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ミニ番外編
戦慄のアーバン・マフレイン
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今回、性に関する表現があります。
お話の最後の方です。
地雷の方はご自衛のほど、よろしくお願いいたします。
───────────────────
「ぱぱー!」
「ノエル……お前の魔力が優れているのはわかっているが、勝手に一人で転移で入室するなんて危ないだろう……」
「エヘッごめんね」
突然現れた幼女と、その父親と思われるドアを蹴破ってド派手に登場した男を見て、アーバンは驚愕した。
「な、な、なんなんだ貴様らはっ!」
「のえるはのえるだよ。とりからのおにいさん」
名前を訊かれたと思い答えたノエルにフェリックスが訊ねる。
「さっきからトリカラトリカラと何のことだ?」
「ぱぱしらないの?とうほーのくにのふらいどちきんなのよ。ここに“やたい”があるのに……とりからのおにいさんがのえるのとりからをたべちゃったの……」
その時の悲しみが蘇ったのだろう。途端に憐憫に満ちた表情になる娘を見て、フェリックスがピクリと反応した。
「ノエルのトリカラが盗られただと……?」
「人聞きの悪いことを言うなっ!あれは正当な僕の分のトリカラだっ!」
盗人呼ばわりなど堪ったものではないと、アーバンは親子のやり取りに口を挟む。
「ふぇーん……ぱぱぁ……」
悲しげに縋りついてきた娘を優しく抱き上げ、フェリックスは温度を感じさせない眼差しをアーバンに向けた。
「貴様の鼻息がかかったトリカラを可愛い娘が食べなかったのは僥倖とも言えるが、それでも幼子にただの一つも分け与えてやれないとは度し難い狭量さだな」
「な、な、なっ、なんでトリカラ一つでそこまで言われなくてはならんのだ!」
どちらの言い分も正しいようなおかしいような……。
そんな奇っ怪な会話の中、カメリアがフェリックスに声を掛ける。
「ワイズ卿、なぜこちらに……?」
フェリックスは入室した時点で直ぐに、カメリアの安否は確認済みであった。
そしてアーバンに向けたものとは打って変わった柔らかな表情で彼女に答える。
「このバカ令息に連れ去られたキミを迎えにきたんだ。認識阻害魔道具のせいで一時はどうなるかと思ったが、ノエルの食い意地が功を奏して居場所が特定できたよ」
自分の名前が出てきたことに、ノエルはきょとんとして父親に訊ねた。
「くいいじってなぁに?」
「食いしん坊ってことだよ」
「のえる、くいしんぼーじゃないもん!」
「食いしん坊は悪い事じゃない。食べ物で見境を失くすのが良くないんだよ」
「ノエルちゃんは凄いんですね、おかげで助かりました」
フェリックスたちのやり取りを聞いて、またアーバンが口を挟んできた。
「ワ、ワイズ卿だとっ?……それでは……貴方はルシアン・ワイズの父親なのかっ?」
「とりからのおにーさん、るしにぃさまのことをしってるの?」
そう言ったノエルを、アーバンは驚愕に満ちた目で見る。
「では貴様はっ……ルシアン・ワイズの妹?……え、ではあの美しい人妻はルシアン・ワイズの母親だと言うのかっ!?」
「美しい……人妻だと……?」
それ指す人物が最愛の妻であると即座に悟り、反応したフェリックスの冷気が一段と増す。
「ヒッ?」
その冷気に当てられて、アーバンは無意識に悲鳴を漏らした。
「貴様……ガキのくせに俺の妻を見て邪な感情を抱いたな……その目、くり抜いてくれようか。いや、手っ取り早く首を切り落とすか」
「ヒィッ!そ、そんな事くらいで大袈裟に物騒な事を言わないでくださいよっ!」
「大袈裟などではない。俺の妻に汚い視線を向けた罪は万死に値する。加えて娘のトリカラの恨み、そして学園内で禁止された魔道具を使い禁止魔術を用いた罪。その上でランバート辺境伯令嬢を拉致した罪……貴様は歴とした罪人だ」
「とりからおにーさん、ぽけっとになにかもってるよ?」
「何?」
ノエルの助言を得てフェリックスは直ぐさまアーバンの背後に周り、彼の両手を拘束した。
「痛いっ!なんだよ!やめろよ!」
いとも簡単に両手を塞がれ口だけでしか抵抗出来ないアーバンの制服のポケットから、フェリックスはスプレーの小瓶を押収した。
「……何だこれは?」
「そ、それはっ……」
違法魔法薬であるなどと答えようもないアーバンに代わり、カメリアがフェリックスに告げる。
「魅了魔法と同じ効果のある魔法薬だそうです。間違いなく魔法犯罪に抵触する薬でしょうね」
「なっ、ち、違っ……」
「何が違うというんだ?ここに物的証拠もあるというのに。心配するな、きちんと魔術師団で鑑定をして貰う。その上でお前の罪を裏付ける正式な証拠品とする。……魔道具をお前に渡し、息子が違法魔法薬を所持していた事を認知しながらも放置したマフレイン侯爵も罪に問われる事になるだろう」
「そんな事っ……!我がマフレイン家の威光の前では瑣末な事だ!」
今の発言で、自身の願望を叶えるために違法と分かっていながらもそれらを用いたのを暗に認めた事を、このバカ令息はわかっていない。
より一層拘束した腕に力を込めるフェリックスに対し、アーバンは悲鳴に近い声を発した。
「いっ痛い!こら影共っ!近くに居るのだろう!早く僕を助けろ何とかしろっ!この給料泥棒共めっ!」
魔術学園に潜伏させていた隠密に向けて喚き散らしたアーバンに、フェリックスはしれっとして告げる。
「ああ。あの男女二人の隠密なら、今頃仲良くそれぞれ騎士団の独房に入ってるぞ?」
「え、」
「そんなにあの二人に会いたいなら……そうだな、男の方の影と同じ牢に入れてやろう」
「え、」
「嬉しくて言葉も忘れたか。よしわかった、直ぐに入れてやるからな。……だがその前に……」
フェリックスはアーバンを拘束したままカメリアの方へと視線を向ける。
カメリアは制服のポケットに入っていたキャンディをノエルにあげていた。
「ランバート嬢、散々付き纏われ嫌な思いをさせられたんだ。貴女にはコイツを一発殴る権利がある。大丈夫、顔を殴ってもボディにキメても特例として誤魔化してみせよう」
フェリックスにそう言われたが、武門の家柄とはいえ荒事を好まず慣れないカメリアは躊躇した。
今ここでカメリアが何もしなくてもアーバンはもはや終わったも同然。
何年か先には人生をやり直せる機会もあるだろうが、本来あったであろう侯爵家の後継としての輝かしい将来を、彼は失くしたのだ。
しかしだからこそ、何年先までも遺恨を残す形で終わらせてはいけない。
変な未練を持ち続けていられるなんて勘弁願いたい……カメリアはそう思った。
こんな時、あの人ならどうする?
カメリアの敬愛する、あの人なら……。
カメリアは脳裏に人生の師、メロディを思い浮かべた。
そして力強くフェリックスにこう告げる。
「ワイズ卿。マフレイン先輩の拘束を一旦解いて頂いてもよろしいでしょうか?」
「かまわないが……大丈夫か?もちろん、コイツが何を仕出かそうとしても必ず止めるが」
フェリックスがそう言うとカメリアは笑みを浮かべて答えた。
「ありがとうございます。でも大丈夫だと思います。……それよりもノエルちゃんの目を塞いでおいて欲しいのですが……」
「ノエルの……?……わかった」
何やら察したフェリックスがノエルの側へと行った。
それを見届け、カメリアはアーバンに向き合う。
「マフレイン先輩」
カメリアに名を呼ばれ、アーバンは彼女を見る。
その瞳は不安で揺れていた。
「……カメリア……?」
「先輩は私が貴方に相応しい理想の女性だと言っていましたが……じつはそうではないのです。貴方は、本当の私を知らない」
「し、知っているぞっ、キミは美人で聡明で(胸は無いが)スレンダーでっ……」
「それは上辺だけの私です」
「はぁ?」
カメリアはアーバンの手を取った。
いきなりカメリアに手を握られ、アーバンは驚いた表情をするもその手を振り解こうとはしなかった。
「カメリア……?な、何を……?」
「マフレイン先輩に教えてあげますよ。今の私の本当の姿を」
カメリアはそう言ってゆっくりとアーバンの手を自身の体の方へと引き寄せる。
「え、え、え?」
何が起こっているのか理解出来ないアーバンが狼狽える。
そんな彼を他所にカメリアはアーバンの手を……。
その瞬間に、フェリックスはノエルの目を大きな手で包み込んでそっと隠した。
「ぱぱ?なにもみえないわ?」
きょとんとするノエルの声を聞きながら、
カメリアはアーバンの手を、
自分の股間に押し当てた。
「カメリアっ!?な、なんて破廉恥でふしだらなっ!?アレ?キミ、股間に何か挟んでいるぞ?」
「ふ、」
アーバンにはカメリアの不敵な笑みなど耳に入らない様子だ。
「ん?……えっ?……ちょっと待て、コレって……えっ!?□☆△◇◆♠※!?」
アーバンの、声にならない悲鳴が蔵書室に響いた。
お話の最後の方です。
地雷の方はご自衛のほど、よろしくお願いいたします。
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「ぱぱー!」
「ノエル……お前の魔力が優れているのはわかっているが、勝手に一人で転移で入室するなんて危ないだろう……」
「エヘッごめんね」
突然現れた幼女と、その父親と思われるドアを蹴破ってド派手に登場した男を見て、アーバンは驚愕した。
「な、な、なんなんだ貴様らはっ!」
「のえるはのえるだよ。とりからのおにいさん」
名前を訊かれたと思い答えたノエルにフェリックスが訊ねる。
「さっきからトリカラトリカラと何のことだ?」
「ぱぱしらないの?とうほーのくにのふらいどちきんなのよ。ここに“やたい”があるのに……とりからのおにいさんがのえるのとりからをたべちゃったの……」
その時の悲しみが蘇ったのだろう。途端に憐憫に満ちた表情になる娘を見て、フェリックスがピクリと反応した。
「ノエルのトリカラが盗られただと……?」
「人聞きの悪いことを言うなっ!あれは正当な僕の分のトリカラだっ!」
盗人呼ばわりなど堪ったものではないと、アーバンは親子のやり取りに口を挟む。
「ふぇーん……ぱぱぁ……」
悲しげに縋りついてきた娘を優しく抱き上げ、フェリックスは温度を感じさせない眼差しをアーバンに向けた。
「貴様の鼻息がかかったトリカラを可愛い娘が食べなかったのは僥倖とも言えるが、それでも幼子にただの一つも分け与えてやれないとは度し難い狭量さだな」
「な、な、なっ、なんでトリカラ一つでそこまで言われなくてはならんのだ!」
どちらの言い分も正しいようなおかしいような……。
そんな奇っ怪な会話の中、カメリアがフェリックスに声を掛ける。
「ワイズ卿、なぜこちらに……?」
フェリックスは入室した時点で直ぐに、カメリアの安否は確認済みであった。
そしてアーバンに向けたものとは打って変わった柔らかな表情で彼女に答える。
「このバカ令息に連れ去られたキミを迎えにきたんだ。認識阻害魔道具のせいで一時はどうなるかと思ったが、ノエルの食い意地が功を奏して居場所が特定できたよ」
自分の名前が出てきたことに、ノエルはきょとんとして父親に訊ねた。
「くいいじってなぁに?」
「食いしん坊ってことだよ」
「のえる、くいしんぼーじゃないもん!」
「食いしん坊は悪い事じゃない。食べ物で見境を失くすのが良くないんだよ」
「ノエルちゃんは凄いんですね、おかげで助かりました」
フェリックスたちのやり取りを聞いて、またアーバンが口を挟んできた。
「ワ、ワイズ卿だとっ?……それでは……貴方はルシアン・ワイズの父親なのかっ?」
「とりからのおにーさん、るしにぃさまのことをしってるの?」
そう言ったノエルを、アーバンは驚愕に満ちた目で見る。
「では貴様はっ……ルシアン・ワイズの妹?……え、ではあの美しい人妻はルシアン・ワイズの母親だと言うのかっ!?」
「美しい……人妻だと……?」
それ指す人物が最愛の妻であると即座に悟り、反応したフェリックスの冷気が一段と増す。
「ヒッ?」
その冷気に当てられて、アーバンは無意識に悲鳴を漏らした。
「貴様……ガキのくせに俺の妻を見て邪な感情を抱いたな……その目、くり抜いてくれようか。いや、手っ取り早く首を切り落とすか」
「ヒィッ!そ、そんな事くらいで大袈裟に物騒な事を言わないでくださいよっ!」
「大袈裟などではない。俺の妻に汚い視線を向けた罪は万死に値する。加えて娘のトリカラの恨み、そして学園内で禁止された魔道具を使い禁止魔術を用いた罪。その上でランバート辺境伯令嬢を拉致した罪……貴様は歴とした罪人だ」
「とりからおにーさん、ぽけっとになにかもってるよ?」
「何?」
ノエルの助言を得てフェリックスは直ぐさまアーバンの背後に周り、彼の両手を拘束した。
「痛いっ!なんだよ!やめろよ!」
いとも簡単に両手を塞がれ口だけでしか抵抗出来ないアーバンの制服のポケットから、フェリックスはスプレーの小瓶を押収した。
「……何だこれは?」
「そ、それはっ……」
違法魔法薬であるなどと答えようもないアーバンに代わり、カメリアがフェリックスに告げる。
「魅了魔法と同じ効果のある魔法薬だそうです。間違いなく魔法犯罪に抵触する薬でしょうね」
「なっ、ち、違っ……」
「何が違うというんだ?ここに物的証拠もあるというのに。心配するな、きちんと魔術師団で鑑定をして貰う。その上でお前の罪を裏付ける正式な証拠品とする。……魔道具をお前に渡し、息子が違法魔法薬を所持していた事を認知しながらも放置したマフレイン侯爵も罪に問われる事になるだろう」
「そんな事っ……!我がマフレイン家の威光の前では瑣末な事だ!」
今の発言で、自身の願望を叶えるために違法と分かっていながらもそれらを用いたのを暗に認めた事を、このバカ令息はわかっていない。
より一層拘束した腕に力を込めるフェリックスに対し、アーバンは悲鳴に近い声を発した。
「いっ痛い!こら影共っ!近くに居るのだろう!早く僕を助けろ何とかしろっ!この給料泥棒共めっ!」
魔術学園に潜伏させていた隠密に向けて喚き散らしたアーバンに、フェリックスはしれっとして告げる。
「ああ。あの男女二人の隠密なら、今頃仲良くそれぞれ騎士団の独房に入ってるぞ?」
「え、」
「そんなにあの二人に会いたいなら……そうだな、男の方の影と同じ牢に入れてやろう」
「え、」
「嬉しくて言葉も忘れたか。よしわかった、直ぐに入れてやるからな。……だがその前に……」
フェリックスはアーバンを拘束したままカメリアの方へと視線を向ける。
カメリアは制服のポケットに入っていたキャンディをノエルにあげていた。
「ランバート嬢、散々付き纏われ嫌な思いをさせられたんだ。貴女にはコイツを一発殴る権利がある。大丈夫、顔を殴ってもボディにキメても特例として誤魔化してみせよう」
フェリックスにそう言われたが、武門の家柄とはいえ荒事を好まず慣れないカメリアは躊躇した。
今ここでカメリアが何もしなくてもアーバンはもはや終わったも同然。
何年か先には人生をやり直せる機会もあるだろうが、本来あったであろう侯爵家の後継としての輝かしい将来を、彼は失くしたのだ。
しかしだからこそ、何年先までも遺恨を残す形で終わらせてはいけない。
変な未練を持ち続けていられるなんて勘弁願いたい……カメリアはそう思った。
こんな時、あの人ならどうする?
カメリアの敬愛する、あの人なら……。
カメリアは脳裏に人生の師、メロディを思い浮かべた。
そして力強くフェリックスにこう告げる。
「ワイズ卿。マフレイン先輩の拘束を一旦解いて頂いてもよろしいでしょうか?」
「かまわないが……大丈夫か?もちろん、コイツが何を仕出かそうとしても必ず止めるが」
フェリックスがそう言うとカメリアは笑みを浮かべて答えた。
「ありがとうございます。でも大丈夫だと思います。……それよりもノエルちゃんの目を塞いでおいて欲しいのですが……」
「ノエルの……?……わかった」
何やら察したフェリックスがノエルの側へと行った。
それを見届け、カメリアはアーバンに向き合う。
「マフレイン先輩」
カメリアに名を呼ばれ、アーバンは彼女を見る。
その瞳は不安で揺れていた。
「……カメリア……?」
「先輩は私が貴方に相応しい理想の女性だと言っていましたが……じつはそうではないのです。貴方は、本当の私を知らない」
「し、知っているぞっ、キミは美人で聡明で(胸は無いが)スレンダーでっ……」
「それは上辺だけの私です」
「はぁ?」
カメリアはアーバンの手を取った。
いきなりカメリアに手を握られ、アーバンは驚いた表情をするもその手を振り解こうとはしなかった。
「カメリア……?な、何を……?」
「マフレイン先輩に教えてあげますよ。今の私の本当の姿を」
カメリアはそう言ってゆっくりとアーバンの手を自身の体の方へと引き寄せる。
「え、え、え?」
何が起こっているのか理解出来ないアーバンが狼狽える。
そんな彼を他所にカメリアはアーバンの手を……。
その瞬間に、フェリックスはノエルの目を大きな手で包み込んでそっと隠した。
「ぱぱ?なにもみえないわ?」
きょとんとするノエルの声を聞きながら、
カメリアはアーバンの手を、
自分の股間に押し当てた。
「カメリアっ!?な、なんて破廉恥でふしだらなっ!?アレ?キミ、股間に何か挟んでいるぞ?」
「ふ、」
アーバンにはカメリアの不敵な笑みなど耳に入らない様子だ。
「ん?……えっ?……ちょっと待て、コレって……えっ!?□☆△◇◆♠※!?」
アーバンの、声にならない悲鳴が蔵書室に響いた。
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