6 / 16
ショートストーリー お宝オークション
しおりを挟む
この日は昼からは非番の日で、
わたしは同僚のポピーに侍女寮のとある談話室へと連れて来られた。
寮の個室3部屋分ほどの広さのその談話室には
王宮勤めの侍女やメイド、魔術師に女性騎士といったあらゆる部署の、あらゆる業種の女たちがひしめき合っていた。
「いい?アミシュ、ここは戦場だからね?お目当ての人の物が掛けられたら直ぐに手を上げるのよ?じゃないとあっという間に掻っ攫われちゃうからね?」
と、ポピーが鼻息を荒くしてわたしに告げる。
一体何?なんの事?ここで何が行われるというの?
わけが分からず狼狽えるわたしを他所に、
王宮勤めのとある侍女が高らかに宣言した。
「ではこれより、お宝オークションを始めたいと思います!」
お、お宝オークション?
お宝ってどんな?宝石とか骨董品とか?
「ではまず最初の品、王太子殿下の侍従、ジョゼフ氏の使用後の紙ナプキンです!1000エーン(大陸共通の通貨の単位)からでお願いします!」
その侍女が告げた途端に女たちの声が次々に上がる。
「1500エーン!」
「2000エーン!」
「2500エーン!」
な、何!?何が起きてるの!?
ホントにオークションなの!?
もしかしてお宝って、こういう事!?
王太子殿下の侍従のジョゼフさんて、あの二人の子持ちにはとても見えない超美男子の人よね!?
その人が使った物を競売に掛けてるの!?
「5000エーン!!」
その金額が叫ばれた時、女たちから「お~」と
どよめきの声が上がった。
使用済みの紙ナプキンが5000エーン!?
し、信じられない……
わけがわからず呆気に取られるわたしを尻目に
実に様々な品がオークションに掛けられる。
どこそこの貴族の令息が記入した書類だとか、
騎士の某さんが使用したタオルだとか、
とある文官がよく使うペンのインクだとか、
豊富なバリエーションの品々がオークションに掛けられてゆく。
しかもみんな王宮内でファンの多い美男子ばかり。
その彼ら縁の品をどういう経緯かは謎だが入手して、こうやって売り捌いているらしいのだ。
聞けばその侍女は王太子殿下の侍女を長年務めているという……。
凄い、商魂逞しい……!
「では次です、これからは今回の目玉商品が数品出ますよ」
その言葉を聞き、皆がゴクリと唾を飲む。
「こちらの品……なんと!王太子殿下が長年愛用され、この度買い替えのためにお役ご免となった洗面器です!!」
「まぁ!?」「なんですって!?」
という驚愕の声が女たちから続々と上がる。
「こちらの品、5000エーンからでお願いします!!」
「5500!!」
「6000!!」
「7000!!」
と、次々に値を上げていく女たち……。
ちょっと待って、みんなそんなに給金は大差ないわよね?
侍女長やメイド長にもなると変わってくるんだろうけど、貴重なお給料をそんなに注ぎ込んで大丈夫なの?
それにこの売り上げ金は全てあの侍女さんのものになるのだろうか……?
わたしは気になってポピーにこっそり聞いてみた。
するとなんでも、売り上げ金の一部は品物を提供してくれた人へ払われ、一部はその侍女さんが手間賃として取り、残りは救護院に寄付されるのだそうだ。
なるほど、救護院に寄付しながらお目当ての男性の縁の品が手に入る、それなら罪悪感も和らぎ、売り手も買い手もどちらも満足出来るわけだ。
あ、あの侍女さん……デキる!!
結局王太子殿下の洗面器は10000エーンで落札された。
「では最後は今回の目玉商品を3つご紹介します。第二王女殿下の専属騎士、3名の方々のお品です」
どよっ……!という効果音が聞こえてきそうなほど、談話室内がどよめいた。
な、なん…ですって……?
王女殿下の騎士の……ですって?
ま、まさか……
「第二王女殿下専属近衛騎士、
アルマン=ロバーツ様の使用済みフォークと!
タイラー=ヒル様の先月のシフト表と!
そしてハルト=ジ=コルベール様の使用済みグラスです!」
「買ったぁ!!」
次の瞬間、わたしは思わず叫んでいた。
その後の熾烈な争奪戦を勝ち取ったわたしは、
ハルトのグラスを7000エーンで落札したのであった……。
とほほ……今月は節約せねば。
でも悔いはない。
しかし美男子が使用したというだけで
どんな物でも売れるなんて……
ハルト直筆の手紙とか使用済みのハンカチとか
わたしの自慢のハルトコレクション……
競売にかけたら一財産築けるのでは?と思ってしまった。
ま、絶対に売らないけどね!
わたしは同僚のポピーに侍女寮のとある談話室へと連れて来られた。
寮の個室3部屋分ほどの広さのその談話室には
王宮勤めの侍女やメイド、魔術師に女性騎士といったあらゆる部署の、あらゆる業種の女たちがひしめき合っていた。
「いい?アミシュ、ここは戦場だからね?お目当ての人の物が掛けられたら直ぐに手を上げるのよ?じゃないとあっという間に掻っ攫われちゃうからね?」
と、ポピーが鼻息を荒くしてわたしに告げる。
一体何?なんの事?ここで何が行われるというの?
わけが分からず狼狽えるわたしを他所に、
王宮勤めのとある侍女が高らかに宣言した。
「ではこれより、お宝オークションを始めたいと思います!」
お、お宝オークション?
お宝ってどんな?宝石とか骨董品とか?
「ではまず最初の品、王太子殿下の侍従、ジョゼフ氏の使用後の紙ナプキンです!1000エーン(大陸共通の通貨の単位)からでお願いします!」
その侍女が告げた途端に女たちの声が次々に上がる。
「1500エーン!」
「2000エーン!」
「2500エーン!」
な、何!?何が起きてるの!?
ホントにオークションなの!?
もしかしてお宝って、こういう事!?
王太子殿下の侍従のジョゼフさんて、あの二人の子持ちにはとても見えない超美男子の人よね!?
その人が使った物を競売に掛けてるの!?
「5000エーン!!」
その金額が叫ばれた時、女たちから「お~」と
どよめきの声が上がった。
使用済みの紙ナプキンが5000エーン!?
し、信じられない……
わけがわからず呆気に取られるわたしを尻目に
実に様々な品がオークションに掛けられる。
どこそこの貴族の令息が記入した書類だとか、
騎士の某さんが使用したタオルだとか、
とある文官がよく使うペンのインクだとか、
豊富なバリエーションの品々がオークションに掛けられてゆく。
しかもみんな王宮内でファンの多い美男子ばかり。
その彼ら縁の品をどういう経緯かは謎だが入手して、こうやって売り捌いているらしいのだ。
聞けばその侍女は王太子殿下の侍女を長年務めているという……。
凄い、商魂逞しい……!
「では次です、これからは今回の目玉商品が数品出ますよ」
その言葉を聞き、皆がゴクリと唾を飲む。
「こちらの品……なんと!王太子殿下が長年愛用され、この度買い替えのためにお役ご免となった洗面器です!!」
「まぁ!?」「なんですって!?」
という驚愕の声が女たちから続々と上がる。
「こちらの品、5000エーンからでお願いします!!」
「5500!!」
「6000!!」
「7000!!」
と、次々に値を上げていく女たち……。
ちょっと待って、みんなそんなに給金は大差ないわよね?
侍女長やメイド長にもなると変わってくるんだろうけど、貴重なお給料をそんなに注ぎ込んで大丈夫なの?
それにこの売り上げ金は全てあの侍女さんのものになるのだろうか……?
わたしは気になってポピーにこっそり聞いてみた。
するとなんでも、売り上げ金の一部は品物を提供してくれた人へ払われ、一部はその侍女さんが手間賃として取り、残りは救護院に寄付されるのだそうだ。
なるほど、救護院に寄付しながらお目当ての男性の縁の品が手に入る、それなら罪悪感も和らぎ、売り手も買い手もどちらも満足出来るわけだ。
あ、あの侍女さん……デキる!!
結局王太子殿下の洗面器は10000エーンで落札された。
「では最後は今回の目玉商品を3つご紹介します。第二王女殿下の専属騎士、3名の方々のお品です」
どよっ……!という効果音が聞こえてきそうなほど、談話室内がどよめいた。
な、なん…ですって……?
王女殿下の騎士の……ですって?
ま、まさか……
「第二王女殿下専属近衛騎士、
アルマン=ロバーツ様の使用済みフォークと!
タイラー=ヒル様の先月のシフト表と!
そしてハルト=ジ=コルベール様の使用済みグラスです!」
「買ったぁ!!」
次の瞬間、わたしは思わず叫んでいた。
その後の熾烈な争奪戦を勝ち取ったわたしは、
ハルトのグラスを7000エーンで落札したのであった……。
とほほ……今月は節約せねば。
でも悔いはない。
しかし美男子が使用したというだけで
どんな物でも売れるなんて……
ハルト直筆の手紙とか使用済みのハンカチとか
わたしの自慢のハルトコレクション……
競売にかけたら一財産築けるのでは?と思ってしまった。
ま、絶対に売らないけどね!
380
あなたにおすすめの小説
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
【完結】私は死んだ。だからわたしは笑うことにした。
彩華(あやはな)
恋愛
最後に見たのは恋人の手をとる婚約者の姿。私はそれを見ながら階段から落ちた。
目を覚ましたわたしは変わった。見舞いにも来ない両親にー。婚約者にもー。わたしは私の為に彼らをやり込める。わたしは・・・私の為に、笑う。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。
【完結】わたしの欲しい言葉
彩華(あやはな)
恋愛
わたしはいらない子。
双子の妹は聖女。生まれた時から、両親は妹を可愛がった。
はじめての旅行でわたしは置いて行かれた。
わたしは・・・。
数年後、王太子と結婚した聖女たちの前に現れた帝国の使者。彼女は一足の靴を彼らの前にさしだしたー。
*ドロッとしています。
念のためティッシュをご用意ください。
せめて、淑女らしく~お飾りの妻だと思っていました
藍田ひびき
恋愛
「最初に言っておく。俺の愛を求めるようなことはしないで欲しい」
リュシエンヌは婚約者のオーバン・ルヴェリエ伯爵からそう告げられる。不本意であっても傷物令嬢であるリュシエンヌには、もう後はない。
「お飾りの妻でも構わないわ。淑女らしく務めてみせましょう」
そうしてオーバンへ嫁いだリュシエンヌは正妻としての務めを精力的にこなし、徐々に夫の態度も軟化していく。しかしそこにオーバンと第三王女が恋仲であるという噂を聞かされて……?
※ なろうにも投稿しています。
追放した私が求婚されたことを知り、急に焦り始めた元旦那様のお話
睡蓮
恋愛
クアン侯爵とレイナは婚約関係にあったが、公爵は自身の妹であるソフィアの事ばかりを気にかけ、レイナの事を放置していた。ある日の事、しきりにソフィアとレイナの事を比べる侯爵はレイナに対し「婚約破棄」を告げてしまう。これから先、誰もお前の事など愛する者はいないと断言する侯爵だったものの、その後レイナがある人物と再婚を果たしたという知らせを耳にする。その相手の名を聞いて、侯爵はその心の中を大いに焦られるのであった…。
溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。
ふまさ
恋愛
いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。
「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」
「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」
ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。
──対して。
傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる