13 / 172
政府からの手紙編
第12話 - その後
しおりを挟む
「その後、瑞希ちゃんの様子は?」
休暇を取り、月島宅へ寄った坂口は愛香に瑞希の様子を尋ねた。
「怪我の方は幸いにも致命傷が無くてすぐに退院できたの。けど……」
「精神的な面ね」
「そうなの……」
菜々美の逮捕から既に2週間が過ぎようとしていた。
身体的なダメージはほぼ回復したが、7歳からの幼馴染みの本性を目の当たりにし、死闘を繰り広げたことへの精神的ショックはとても重いものとなった。
「玲奈、上野の様子は? 知ってる?」
「ほぼ何も話していないそうよ」
「そう……」
*****
「松下《まつした》 隆志《たかし》について知りたいことがあったら会いに来てね、お・ね・え・ちゃ・ん♡」
*****
菜々美の最後の言葉が脳裏から離れない。
「松下隆志のことね?」
「えぇ……」
"松下隆志"
この名を愛香は4年前の悲惨な事件以来、忘れたことは一度もなかった。
既に両親を殺害した実行犯は既に逮捕している。その名は"川田《かわだ》 洋《よう》。愛香の超能力・"2人でお茶を"により両親の最期の風景を共有、川田の痕跡を見つけ、そのまま逮捕へと至った。
元々、超能力者ではなかった川田だが松下隆志の存在を仄めかし彼の超能力によって自分は開花され、彼の指示によって実行へと至った。そして川田は獄中で謎の死を遂げた。自殺の痕跡は無く、何者かの超能力ではないかとされているが方法などは明らかになっていない。
超能力を有していない者にサイクスを発生させ、更に固有の超能力まで発現させる。この様な事例はこれまでに無い。
タイプ的には特異型超能力である可能性が高いが、こういった類の超能力の場合、既に超能力を扱える者の超能力《ちから》を強化することが一般的だ。
未だ松下隆志の足取りは掴めていない。
何故、菜々美が彼について知っているのか。謎は多い。
「解禁されたら面会するんでしょ?」
「もちろん」
「素直に話せば良いけど」
#####
瑞希はベッドの上でぼーっと天井を眺めていた。
「とんでも無いことになっちゃったな……」
菜々美との思い出に耽《ふけ》る。
思い浮かぶ顔は全て笑顔で溢れた美しいもので埋め尽くされる。しばらくそういった思い出に浸った後、恐ろしい笑顔で近付いてキスしてきた菜々美の顔が思い出され、少し顔を赤らめつつも震えてしまう。
「怖かったな……」
その時、瑞希の超能力によって具現化されたp-Phoneが出現し、マスコットキャラのピボットが話しかける。
「瑞希、少しは落ち着いたかい?」
手を下顎に当てながら話しかけてくるピボットの方を目を細めながら振り向く。
「あなた……私の意思に反して勝手に出てくるの?」
ピボットは少し溜息をついて返答する。
「勝手にだなんて心外だなぁ。ボクらサイクスは人間の意思と深く関わっているっていのは知っているよね? ボクが勝手に出現した様に見えて瑞希、キミは深層心理ではボクを求めていたんだよ」
「そうかしら?」
「そうだよ。まぁ正確には話し相手が欲しかったんじゃないかな?」
「確かに……」そう小さく呟いた瑞希はピボットを見据える。
「ねぇ……ピボット」
ピボットが美しい金色の瞳を大きく見開いて応答した。
「どうしたの?」
「私、あれで良かったのかな?」
「瑞希、あれ以外に方法は無かったと思うよ。そうじゃなきゃキミは"病みつき幸せ生活"で彼女に支配されるようになっていたよ」
「それはそうなんだけど……」
「頭では分かってるけどっていうニンゲンがよく陥るやつだね」
「感情と深い関わりがあるのに感情が分からないのね」
「アハハ。とっても皮肉が効いてるね。ボクは感情に反応するだけであって感情そのものではなくて瑞希のサイクスだからね」
ふうっと息を吐いた瑞希は小さく呟いた。
「なっちゃんともっと違うように接するべきだったのかなぁ……」
「それでも周りから見ればキミたちは素晴らしい関係性だったし、当人たちにとってもベストなものだったと思うよ」
「うーん……」
「でもね、瑞希、キミの周りは菜々美だけじゃないでしょ? お姉さんだって学校のクラスメイトだって大切な人は沢山いるはずだよ」
「口が上手いのね」
瑞希はそう悪態をつきながらもピボットの言っていることが正しく、また自分が救われていることにも気付いた。
サイクスは人の意思に深く関わりを持っている。現在《いま》ピボットが私にかけている言葉も実は自分の深層心理で自分が望んでいる言葉を代弁しているだけなのかもしれない。
それでも今の瑞希にとって心が救われる言葉であることには変わりはない。
「素直に言葉を受け取るのも良いのかもね」
「それで良いんだよ」
ピボットは瑞希に向けてサムズアップし笑顔を向ける。
それを見て瑞希はニッコリと笑ってみせた。
「瑞希、キミはやっぱり笑顔の方が可愛いよ」
「それも私が言って欲しい言葉なのかな?」
「いやいや、これはボクの本心だよ」
何とも言えない感情を持ちながら瑞希はピボットに話しかけた。
「ピボちゃん」
「ピボちゃんって……」っと少し照れながらピボットは返事をした。
「なぁに?」
「そう言えば私、まだあなたのことやこのp-Phoneのこと、超能力のことを
詳しく聞いてなかったわ」
「そう言えばそうだね」
欠伸《あくび》をしながらピボットは答える。
「教えてよ。あなたたちの事。もっと詳しく」
「勿論だよ!」
ピボットは目を輝かせて瑞希の方を向き、笑顔を向けて自慢気に言った。
「キミの超能力《ちから》は凄いんだから! 驚くよ!」
休暇を取り、月島宅へ寄った坂口は愛香に瑞希の様子を尋ねた。
「怪我の方は幸いにも致命傷が無くてすぐに退院できたの。けど……」
「精神的な面ね」
「そうなの……」
菜々美の逮捕から既に2週間が過ぎようとしていた。
身体的なダメージはほぼ回復したが、7歳からの幼馴染みの本性を目の当たりにし、死闘を繰り広げたことへの精神的ショックはとても重いものとなった。
「玲奈、上野の様子は? 知ってる?」
「ほぼ何も話していないそうよ」
「そう……」
*****
「松下《まつした》 隆志《たかし》について知りたいことがあったら会いに来てね、お・ね・え・ちゃ・ん♡」
*****
菜々美の最後の言葉が脳裏から離れない。
「松下隆志のことね?」
「えぇ……」
"松下隆志"
この名を愛香は4年前の悲惨な事件以来、忘れたことは一度もなかった。
既に両親を殺害した実行犯は既に逮捕している。その名は"川田《かわだ》 洋《よう》。愛香の超能力・"2人でお茶を"により両親の最期の風景を共有、川田の痕跡を見つけ、そのまま逮捕へと至った。
元々、超能力者ではなかった川田だが松下隆志の存在を仄めかし彼の超能力によって自分は開花され、彼の指示によって実行へと至った。そして川田は獄中で謎の死を遂げた。自殺の痕跡は無く、何者かの超能力ではないかとされているが方法などは明らかになっていない。
超能力を有していない者にサイクスを発生させ、更に固有の超能力まで発現させる。この様な事例はこれまでに無い。
タイプ的には特異型超能力である可能性が高いが、こういった類の超能力の場合、既に超能力を扱える者の超能力《ちから》を強化することが一般的だ。
未だ松下隆志の足取りは掴めていない。
何故、菜々美が彼について知っているのか。謎は多い。
「解禁されたら面会するんでしょ?」
「もちろん」
「素直に話せば良いけど」
#####
瑞希はベッドの上でぼーっと天井を眺めていた。
「とんでも無いことになっちゃったな……」
菜々美との思い出に耽《ふけ》る。
思い浮かぶ顔は全て笑顔で溢れた美しいもので埋め尽くされる。しばらくそういった思い出に浸った後、恐ろしい笑顔で近付いてキスしてきた菜々美の顔が思い出され、少し顔を赤らめつつも震えてしまう。
「怖かったな……」
その時、瑞希の超能力によって具現化されたp-Phoneが出現し、マスコットキャラのピボットが話しかける。
「瑞希、少しは落ち着いたかい?」
手を下顎に当てながら話しかけてくるピボットの方を目を細めながら振り向く。
「あなた……私の意思に反して勝手に出てくるの?」
ピボットは少し溜息をついて返答する。
「勝手にだなんて心外だなぁ。ボクらサイクスは人間の意思と深く関わっているっていのは知っているよね? ボクが勝手に出現した様に見えて瑞希、キミは深層心理ではボクを求めていたんだよ」
「そうかしら?」
「そうだよ。まぁ正確には話し相手が欲しかったんじゃないかな?」
「確かに……」そう小さく呟いた瑞希はピボットを見据える。
「ねぇ……ピボット」
ピボットが美しい金色の瞳を大きく見開いて応答した。
「どうしたの?」
「私、あれで良かったのかな?」
「瑞希、あれ以外に方法は無かったと思うよ。そうじゃなきゃキミは"病みつき幸せ生活"で彼女に支配されるようになっていたよ」
「それはそうなんだけど……」
「頭では分かってるけどっていうニンゲンがよく陥るやつだね」
「感情と深い関わりがあるのに感情が分からないのね」
「アハハ。とっても皮肉が効いてるね。ボクは感情に反応するだけであって感情そのものではなくて瑞希のサイクスだからね」
ふうっと息を吐いた瑞希は小さく呟いた。
「なっちゃんともっと違うように接するべきだったのかなぁ……」
「それでも周りから見ればキミたちは素晴らしい関係性だったし、当人たちにとってもベストなものだったと思うよ」
「うーん……」
「でもね、瑞希、キミの周りは菜々美だけじゃないでしょ? お姉さんだって学校のクラスメイトだって大切な人は沢山いるはずだよ」
「口が上手いのね」
瑞希はそう悪態をつきながらもピボットの言っていることが正しく、また自分が救われていることにも気付いた。
サイクスは人の意思に深く関わりを持っている。現在《いま》ピボットが私にかけている言葉も実は自分の深層心理で自分が望んでいる言葉を代弁しているだけなのかもしれない。
それでも今の瑞希にとって心が救われる言葉であることには変わりはない。
「素直に言葉を受け取るのも良いのかもね」
「それで良いんだよ」
ピボットは瑞希に向けてサムズアップし笑顔を向ける。
それを見て瑞希はニッコリと笑ってみせた。
「瑞希、キミはやっぱり笑顔の方が可愛いよ」
「それも私が言って欲しい言葉なのかな?」
「いやいや、これはボクの本心だよ」
何とも言えない感情を持ちながら瑞希はピボットに話しかけた。
「ピボちゃん」
「ピボちゃんって……」っと少し照れながらピボットは返事をした。
「なぁに?」
「そう言えば私、まだあなたのことやこのp-Phoneのこと、超能力のことを
詳しく聞いてなかったわ」
「そう言えばそうだね」
欠伸《あくび》をしながらピボットは答える。
「教えてよ。あなたたちの事。もっと詳しく」
「勿論だよ!」
ピボットは目を輝かせて瑞希の方を向き、笑顔を向けて自慢気に言った。
「キミの超能力《ちから》は凄いんだから! 驚くよ!」
0
あなたにおすすめの小説
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~
杵築しゅん
ファンタジー
戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。
3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。
家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。
そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。
こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。
身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しの第一王子殿下
みつまめ つぼみ
恋愛
公爵令嬢アリシアは15歳。三年前に魔王討伐に出かけたゴルテンファル王国の第一王子クラウス一行の帰りを待ちわびていた。
そして帰ってきたクラウス王子は、仲間の訃報を口にし、それと同時に同行していた聖女との婚姻を告げる。
クラウスとの婚約を破棄されたアリシアは、言い寄ってくる第二王子マティアスの手から逃れようと、国外脱出を図るのだった。
そんなアリシアを手助けするフードを目深に被った旅の戦士エドガー。彼とアリシアの逃避行が、今始まる。
【完結】World cuisine おいしい世界~ほのぼの系ではありません。恋愛×調合×料理
SAI
ファンタジー
魔法が当たり前に存在する世界で17歳の美少女ライファは最低ランクの魔力しか持っていない。夢で見たレシピを再現するため、魔女の家で暮らしながら料理を作る日々を過ごしていた。
低い魔力でありながら神からの贈り物とされるスキルを持つが故、国を揺るがす大きな渦に巻き込まれてゆく。
恋愛×料理×調合
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる