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ミニ番外編
書籍発売御礼番外編 ルシアンのクッキー
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今回は書籍発売を直前に控え、これまた皆様に御礼としまして番外編をお届けしたいと思います。
このお話は書籍化に伴い加筆したものの、ページ数の関係で載りきれなかったお話です。
今回担当編集者さんの許可を得て、お蔵入りになるところをこうやって皆様にお届けできる事となりました。
本編の間に、挿話として書いたこのお話。
時系列でいえばファビアンが北と西の騎士団の合同練習の打ち合わせでハイレンに来た頃です。
るちあんと初顔合わせをして、ニアミスしたフェリックスを見たファビアンに「コシアン」と苦し紛れに誤魔化したあの頃ですね。
ではよろしければ最後までお付き合いくださいませ。
(短いのであっという間に終わります)
───────────────────────
兄のファビアンが任務の為にハイレン在中の間はハノンのアパートで寝泊まりをする事になった。
その伯父とすっかり仲良しになったルシアンが動物の形をしたクッキーを食べながら、とある動物のクッキーを見てこう言った。
「くっちー、おぢたん!」
「え?」
齧りかけのクッキーをルシアンは得意気に差し出す。
よく見るとそのクッキーはゴリラの型抜きをされたクッキーだった。
「ぷっ……ふふホントね、伯父さんにそっくりね」
「おぢたん、あげる~」
ルシアンは嬉しそうにゴリラ型のクッキーをお皿に戻した。
まだ騎士団から戻っていないファビアンの為に取っておくようだ。
「伯父さんが帰ったら喜ぶわ」
ハノンは息子の頭を優しく撫でた。
「これ、めろりぃたん」
「メロディ?どれ?」
次にルシアンが指差したクッキーを見てハノンは思わず「なるほど……」と納得した。
我が子ながら凄い観察眼だと感心する。ホントになかなか似ているとハノンは思った。
ハノンはルシアンがメロディだと指差したチーターの型抜きをされたクッキーを手に取ってまじまじと見つめた。
その時ふと思いついて、ハノンはルシアンに訊いてみた。
「ルシー、クッキーを作ってみる?」
「くっちー!ちゅくる!」
「ふふ」
ぱっと表情を明るくして元気に返事した息子の頭を、ハノンはまた愛おしげに撫でた。
そして次の日、こうして二人でクッキー作りをしているという訳なのである。
材料を揃えて生地作りは当然ハノンの仕事だ。
魔石で冷やす保冷庫で休ませた生地を伸ばして平らにしたところで、ルシアンの登場。
ルシアンはハノンに渡された型を使い、熱心に型抜きをしてゆく。
さんしゃいのルシアンには難しい作業だが、とにかく何でも楽しくやらせてみる。それがハノンの子育てのモットーだった。
そしてルシアンは次第に粘土遊びの延長のようになって、色んな形のクッキーを作り出した。
なかなかグロテスクな形のものもあったが、それもまた良し!と小さな丸みのあるお手手で懸命に何かを形作る我が子を、ハノンは微笑ましげに目を細めて見つめていた。
オーブンの天板に型抜きした生地を乗せてゆく。もちろんパティシエルシアンが作った生地も一緒に。
それらをオーブンの釜の中に入れて焼く。
ワクワクしながらオーブンの中を覗くルシアンがハノンに言った。
「まま、ぼくのくっちー、めろりぃたんあげる」
「メロディにクッキーのプレゼントをしたいの?」
「うん、めろりぃたんのくっちーあげるの」
「わかったわ。じゃあ明日持って行って、お仕事の時にメロディに渡すわね」
「うん!」
ハノンは滂沱の涙を流しながらクッキーを食べるメロディの姿が容易に想像出来た。
そして次の日、ハノンはルシアンにお願いされた通りにメロディにクッキーを渡した。
ランチタイムで食後の口直しにも丁度良いと思ったのだ。
「あらナニこれ?クッキー?」
「昨日焼いたの良かったら食べて」
「アラ嬉ちくび♪アリガト♡」
メロディは紙袋に入っているクッキーをガサゴソと漁り一つ取り出した。
「あらヤダ動物の形をしてるのネ、カワイ~じゃない♡」
と言いながら猫型クッキーを頭から齧り付いた。
「ウフフ♡おいちぃ♡」
それから何個かクッキーを口にして、ふいにメロディが怯えたような慌てたような、そんな様子で言った。
「エ゛、ナニコレ?何かの呪物っ?新種の魔物っ?」
メロディが取り出して慄いていたのは、ルシアンがメロディだと言いながらチーターのつもりで作ったクッキーだった。
ハノンは吹き出しながら種明かしをする。
「それはルシーがメロディに似てると言って作ったチータークッキーよ。呪物でも魔物でもないから安心して」
それを聞いた瞬間、メロディが取り憑かれたようにクッキーを貪り出した。
「イヤネ!もう誰がどこから見てもチーターに決まってんぢゃないっ!!イッタダッキマァァスッ!!」
「あなた今呪物か魔物って言ってたじゃない」
ハノンが揶揄って言うとメロディはムキになって答えた。
「ナニ言ってんのヨっ!愛しのルッシーがチーターだと言えばチーターなのヨっ!ちょっと前まで赤ちゃんだったのにもうこんなお菓子作りが出来るようになってるなんてっ……ウッヴヴヴ……!」
「ぷ……ふふふふ」
案の定、ルシアンの成長を肌で感じたメロディが号泣しながらクッキーを食す様を見て、ハノンは大いに笑った。
───────────────────────
最後までお読みいただきありがとうございました。
いよいよ10月30日に発売となりました。
長くお付き合いいただいている読者さま、
ぜひ「ワシが育てた」という生暖かい眼差しでお読み頂けると幸いです。
そして新たに手にしていただく読者さまは、
「これからワシが育ててやろう」とこれまた生暖かい眼差しでお付き合いいただけますと幸いです。
皆々様、どうぞよろしくお願いします!
このお話は書籍化に伴い加筆したものの、ページ数の関係で載りきれなかったお話です。
今回担当編集者さんの許可を得て、お蔵入りになるところをこうやって皆様にお届けできる事となりました。
本編の間に、挿話として書いたこのお話。
時系列でいえばファビアンが北と西の騎士団の合同練習の打ち合わせでハイレンに来た頃です。
るちあんと初顔合わせをして、ニアミスしたフェリックスを見たファビアンに「コシアン」と苦し紛れに誤魔化したあの頃ですね。
ではよろしければ最後までお付き合いくださいませ。
(短いのであっという間に終わります)
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兄のファビアンが任務の為にハイレン在中の間はハノンのアパートで寝泊まりをする事になった。
その伯父とすっかり仲良しになったルシアンが動物の形をしたクッキーを食べながら、とある動物のクッキーを見てこう言った。
「くっちー、おぢたん!」
「え?」
齧りかけのクッキーをルシアンは得意気に差し出す。
よく見るとそのクッキーはゴリラの型抜きをされたクッキーだった。
「ぷっ……ふふホントね、伯父さんにそっくりね」
「おぢたん、あげる~」
ルシアンは嬉しそうにゴリラ型のクッキーをお皿に戻した。
まだ騎士団から戻っていないファビアンの為に取っておくようだ。
「伯父さんが帰ったら喜ぶわ」
ハノンは息子の頭を優しく撫でた。
「これ、めろりぃたん」
「メロディ?どれ?」
次にルシアンが指差したクッキーを見てハノンは思わず「なるほど……」と納得した。
我が子ながら凄い観察眼だと感心する。ホントになかなか似ているとハノンは思った。
ハノンはルシアンがメロディだと指差したチーターの型抜きをされたクッキーを手に取ってまじまじと見つめた。
その時ふと思いついて、ハノンはルシアンに訊いてみた。
「ルシー、クッキーを作ってみる?」
「くっちー!ちゅくる!」
「ふふ」
ぱっと表情を明るくして元気に返事した息子の頭を、ハノンはまた愛おしげに撫でた。
そして次の日、こうして二人でクッキー作りをしているという訳なのである。
材料を揃えて生地作りは当然ハノンの仕事だ。
魔石で冷やす保冷庫で休ませた生地を伸ばして平らにしたところで、ルシアンの登場。
ルシアンはハノンに渡された型を使い、熱心に型抜きをしてゆく。
さんしゃいのルシアンには難しい作業だが、とにかく何でも楽しくやらせてみる。それがハノンの子育てのモットーだった。
そしてルシアンは次第に粘土遊びの延長のようになって、色んな形のクッキーを作り出した。
なかなかグロテスクな形のものもあったが、それもまた良し!と小さな丸みのあるお手手で懸命に何かを形作る我が子を、ハノンは微笑ましげに目を細めて見つめていた。
オーブンの天板に型抜きした生地を乗せてゆく。もちろんパティシエルシアンが作った生地も一緒に。
それらをオーブンの釜の中に入れて焼く。
ワクワクしながらオーブンの中を覗くルシアンがハノンに言った。
「まま、ぼくのくっちー、めろりぃたんあげる」
「メロディにクッキーのプレゼントをしたいの?」
「うん、めろりぃたんのくっちーあげるの」
「わかったわ。じゃあ明日持って行って、お仕事の時にメロディに渡すわね」
「うん!」
ハノンは滂沱の涙を流しながらクッキーを食べるメロディの姿が容易に想像出来た。
そして次の日、ハノンはルシアンにお願いされた通りにメロディにクッキーを渡した。
ランチタイムで食後の口直しにも丁度良いと思ったのだ。
「あらナニこれ?クッキー?」
「昨日焼いたの良かったら食べて」
「アラ嬉ちくび♪アリガト♡」
メロディは紙袋に入っているクッキーをガサゴソと漁り一つ取り出した。
「あらヤダ動物の形をしてるのネ、カワイ~じゃない♡」
と言いながら猫型クッキーを頭から齧り付いた。
「ウフフ♡おいちぃ♡」
それから何個かクッキーを口にして、ふいにメロディが怯えたような慌てたような、そんな様子で言った。
「エ゛、ナニコレ?何かの呪物っ?新種の魔物っ?」
メロディが取り出して慄いていたのは、ルシアンがメロディだと言いながらチーターのつもりで作ったクッキーだった。
ハノンは吹き出しながら種明かしをする。
「それはルシーがメロディに似てると言って作ったチータークッキーよ。呪物でも魔物でもないから安心して」
それを聞いた瞬間、メロディが取り憑かれたようにクッキーを貪り出した。
「イヤネ!もう誰がどこから見てもチーターに決まってんぢゃないっ!!イッタダッキマァァスッ!!」
「あなた今呪物か魔物って言ってたじゃない」
ハノンが揶揄って言うとメロディはムキになって答えた。
「ナニ言ってんのヨっ!愛しのルッシーがチーターだと言えばチーターなのヨっ!ちょっと前まで赤ちゃんだったのにもうこんなお菓子作りが出来るようになってるなんてっ……ウッヴヴヴ……!」
「ぷ……ふふふふ」
案の定、ルシアンの成長を肌で感じたメロディが号泣しながらクッキーを食す様を見て、ハノンは大いに笑った。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
いよいよ10月30日に発売となりました。
長くお付き合いいただいている読者さま、
ぜひ「ワシが育てた」という生暖かい眼差しでお読み頂けると幸いです。
そして新たに手にしていただく読者さまは、
「これからワシが育ててやろう」とこれまた生暖かい眼差しでお付き合いいただけますと幸いです。
皆々様、どうぞよろしくお願いします!
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