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第166話 国王の愛と決意 ★ギルバート国王 SIDE
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「それでは……王妃様、診察させていただきたいのですが、お体に触れてもよろしいでしょうか?」
リオがベッドに腰掛けるオリビアの前に膝をつき、真剣な表情で言葉を掛けている。リオの集中力は半端ないからな。もう、オリビアの体と治療の事しか考えていないだろう。
「ええ、もちろん構わないわ。多少強く触っても大丈夫よ。見えている所も痣自体はそんなに痛くないの。恐らくスキルのお陰なのでしょうね」
「あぁ、本当ですね……王妃様にこのスキルがあって良かったです。精神干渉系の魔法を緩和させるスキルのようですね。このスキルを突破するには、呪術師が命を賭けるしか方法が無いみたいです」
ほぉ?オリビアのスキル自体は知っていたが、呪いにも耐性があったとは知らなかったな。操られ難くて、弱い魔法なら弾くんじゃ無かったか?オリビアが王妃になった決定打が、このスキルだった記憶がある。
「そうなのね。早めに知る事が出来て良かったわ。私が生きていると言う事は、命を犠牲にした呪術師はまだ居ないって事で良いのかしら?」
「1人、この世から儚くなった人はいる様ですが、呪術で命を落とした訳ではなさそうです。鑑定結果に更に鑑定を掛けて調べた説明によると、命を賭けて術を使った呪術師は、魂が黒く濁り、人として輪廻転生できなくなるようですね。最後の一線を越えてしまう呪術師は少ないと考えて大丈夫なのではないでしょうか?」
確かにそこまでのリスクを自ら冒す者は少ないだろうが、罪を犯させようとしている人間は手段を選ばないからな。
「リオ、家族を人質に取られたり窮地に立たされた人間は、何をするか分からないから絶対は無いし、安心は出来ない。今回の呪術師達は王妃を呪った時点で処刑は免れないのだが、探すのを手伝ってくれるか?」
「はい。もちろん犯人捜しも手伝う予定ではありますので、爺やと進めてもよろしいですか?」
犯人捜しまでやらせてしまって申し訳ないとは思うが、爺さんとリオ以外には解決出来ると思えないんだよな……私の愛するオリビアやカミル、そして私を40年間も苦しめた者達なのだ。失敗は許されないし、リオと爺さんに任せて無理だったなら、誰にやらせても駄目だったのだろうと諦めもつくからな。まぁ、もちろん諦める気は無いが。
「忙しいのに悪いな。よろしく頼むよ」
「かしこまりました。それで王妃様、腕の付け根と腰辺りが1番お辛いと思うのですがいかがですか?」
「ええ。横になると腰辺りが、体を起こしている時には腕の付け根の痛みが強いわ」
「それでは、腰から治療を始めましょう。王妃様は体力が落ちていらっしゃるので、何度かに分けて治療を進める必要があります。ですからその間に、呪術師に依頼した元凶を見つけないとですね」
そうだったな。呪いはリオのお陰で解呪できそうなのだから、こちらは元凶を見つけ出さないとな。さすがに元主治医が1人でやったとは考えにくい。関りはあるだろうが、もっと大きな後ろ盾……もしかしたら脅されているのかもしれないが、とにかく元凶を見つけてからだな。
「そうだね。呪術師が口を割ってくれるのが1番簡単で良いんだけどね……」
「恐らく呪術師は知らないか、知っていても口を割らない魔法を掛けてあるだろうな」
基本的に呪術師や暗殺者はお金さえ貰えれば、依頼主は知らない方がやりやすいと言う者も多いと聞く。依頼主を知らなければ話す事も出来ないから、依頼主側も安心できるし、失敗してもとばっちりを受けなくて済むからな。その場合、依頼する時の金額が大幅に増やされる事もあるらしい。当たり前だが、危険な仕事ばかりなのだろうけどな。
「あの……」
「どうした?リオ」
「口を割らない魔法なら、私のスキルで解除出来ますが……」
「「え?」」
リオは少し屈んだ姿勢から申し訳なさそうに、少し上目遣いになりながら説明してくれたのだが、それに対して私とカミルが素っ頓狂な声を出してしまった。それを見たオリビアは楽しそうにクスクス笑い、リオはどうしたらいいかとワタワタしている。
「リオ、どういう事か聞いても良いかな?」
カミルがコホンと咳払いをし、仕切り直そうと質問している。私もどういう事か確かに気になるからな。
「あのね、口を割らない魔法って『呪いの一種』なのよ。私は浄化系のスキルだから、呪いならほとんど解除出来るらしいのよね?」
「「なるほど……」」
大聖女であるリオだからこそ、呪いに強いんだろうな。リオを召喚して……この世界にリオが来てくれて、本当に良かった。スキルは本人の努力や成果、成し遂げた事なども大きく関わって来る。この世界でもしっかりと勉強に励み、行動して来たリオに感謝しかないな。
「ですので、魔術師の方々が見つかれば、あとは何とかなると思われます。そして、今の主治医ではなく、40年前に担当していた主治医を探して尋問すべきでしょう。今の主治医がお弟子さんなら、師匠が言う事を鵜呑みにして従っている可能性があります。そうなると、今の主治医は呪いである事も知らないかもしれませんよね?」
ん?確かに今の主治医は関与していない可能性があるか。『呪い』に関与していなかったとしても、王妃であるオリビアに適切な治療を施さなかった時点で牢屋行きなのだがな。それにしても、リオにしては歯切れが悪いな?何が言いたいのだ?何か考えがあるのだろうか?
「確かにそうだな。そうなると、リオがこの部屋に来る事がバレては駄目だな?」
「はい。それについても考えてはあります。何度か治療には訪れる必要もありますし、治療が終わった後も経過観察はすべきだと思いますので……王妃様の信用出来る侍女を2人選出して貰えますか?」
「2人?1人では足りないのか?」
「あ、いえ……念には念を入れたいので、その選ばれた2人をソラ達に監視……ゴホン、調査して貰ってから1人に絞ろうと思っています。王妃様の選んだ者達を疑うのは不敬かも知れませんが、呪いは人を殺める事も出来るので……」
申し訳なさそうにオリビアを見るリオだが、私もカミルもその考えに賛成である。40年間も気が付かずにいたのだから、犯人も気が緩んでいる可能性があるしな。逆に王妃を殺めようと躍起になっているかも知れない。リオの言う通り、用心するに越した事はないのだ。
「リオの言う通りだな。呪術は危険だし、私はこれ以上オリビアを危険な目に遭わせたくない。愛しいオーリィ、分かってくれるかい?」
「ええ。ありがとうございます、ギルバート様。リオちゃんもありがとう。皆がわたくしを大事に思っているからこそだと分かっているわ」
「それでは王妃様の治療を始めてもよろしいですか?今日は外から全く見えない腰周りを治療しましょうか」
ん?女性なのだから痣が見える顔や、自分で見えてしまう腕からやって欲しいと思うのではないか?あぁ、辛い所から治療するのか。オリビアはどうしたいのだろうな?私は見た目は気にならないが……ん?そうか、カミル達が部屋から退出したら、オーリィに触れる事が出来るのか?!呪いだからうつらないんだよな?な、何だかドキドキして来たな。思春期の男子みたいになってるぞ……何だか恥ずかしいな。ここはしっかりつくろわないとだ。
「見えない所から治療するのかい?」
「ええ、そうですね。今はまだ、主治医に変化なしと思われた方が何かと動きやすいですし、痛みの強い所から治した方が良いかと……王妃様はご自身が見える腕などから治した方が安心なさいますか?服で隠せる部分であれば、問題無いと思うのですが」
さすがはリオと言うか……その通りだから私はこれ以上何も言えないな。言動がカミルに似て来たと言うか、元々が似た者同士だからそうなのかは分からないが、宰相が居なくても最適解を導けるのだから凄いよなぁ。
「いいえ、リオちゃんの言う通り腰から治療をお願いしたいわ。最近は横になっているのも辛くなっているし、その……朝の『電話』に出る時は特に、痛くて動けなくなることもあって慌てるのよ……」
困った顔をして頬に手を当てているオリビアは可愛い。ただ、朝は特に辛い事を知らなくて、申し訳ない事をしたな。
「オリビア……」
「ギル、わたくしも朝の電話が来る事を楽しみに待っているのは本当よ。起き上がる時に辛いだけで、電話したくない訳ではないの」
「そ、そうか。それでも悪かったな。明日の朝は、そんなに慌てずにゆっくり出てくれて良いからな?オーリィが電話に出てくれるのであれば、何時間でも待てるからゆっくりで良いのだからな?」
「ふふっ。ありがとうございます、ギルバート様」
「この夫婦も砂糖を吐くね……」
ボソッと独り言を呟いたソラ殿が音もなくリオの肩の上に現れた。精霊に揶揄われる日が来るとは思わなかったな。
「ソラ!こっちに来たの?それとも何かあった?」
「今、宰相殿が足止めしてるけど、後30分もせずに元主治医がここに来ると思うよ~」
「え?どうしてだい?」
「この部屋に、何かしらの魔力を感知する魔道具でもあるんじゃない~?例えば、カミルの魔力とか~?」
「あぁ、2人より強い魔力が入ったら通知しちゃう様な?」
「そんな感じかな~。部屋の少し先にジーさんが居てくれてるから、少しは時間稼ぎしてくれると思うよ~」
「ソラ、報告をありがとう。こちらが王妃様で、カミルの御母堂様よ。ご挨拶しましょうね」
「あらまぁ、可愛いわぁ!貴方が精霊の王子様ですわね。わたくしは王妃オリビアと申します。お見知り置きくださいね」
「オイラはソラだよ~。王様に色々と聞いてるだろうから割愛するよ~。今は治療を急ぐべきじゃない~?」
「そうね。さすがソラは賢いわね。さて、治療を始めましょう」
リオはオリビアのお腹辺りに手を当て、じっくり診察しているようだ。少しして、純白の魔力がオリビアの腰を包み込むように光ったから、治療をしているのだろうと分かる。少しだけ顔を歪めたオリビアは、深呼吸をして痛みを逃がしている様だった。
「王妃様、立ち上がっていただいてもよろしいですか?」
オリビアを支える為に、腰に腕を回す。これまでは、うつるからと触れる事が出来なかったから、フラフラしていても支える事すら出来なかったのだ。やっと心置きなく触れる事が出来て嬉しいな。私に支えられたオリビアは一瞬固まってから、ゆっくりと立ち上がった。
「ええ。あら……?まぁ!腰が全く痛くないわ!この痛みが呪いだったなんて……リオちゃん、本当にありがとうございます。次回もよろしくお願いしますね」
「はい、もちろんです。お任せください。時間が無いようですので、侍女はどうなさいますか?まだ決まって無ければ、ソラに伝言を頼みましょうか。ソラ、内容は分かっているかしら?」
「うん、分かってるよ~。その2人の侍女は、オイラとシルビーで調べるから安心して~」
「ありがとう、ソラ。頼りにしているわ」
「それでは母上、またお会いしましょう。リオ、隠密魔法をお願いできる?」
「私達だけ帰るのだから、ソラに転移をお願いしましょう。それでは陛下、御前失礼します」
リオがソラ殿に視線だけで会話している。この2人も絆が深まっているのだろう、相棒って感じでとてもカッコ良いな。今回も2人のお陰で私も妻もこの苦しみから解放されるのだ。電話だけでも幸せは増えたと感じたのだがな。本当に感謝してもし切れない。
「あぁ。カミル、リオ、ありがとう。私は今日という日を忘れる事はないだろう。本当にありがとう」
ソラ殿が頷き、私とオリビアを残して行ってしまった。賑やかだったからか、少し寂しく感じるな……
「ギル……」
オリビアも寂しそうに私を見上げている。あと少しの我慢だ。リオが治ると……痣も消えると断言してくれた。またオリビアと青空の下を散歩したり、薔薇園の四阿でお茶を楽しんだり出来るんだよな?本当に夢じゃないんだよな?自分に都合が良すぎる様な気がするんだよな。この奇跡が嬉しすぎて信じられないのだ……何しろ、40年も毎日祈っていた願いがやっと叶うのだから……
「静かになって、少し寂しいが……もう少しの我慢だよオーリィ。それにリオが感染しないと太鼓判をくれたんだ。今日こそは君を私の腕の中に閉じ込めたい」
全てを言い終わる前に愛しい妻をギュッと抱きしめた。オーリィも力強く抱き返してくれる。
「愛しているよ、オーリィ。諦めないで頑張ってくれてありがとう。私にはオーリィが全てなんだ。王位をカミルに譲ったら、一緒に旅でもしような。2人の結婚式までに全てを片付けて見せるから、安心して静養しておくれ?」
オリビアは肩を震わせながら静かに涙を流していた。私の事を更に強く抱きしめると、小さな声で「ありがとうギル」と呟き、嬉し涙をまた流した。私はオーリィが泣き疲れて眠るまで抱きしめていたかったが、『元主治医』の訪問により退出する羽目に。
奴らをこらしめるのは、今ではないと理解している。待っていろよ、私のオーリィを来るしめた者達よ。必ず証拠を集めて断罪してやるからな!
リオがベッドに腰掛けるオリビアの前に膝をつき、真剣な表情で言葉を掛けている。リオの集中力は半端ないからな。もう、オリビアの体と治療の事しか考えていないだろう。
「ええ、もちろん構わないわ。多少強く触っても大丈夫よ。見えている所も痣自体はそんなに痛くないの。恐らくスキルのお陰なのでしょうね」
「あぁ、本当ですね……王妃様にこのスキルがあって良かったです。精神干渉系の魔法を緩和させるスキルのようですね。このスキルを突破するには、呪術師が命を賭けるしか方法が無いみたいです」
ほぉ?オリビアのスキル自体は知っていたが、呪いにも耐性があったとは知らなかったな。操られ難くて、弱い魔法なら弾くんじゃ無かったか?オリビアが王妃になった決定打が、このスキルだった記憶がある。
「そうなのね。早めに知る事が出来て良かったわ。私が生きていると言う事は、命を犠牲にした呪術師はまだ居ないって事で良いのかしら?」
「1人、この世から儚くなった人はいる様ですが、呪術で命を落とした訳ではなさそうです。鑑定結果に更に鑑定を掛けて調べた説明によると、命を賭けて術を使った呪術師は、魂が黒く濁り、人として輪廻転生できなくなるようですね。最後の一線を越えてしまう呪術師は少ないと考えて大丈夫なのではないでしょうか?」
確かにそこまでのリスクを自ら冒す者は少ないだろうが、罪を犯させようとしている人間は手段を選ばないからな。
「リオ、家族を人質に取られたり窮地に立たされた人間は、何をするか分からないから絶対は無いし、安心は出来ない。今回の呪術師達は王妃を呪った時点で処刑は免れないのだが、探すのを手伝ってくれるか?」
「はい。もちろん犯人捜しも手伝う予定ではありますので、爺やと進めてもよろしいですか?」
犯人捜しまでやらせてしまって申し訳ないとは思うが、爺さんとリオ以外には解決出来ると思えないんだよな……私の愛するオリビアやカミル、そして私を40年間も苦しめた者達なのだ。失敗は許されないし、リオと爺さんに任せて無理だったなら、誰にやらせても駄目だったのだろうと諦めもつくからな。まぁ、もちろん諦める気は無いが。
「忙しいのに悪いな。よろしく頼むよ」
「かしこまりました。それで王妃様、腕の付け根と腰辺りが1番お辛いと思うのですがいかがですか?」
「ええ。横になると腰辺りが、体を起こしている時には腕の付け根の痛みが強いわ」
「それでは、腰から治療を始めましょう。王妃様は体力が落ちていらっしゃるので、何度かに分けて治療を進める必要があります。ですからその間に、呪術師に依頼した元凶を見つけないとですね」
そうだったな。呪いはリオのお陰で解呪できそうなのだから、こちらは元凶を見つけ出さないとな。さすがに元主治医が1人でやったとは考えにくい。関りはあるだろうが、もっと大きな後ろ盾……もしかしたら脅されているのかもしれないが、とにかく元凶を見つけてからだな。
「そうだね。呪術師が口を割ってくれるのが1番簡単で良いんだけどね……」
「恐らく呪術師は知らないか、知っていても口を割らない魔法を掛けてあるだろうな」
基本的に呪術師や暗殺者はお金さえ貰えれば、依頼主は知らない方がやりやすいと言う者も多いと聞く。依頼主を知らなければ話す事も出来ないから、依頼主側も安心できるし、失敗してもとばっちりを受けなくて済むからな。その場合、依頼する時の金額が大幅に増やされる事もあるらしい。当たり前だが、危険な仕事ばかりなのだろうけどな。
「あの……」
「どうした?リオ」
「口を割らない魔法なら、私のスキルで解除出来ますが……」
「「え?」」
リオは少し屈んだ姿勢から申し訳なさそうに、少し上目遣いになりながら説明してくれたのだが、それに対して私とカミルが素っ頓狂な声を出してしまった。それを見たオリビアは楽しそうにクスクス笑い、リオはどうしたらいいかとワタワタしている。
「リオ、どういう事か聞いても良いかな?」
カミルがコホンと咳払いをし、仕切り直そうと質問している。私もどういう事か確かに気になるからな。
「あのね、口を割らない魔法って『呪いの一種』なのよ。私は浄化系のスキルだから、呪いならほとんど解除出来るらしいのよね?」
「「なるほど……」」
大聖女であるリオだからこそ、呪いに強いんだろうな。リオを召喚して……この世界にリオが来てくれて、本当に良かった。スキルは本人の努力や成果、成し遂げた事なども大きく関わって来る。この世界でもしっかりと勉強に励み、行動して来たリオに感謝しかないな。
「ですので、魔術師の方々が見つかれば、あとは何とかなると思われます。そして、今の主治医ではなく、40年前に担当していた主治医を探して尋問すべきでしょう。今の主治医がお弟子さんなら、師匠が言う事を鵜呑みにして従っている可能性があります。そうなると、今の主治医は呪いである事も知らないかもしれませんよね?」
ん?確かに今の主治医は関与していない可能性があるか。『呪い』に関与していなかったとしても、王妃であるオリビアに適切な治療を施さなかった時点で牢屋行きなのだがな。それにしても、リオにしては歯切れが悪いな?何が言いたいのだ?何か考えがあるのだろうか?
「確かにそうだな。そうなると、リオがこの部屋に来る事がバレては駄目だな?」
「はい。それについても考えてはあります。何度か治療には訪れる必要もありますし、治療が終わった後も経過観察はすべきだと思いますので……王妃様の信用出来る侍女を2人選出して貰えますか?」
「2人?1人では足りないのか?」
「あ、いえ……念には念を入れたいので、その選ばれた2人をソラ達に監視……ゴホン、調査して貰ってから1人に絞ろうと思っています。王妃様の選んだ者達を疑うのは不敬かも知れませんが、呪いは人を殺める事も出来るので……」
申し訳なさそうにオリビアを見るリオだが、私もカミルもその考えに賛成である。40年間も気が付かずにいたのだから、犯人も気が緩んでいる可能性があるしな。逆に王妃を殺めようと躍起になっているかも知れない。リオの言う通り、用心するに越した事はないのだ。
「リオの言う通りだな。呪術は危険だし、私はこれ以上オリビアを危険な目に遭わせたくない。愛しいオーリィ、分かってくれるかい?」
「ええ。ありがとうございます、ギルバート様。リオちゃんもありがとう。皆がわたくしを大事に思っているからこそだと分かっているわ」
「それでは王妃様の治療を始めてもよろしいですか?今日は外から全く見えない腰周りを治療しましょうか」
ん?女性なのだから痣が見える顔や、自分で見えてしまう腕からやって欲しいと思うのではないか?あぁ、辛い所から治療するのか。オリビアはどうしたいのだろうな?私は見た目は気にならないが……ん?そうか、カミル達が部屋から退出したら、オーリィに触れる事が出来るのか?!呪いだからうつらないんだよな?な、何だかドキドキして来たな。思春期の男子みたいになってるぞ……何だか恥ずかしいな。ここはしっかりつくろわないとだ。
「見えない所から治療するのかい?」
「ええ、そうですね。今はまだ、主治医に変化なしと思われた方が何かと動きやすいですし、痛みの強い所から治した方が良いかと……王妃様はご自身が見える腕などから治した方が安心なさいますか?服で隠せる部分であれば、問題無いと思うのですが」
さすがはリオと言うか……その通りだから私はこれ以上何も言えないな。言動がカミルに似て来たと言うか、元々が似た者同士だからそうなのかは分からないが、宰相が居なくても最適解を導けるのだから凄いよなぁ。
「いいえ、リオちゃんの言う通り腰から治療をお願いしたいわ。最近は横になっているのも辛くなっているし、その……朝の『電話』に出る時は特に、痛くて動けなくなることもあって慌てるのよ……」
困った顔をして頬に手を当てているオリビアは可愛い。ただ、朝は特に辛い事を知らなくて、申し訳ない事をしたな。
「オリビア……」
「ギル、わたくしも朝の電話が来る事を楽しみに待っているのは本当よ。起き上がる時に辛いだけで、電話したくない訳ではないの」
「そ、そうか。それでも悪かったな。明日の朝は、そんなに慌てずにゆっくり出てくれて良いからな?オーリィが電話に出てくれるのであれば、何時間でも待てるからゆっくりで良いのだからな?」
「ふふっ。ありがとうございます、ギルバート様」
「この夫婦も砂糖を吐くね……」
ボソッと独り言を呟いたソラ殿が音もなくリオの肩の上に現れた。精霊に揶揄われる日が来るとは思わなかったな。
「ソラ!こっちに来たの?それとも何かあった?」
「今、宰相殿が足止めしてるけど、後30分もせずに元主治医がここに来ると思うよ~」
「え?どうしてだい?」
「この部屋に、何かしらの魔力を感知する魔道具でもあるんじゃない~?例えば、カミルの魔力とか~?」
「あぁ、2人より強い魔力が入ったら通知しちゃう様な?」
「そんな感じかな~。部屋の少し先にジーさんが居てくれてるから、少しは時間稼ぎしてくれると思うよ~」
「ソラ、報告をありがとう。こちらが王妃様で、カミルの御母堂様よ。ご挨拶しましょうね」
「あらまぁ、可愛いわぁ!貴方が精霊の王子様ですわね。わたくしは王妃オリビアと申します。お見知り置きくださいね」
「オイラはソラだよ~。王様に色々と聞いてるだろうから割愛するよ~。今は治療を急ぐべきじゃない~?」
「そうね。さすがソラは賢いわね。さて、治療を始めましょう」
リオはオリビアのお腹辺りに手を当て、じっくり診察しているようだ。少しして、純白の魔力がオリビアの腰を包み込むように光ったから、治療をしているのだろうと分かる。少しだけ顔を歪めたオリビアは、深呼吸をして痛みを逃がしている様だった。
「王妃様、立ち上がっていただいてもよろしいですか?」
オリビアを支える為に、腰に腕を回す。これまでは、うつるからと触れる事が出来なかったから、フラフラしていても支える事すら出来なかったのだ。やっと心置きなく触れる事が出来て嬉しいな。私に支えられたオリビアは一瞬固まってから、ゆっくりと立ち上がった。
「ええ。あら……?まぁ!腰が全く痛くないわ!この痛みが呪いだったなんて……リオちゃん、本当にありがとうございます。次回もよろしくお願いしますね」
「はい、もちろんです。お任せください。時間が無いようですので、侍女はどうなさいますか?まだ決まって無ければ、ソラに伝言を頼みましょうか。ソラ、内容は分かっているかしら?」
「うん、分かってるよ~。その2人の侍女は、オイラとシルビーで調べるから安心して~」
「ありがとう、ソラ。頼りにしているわ」
「それでは母上、またお会いしましょう。リオ、隠密魔法をお願いできる?」
「私達だけ帰るのだから、ソラに転移をお願いしましょう。それでは陛下、御前失礼します」
リオがソラ殿に視線だけで会話している。この2人も絆が深まっているのだろう、相棒って感じでとてもカッコ良いな。今回も2人のお陰で私も妻もこの苦しみから解放されるのだ。電話だけでも幸せは増えたと感じたのだがな。本当に感謝してもし切れない。
「あぁ。カミル、リオ、ありがとう。私は今日という日を忘れる事はないだろう。本当にありがとう」
ソラ殿が頷き、私とオリビアを残して行ってしまった。賑やかだったからか、少し寂しく感じるな……
「ギル……」
オリビアも寂しそうに私を見上げている。あと少しの我慢だ。リオが治ると……痣も消えると断言してくれた。またオリビアと青空の下を散歩したり、薔薇園の四阿でお茶を楽しんだり出来るんだよな?本当に夢じゃないんだよな?自分に都合が良すぎる様な気がするんだよな。この奇跡が嬉しすぎて信じられないのだ……何しろ、40年も毎日祈っていた願いがやっと叶うのだから……
「静かになって、少し寂しいが……もう少しの我慢だよオーリィ。それにリオが感染しないと太鼓判をくれたんだ。今日こそは君を私の腕の中に閉じ込めたい」
全てを言い終わる前に愛しい妻をギュッと抱きしめた。オーリィも力強く抱き返してくれる。
「愛しているよ、オーリィ。諦めないで頑張ってくれてありがとう。私にはオーリィが全てなんだ。王位をカミルに譲ったら、一緒に旅でもしような。2人の結婚式までに全てを片付けて見せるから、安心して静養しておくれ?」
オリビアは肩を震わせながら静かに涙を流していた。私の事を更に強く抱きしめると、小さな声で「ありがとうギル」と呟き、嬉し涙をまた流した。私はオーリィが泣き疲れて眠るまで抱きしめていたかったが、『元主治医』の訪問により退出する羽目に。
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