132 / 211
第132話 御披露目の日 ★国王ギルバート SIDE
しおりを挟む
諸々の準備も終わり、国内の御披露目パーティーの当日となった。本日の主役であるリオは、綺麗な青色のドレスを翻し、物凄い勢いで猛ダッシュしている……な?
「何が起こっているのだ?」
「あぁ、陛下までいらっしゃいましたか……」
パーティー会場へ続く道の途中、王宮の中庭には何本ものナイフが芝の上に落ちている。既に下級貴族から中級貴族は会場に入っているから問題は無いが、誰かが狙われたのであろう事は確かだろう。
「御覧の通り、聖女様が『隠密魔法』をかけた『ネズミ』を見つけてしまわれて、捕縛しようとなさってる様ですな……」
「何故誰も止めんのだ?」
「追いつかないからでは?」
「あぁ…………」
リオはドレスを着ているはずなのに、周りでワタワタしている騎士達とは違い、キレッキレの動きでドンドン見えない敵を倒している様だ。『魔封じ』をした『ネズミ』は見えるようになるらしいな?あぁ、見えないから背中にペンキだろうか?色をつけているのか……
「騎士達ですら追いつかないのですから、敵は手強いのでしょうな」
「既に5名捕まえたと報告が来ました」
公爵達が集まって来てしまった。まぁ、公爵家は身内みたいなものだから問題ないがな。
「リオはレディなのだから、もう少し頑張れよ男ども」
「『身体強化』などの基礎魔法が恐ろしい程お強いので敵わないのですよ、陛下。聖女様の初級魔法は魔導師団の団員が放つ上級魔法より威力がありますからね」
「本人が気付いていないのが幸いか……どんどん人外になっているよな?」
「元々の能力が高いのに努力家でいらっしゃいますからな。当然の結果と思われますが、知らない者には恐怖の対象にもなり得ますな……」
「うーむ、どうするかなぁ?『ありのまま』で過ごして欲しいとは思うんだがなぁ。あの能力ではさすがに難しいか……」
あれでリオは自分が普通だと思っているらしいから不思議な子だよな。こちらでリオの心を傷つけないようにフォローしてやらんとな。
「本当に惜しい人材ですなぁ。王太子妃で無ければ、密偵としてでも、女官としてでも優秀でしょうに」
「リオの事だから、魔導師になるとか言い出しそうだが?」
「否定出来ないのが聖女様らしいですな……」
ん?待てよ?見えない『ネズミ』をどうやって見つけたんだ?この疑問にはまだ誰も気が付いていないな?あとでカミルに報告させよう。何かしら面倒が潜んでいる気もするしな……
「さて、決着が着いたのか?『魔封じ』を輪投げの様に腕に掛けられる人間を初めて見たな」
「えぇ、初めて見ましたね。ネズミは8匹の様ですな」
「この前は10匹居ると言っていなかったか?」
「おりましたな。後2匹は何処かにおりましょうが顔は割れておりますし、直ぐに捕まるでしょう」
今回はリオの考案した『監視カメラ』があるからな。リオのお陰で、城の警備が厳重になったのは嬉しい誤算だったがな。やはり、人の手だけでは難しい所はある。何時間も同じ集中力で警備出来る訳ではないのだからな。
「大半を聖女であるリオが捕えたらしいんだが、守られるべき人間って誰だろうな?」
「陛下とカミル殿下の事も守る気でいらっしゃいますからね、聖女様は。あれだけ激しく動いたはずなのに、ドレスも元通りですか……」
皆が驚くのは当たり前だな。リオはあれだげ動いていたのに汗すら掻いていないし、メイクやヘアスタイルすらも崩れていないのだから。
「ドレスに防御膜を張っておいたのか?あの程度、何とも無いとでも言いたいんだろうな……」
「恐らく、侍女達の苦労を慮っての行動でしょう。聖女様御自身は、目立つ事を良しとされませんからね」
「既にその行動が目立ってると思うがな……これからどうやって隠れるつもりなんだ?」
「お気づきになられていないのですから、黙っていてください。まだ御自身は目立ってないと思って居られるのでしょう」
そんな事があり得るのだろうかと思うが、現にリオは澄まし顔で会場に入る準備をしているようだ。
「天然が故、なのか?」
「恐らくは」
「まぁ、そんなリオも可愛いから良いか。早くカミルと結婚して安心させておくれ」
「本当に、その通りで」
「むっ、私の政治では不安だと?」
「可もなく不可もないので問題ありませんが?」
「グッ!自分で蒔いた地雷を踏んだ気がするな……」
「いつもの事でございます」
「今日も執事兼宰相が厳しい……」
まぁ、私に意見出来る人間は少ないからな。はっきりと意見を言ってくれるから宰相なんだろうけども。
「…………何を2人でやってるの~?」
「おっと、シルビーかい。どうなされた?」
「王様~、リオが捕まえた『ネズミ』にすらなれなかった『ゴミ』はどうしたら良い~?ってカミルが聞いてる~」
小動物から無機質で役に立たない『モノ』扱いか……それも『ゴミ』って、クックッ。
「あー、リオの祝いの席を邪魔するヤツらが許せなかったのだろうな。好きにして良いと伝えておくれ」
カミルはリオを中心に物事が動いているから仕方ないな。きっとかなり我慢しているのだろう。
「好きにするなら、サクッと処分しちゃうよ~って言ってる~。なんならこの場でって言ってるけど~?」
おっと、カミルは完全にキレてるな。まぁ、私はちょっと楽しんでしまったけれど、リオを狙ったのであれば許せないもんな?
「頼むから、人に見えない所でやってくれと伝えてくれるかい?一応、聴取はしておいておくれよ?」
「面倒そうな顔をしないのって、リオに怒られてるみたい~。うん、だから大丈夫だと思うよ~」
「ぶふっ!そ、そうかい。それなら良かったよ。シルビー、伝言をありがとうね」
さすがリオだな。カミルをしっかり操縦出来ているなんて、素晴らしい女房だな。
「えへへ~、またお願いされたら来るね~。バイバ~イ」
いつも私の前まで来て、挨拶してくれるのが嬉しくて笑顔で手を振り返していると、周りのおっさん達も同じく手を振っていた。精霊達は皆の癒しになりつつあるな……
「陛下、そろそろ入場のお時間ですが」
「公爵達が入場していないじゃないか」
「えぇ。ちゃっちゃと皆さん入場して貰えますか?最後にリオ様をカミル殿下がエスコートして入場なさいますので」
「それは申し訳なかったな。ほれ、公爵達。先に早く入場しなさい」
「直ぐに参ります。エイカー公爵が最後でよろしいな?」
「畏まりました。アナウンスを」
やっと皆が入場し、国王陛下である私が奥の王族用の入り口から入場して玉座に座れば、準備完了だ。
「それでは、この度『聖女』になられたリオ=カミキ様と、王太子カミル殿下の入場です」
宰相がいつもより厳かに、声を少し低く出しているのが笑える。リオに良い所を見せたいのだろうか。最近仕事の関係上、よく話しをするようになったらしいんだよな。カミルの敵が増えそうだな?クックッ。
先程王宮の庭を全力疾走していたとは思えない『聖女様』が開かれた扉の前で微笑んでいる。カミルに言われたのだろう、何を言われても微笑んでいれば大丈夫だよ、と。周りの反応を見るに、それは正解の様だ。
ゆっくりとカミルのエスコートで私の前まで進んで来る2人はとても美しい……神々しいとすら言える姿に恍惚としている貴族達。デュークやキース達も惚けていないか?
「カミル、ご苦労であった。さぁ、『聖女様』はこちらへ」
「リオ=カミキ参上致しました」
美しいカーテシーを行い、ふわっとドレスを翻したリオは……蹴りを……入れちゃったよねー。カミルが何事も無かったかのように見えていない『ネズミ』の手首?を掴んで捻り上げている。
慌てたのは宰相とリオの護衛達だな。落ち着いてるのはカミルやその補佐官達、そして保護者の爺さんとデューク、公爵達も落ち着いてるな。いい加減、リオの行動に慣れて来たのか?この前なんて子供まで救出してたもんな……
「陛下、続けて頂いて大丈夫です」
カミルはサイラスに見えない『何か』を引き渡した。リオから『魔封じ』を受け取り、見えない『何か』につけると『オッサン』が姿を現した事で、会場が沸いたな。
「うぉっほん。本日皆に集まって貰ったのは、デュルギス王国へ現れた『聖女』のお披露目の為である。デュルギス王国の国王である私、ギルバート=デュルギスは、召喚者リオ=カミキが『大聖女』である事をここに認める」
公爵家の人間が拍手をし始めたので、他の貴族は拍手せざるを得ない。文句があるなら早めに揉めて欲しいな。今のデモンストレーション?を見て、リオが普通では無い事に気が付いた者は多いだろうか。それでも文句を言うのであれば、話しを聞いてやろうな。
「へ、陛下!よろしいでしょうか?」
「うむ、かまわぬ」
「彼女が『大聖女』であると、何故分かるのでしょうか?」
「私の夢枕に女神様が立たれたからだ。リオ=カミキは『女神の愛し子』でもあると仰った。故に、国王の義務として、こうして『大聖女』のお披露目をしているのだろう?」
「そ、そうでしたか。失礼しました……」
その度胸だけは褒めてやりたいけどな?残念ながら、我が国の国王から公爵家までの上流貴族の人間ほとんどがリオの味方になりつつあるからな?
「『大聖女』は政治や社交界に疎いと指摘があった。なので、公爵令嬢であるエリザベス=エイカーに側近となって活躍して貰う事になったから、そちらも問題あるまい?」
それでも文句があるならどうぞ?と煽ってみる。公爵令嬢は綺麗なカーテシーをし、周りの者達に挨拶をしている。彼女は社交界でも発言力があるし、彼女の母は女傑と言われる程の豪快な女性だから、リオの味方に引き込みたい所だな。この後の挨拶で初対面となるだろう。
「それでは、公爵家の方々から『大聖女様』へのご挨拶をどうぞ」
宰相がエイカー公爵家の人間がいる方向へ向かって声を掛けた。すると、エイカー公爵と公爵夫人、そして側近を命じられた公爵令嬢と令息がリオの前に進み出た。
「『大聖女様』先程振りでございます。私は今後とも、『大聖女様』のお力になれたらと存じます」
「公爵閣下、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いしますね」
公爵はニコニコしながらリオと会話をしている。公爵夫人はリオをジッと見ていたが、急にニッコリと笑った。
「『大聖女様』初めまして。わたくしはソフィア。公爵の妻で、エリザベスの母にございます。娘を側近へ取り立てて頂き、ありがとうございます。我が公爵家はこれから先、カミル殿下と『大聖女』リオ様をお支えして行く事を誓いますわ」
「公爵夫人、ありがとうございます」
「『大聖女様』、よろしければ、ソフィーとお呼びくださいませ」
「では、私の事もリオとお呼びくださいね、ソフィー夫人」
会場内がざわざわと騒々しくなった。まぁ、当たり前か。エイカー公爵家は『大聖女』とカミルを支持すると公に発表したのだからな。そして愛称呼びもあっさりと許されてしまった。どうやらリオは、公爵夫人のお眼鏡にかなったらしいな。
カミルが物凄く良い笑顔でニコニコしているな。まぁ、これで決まったようなものだから分からんでもないけどな?もう少し控えめに喜んでくれないだろうか。
「わたくしもリオ様をお支え出来るように精進致しますわ。実務は明日からになりますが、よろしくお願いします」
「えぇ、リズ。聡明な貴女を側近に迎えられて嬉しいわ。明日からよろしくね」
可愛らしい女の子が2人、微笑み合っているのを見ると癒されるよな。初々しい感じがまた良い……私の子供は全て男だったからな。一人ぐらい女の子が欲しかったなぁ。まぁ、だからこそ義娘のリオが可愛くて仕方ないんだけどな。
その後も挨拶は順調に進んだ。途中、婆さんが感極まって泣き出してしまったのには驚いたが、爺さんも目頭が光っていたから2人して涙腺が緩んでいるのだろう。
下位貴族まで挨拶が終われば、リオとカミルがダンスを踊ったのを見てから退出可能となる。先程、会場にも『ネズミ』が出たからなぁ?宰相が部屋に訪ねて来るんだろうけど、仕方ない。リオの為にも頑張らねばな。
「何が起こっているのだ?」
「あぁ、陛下までいらっしゃいましたか……」
パーティー会場へ続く道の途中、王宮の中庭には何本ものナイフが芝の上に落ちている。既に下級貴族から中級貴族は会場に入っているから問題は無いが、誰かが狙われたのであろう事は確かだろう。
「御覧の通り、聖女様が『隠密魔法』をかけた『ネズミ』を見つけてしまわれて、捕縛しようとなさってる様ですな……」
「何故誰も止めんのだ?」
「追いつかないからでは?」
「あぁ…………」
リオはドレスを着ているはずなのに、周りでワタワタしている騎士達とは違い、キレッキレの動きでドンドン見えない敵を倒している様だ。『魔封じ』をした『ネズミ』は見えるようになるらしいな?あぁ、見えないから背中にペンキだろうか?色をつけているのか……
「騎士達ですら追いつかないのですから、敵は手強いのでしょうな」
「既に5名捕まえたと報告が来ました」
公爵達が集まって来てしまった。まぁ、公爵家は身内みたいなものだから問題ないがな。
「リオはレディなのだから、もう少し頑張れよ男ども」
「『身体強化』などの基礎魔法が恐ろしい程お強いので敵わないのですよ、陛下。聖女様の初級魔法は魔導師団の団員が放つ上級魔法より威力がありますからね」
「本人が気付いていないのが幸いか……どんどん人外になっているよな?」
「元々の能力が高いのに努力家でいらっしゃいますからな。当然の結果と思われますが、知らない者には恐怖の対象にもなり得ますな……」
「うーむ、どうするかなぁ?『ありのまま』で過ごして欲しいとは思うんだがなぁ。あの能力ではさすがに難しいか……」
あれでリオは自分が普通だと思っているらしいから不思議な子だよな。こちらでリオの心を傷つけないようにフォローしてやらんとな。
「本当に惜しい人材ですなぁ。王太子妃で無ければ、密偵としてでも、女官としてでも優秀でしょうに」
「リオの事だから、魔導師になるとか言い出しそうだが?」
「否定出来ないのが聖女様らしいですな……」
ん?待てよ?見えない『ネズミ』をどうやって見つけたんだ?この疑問にはまだ誰も気が付いていないな?あとでカミルに報告させよう。何かしら面倒が潜んでいる気もするしな……
「さて、決着が着いたのか?『魔封じ』を輪投げの様に腕に掛けられる人間を初めて見たな」
「えぇ、初めて見ましたね。ネズミは8匹の様ですな」
「この前は10匹居ると言っていなかったか?」
「おりましたな。後2匹は何処かにおりましょうが顔は割れておりますし、直ぐに捕まるでしょう」
今回はリオの考案した『監視カメラ』があるからな。リオのお陰で、城の警備が厳重になったのは嬉しい誤算だったがな。やはり、人の手だけでは難しい所はある。何時間も同じ集中力で警備出来る訳ではないのだからな。
「大半を聖女であるリオが捕えたらしいんだが、守られるべき人間って誰だろうな?」
「陛下とカミル殿下の事も守る気でいらっしゃいますからね、聖女様は。あれだけ激しく動いたはずなのに、ドレスも元通りですか……」
皆が驚くのは当たり前だな。リオはあれだげ動いていたのに汗すら掻いていないし、メイクやヘアスタイルすらも崩れていないのだから。
「ドレスに防御膜を張っておいたのか?あの程度、何とも無いとでも言いたいんだろうな……」
「恐らく、侍女達の苦労を慮っての行動でしょう。聖女様御自身は、目立つ事を良しとされませんからね」
「既にその行動が目立ってると思うがな……これからどうやって隠れるつもりなんだ?」
「お気づきになられていないのですから、黙っていてください。まだ御自身は目立ってないと思って居られるのでしょう」
そんな事があり得るのだろうかと思うが、現にリオは澄まし顔で会場に入る準備をしているようだ。
「天然が故、なのか?」
「恐らくは」
「まぁ、そんなリオも可愛いから良いか。早くカミルと結婚して安心させておくれ」
「本当に、その通りで」
「むっ、私の政治では不安だと?」
「可もなく不可もないので問題ありませんが?」
「グッ!自分で蒔いた地雷を踏んだ気がするな……」
「いつもの事でございます」
「今日も執事兼宰相が厳しい……」
まぁ、私に意見出来る人間は少ないからな。はっきりと意見を言ってくれるから宰相なんだろうけども。
「…………何を2人でやってるの~?」
「おっと、シルビーかい。どうなされた?」
「王様~、リオが捕まえた『ネズミ』にすらなれなかった『ゴミ』はどうしたら良い~?ってカミルが聞いてる~」
小動物から無機質で役に立たない『モノ』扱いか……それも『ゴミ』って、クックッ。
「あー、リオの祝いの席を邪魔するヤツらが許せなかったのだろうな。好きにして良いと伝えておくれ」
カミルはリオを中心に物事が動いているから仕方ないな。きっとかなり我慢しているのだろう。
「好きにするなら、サクッと処分しちゃうよ~って言ってる~。なんならこの場でって言ってるけど~?」
おっと、カミルは完全にキレてるな。まぁ、私はちょっと楽しんでしまったけれど、リオを狙ったのであれば許せないもんな?
「頼むから、人に見えない所でやってくれと伝えてくれるかい?一応、聴取はしておいておくれよ?」
「面倒そうな顔をしないのって、リオに怒られてるみたい~。うん、だから大丈夫だと思うよ~」
「ぶふっ!そ、そうかい。それなら良かったよ。シルビー、伝言をありがとうね」
さすがリオだな。カミルをしっかり操縦出来ているなんて、素晴らしい女房だな。
「えへへ~、またお願いされたら来るね~。バイバ~イ」
いつも私の前まで来て、挨拶してくれるのが嬉しくて笑顔で手を振り返していると、周りのおっさん達も同じく手を振っていた。精霊達は皆の癒しになりつつあるな……
「陛下、そろそろ入場のお時間ですが」
「公爵達が入場していないじゃないか」
「えぇ。ちゃっちゃと皆さん入場して貰えますか?最後にリオ様をカミル殿下がエスコートして入場なさいますので」
「それは申し訳なかったな。ほれ、公爵達。先に早く入場しなさい」
「直ぐに参ります。エイカー公爵が最後でよろしいな?」
「畏まりました。アナウンスを」
やっと皆が入場し、国王陛下である私が奥の王族用の入り口から入場して玉座に座れば、準備完了だ。
「それでは、この度『聖女』になられたリオ=カミキ様と、王太子カミル殿下の入場です」
宰相がいつもより厳かに、声を少し低く出しているのが笑える。リオに良い所を見せたいのだろうか。最近仕事の関係上、よく話しをするようになったらしいんだよな。カミルの敵が増えそうだな?クックッ。
先程王宮の庭を全力疾走していたとは思えない『聖女様』が開かれた扉の前で微笑んでいる。カミルに言われたのだろう、何を言われても微笑んでいれば大丈夫だよ、と。周りの反応を見るに、それは正解の様だ。
ゆっくりとカミルのエスコートで私の前まで進んで来る2人はとても美しい……神々しいとすら言える姿に恍惚としている貴族達。デュークやキース達も惚けていないか?
「カミル、ご苦労であった。さぁ、『聖女様』はこちらへ」
「リオ=カミキ参上致しました」
美しいカーテシーを行い、ふわっとドレスを翻したリオは……蹴りを……入れちゃったよねー。カミルが何事も無かったかのように見えていない『ネズミ』の手首?を掴んで捻り上げている。
慌てたのは宰相とリオの護衛達だな。落ち着いてるのはカミルやその補佐官達、そして保護者の爺さんとデューク、公爵達も落ち着いてるな。いい加減、リオの行動に慣れて来たのか?この前なんて子供まで救出してたもんな……
「陛下、続けて頂いて大丈夫です」
カミルはサイラスに見えない『何か』を引き渡した。リオから『魔封じ』を受け取り、見えない『何か』につけると『オッサン』が姿を現した事で、会場が沸いたな。
「うぉっほん。本日皆に集まって貰ったのは、デュルギス王国へ現れた『聖女』のお披露目の為である。デュルギス王国の国王である私、ギルバート=デュルギスは、召喚者リオ=カミキが『大聖女』である事をここに認める」
公爵家の人間が拍手をし始めたので、他の貴族は拍手せざるを得ない。文句があるなら早めに揉めて欲しいな。今のデモンストレーション?を見て、リオが普通では無い事に気が付いた者は多いだろうか。それでも文句を言うのであれば、話しを聞いてやろうな。
「へ、陛下!よろしいでしょうか?」
「うむ、かまわぬ」
「彼女が『大聖女』であると、何故分かるのでしょうか?」
「私の夢枕に女神様が立たれたからだ。リオ=カミキは『女神の愛し子』でもあると仰った。故に、国王の義務として、こうして『大聖女』のお披露目をしているのだろう?」
「そ、そうでしたか。失礼しました……」
その度胸だけは褒めてやりたいけどな?残念ながら、我が国の国王から公爵家までの上流貴族の人間ほとんどがリオの味方になりつつあるからな?
「『大聖女』は政治や社交界に疎いと指摘があった。なので、公爵令嬢であるエリザベス=エイカーに側近となって活躍して貰う事になったから、そちらも問題あるまい?」
それでも文句があるならどうぞ?と煽ってみる。公爵令嬢は綺麗なカーテシーをし、周りの者達に挨拶をしている。彼女は社交界でも発言力があるし、彼女の母は女傑と言われる程の豪快な女性だから、リオの味方に引き込みたい所だな。この後の挨拶で初対面となるだろう。
「それでは、公爵家の方々から『大聖女様』へのご挨拶をどうぞ」
宰相がエイカー公爵家の人間がいる方向へ向かって声を掛けた。すると、エイカー公爵と公爵夫人、そして側近を命じられた公爵令嬢と令息がリオの前に進み出た。
「『大聖女様』先程振りでございます。私は今後とも、『大聖女様』のお力になれたらと存じます」
「公爵閣下、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いしますね」
公爵はニコニコしながらリオと会話をしている。公爵夫人はリオをジッと見ていたが、急にニッコリと笑った。
「『大聖女様』初めまして。わたくしはソフィア。公爵の妻で、エリザベスの母にございます。娘を側近へ取り立てて頂き、ありがとうございます。我が公爵家はこれから先、カミル殿下と『大聖女』リオ様をお支えして行く事を誓いますわ」
「公爵夫人、ありがとうございます」
「『大聖女様』、よろしければ、ソフィーとお呼びくださいませ」
「では、私の事もリオとお呼びくださいね、ソフィー夫人」
会場内がざわざわと騒々しくなった。まぁ、当たり前か。エイカー公爵家は『大聖女』とカミルを支持すると公に発表したのだからな。そして愛称呼びもあっさりと許されてしまった。どうやらリオは、公爵夫人のお眼鏡にかなったらしいな。
カミルが物凄く良い笑顔でニコニコしているな。まぁ、これで決まったようなものだから分からんでもないけどな?もう少し控えめに喜んでくれないだろうか。
「わたくしもリオ様をお支え出来るように精進致しますわ。実務は明日からになりますが、よろしくお願いします」
「えぇ、リズ。聡明な貴女を側近に迎えられて嬉しいわ。明日からよろしくね」
可愛らしい女の子が2人、微笑み合っているのを見ると癒されるよな。初々しい感じがまた良い……私の子供は全て男だったからな。一人ぐらい女の子が欲しかったなぁ。まぁ、だからこそ義娘のリオが可愛くて仕方ないんだけどな。
その後も挨拶は順調に進んだ。途中、婆さんが感極まって泣き出してしまったのには驚いたが、爺さんも目頭が光っていたから2人して涙腺が緩んでいるのだろう。
下位貴族まで挨拶が終われば、リオとカミルがダンスを踊ったのを見てから退出可能となる。先程、会場にも『ネズミ』が出たからなぁ?宰相が部屋に訪ねて来るんだろうけど、仕方ない。リオの為にも頑張らねばな。
19
あなたにおすすめの小説
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
リヴァイヴ・ヒーロー ~異世界転生に侵略された世界に、英雄は再び現れる~
灰色キャット
ファンタジー
「君に今の時代に生まれ変わって欲しいんだ」
魔物の王を討伐した古き英雄グレリア・ファルトは死後、突然白い世界に呼び出され、神にそう言われてしまった。
彼は生まれ変わるという言葉に孫の言葉を思い出し、新しい人生を生きることを決意した。
遥か昔に生きていた世界がどう変わっているか、発展しているか期待をしながら700年後の時代に転生した彼を待ち受けていたのは……『英雄召喚』と呼ばれる魔法でやってきた異世界人の手によって破壊され発展した――変貌した世界だった。
歴史すら捻じ曲げられた世界で、グレリアは何を求め、知り……世界を生きるのだろうか?
己の心のままに生き、今を知るために、彼は再び歴史を紡ぐ。
そして……主人公はもう一人――『勇者』、『英雄』の定義すら薄くなった世界でそれらに憧れ、近づきたいと願う少年、セイル・シルドニアは学園での入学試験で一人の男と出会う。
そのことをきっかけにしてセイルは本当の意味で『勇者』というものを考え、『英雄』と呼ばれる存在になるためにもがき、苦しむことになるだろう。
例えどんな困難な道であっても、光が照らす道へと……己の力で進むと誓った、その限りを尽くして。
過去の英雄と現代の英雄(の卵)が交差し、歴史を作る!
異世界転生型アンチ異世界転生ファンタジー、ここに開幕!
――なろう・カクヨムでも連載中――
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
憧れの召喚士になれました!! ~でも、なんか違うような~
志位斗 茂家波
ファンタジー
小さい時から、様々な召喚獣を扱う召喚士というものに、憧れてはいた。
そして、遂になれるかどうかという試験で召喚獣を手に入れたは良い物の‥‥‥なんじゃこりゃ!?
個人的にはドラゴンとか、そう言ったカッコイイ系を望んでいたのにどうしてこうなった!?
これは、憧れの召喚士になれたのは良いのだが、呼び出した者たちが色々とやらかし、思わぬことへ巻き添えにされまくる、哀れな者の物語でもある…‥‥
小説家になろうでも掲載しております。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?
嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】
ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。
見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。
大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!
神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。
「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」
【薬師向けスキルで世界最強!】追放された闘神の息子は、戦闘能力マイナスのゴミスキル《植物王》を究極進化させて史上最強の英雄に成り上がる!
こはるんるん
ファンタジー
「アッシュ、お前には完全に失望した。もう俺の跡目を継ぐ資格は無い。追放だ!」
主人公アッシュは、世界最強の冒険者ギルド【神喰らう蛇】のギルドマスターの息子として活躍していた。しかし、筋力のステータスが80%も低下する外れスキル【植物王(ドルイドキング)】に覚醒したことから、理不尽にも父親から追放を宣言される。
しかし、アッシュは襲われていたエルフの王女を助けたことから、史上最強の武器【世界樹の剣】を手に入れる。この剣は天界にある世界樹から作られた武器であり、『植物を支配する神スキル』【植物王】を持つアッシュにしか使いこなすことができなかった。
「エルフの王女コレットは、掟により、こ、これよりアッシュ様のつ、つつつ、妻として、お仕えさせていただきます。どうかエルフ王となり、王家にアッシュ様の血を取り入れる栄誉をお与えください!」
さらにエルフの王女から結婚して欲しい、エルフ王になって欲しいと追いかけまわされ、エルフ王国の内乱を治めることになる。さらには神獣フェンリルから忠誠を誓われる。
そんな彼の前には、父親やかつての仲間が敵として立ちはだかる。(だが【神喰らう蛇】はやがてアッシュに敗れて、あえなく没落する)
かくして、後に闘神と呼ばれることになる少年の戦いが幕を開けた……!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる