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プロローグ もう一度だなんてゴメンです
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「え?もう一度あなたと?」
そのあまりにも衝撃的な事実に
わたし、シリス=クレマン(19)は思わず
素っ頓狂な声を上げてしまった。
「そう。キミと俺の再婚約が王命により結ばれた。どうやらそこに俺たちの意思は必要ないようだよ」
少し困ったように彼が言う。
そりゃあそうでしょうよ。
だって2年前、あなたの方から一方的にわたしとの
婚約を破棄したんだもの。
それを今さら、
いくら王命とはいえ素直に「はいわかりました」
とは受け入れられないわよね。
「……なんとか回避できないの?」
「……直ぐには無理だろうね、
王命が下ったばかりだから」
「あなたはそれでいいの?」
「まぁ仕方ないよね。だって王命だし」
「そんな軽い感じで人生決めちゃっていいの!?
……ホント昔と何も変わってないのね」
「そうでもないよ。
昔はただの悪ガキだったけど、今ではこれでも
王宮魔術騎士団所属の騎士だ」
そう言って彼は
騎士に叙任された者だけが持つ剣を
チラリと見せた。
「………」
知ってるわ。
夢を叶えたのよね。
あなたから婚約を破棄されて、
その後すぐ独り立ちして怒涛の日々を過ごして
来たけれど、それでもあなたの事は密かに
気に掛けてきた。
だってわたしにとってあなたは
生きる道標を与えてくれた人。
あの日のあなたの言葉があるから
今のわたしがいる。
あなたにとって
わたしはただの遠縁の娘だとしても、
わたしにとってあなたは特別な人。
最初に婚約が結ばれた時、
あなたは不本意だっただろうけど
わたしはとても嬉しかった。と、同時に
申し訳なくて心苦しくもあった……。
だからあの日、
あなたから婚約を破棄されて
わたしは納得して受け入れたのに……
それを、
今さら、
再婚約ですって!?
王様は一体何を考えているの!?
彼を始めとする、
王太子の側に居たが故に
魅了を掛けられた者への人生をやり直す
救済措置ですって!?
迷惑だ。
はっきり言って迷惑だ。
「……少し考えさせて……」
「考えるも何も王命だから仕方ないよ?」
「それでも少し気持ちを落ち着かせたいの。
だから承諾の返事は少しだけ待って」
その間に
何とか王命を覆せる法はないか、
上司に相談してみよう。
わたしのそのきっぱりとしたもの言いに
何を言っても無駄だと悟ったのか、
彼は「わかったよ」とだけ告げて去って行った。
窓からぼんやりと
この魔法省を出て行く彼の背中を見送る。
するとすぐに彼の元へどこかの令嬢が寄って来た。
そして瞬く間に数名の女の子達に囲まれている。
あの子達、ずっと出待ちしてたのかしら?
……相変わらずおモテになりますこと。
わたしはそうひとり言ちてから
ふん、っと目を逸らす。
まさか再婚約なんて。
正気の沙汰じゃない。
百歩譲ってわたしは良くても
彼は不幸にしかならない。
なんとかしなければ……。
わたしは早速
上司に相談するために踵を返し、部屋を後にした。
そのあまりにも衝撃的な事実に
わたし、シリス=クレマン(19)は思わず
素っ頓狂な声を上げてしまった。
「そう。キミと俺の再婚約が王命により結ばれた。どうやらそこに俺たちの意思は必要ないようだよ」
少し困ったように彼が言う。
そりゃあそうでしょうよ。
だって2年前、あなたの方から一方的にわたしとの
婚約を破棄したんだもの。
それを今さら、
いくら王命とはいえ素直に「はいわかりました」
とは受け入れられないわよね。
「……なんとか回避できないの?」
「……直ぐには無理だろうね、
王命が下ったばかりだから」
「あなたはそれでいいの?」
「まぁ仕方ないよね。だって王命だし」
「そんな軽い感じで人生決めちゃっていいの!?
……ホント昔と何も変わってないのね」
「そうでもないよ。
昔はただの悪ガキだったけど、今ではこれでも
王宮魔術騎士団所属の騎士だ」
そう言って彼は
騎士に叙任された者だけが持つ剣を
チラリと見せた。
「………」
知ってるわ。
夢を叶えたのよね。
あなたから婚約を破棄されて、
その後すぐ独り立ちして怒涛の日々を過ごして
来たけれど、それでもあなたの事は密かに
気に掛けてきた。
だってわたしにとってあなたは
生きる道標を与えてくれた人。
あの日のあなたの言葉があるから
今のわたしがいる。
あなたにとって
わたしはただの遠縁の娘だとしても、
わたしにとってあなたは特別な人。
最初に婚約が結ばれた時、
あなたは不本意だっただろうけど
わたしはとても嬉しかった。と、同時に
申し訳なくて心苦しくもあった……。
だからあの日、
あなたから婚約を破棄されて
わたしは納得して受け入れたのに……
それを、
今さら、
再婚約ですって!?
王様は一体何を考えているの!?
彼を始めとする、
王太子の側に居たが故に
魅了を掛けられた者への人生をやり直す
救済措置ですって!?
迷惑だ。
はっきり言って迷惑だ。
「……少し考えさせて……」
「考えるも何も王命だから仕方ないよ?」
「それでも少し気持ちを落ち着かせたいの。
だから承諾の返事は少しだけ待って」
その間に
何とか王命を覆せる法はないか、
上司に相談してみよう。
わたしのそのきっぱりとしたもの言いに
何を言っても無駄だと悟ったのか、
彼は「わかったよ」とだけ告げて去って行った。
窓からぼんやりと
この魔法省を出て行く彼の背中を見送る。
するとすぐに彼の元へどこかの令嬢が寄って来た。
そして瞬く間に数名の女の子達に囲まれている。
あの子達、ずっと出待ちしてたのかしら?
……相変わらずおモテになりますこと。
わたしはそうひとり言ちてから
ふん、っと目を逸らす。
まさか再婚約なんて。
正気の沙汰じゃない。
百歩譲ってわたしは良くても
彼は不幸にしかならない。
なんとかしなければ……。
わたしは早速
上司に相談するために踵を返し、部屋を後にした。
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