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第156話 リアのお願いと皇帝陛下の愛・後編 ★リオ SIDE
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「お待たせ!リオ、遅れてごめんね?皇帝陛下、リア、婆や、こんにちは。お待たせしてしまい、申し訳ありません」
魔導師団に顔を出して遅れたらしいカミルは、良い事があったのか、いつもより明るい顔をしていた。
「カミル殿下、ごきげんよう。わたくしの我が儘ですもの。いらしてくださっただけでありがたいですわ」
リアが少し申し訳無さそうにしている。カミルは気にしないでと微笑んで話しを進める。
「ふふっ、そうだったね。今日はリアの『お願い』を聞く為の女子会って言っていたよね。とっても気になってたから、早速、リアのお願いを聞いても良いのだろうか?」
どんどん話しを進めようとするカミルの腕を軽く揺すって手を引いた。
「カミル、取り敢えず椅子に掛けましょう?まだ私達もほんの少し前に挨拶を済ませたところなのよ?」
「あぁ、そうだねリオ。僕も紅茶を貰おうかな」
皆が着席し、お茶を飲んでホッとした所でリアが落ち着き無くモジモジしながら話し始めた。
「あの、その、ね?お父様とカミル殿下にお願いがあって…………」
「内容を聞かないと、叶えてあげられるか分からないなぁ。取り敢えずどんなお願いなのか聞いても良い?」
カミルは内容が分かってそうなのよね。さっき魔導師団に寄って来たってのも何だか気になるわ。カミルが時間に遅れる事なんて普段では滅多に無いから違和感があり過ぎるんだもの。
「もちろんよ。その、わたくしには想い人が居るんだけど……」
「あぁ、デュークだよね?」
サクッと答えたカミルにリアは少し焦った様子だったけれど、はにかんでゆっくりと頷いた。それを見た皇帝は初耳だったのだろう、ガタン!と勢いよく椅子から立ち上がってリアに問いかけた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!アメリア、想い人?結婚するのか!?」
「お、お父様、落ち着いてください!まだお付き合いどころか、2人きりで話した事も無いの。だから、お近づきになりたくて……」
それを聞いた皇帝はフ――ッと息を吐き、ボスンと椅子に腰を下ろした。今すぐに結婚する訳では無いと分かって少し落ち着いたみたいね。
「そ、そうか……そのデューク?とやらは聞いた事がある名前だな?」
「王国の魔導師団団長であり、裏ではリオの補佐を任せている男です」
カミルがサラッと説明してくれる。何気ない事もこうしてスマートにこなせるカミルが、やっぱりカッコ良いと思うのよね。つい見惚れちゃいそうになるわ。
「ほぉ。それは実力はありそうだな?大聖女様の補佐は普通の人間では務まらないだろうからな」
「仰る通りです。デュークは魔法の強さも王国で3本の指に入る実力者ですしね」
「3本の指?」
「ええ。トップは当然リオ。次が賢者である師匠、その次がデュークですね」
私はチートだから純粋な強さなら、デュークの方が断然上だと思うんだけどね。話しがややこしくなるから黙って大人しくしておくわ。
「あぁ、その2人を超えるのは難しそうだな……」
「実質、王国の魔導師で独身の……婚約者の居ないナンバーワンがデュークと言う事になりますね」
「ほほぉ、そうなのだな。ふむふむ、なるほど。アメリアは見る目があるのだな。だが単純に魔力の強さであれば、帝国にもテオドールだったか?あれでは駄目なのか?」
「テオは優しくて良い人ですけど……ザ・魔導師って感じが苦手で……」
「「「ザ・魔導師?」」」
「あぁ……言いたい事は理解したわ……」
リアはどちらかと言えば、ガチムチ系が好きなのでしょうね。魔導師はひょろっと痩せていて、顔色が白っぽいイメージが強いものね。それに比べてデュークはどちらかと言えば騎士団にいそうなタイプで、ゴリゴリでは無いけどガッチリしてるのよね。
「リオなら分かってくれると思っていたわ!わたくし、子供の為にも魔力の強い殿方と一緒になりたいとは思っているの。でも、やっぱり好みって譲れないじゃ無い?」
少しテンションの上がったリアは、私に向かって必死に同意を得ようとしているわね。確かに伴侶になるのであれば、どうしても譲れない所ってあるものね。
「そうね、とても良く分かるわ。王国のスタンピードで怪我人を肩に担いで運ぶデュークはやっぱりカッコ良かったもの」
私の想像してるイメージと、リアの好みが一致しているか確認する為にも具体的なものを上げてみる。
「まぁ!そうなのね?やっぱり見掛け倒しでは無くてお強いのね。今度ゆっくり話しを聞かせて欲しいわ!」
合ってたみたいね。やっぱりデュークはこちらの世界でもモテるんじゃないの。魔道具ばかり作って外に出なかったお陰で帝国の皇女様をお嫁に貰えるかも知れないなんて、世の殿方はとても羨ましいでしょうね。
「ええ、もちろん良いわよ。そうね、私はリアの婚約者としてデュークはアリだと思うわ。デュークは放っておいたら、魔道具や魔法の事ばかりだろうし……恐らく自ら進んで結婚するとは思えないし?リアなら多少強引にご飯とか食べさせてくれそうよね?」
「ん?ご飯とは?」
皇帝陛下がおかしなワードに引っ掛かったみたいね。そうよね、デュークを全く知らない人には分からないわよね。ちゃんと説明しておかないと。
「集中すると、寝食を忘れて物作りをしちゃうタイプの人間なんです。『練習装置』を作った時なんて、三日三晩寝ずに作っていたと聞いてます」
「そ、そうか。確かにそれは嫁が重要にはなって来そうだな?リアはそんな男が良いのか?」
「はい、お父様!わたくしは昔から男らしい殿方が好ましいと思っているのです。見た目は少し厳ついけど仕事も出来るし、物作りに対する熱量も好ましいと思いますわ。ガタイも良くて、力持ちで男らしい、素敵な殿方ですのよ」
『男らしい』をかなり強調してるわね。こればかりは好みだから仕方ない。賢い人が好きとか、糸目のチャラ男が好きとか、優男が好きな人もいるだろうし、個性があるから良いのだものね。
「あぁ、なるほど。リアの男の好みがあんな感じなんだね。確かにそのタイプの中から選ぶのであれば、年齢や立場なども考慮するとデュークが1番良いだろうね」
「な、なんと……カミル殿下も賛成で?」
「そうですね。リアの好みに合う男性を考えると、王国での1番はデュークになると思いますので。皇女であるリアに釣り合うのは彼ぐらいでしょう。功績もありますし、一応デュークは貴族ですしね」
バッ!とカミルを振り向く。え?そうなの?デュークってお貴族様だったの?私、最初の頃からフレンドリーに話し掛けてしまってた気がするんだけど……
「え!?そうだったの?話し方や所作はちゃんとしてると思ってたけど、カミルの側にいるからちゃんとしてるんだと思っていたわ……」
体育会系なのに魔法に長けた人ってイメージしか無かったのよね。その印象が強過ぎて、貴族とか全く気にした事が無かったわ。
「あぁ、それもあるね。王子の周りにいる人間は、それなりにキチンとしているからね。ただ、デュークの場合は……デュークが僕の幼馴染って事は伝えてるよね?」
「あ!そうね……王宮内で子供同士で遊ぶ事が出来るとしたら、貴族に限られるわよね。それも信用出来る血筋の貴族になるわ」
「その通り。デュークはリベラ公爵家の長男だよ。えっと……曾祖父……僕のひいお爺さんが国王だった時の王弟の子がデュークの父親だったかな?」
この世界では子供が生まれにくいと聞いているから、恐らくその時の王様と王弟は歳の差がかなりあったのでしょうね。元の世界と時間の概念が違うから、たまに分からなくなるのよね。
「あ、もしかしてデュークも王族の血を引いているから魔法も強いとか?」
「それもあると思うよ。僕は1番強い金の魔力だけど、公爵家の人間も緑以上の子供が生まれやすいと聞いているから、王族の血は関係ありそうだよね」
金色、赤色、緑色の順番で強いんだったわね。デュークは赤色の魔力だから、きっと王族の血がとても強いんでしょうね。デュークの立場的にも問題無さそうで良かったわ。
「そ、そうか……それならアメリアのお、夫……クッ!やっと会話をまともに出来る様になったと思っていたのに、娘がもう嫁に行くのか……」
ガックリと肩を落とす皇帝を横目に、婆やがリアの肩に優しく手を置いた。
「リアちゃん、カミルちゃんに頼みって、もしかして王国で暮らしたいのかしらぁ?」
婆やの質問を聞いて、またもや陛下がバッ!と凄い勢いでリアを振り向いた。今に首が捥げるんじゃないだろうか?と少し心配になるわね。
「な、なんだと!?王国に住むのか?もちろん、一時的な滞在で帰って来るんだよな?」
「お父様、落ち着いてください。叔母様の言う通り、少なくとも1年ぐらいは王国に滞在したいのですわ。デューク様が婚約者として受け入れてくだされば、王国の勉強も必要になるでしょう?花嫁修行も必要よね」
リアの言う通りなんだけどね。陛下はショックを隠せないみたい。陛下は立場上、こちらにしょっちゅう来れる訳でもないから仕方ないわね。
「は、花嫁修行……?は、早過ぎる!もっとゆっくりで良いだろう?一旦、帝国へ帰ってから、また来れば良いじゃないか」
リアが背筋をキチンと伸ばして、陛下をしっかり見据えた。陛下は少し戸惑った様だが、姿勢を正してリアと目線を合わせた。
「お父様、わたくしはデューク様が婚約者として認めてくださるまで、アプローチする必要があるのです。帝国へ帰ってからなんて呑気に構えていたら、他の女に掻っ攫われてしまいますわ。そうなったら、お父様は責任を取ってくださるの?」
「い、いや……確かにそうではあるだろうが……」
「ふふっ。恋する乙女は強いわねぇ。婆は賛成よぉ。可愛い教え子の相手が可愛い姪っ子って事でしょう?頑張って振り向かせて欲しいわぁ」
婆やも賛成してくれたから、ほぼ勝ち確じゃない?
「叔母様!ありがとうございます!わたくし頑張りますわ!」
婆やまでデュークとの結婚を賛成する意思がある事を知って唖然とする陛下に、カミルがフォローしようと優しく声を掛けた。
「皇帝陛下、言いたい事も分かりますので……そうですね、一度デュークと2人でお話しになってみては如何ですか?まだリアが惚れさせる前ですが、どの様な男か知っている方が安心なのでは無いでしょうか?」
「た、確かに……」
「それでは今晩、皇帝陛下の元へデュークを向かわせますので、そうですね……『練習装置』をどの様にして作ったか?辺りを聞きたいから呼んだ事にしましょうか」
会う理由は必要よね。王国の魔導師団団長であるデュークと皇帝陛下が2人で話すとなると、それなりの理由が無ければ厳しいものね。少なくとも、彼がそれなりの立場であるから会わせる事は容易いんだけどね。
「あぁ、それはありがたい。実はその装置には少し興味があったから、制作者に話しを聞いてみたいとは思っていたのだ」
陛下は嬉しそうに頷いた。陛下も機械がお好きなのかしらね?安全装置が付いているとは言え、さすがに危険だからやらせて貰えないとは思うけど。
「丁度良かったですわね、お父様!カミル殿下、どうぞよろしくお願いします。お父様、デューク様はわたくしが頑張って振り向かせたいのですから、余計な事は仰らないでくださいね?」
リアは何でも自分で努力して手に入れたいタイプみたいね。とても好ましいと思うわ。他力本願で手に入れた物って、案外すぐに飽きちゃったりするのよね。それに、デュークはそれだけリアに愛されてるって事だもの。
「わ、分かった。だが、申し込む時には私から書類を出さなければならないだろう?」
「もうひと押しって時に、わたくしからお父様にちゃんとお願いしますから、それまでは黙って見守ってくださいませ。王国では、カミル殿下とリオと叔母様が手伝ってくださるのなら、戦力過多でしょう?ふふふっ」
リアは上品に指先で口を隠した。その仕草はとても優雅で美しいわね。陛下は頭を抱えていたが、諦めがついた様ね。
「はぁ……あぁ、確かにな……王国で最強の者達が味方であるからな。きっと……間違い無くその男は落とされるのだろうな……」
デュークがリアに見初められた時点で、結果は見えている様にも思うけど、私は遠くから見守ろうと思うわ。
魔導師団に顔を出して遅れたらしいカミルは、良い事があったのか、いつもより明るい顔をしていた。
「カミル殿下、ごきげんよう。わたくしの我が儘ですもの。いらしてくださっただけでありがたいですわ」
リアが少し申し訳無さそうにしている。カミルは気にしないでと微笑んで話しを進める。
「ふふっ、そうだったね。今日はリアの『お願い』を聞く為の女子会って言っていたよね。とっても気になってたから、早速、リアのお願いを聞いても良いのだろうか?」
どんどん話しを進めようとするカミルの腕を軽く揺すって手を引いた。
「カミル、取り敢えず椅子に掛けましょう?まだ私達もほんの少し前に挨拶を済ませたところなのよ?」
「あぁ、そうだねリオ。僕も紅茶を貰おうかな」
皆が着席し、お茶を飲んでホッとした所でリアが落ち着き無くモジモジしながら話し始めた。
「あの、その、ね?お父様とカミル殿下にお願いがあって…………」
「内容を聞かないと、叶えてあげられるか分からないなぁ。取り敢えずどんなお願いなのか聞いても良い?」
カミルは内容が分かってそうなのよね。さっき魔導師団に寄って来たってのも何だか気になるわ。カミルが時間に遅れる事なんて普段では滅多に無いから違和感があり過ぎるんだもの。
「もちろんよ。その、わたくしには想い人が居るんだけど……」
「あぁ、デュークだよね?」
サクッと答えたカミルにリアは少し焦った様子だったけれど、はにかんでゆっくりと頷いた。それを見た皇帝は初耳だったのだろう、ガタン!と勢いよく椅子から立ち上がってリアに問いかけた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!アメリア、想い人?結婚するのか!?」
「お、お父様、落ち着いてください!まだお付き合いどころか、2人きりで話した事も無いの。だから、お近づきになりたくて……」
それを聞いた皇帝はフ――ッと息を吐き、ボスンと椅子に腰を下ろした。今すぐに結婚する訳では無いと分かって少し落ち着いたみたいね。
「そ、そうか……そのデューク?とやらは聞いた事がある名前だな?」
「王国の魔導師団団長であり、裏ではリオの補佐を任せている男です」
カミルがサラッと説明してくれる。何気ない事もこうしてスマートにこなせるカミルが、やっぱりカッコ良いと思うのよね。つい見惚れちゃいそうになるわ。
「ほぉ。それは実力はありそうだな?大聖女様の補佐は普通の人間では務まらないだろうからな」
「仰る通りです。デュークは魔法の強さも王国で3本の指に入る実力者ですしね」
「3本の指?」
「ええ。トップは当然リオ。次が賢者である師匠、その次がデュークですね」
私はチートだから純粋な強さなら、デュークの方が断然上だと思うんだけどね。話しがややこしくなるから黙って大人しくしておくわ。
「あぁ、その2人を超えるのは難しそうだな……」
「実質、王国の魔導師で独身の……婚約者の居ないナンバーワンがデュークと言う事になりますね」
「ほほぉ、そうなのだな。ふむふむ、なるほど。アメリアは見る目があるのだな。だが単純に魔力の強さであれば、帝国にもテオドールだったか?あれでは駄目なのか?」
「テオは優しくて良い人ですけど……ザ・魔導師って感じが苦手で……」
「「「ザ・魔導師?」」」
「あぁ……言いたい事は理解したわ……」
リアはどちらかと言えば、ガチムチ系が好きなのでしょうね。魔導師はひょろっと痩せていて、顔色が白っぽいイメージが強いものね。それに比べてデュークはどちらかと言えば騎士団にいそうなタイプで、ゴリゴリでは無いけどガッチリしてるのよね。
「リオなら分かってくれると思っていたわ!わたくし、子供の為にも魔力の強い殿方と一緒になりたいとは思っているの。でも、やっぱり好みって譲れないじゃ無い?」
少しテンションの上がったリアは、私に向かって必死に同意を得ようとしているわね。確かに伴侶になるのであれば、どうしても譲れない所ってあるものね。
「そうね、とても良く分かるわ。王国のスタンピードで怪我人を肩に担いで運ぶデュークはやっぱりカッコ良かったもの」
私の想像してるイメージと、リアの好みが一致しているか確認する為にも具体的なものを上げてみる。
「まぁ!そうなのね?やっぱり見掛け倒しでは無くてお強いのね。今度ゆっくり話しを聞かせて欲しいわ!」
合ってたみたいね。やっぱりデュークはこちらの世界でもモテるんじゃないの。魔道具ばかり作って外に出なかったお陰で帝国の皇女様をお嫁に貰えるかも知れないなんて、世の殿方はとても羨ましいでしょうね。
「ええ、もちろん良いわよ。そうね、私はリアの婚約者としてデュークはアリだと思うわ。デュークは放っておいたら、魔道具や魔法の事ばかりだろうし……恐らく自ら進んで結婚するとは思えないし?リアなら多少強引にご飯とか食べさせてくれそうよね?」
「ん?ご飯とは?」
皇帝陛下がおかしなワードに引っ掛かったみたいね。そうよね、デュークを全く知らない人には分からないわよね。ちゃんと説明しておかないと。
「集中すると、寝食を忘れて物作りをしちゃうタイプの人間なんです。『練習装置』を作った時なんて、三日三晩寝ずに作っていたと聞いてます」
「そ、そうか。確かにそれは嫁が重要にはなって来そうだな?リアはそんな男が良いのか?」
「はい、お父様!わたくしは昔から男らしい殿方が好ましいと思っているのです。見た目は少し厳ついけど仕事も出来るし、物作りに対する熱量も好ましいと思いますわ。ガタイも良くて、力持ちで男らしい、素敵な殿方ですのよ」
『男らしい』をかなり強調してるわね。こればかりは好みだから仕方ない。賢い人が好きとか、糸目のチャラ男が好きとか、優男が好きな人もいるだろうし、個性があるから良いのだものね。
「あぁ、なるほど。リアの男の好みがあんな感じなんだね。確かにそのタイプの中から選ぶのであれば、年齢や立場なども考慮するとデュークが1番良いだろうね」
「な、なんと……カミル殿下も賛成で?」
「そうですね。リアの好みに合う男性を考えると、王国での1番はデュークになると思いますので。皇女であるリアに釣り合うのは彼ぐらいでしょう。功績もありますし、一応デュークは貴族ですしね」
バッ!とカミルを振り向く。え?そうなの?デュークってお貴族様だったの?私、最初の頃からフレンドリーに話し掛けてしまってた気がするんだけど……
「え!?そうだったの?話し方や所作はちゃんとしてると思ってたけど、カミルの側にいるからちゃんとしてるんだと思っていたわ……」
体育会系なのに魔法に長けた人ってイメージしか無かったのよね。その印象が強過ぎて、貴族とか全く気にした事が無かったわ。
「あぁ、それもあるね。王子の周りにいる人間は、それなりにキチンとしているからね。ただ、デュークの場合は……デュークが僕の幼馴染って事は伝えてるよね?」
「あ!そうね……王宮内で子供同士で遊ぶ事が出来るとしたら、貴族に限られるわよね。それも信用出来る血筋の貴族になるわ」
「その通り。デュークはリベラ公爵家の長男だよ。えっと……曾祖父……僕のひいお爺さんが国王だった時の王弟の子がデュークの父親だったかな?」
この世界では子供が生まれにくいと聞いているから、恐らくその時の王様と王弟は歳の差がかなりあったのでしょうね。元の世界と時間の概念が違うから、たまに分からなくなるのよね。
「あ、もしかしてデュークも王族の血を引いているから魔法も強いとか?」
「それもあると思うよ。僕は1番強い金の魔力だけど、公爵家の人間も緑以上の子供が生まれやすいと聞いているから、王族の血は関係ありそうだよね」
金色、赤色、緑色の順番で強いんだったわね。デュークは赤色の魔力だから、きっと王族の血がとても強いんでしょうね。デュークの立場的にも問題無さそうで良かったわ。
「そ、そうか……それならアメリアのお、夫……クッ!やっと会話をまともに出来る様になったと思っていたのに、娘がもう嫁に行くのか……」
ガックリと肩を落とす皇帝を横目に、婆やがリアの肩に優しく手を置いた。
「リアちゃん、カミルちゃんに頼みって、もしかして王国で暮らしたいのかしらぁ?」
婆やの質問を聞いて、またもや陛下がバッ!と凄い勢いでリアを振り向いた。今に首が捥げるんじゃないだろうか?と少し心配になるわね。
「な、なんだと!?王国に住むのか?もちろん、一時的な滞在で帰って来るんだよな?」
「お父様、落ち着いてください。叔母様の言う通り、少なくとも1年ぐらいは王国に滞在したいのですわ。デューク様が婚約者として受け入れてくだされば、王国の勉強も必要になるでしょう?花嫁修行も必要よね」
リアの言う通りなんだけどね。陛下はショックを隠せないみたい。陛下は立場上、こちらにしょっちゅう来れる訳でもないから仕方ないわね。
「は、花嫁修行……?は、早過ぎる!もっとゆっくりで良いだろう?一旦、帝国へ帰ってから、また来れば良いじゃないか」
リアが背筋をキチンと伸ばして、陛下をしっかり見据えた。陛下は少し戸惑った様だが、姿勢を正してリアと目線を合わせた。
「お父様、わたくしはデューク様が婚約者として認めてくださるまで、アプローチする必要があるのです。帝国へ帰ってからなんて呑気に構えていたら、他の女に掻っ攫われてしまいますわ。そうなったら、お父様は責任を取ってくださるの?」
「い、いや……確かにそうではあるだろうが……」
「ふふっ。恋する乙女は強いわねぇ。婆は賛成よぉ。可愛い教え子の相手が可愛い姪っ子って事でしょう?頑張って振り向かせて欲しいわぁ」
婆やも賛成してくれたから、ほぼ勝ち確じゃない?
「叔母様!ありがとうございます!わたくし頑張りますわ!」
婆やまでデュークとの結婚を賛成する意思がある事を知って唖然とする陛下に、カミルがフォローしようと優しく声を掛けた。
「皇帝陛下、言いたい事も分かりますので……そうですね、一度デュークと2人でお話しになってみては如何ですか?まだリアが惚れさせる前ですが、どの様な男か知っている方が安心なのでは無いでしょうか?」
「た、確かに……」
「それでは今晩、皇帝陛下の元へデュークを向かわせますので、そうですね……『練習装置』をどの様にして作ったか?辺りを聞きたいから呼んだ事にしましょうか」
会う理由は必要よね。王国の魔導師団団長であるデュークと皇帝陛下が2人で話すとなると、それなりの理由が無ければ厳しいものね。少なくとも、彼がそれなりの立場であるから会わせる事は容易いんだけどね。
「あぁ、それはありがたい。実はその装置には少し興味があったから、制作者に話しを聞いてみたいとは思っていたのだ」
陛下は嬉しそうに頷いた。陛下も機械がお好きなのかしらね?安全装置が付いているとは言え、さすがに危険だからやらせて貰えないとは思うけど。
「丁度良かったですわね、お父様!カミル殿下、どうぞよろしくお願いします。お父様、デューク様はわたくしが頑張って振り向かせたいのですから、余計な事は仰らないでくださいね?」
リアは何でも自分で努力して手に入れたいタイプみたいね。とても好ましいと思うわ。他力本願で手に入れた物って、案外すぐに飽きちゃったりするのよね。それに、デュークはそれだけリアに愛されてるって事だもの。
「わ、分かった。だが、申し込む時には私から書類を出さなければならないだろう?」
「もうひと押しって時に、わたくしからお父様にちゃんとお願いしますから、それまでは黙って見守ってくださいませ。王国では、カミル殿下とリオと叔母様が手伝ってくださるのなら、戦力過多でしょう?ふふふっ」
リアは上品に指先で口を隠した。その仕草はとても優雅で美しいわね。陛下は頭を抱えていたが、諦めがついた様ね。
「はぁ……あぁ、確かにな……王国で最強の者達が味方であるからな。きっと……間違い無くその男は落とされるのだろうな……」
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