れ出し、聖女様の周りから我々の方まで白いキラキラの光が押し寄せて来た。
「グァ――――――ッ!!」
赤い空間から苦しそうに呻くデュークとテオドールが現れた。膝を地面に付き、腕でバランスを取ってる様だが、プルプルしているのが分かる。体中に大汗を掻いているのか、テカっているな。
そして、俺の近くに居たグッタリしていた魔導師からは『黒いモヤ』が分離している様に見えた。安心しかけたその時、地面がグラッと揺れた。
「リオ!スタンピードが始まってしまう!」
聖女様はスクッと立ち上がり、両手で天を仰いだ。すると、ぶわ――――――っと白い光が降り注ぎ、『黒いモヤ』を消滅させていった。デューク殿もテオも、グッタリしていた魔導師達も立ち上がっていた。
「魔導師団、防御壁を張れ!」
「「「はっ!!」」」
「はぁ――――、何とかなったわね……一気に片付けるわよ!皆んな全力でサポートをお願いね!」
聖女様は額に汗を滲ませ、かなり疲れている様に見えるが、何事も無かったかの様に振る舞った。これこそ救世主の姿なのだろう。本人は無意識なんだろうけどな。
「防御壁、張り終わりました!上級300発は受けてみせますぞー!」
デューク殿が敢えてテンション高く声を上げた。王国の人材は、本当に素晴らしいな……俺も育てなきゃだよな。羨ましがってばかりでは手に入らない事も知ったからな。
「上級魔法300発、『狭間』に向かって行くわよー!」
「「お――――!!!」」
テオや魔導師団の者達も声を上げ、皆んなでお互いを鼓舞する。聖女様の魔法は防御壁の内側へ凄い勢いで叩き込まれて行ったのだった。
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「ソラ、数はどうだい?」
「現時点で150万匹殲滅済みで、残り50万匹ぐらいだと思うよ~」
「今回は200万匹?また前回より増えてるね……」
「『相手』も考えてるって事じゃないの~?」
「やっぱり、面倒な事になりそうだよね……」
「教会に行く事を言っているの~?」
「あぁ。王太子としてはリオに行って貰わなければならないのだけどね。僕個人としては乗り気になれなくて」
「そんなの当たり前でしょ~?オイラだって、リオがどうしてもって言うから渋々了承したんだからね~?」
「そうか、ソラもそうなんだね?」
「カミル~、大事な人や仲間が危険に晒されるかも知れないって思ったら、やめて欲しいと思うのは当たり前の事だよ~?」
「うん、そうだよね……愛しいリオに任せるしか無いのは心苦しいけど、僕はリオの近くで守れたらと思うよ」
「オイラも2人の側に居るよ~。オイラの全てをかけてでも、2人を守りたいと思っているよ~」
「うん、ありがとうソラ。リオを守るって気持ちが大事なんだよね。何も出来なくても、盾ぐらいにはなれるだろうからね」
「カミル~、リオが悲しむ事は駄目だよ~。皆んな無事で帰って来なきゃリオが泣いちゃうんだからね~」
「ふふっ、そうだね、それは駄目だね。皆んなで生き残る方法を模索して行こうか。僕達には考える頭があるからね」
「そうだね~。戦略はジーさんとか得意でしょ~?相談してみるのもアリだよね~」
「うん、そうしようか。前向きに考えれば、やれる事はまだ沢山あるんだね。準備を怠らずに頑張ろうね、ソラ」
「おっけ~。そろそろ今回のスタンピードも終わるよ~。リオがちょっとヤバめだから、終わったら横抱きにして~?オイラがカミルごとリオの部屋に飛ばすから、救護班を呼んで~?」
「分かった。今回は最初の聖女スキルがキツかったんだろうね。デューク達が無事で良かった……今更だけど」
「本当にね~……リオが祈らなかったら、魔導師達も『黒いモヤ』に飲み込まれていたのかもね~?」
「まさか、スタンピード開始ギリギリに殲滅するのを邪魔して来るとは思わなかったからね」
「リオのお陰だね~。早く休ませてあげよ~ね~」
「そうだね。あー、ジャン!僕達は先に帰るよ」
「カミル殿下!やはり聖女様は少し無理をなさっておられましたか?」
「最初の聖女スキルがキツかったんだと思う。前に1人だけ浄化した時も、キツかったって言ってたからね。今回は複数の人間にかけなきゃならなかったから、広範囲を浄化したしね」
「分かりました。殲滅はほぼ終わった様ですので、後は騎士達と確認してから報告書を上げますね。今回もありがとうございました」
「あぁ。ここからが正念場だからね。お互い頑張ろう」
カミル殿下は聖女様に駆け寄り、お姫様抱っこをすると聖女様は少し顔を赤くして抗議していたが、ソラ殿に転移魔法を使われた様で消えてしまった。
今回はイレギュラーとは言え、聖女様に無理をさせる事となってしまって不甲斐ないな……テオ達魔導師から聴取して、詳しい内容を上げなければ。
ただ、毎回置いていかれてしまうデューク殿がどんどん帝国に馴染んでいるのだが、良いのだろうか?と思っていたりする……テオが世話を焼いてるらしいから、困ってはいないと言っていたが……まぁ、気にするだけ無駄なんだろうな。うん、見なかった事にしよう。
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