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ミニ番外編
ルシアンの独り立ち ②
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北の地へと旅立つルシアン。
その見送りに、彼のもう一人の母と呼べるメロディが現れた。
「ヨカッタ~!!ルッシーの出発に間に合ったワ~~!!」
「メロディちゃん、来てくれたんだね」
八センチピンヒールの硬質な音を響かせながらエントランスに駆け込んで来たメロディを見ながら、ルシアンはそう言った。
「あったりマエじゃないっ!アタシはネ、僭越ながら……と感じたコトはないけど、ルッシーのもう一人のママンだと自負ってンのヨ♡」
メロディが自慢げにそう言って自他ともに認める鳩胸を叩く。
その言葉にルシアンとハノンが笑いながら同時に頷いた。
「うん。僕もそう思って育ってきた。もちろん今も。そしてこれからもだよ」
ルシアンの言葉を聞き、メロディは「自分史上最高のアガり具合♡」と評したビューラーでアゲアゲのフッサフサ自マツゲを瞬かせた。
その瞳には既に涙が滲んでいる。
「ル゙ッ……ル゙ッシィッ……!」
「メロディちゃん、見送りありがとう。顔が見れて本当に嬉しい。体に気をつけてね、呑み過ぎてはダメだよ」
「ル゙ッジィィッ~~!!ヤダもう泣かせないでよっ!!」
とうとうメロディの涙腺が決壊し、怒涛の涙が溢れ出た。
そんな二人のやり取りを見て、ハノンはもう十数年も前になる最初の別れを思い出した。
フェリックスと結婚する事になり、ハイレンから王都へと移り住む際の別れだ。
あの時のようにヒシと抱き合うことはしないが、変わらぬ二人の固い絆を感じる。
メロディも既視感からそれを思い出したのだろう、流れる涙を拭うことなくルシアンに言う。
「もう前みたいに“めろりぃたんもいっしょいくの!”とは言ってくれないノ?」
「あははっ……覚えてるよ。あの時は馬車に乗り込む直前になってメロディちゃんとお別れだと知ってとても悲しかったんだ。王都に移っても変わらずいつでも会えると思っていたから」
「仕方ないワ……だってまだ三しゃいだったんだもの……!うっうっ……今度はもっと遠くへ行っちゃうのネ……!」
「休暇が取れたら里帰りするつもりだし、メロディちゃんも北方領に遊びにおいでよ」
「もちイクワっ!爆速でイクワっ!!ヤダ♡アッチの“イク”じゃないからネ♡次の日曜日はルッシーお暇?」
「ぷっ……早いよ。さすがに落ち着くまでは無理かな。都合がつきそうなら連絡するから」
「ウンッ……♡待ってる♡アタシ待ってるワ♡」
遠恋する恋人同士じゃないんだから。と内心ツッコミを入れながらハノンはメロディに尋ねた。
「ねぇメロディ、何やら手荷物を抱えているけどそれは?」
メロディはワイズ伯爵家に手ぶらでやって来たわけではなかった。
小降りの手提げ鞄と包装紙に包まれた何かを携えている。
メロディは「あ、そうそう!」と手に持ちながら存在を忘れていたらしい荷物を視線を向けた。
そして小さな手提げ鞄をルシアンに手渡す。
「ハノンが既に色々な魔法薬を作って渡してるンだろうけど、軟膏はアタシが作ったモノがピカイチだからネ。打撲傷でも擦過傷でも切創でも熱傷でも痔でも何でも効くから♡どんなケガでもどんとこいヨ!あ、でもケガなんかしないで軟膏を使わずに済む方がアタシとしては嬉ちくびだワ」
ルシアンはメロディ特製軟膏の入った手提げ鞄を受け取りながら笑う。
「あはは。ありがとう。もちろん気をつけるつもりだけど、もしケガをした時はメロディちゃんの顔を思い浮かべながら大切に使わせてもらうよ。その方が効果がありそうだし」
「ナニヨ、人の顔を回復アイテムみたいに言っちゃって!ンもうアイシテルッ♡」
と言いながら、メロディはもう一つの包みをハノンに手渡した。
「あとコレ。コレはルッシーにじゃなくて、後に残されるワイズ夫妻への贈りものネ」
「え?私たちに?」
受け取ったハノンがそう言うと、メロディは眉尻を下げてハノンを見つめた。
「ポレたんに続きルッシーまで手元を去ってさぞ寂しかろうと思って……コレを居間にでも飾って眺めて少しでも寂しさを紛らわして頂戴♡」
「居間に飾るような物なの?一体何かしら?」
ハノンの質問にメロディが満面の笑みを浮かべて答える。
「ウフ♡オネショ画伯ルッシー、最後から二番目の作品ヨ♡」
「え、」
「えっ!?」
ルシアンとフェリックス。父と息子の声が同時に重なったが、その意味合いはそれぞれ全く別のものであった。
「ハイレンに居る時に、ウチでルッシーを預かった時があったでしょ?その時にお昼寝中のルッシーが画伯って、最高傑作をシーツに描いてくれたのヨ♡銘打って“キンチャン走りをするクマ”あ、キンチャンって知ってる?東方の国の超大物コメディアンなんだけど……「ちょっ、ちょっと待ってよ!」
東方の国のお笑い芸人の説明を始めようとしていたメロディの言葉を遮ってルシアンが言う。
「僕のオネショを保存していたの!?それを我が家の居間に飾れって!?」
慌てふためくルシアンの様子などお構いなしにメロディがシレッと答えた。
「アラ?匂いとか気にしてるノ?それなら大丈夫ヨ、ちゃんと消臭魔法と防腐魔法を施してから保存魔法を掛けてあるカラ♡安心して飾って頂戴♡」
「そんなことを気にしてるんじゃないよっ?子どもの頃のオネショを飾られるなんて「ありがとう。メロディさん。最高の贈り物だ」
「父さん?」
自分の言葉に被せるようにそう告げた父の顔をルシアンは凝視する。
フェリックスは過去を思い出し、残念そうな表情を浮かべた。
「実は昔、芸術的なルシーのオネショをシーツごと保存しようとしたんだが、ハノンに反対されて断念した事があったんだ。だがあの時、何が何でも保存して額装するべきだったと何度も後悔をしていた。しかしっ……全く同じものではないにしても、十数年の時を経て再び画伯の芸術作品を見ることが出来るなんて夢のようだ……」
「……父さん、」
今度は感無量という表情を浮かべるフェリックスにルシアンはなんと返してよいものか困り果ててしまう。
だがそこで、当時必死に止めた張本人であるハノンがジト目を向けながらフェリックスとメロディに告げた。
「その作品。ルシアンの名誉のために受け取るという名の没収をするけれど、決して飾りはしませんからね」
「母さん……(ホッ)」
「ハノン……(なぜっ?)」
「ハノンン~(どーしてよ!?)」
そうして鶴の一声でオネショ画伯の作品は厳重な管理の下にワイズ伯爵家の宝物庫に保管されることとなった。
だけど時々こっそり取り出して、たまに夫婦で当時を懐かしんで眺めるくらいは許して欲しいと思うハノンであったが。
何とか難を逃れたルシアンがハノンに尋ねる。
「そういえばノエルの姿が見えないけど」
「あぁノエルね。ラッピングに手間取っているみたいだけどもう来ると思うの。もう少し待っててあげて」
ハノンの言葉にルシアンはキョトンとする。
「ラッピング?」
その時、エントランスにノエルの声が響いた。
「ルシにぃさま!おまたせ!」
「ノエル?」
声がした方にルシアンが視線を向けると、顔に小麦粉を付けたエプロン姿のノエルが向かってくるのが見えた。
◇───────────────────◇
なかなか出発できないルシアン。
その見送りに、彼のもう一人の母と呼べるメロディが現れた。
「ヨカッタ~!!ルッシーの出発に間に合ったワ~~!!」
「メロディちゃん、来てくれたんだね」
八センチピンヒールの硬質な音を響かせながらエントランスに駆け込んで来たメロディを見ながら、ルシアンはそう言った。
「あったりマエじゃないっ!アタシはネ、僭越ながら……と感じたコトはないけど、ルッシーのもう一人のママンだと自負ってンのヨ♡」
メロディが自慢げにそう言って自他ともに認める鳩胸を叩く。
その言葉にルシアンとハノンが笑いながら同時に頷いた。
「うん。僕もそう思って育ってきた。もちろん今も。そしてこれからもだよ」
ルシアンの言葉を聞き、メロディは「自分史上最高のアガり具合♡」と評したビューラーでアゲアゲのフッサフサ自マツゲを瞬かせた。
その瞳には既に涙が滲んでいる。
「ル゙ッ……ル゙ッシィッ……!」
「メロディちゃん、見送りありがとう。顔が見れて本当に嬉しい。体に気をつけてね、呑み過ぎてはダメだよ」
「ル゙ッジィィッ~~!!ヤダもう泣かせないでよっ!!」
とうとうメロディの涙腺が決壊し、怒涛の涙が溢れ出た。
そんな二人のやり取りを見て、ハノンはもう十数年も前になる最初の別れを思い出した。
フェリックスと結婚する事になり、ハイレンから王都へと移り住む際の別れだ。
あの時のようにヒシと抱き合うことはしないが、変わらぬ二人の固い絆を感じる。
メロディも既視感からそれを思い出したのだろう、流れる涙を拭うことなくルシアンに言う。
「もう前みたいに“めろりぃたんもいっしょいくの!”とは言ってくれないノ?」
「あははっ……覚えてるよ。あの時は馬車に乗り込む直前になってメロディちゃんとお別れだと知ってとても悲しかったんだ。王都に移っても変わらずいつでも会えると思っていたから」
「仕方ないワ……だってまだ三しゃいだったんだもの……!うっうっ……今度はもっと遠くへ行っちゃうのネ……!」
「休暇が取れたら里帰りするつもりだし、メロディちゃんも北方領に遊びにおいでよ」
「もちイクワっ!爆速でイクワっ!!ヤダ♡アッチの“イク”じゃないからネ♡次の日曜日はルッシーお暇?」
「ぷっ……早いよ。さすがに落ち着くまでは無理かな。都合がつきそうなら連絡するから」
「ウンッ……♡待ってる♡アタシ待ってるワ♡」
遠恋する恋人同士じゃないんだから。と内心ツッコミを入れながらハノンはメロディに尋ねた。
「ねぇメロディ、何やら手荷物を抱えているけどそれは?」
メロディはワイズ伯爵家に手ぶらでやって来たわけではなかった。
小降りの手提げ鞄と包装紙に包まれた何かを携えている。
メロディは「あ、そうそう!」と手に持ちながら存在を忘れていたらしい荷物を視線を向けた。
そして小さな手提げ鞄をルシアンに手渡す。
「ハノンが既に色々な魔法薬を作って渡してるンだろうけど、軟膏はアタシが作ったモノがピカイチだからネ。打撲傷でも擦過傷でも切創でも熱傷でも痔でも何でも効くから♡どんなケガでもどんとこいヨ!あ、でもケガなんかしないで軟膏を使わずに済む方がアタシとしては嬉ちくびだワ」
ルシアンはメロディ特製軟膏の入った手提げ鞄を受け取りながら笑う。
「あはは。ありがとう。もちろん気をつけるつもりだけど、もしケガをした時はメロディちゃんの顔を思い浮かべながら大切に使わせてもらうよ。その方が効果がありそうだし」
「ナニヨ、人の顔を回復アイテムみたいに言っちゃって!ンもうアイシテルッ♡」
と言いながら、メロディはもう一つの包みをハノンに手渡した。
「あとコレ。コレはルッシーにじゃなくて、後に残されるワイズ夫妻への贈りものネ」
「え?私たちに?」
受け取ったハノンがそう言うと、メロディは眉尻を下げてハノンを見つめた。
「ポレたんに続きルッシーまで手元を去ってさぞ寂しかろうと思って……コレを居間にでも飾って眺めて少しでも寂しさを紛らわして頂戴♡」
「居間に飾るような物なの?一体何かしら?」
ハノンの質問にメロディが満面の笑みを浮かべて答える。
「ウフ♡オネショ画伯ルッシー、最後から二番目の作品ヨ♡」
「え、」
「えっ!?」
ルシアンとフェリックス。父と息子の声が同時に重なったが、その意味合いはそれぞれ全く別のものであった。
「ハイレンに居る時に、ウチでルッシーを預かった時があったでしょ?その時にお昼寝中のルッシーが画伯って、最高傑作をシーツに描いてくれたのヨ♡銘打って“キンチャン走りをするクマ”あ、キンチャンって知ってる?東方の国の超大物コメディアンなんだけど……「ちょっ、ちょっと待ってよ!」
東方の国のお笑い芸人の説明を始めようとしていたメロディの言葉を遮ってルシアンが言う。
「僕のオネショを保存していたの!?それを我が家の居間に飾れって!?」
慌てふためくルシアンの様子などお構いなしにメロディがシレッと答えた。
「アラ?匂いとか気にしてるノ?それなら大丈夫ヨ、ちゃんと消臭魔法と防腐魔法を施してから保存魔法を掛けてあるカラ♡安心して飾って頂戴♡」
「そんなことを気にしてるんじゃないよっ?子どもの頃のオネショを飾られるなんて「ありがとう。メロディさん。最高の贈り物だ」
「父さん?」
自分の言葉に被せるようにそう告げた父の顔をルシアンは凝視する。
フェリックスは過去を思い出し、残念そうな表情を浮かべた。
「実は昔、芸術的なルシーのオネショをシーツごと保存しようとしたんだが、ハノンに反対されて断念した事があったんだ。だがあの時、何が何でも保存して額装するべきだったと何度も後悔をしていた。しかしっ……全く同じものではないにしても、十数年の時を経て再び画伯の芸術作品を見ることが出来るなんて夢のようだ……」
「……父さん、」
今度は感無量という表情を浮かべるフェリックスにルシアンはなんと返してよいものか困り果ててしまう。
だがそこで、当時必死に止めた張本人であるハノンがジト目を向けながらフェリックスとメロディに告げた。
「その作品。ルシアンの名誉のために受け取るという名の没収をするけれど、決して飾りはしませんからね」
「母さん……(ホッ)」
「ハノン……(なぜっ?)」
「ハノンン~(どーしてよ!?)」
そうして鶴の一声でオネショ画伯の作品は厳重な管理の下にワイズ伯爵家の宝物庫に保管されることとなった。
だけど時々こっそり取り出して、たまに夫婦で当時を懐かしんで眺めるくらいは許して欲しいと思うハノンであったが。
何とか難を逃れたルシアンがハノンに尋ねる。
「そういえばノエルの姿が見えないけど」
「あぁノエルね。ラッピングに手間取っているみたいだけどもう来ると思うの。もう少し待っててあげて」
ハノンの言葉にルシアンはキョトンとする。
「ラッピング?」
その時、エントランスにノエルの声が響いた。
「ルシにぃさま!おまたせ!」
「ノエル?」
声がした方にルシアンが視線を向けると、顔に小麦粉を付けたエプロン姿のノエルが向かってくるのが見えた。
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なかなか出発できないルシアン。
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