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ミニ番外編
贈り主の正体は
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「すまんなルシアン。わざわざ王都から来てもらって」
「いいよ。隣国の剣術に興味があったし。ミシェルの事も心配だったし」
「ルシアンっ……お前は本当にいい奴だ!」
「ルシにぃ!!」
「ファニアス、久しぶりだな」
「うん!」
ルシアンは今、北方騎士団の敷地内に居た。
ミシェルを崇拝していると見られる隣国の騎士団から、子ども同士の剣術交流会なるもののお誘いが掛かった。
娘を案じるファビアンとしては本当は断りたかったのだが、せっかく友好的な関係を築けている今、それを無下に断るわけにもいかず困り果てた末にルシアンに泣きついたのであった。
わざわざ転移魔道具を使って王都のワイズ伯爵家まで足を運び、事情を話して是非ルシアンにもミシェルと共に交流会に参加して欲しいと頭を下げたのだ。
「相手はミシェルの瞳の色のリボンで贈り物をするくらいミシェルに心酔していると見られる。交流会はそのミシェルに近付きたいという魂胆も見え見えだ。ミシェルが俺の娘である事は承知しているはずなので滅多な事は起きないだろうが用心に越した事はない。というか心配で不安で堪らない!本当は俺がつき添えれば一番いいのだが、まさか北の副団長が出張ったとなるとそれはそれでまた対応などで面倒くさい事になる。かといって他の騎士団関係者の子女だけではどうも心許ない。だからルシアン、是非お前に参加者としてミシェルの付き添いを頼みたいのだ。お前は剣術の腕前も確かだし、何より信用に値する誠実な人柄だと俺は思っている。どうか、ファビアン伯父さんの頼みを聞き入れてくれないか?」
「……お兄さま、必死ね……」
妹であるハノンが呆気に取られて言った。
ファビアンは息継ぎもせず一気に先ほどの言葉を捲し立てるように告げたのだった。
ルシアンは考えるまでもなく返事をした。
「もちろん構わないよ。僕も是非参加させて貰うよ」
「ル"シアン"っ……!」
ファビアンの瞳から感涙の滝が滂沱の如く溢れ出る。
娘の事となると余裕が無くなるこの感じ、
どこぞの誰かさんを彷彿とさせる。
ーーどこの家の父親もこんな感じなのかしら……。
と、ハノンは内心ひとり言ちた。
こうして交流会当日、ルシアンは転移魔道具を使って北方騎士団までやって来たのだった。
騎士団所有の馬車で、交流会が行われる隣国の国境騎士団に向かう。
十歳以上で剣術を嗜む、騎士団関係者の子女数名(ルシアンとミシェルを含め七名)と、引率と警護を兼ねた騎士二名が付き添いとして国境を越えた。
馬車の中でミシェルが言う。
「今日はいいお天気で本当に良かったです。それにルシアン様とまた剣術の稽古が出来るなんて嬉しい!」
ミシェルの屈託のない、明るい笑顔を見てルシアンも思わず顔を綻ばせる。
他の子ども達が、男女を問わずルシアンのその笑顔に釘付けになっていた。
「僕もミシェルと参加出来て嬉しいよ。誘ってくれた伯父さんに感謝しなくちゃ」
「ふふ。お父さまはルシアン様のことが大好きですからね」
ミシェルに悪さする奴が寄って来ないかの見張り役を頼まれたとは、言わないでおいたルシアンであった。
その後、無事に駐屯地に到着し、簡単な模擬戦形式を組んでの交流会が和気藹々とした雰囲気の中で行われた。
隣国側からは国境騎士団の団長令嬢を筆頭とする、ルシアンやミシェルと年の近い子女が参加していて皆、雪原のシルバーバックの娘であるミシェルに興味津々である。
そしてそのミシェルの姿を一目見ようと、多くの騎士や関係者や駐屯所勤めの者が見物に押し寄せていたのだった。
しかしもう一人、そのミシェルの従兄であるという美少年にも野次馬達の視線が集中していたのは言うまでもないだろう。
ーー交流会というより、ショーのようだな。ミシェルにバナナを贈ってきた者もあの中にいるのだろうか……。
ルシアンは内心、あまりいい気はしなかった。
そしてミシェルがあまり好奇の目に晒されないように、ルシアンは他の子女たちと協力して壁となったりした。
当のミシェルは純粋に交流戦を楽しんでおり、不快な思いをしていない事が幸いだったが。
やがて時刻となり、交流会は終了となる。
帰りの馬車に乗り込む時に、今日の交流会に参加していた団長令嬢が声を掛けて来た。
令嬢の年齢はルシアンと同じくらいのようだ。
「……今日は野次馬が多くて申し訳ありませんでした。せっかくミシェル様と直接お会い出来て、剣を交える夢が叶いましたのに……気が散って仕方ありませんでしたわ」
その言葉にミシェルが返した。
「お気になさらないでください。わたしは充分に楽しめました」
「もしよろしければ次はそちらの騎士団にお伺いして、交流会のやり直しをさせて頂きたいですわ」
「まぁそれも楽しそうですね。父に伝えておきます」
「ふふ。やはりミシェル様は思った通り、お優しい方ですね。そしてお強くてステキな方です。国境でお見かけして、私はずっとミシェル様に憧れておりましたの」
二人の会話をミシェルの隣で聞いていたルシアンがもしやと思い、その令嬢に尋ねた。
「もしかして……ミシェルにバナナを贈ったのは……」
令嬢は頬を朱に染めて頷いた。
「私です。たまたま国境付近まで遠乗りに出かけた時に馬に乗られたミシェル様のお姿を拝見して……その見事な手綱捌きと美しいブルーの瞳に心奪われてしまいましたの……」
ーー伯父さん、なんとバナナの贈り主は女の子だったよ……。
ルシアンは伯父に心の中で語りかけた。
どうやらその青いリボンの君とミシェルはよい友人となれそうだ。
ーーまぁ良かった……安心した。
なんだかどっと気疲れしたルシアンだったが、帰りの馬車の中でミシェルが嬉しそうに今日の事を語ってくれたので良しと思う事にするルシアンであった。
「いいよ。隣国の剣術に興味があったし。ミシェルの事も心配だったし」
「ルシアンっ……お前は本当にいい奴だ!」
「ルシにぃ!!」
「ファニアス、久しぶりだな」
「うん!」
ルシアンは今、北方騎士団の敷地内に居た。
ミシェルを崇拝していると見られる隣国の騎士団から、子ども同士の剣術交流会なるもののお誘いが掛かった。
娘を案じるファビアンとしては本当は断りたかったのだが、せっかく友好的な関係を築けている今、それを無下に断るわけにもいかず困り果てた末にルシアンに泣きついたのであった。
わざわざ転移魔道具を使って王都のワイズ伯爵家まで足を運び、事情を話して是非ルシアンにもミシェルと共に交流会に参加して欲しいと頭を下げたのだ。
「相手はミシェルの瞳の色のリボンで贈り物をするくらいミシェルに心酔していると見られる。交流会はそのミシェルに近付きたいという魂胆も見え見えだ。ミシェルが俺の娘である事は承知しているはずなので滅多な事は起きないだろうが用心に越した事はない。というか心配で不安で堪らない!本当は俺がつき添えれば一番いいのだが、まさか北の副団長が出張ったとなるとそれはそれでまた対応などで面倒くさい事になる。かといって他の騎士団関係者の子女だけではどうも心許ない。だからルシアン、是非お前に参加者としてミシェルの付き添いを頼みたいのだ。お前は剣術の腕前も確かだし、何より信用に値する誠実な人柄だと俺は思っている。どうか、ファビアン伯父さんの頼みを聞き入れてくれないか?」
「……お兄さま、必死ね……」
妹であるハノンが呆気に取られて言った。
ファビアンは息継ぎもせず一気に先ほどの言葉を捲し立てるように告げたのだった。
ルシアンは考えるまでもなく返事をした。
「もちろん構わないよ。僕も是非参加させて貰うよ」
「ル"シアン"っ……!」
ファビアンの瞳から感涙の滝が滂沱の如く溢れ出る。
娘の事となると余裕が無くなるこの感じ、
どこぞの誰かさんを彷彿とさせる。
ーーどこの家の父親もこんな感じなのかしら……。
と、ハノンは内心ひとり言ちた。
こうして交流会当日、ルシアンは転移魔道具を使って北方騎士団までやって来たのだった。
騎士団所有の馬車で、交流会が行われる隣国の国境騎士団に向かう。
十歳以上で剣術を嗜む、騎士団関係者の子女数名(ルシアンとミシェルを含め七名)と、引率と警護を兼ねた騎士二名が付き添いとして国境を越えた。
馬車の中でミシェルが言う。
「今日はいいお天気で本当に良かったです。それにルシアン様とまた剣術の稽古が出来るなんて嬉しい!」
ミシェルの屈託のない、明るい笑顔を見てルシアンも思わず顔を綻ばせる。
他の子ども達が、男女を問わずルシアンのその笑顔に釘付けになっていた。
「僕もミシェルと参加出来て嬉しいよ。誘ってくれた伯父さんに感謝しなくちゃ」
「ふふ。お父さまはルシアン様のことが大好きですからね」
ミシェルに悪さする奴が寄って来ないかの見張り役を頼まれたとは、言わないでおいたルシアンであった。
その後、無事に駐屯地に到着し、簡単な模擬戦形式を組んでの交流会が和気藹々とした雰囲気の中で行われた。
隣国側からは国境騎士団の団長令嬢を筆頭とする、ルシアンやミシェルと年の近い子女が参加していて皆、雪原のシルバーバックの娘であるミシェルに興味津々である。
そしてそのミシェルの姿を一目見ようと、多くの騎士や関係者や駐屯所勤めの者が見物に押し寄せていたのだった。
しかしもう一人、そのミシェルの従兄であるという美少年にも野次馬達の視線が集中していたのは言うまでもないだろう。
ーー交流会というより、ショーのようだな。ミシェルにバナナを贈ってきた者もあの中にいるのだろうか……。
ルシアンは内心、あまりいい気はしなかった。
そしてミシェルがあまり好奇の目に晒されないように、ルシアンは他の子女たちと協力して壁となったりした。
当のミシェルは純粋に交流戦を楽しんでおり、不快な思いをしていない事が幸いだったが。
やがて時刻となり、交流会は終了となる。
帰りの馬車に乗り込む時に、今日の交流会に参加していた団長令嬢が声を掛けて来た。
令嬢の年齢はルシアンと同じくらいのようだ。
「……今日は野次馬が多くて申し訳ありませんでした。せっかくミシェル様と直接お会い出来て、剣を交える夢が叶いましたのに……気が散って仕方ありませんでしたわ」
その言葉にミシェルが返した。
「お気になさらないでください。わたしは充分に楽しめました」
「もしよろしければ次はそちらの騎士団にお伺いして、交流会のやり直しをさせて頂きたいですわ」
「まぁそれも楽しそうですね。父に伝えておきます」
「ふふ。やはりミシェル様は思った通り、お優しい方ですね。そしてお強くてステキな方です。国境でお見かけして、私はずっとミシェル様に憧れておりましたの」
二人の会話をミシェルの隣で聞いていたルシアンがもしやと思い、その令嬢に尋ねた。
「もしかして……ミシェルにバナナを贈ったのは……」
令嬢は頬を朱に染めて頷いた。
「私です。たまたま国境付近まで遠乗りに出かけた時に馬に乗られたミシェル様のお姿を拝見して……その見事な手綱捌きと美しいブルーの瞳に心奪われてしまいましたの……」
ーー伯父さん、なんとバナナの贈り主は女の子だったよ……。
ルシアンは伯父に心の中で語りかけた。
どうやらその青いリボンの君とミシェルはよい友人となれそうだ。
ーーまぁ良かった……安心した。
なんだかどっと気疲れしたルシアンだったが、帰りの馬車の中でミシェルが嬉しそうに今日の事を語ってくれたので良しと思う事にするルシアンであった。
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