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あの時の記憶(クリストフ=モーガン視点)①
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「ワ、ワ、ワ、ワ、ワルター……!
どうしよう、今更取り止めなんて言ったら
問題になるかな……?」
僕は馬車の中で
護衛と今後の任務の為に同席する
ワルター=ブライスに泣きついた。
するとワルターも落ち着かない様子で、
だが僕を宥めるように言った。
「閣下、落ち着いて下さい。
お気持ちはよぉぉ~くわかりますが、今さら取り止めは難しいと思われます。きっともう先方は玄関フロアでお待ちだと思いますよ……」
「ど、どんな顔をして会えばよいのだ……!どんな関係でもせめて彼女のやりたい事を応援するために無理やり魔法大臣の座を手に入れたけど、これではただの未練たらしい男ではないかっ……」
「閣下……俺たちは実際に未練たらたらで付き纏っているわけですから……」
「そ、そうだよな……
お、お前は僕に感謝しろよっ……ウジウジしてたお前にきっかけを与える為に父上に頼んであんな
王命を出して貰ったんだからなっ……!
……スミスは間に合わなかったけど……」
「それは……はい、心から感謝してます、まさかあんな掟破りの王命が下るとは思ってませんでしたけど、アレがなかったらきっと今だにウジウジしてたと思いますから……」
「そうであろう。
弟からあんな話を聞かされたら、会いに行きたくても行けない…そんな切ない気持ちが身に染みてわかるからな……でも、再婚約が結べて本当に良かった……だから……せめて……お前には僕の分まで……」
「閣下……」
「いや、僕はもう諦めた……だって魅了が解けて
最初に思い出したのが、婚約破棄を突きつけた時のシュザンヌ…ベイリー嬢の小声の『やった…』なのだからな……」
「っうっ……閣下……」
「い、いいんだ……全部、僕が悪いんだから……
幼い頃から魔法の仕事をしたいと言っていた
彼女を無理やり婚約者にしたのも、魅了に
掛けられて一方的に婚約破棄をしたのも全部
僕だ……わかってる。自業自得だ………」
そう、マリオン=コナーによる魅了事件、
それは全てこの僕、モーガン公爵クリストフが
王太子時代に犯してしまった過ちによるものだ。
魅了に掛けられていた時の記憶は結構曖昧で、
今でも混乱する時がある。
はっきりと覚えているものもあれば
靄がかかり、途切れ途切れでしか思い出せないものもある。
魅了に掛けられると
物事を深く考える事が出来なくなり、
何故かマリオン=コナーの声だけが鮮明に
聞こえるようになる。
そしてその声で紡がれる言葉だけが正しい事のように思え、マリオン=コナーの望みを全て叶える事が至上の悦びと感じるようになった。
初めはほんの好奇心だった。
男爵家の令嬢でありながら、しかも女の子が
騎士を志すなんて面白い子だなと思って声を掛けた。
何か事情があって騎士を目指しているのかと
聞いてみたくなったのだ。
マリオン=コナーは無邪気で天真爛漫。自由奔放で明朗快活。
最初の印象はそんな感じだった。
男ばかりの騎士科でも物怖じする事なく、
いつの間にか僕の近くにいつもいる、そんな
友人の一人というポジションに立っていた。
その数年前に、僕は一目惚れをした
ベイリー公爵家のシュザンヌを無理言って
既に婚約者に定めていた。
寝ても覚めてもシュザンヌの事しか
考えられなかった。
シュザンヌは控えめで大人しく、
思慮深くて優しい。
魔法の勉強が大好きで運動はかなり苦手だった。
そんな彼女と正反対のマリオン=コナーという
クラスメイトに興味を引かれた。
思えばそれが元凶だ。
魔術学校は全寮制で
王太子であった僕は入寮せずとも良かったのだが、
これも人生経験だと周りを言い含め、
城からは通わず寮生活をしたのも良くなかったのだと思う。
学校、寮内という限られた世界の中で、
過ちに気付かずまま、知らず知らずにマリオン=コナーの思惑に囚われていた。
マリオン=コナーと一緒にいると、
王太子としての重圧や責任感、それら全ての事がどうでもよくなるような解放感を感じた。
彼女から囁かれる甘い言葉に全てを委ねたくなるのだ……。
思えばその時にはもう、
魅了に掛けられていたのだろう。
一体いつ、どのタイミングで
魅了に掛けられたのかがわからない。
以前、マリオン=コナーが三日間も
体調不良で授業を休んだ事がある。
四日後にマリオン=コナーが授業に出た時に、
放課後相談したい事があるから時間が欲しいと言われた。
そして放課後、側近候補だった幼馴染のアーロンと共に彼女と会った。
その後からだ。
あんなに大好きだったシュザンヌよりも
マリオン=コナーに夢中になり、
彼女と常に行動を共にするようになったのは。
だから放課後に会ったあの時、
あの時に魅了に掛けられたんだと思う。
どうやって?
それはわからない。
術式の詠唱らしきものも、魔法陣らしきものを用いた形跡もなかった。
だけどあの時から確実に僕は変わったんだと思う。
そしてアーロンもマリオン=コナーを
崇拝するようになり、
彼女の事を僕よりも優先するようになった。
でもその時はそれが当たり前の事だと僕も
思い込んでいたから、咎めはしなかった。
彼女ほどの素晴らしい女性なら当然の事だと。
それよりもアーロンよりも僕を選んで欲しいと必死になった。
同じ騎士科で友人となった
ワルター=ブライスとロラン=スミスが、
「王族であるならば節度ある態度を示さなければならない」だとか
「婚約者以外の女性に近づかないように」
などと苦言を呈してきたが、
彼らも次の日には嘘のようにマリオン=コナーに
対して忠実な態度を取るようになっていた。
マリオン=コナーは特に見目のよいワルターを
気に入っていたように思う。
ワルターが子爵家の次男ではなく、
もっと高位の家の者だったなら、もしかしたら彼がマリオン=コナーの標的にされていたかもしれない。
ワルターもスミスもアーロンも
彼女の忠実な僕となり、マリオン=コナーと僕を守る盾となった。
僕たちの行動や態度を咎めていた教師たちも
やがてマリオン=コナーを崇拝し、やがて学校に彼女の邪魔をする者はいなくなった。
歪んでいた。
その歪みに誰もが気付かず、
また気付いた者もいつの間にか歪みの中にいた。
利口な者は
この状況を見て見ぬふりをする事を選択したのかもしれない。
巻き込まれて、碌な事はないと。
卒業までにはワルターもスミスもアーロンも
それぞれの婚約者に婚約破棄を告げ、
マリオン=コナーに人生の全てを捧げると改めて忠誠を誓っていた。
一度マリオン=コナーが
ワルターの婚約者に興味を示した事があった。
どこかでワルターの婚約者が
よくガリ勉の地味女だと評されるが、
本当は美人でかなり聡明な女性だと聞きつけたらしく、
顔が見てみたいから連れて来いとワルターに
言った事がある。
でもその時、
何故かワルターは頭が痛いと言って
急に意識を失った。
後になって思えば、
ワルターは無意識の内に魅了に逆らったのだろうな。
心の奥の潜在意識にまで魔力を注ぎ込まれているため、無理に抗おうとすると精神も肉体もその魔力によって相当なダメージを受ける。
それは解術の時に身をもって知った。
あの時、一度魅了に逆らった所為なのだろうか
ワルターの解術はかなり時間を要したとの事だった。
そしてワルターは半年間目を覚さなかった。
僕とスミスはひと月、昏睡状態に陥ったが、
何故かアーロンは……無傷だった。
というより、アーロンには魅了による魔力の侵食がほとんどなかったという。
潜在意識の中で魅了による魔力に争った痕跡が一切見られなかったというのだ。
王宮魔術師は言った、
アーロンにはもともとマリオン=コナーに対して
恋情があったのだろうと。
アーロンは僕の側近候補であるために
常に僕と行動を共にしていた為、マリオン=コナーと接する時間も長かった。
だからきっとそうなんだろう。
アーロンは、魅了になど掛けられなくても最初からマリオン=コナーに心を捧げていたのだろう。
アーロンはひょっとして
マリオン=コナーが僕たちに魅了を掛けた事を、
彼女が禁術に手を出した事がわかっていたのかもしれない。
アーロンは
ベイリー公爵家の嫡男で、
シュザンヌの双子の兄だった。
その②に続きます。
どうしよう、今更取り止めなんて言ったら
問題になるかな……?」
僕は馬車の中で
護衛と今後の任務の為に同席する
ワルター=ブライスに泣きついた。
するとワルターも落ち着かない様子で、
だが僕を宥めるように言った。
「閣下、落ち着いて下さい。
お気持ちはよぉぉ~くわかりますが、今さら取り止めは難しいと思われます。きっともう先方は玄関フロアでお待ちだと思いますよ……」
「ど、どんな顔をして会えばよいのだ……!どんな関係でもせめて彼女のやりたい事を応援するために無理やり魔法大臣の座を手に入れたけど、これではただの未練たらしい男ではないかっ……」
「閣下……俺たちは実際に未練たらたらで付き纏っているわけですから……」
「そ、そうだよな……
お、お前は僕に感謝しろよっ……ウジウジしてたお前にきっかけを与える為に父上に頼んであんな
王命を出して貰ったんだからなっ……!
……スミスは間に合わなかったけど……」
「それは……はい、心から感謝してます、まさかあんな掟破りの王命が下るとは思ってませんでしたけど、アレがなかったらきっと今だにウジウジしてたと思いますから……」
「そうであろう。
弟からあんな話を聞かされたら、会いに行きたくても行けない…そんな切ない気持ちが身に染みてわかるからな……でも、再婚約が結べて本当に良かった……だから……せめて……お前には僕の分まで……」
「閣下……」
「いや、僕はもう諦めた……だって魅了が解けて
最初に思い出したのが、婚約破棄を突きつけた時のシュザンヌ…ベイリー嬢の小声の『やった…』なのだからな……」
「っうっ……閣下……」
「い、いいんだ……全部、僕が悪いんだから……
幼い頃から魔法の仕事をしたいと言っていた
彼女を無理やり婚約者にしたのも、魅了に
掛けられて一方的に婚約破棄をしたのも全部
僕だ……わかってる。自業自得だ………」
そう、マリオン=コナーによる魅了事件、
それは全てこの僕、モーガン公爵クリストフが
王太子時代に犯してしまった過ちによるものだ。
魅了に掛けられていた時の記憶は結構曖昧で、
今でも混乱する時がある。
はっきりと覚えているものもあれば
靄がかかり、途切れ途切れでしか思い出せないものもある。
魅了に掛けられると
物事を深く考える事が出来なくなり、
何故かマリオン=コナーの声だけが鮮明に
聞こえるようになる。
そしてその声で紡がれる言葉だけが正しい事のように思え、マリオン=コナーの望みを全て叶える事が至上の悦びと感じるようになった。
初めはほんの好奇心だった。
男爵家の令嬢でありながら、しかも女の子が
騎士を志すなんて面白い子だなと思って声を掛けた。
何か事情があって騎士を目指しているのかと
聞いてみたくなったのだ。
マリオン=コナーは無邪気で天真爛漫。自由奔放で明朗快活。
最初の印象はそんな感じだった。
男ばかりの騎士科でも物怖じする事なく、
いつの間にか僕の近くにいつもいる、そんな
友人の一人というポジションに立っていた。
その数年前に、僕は一目惚れをした
ベイリー公爵家のシュザンヌを無理言って
既に婚約者に定めていた。
寝ても覚めてもシュザンヌの事しか
考えられなかった。
シュザンヌは控えめで大人しく、
思慮深くて優しい。
魔法の勉強が大好きで運動はかなり苦手だった。
そんな彼女と正反対のマリオン=コナーという
クラスメイトに興味を引かれた。
思えばそれが元凶だ。
魔術学校は全寮制で
王太子であった僕は入寮せずとも良かったのだが、
これも人生経験だと周りを言い含め、
城からは通わず寮生活をしたのも良くなかったのだと思う。
学校、寮内という限られた世界の中で、
過ちに気付かずまま、知らず知らずにマリオン=コナーの思惑に囚われていた。
マリオン=コナーと一緒にいると、
王太子としての重圧や責任感、それら全ての事がどうでもよくなるような解放感を感じた。
彼女から囁かれる甘い言葉に全てを委ねたくなるのだ……。
思えばその時にはもう、
魅了に掛けられていたのだろう。
一体いつ、どのタイミングで
魅了に掛けられたのかがわからない。
以前、マリオン=コナーが三日間も
体調不良で授業を休んだ事がある。
四日後にマリオン=コナーが授業に出た時に、
放課後相談したい事があるから時間が欲しいと言われた。
そして放課後、側近候補だった幼馴染のアーロンと共に彼女と会った。
その後からだ。
あんなに大好きだったシュザンヌよりも
マリオン=コナーに夢中になり、
彼女と常に行動を共にするようになったのは。
だから放課後に会ったあの時、
あの時に魅了に掛けられたんだと思う。
どうやって?
それはわからない。
術式の詠唱らしきものも、魔法陣らしきものを用いた形跡もなかった。
だけどあの時から確実に僕は変わったんだと思う。
そしてアーロンもマリオン=コナーを
崇拝するようになり、
彼女の事を僕よりも優先するようになった。
でもその時はそれが当たり前の事だと僕も
思い込んでいたから、咎めはしなかった。
彼女ほどの素晴らしい女性なら当然の事だと。
それよりもアーロンよりも僕を選んで欲しいと必死になった。
同じ騎士科で友人となった
ワルター=ブライスとロラン=スミスが、
「王族であるならば節度ある態度を示さなければならない」だとか
「婚約者以外の女性に近づかないように」
などと苦言を呈してきたが、
彼らも次の日には嘘のようにマリオン=コナーに
対して忠実な態度を取るようになっていた。
マリオン=コナーは特に見目のよいワルターを
気に入っていたように思う。
ワルターが子爵家の次男ではなく、
もっと高位の家の者だったなら、もしかしたら彼がマリオン=コナーの標的にされていたかもしれない。
ワルターもスミスもアーロンも
彼女の忠実な僕となり、マリオン=コナーと僕を守る盾となった。
僕たちの行動や態度を咎めていた教師たちも
やがてマリオン=コナーを崇拝し、やがて学校に彼女の邪魔をする者はいなくなった。
歪んでいた。
その歪みに誰もが気付かず、
また気付いた者もいつの間にか歪みの中にいた。
利口な者は
この状況を見て見ぬふりをする事を選択したのかもしれない。
巻き込まれて、碌な事はないと。
卒業までにはワルターもスミスもアーロンも
それぞれの婚約者に婚約破棄を告げ、
マリオン=コナーに人生の全てを捧げると改めて忠誠を誓っていた。
一度マリオン=コナーが
ワルターの婚約者に興味を示した事があった。
どこかでワルターの婚約者が
よくガリ勉の地味女だと評されるが、
本当は美人でかなり聡明な女性だと聞きつけたらしく、
顔が見てみたいから連れて来いとワルターに
言った事がある。
でもその時、
何故かワルターは頭が痛いと言って
急に意識を失った。
後になって思えば、
ワルターは無意識の内に魅了に逆らったのだろうな。
心の奥の潜在意識にまで魔力を注ぎ込まれているため、無理に抗おうとすると精神も肉体もその魔力によって相当なダメージを受ける。
それは解術の時に身をもって知った。
あの時、一度魅了に逆らった所為なのだろうか
ワルターの解術はかなり時間を要したとの事だった。
そしてワルターは半年間目を覚さなかった。
僕とスミスはひと月、昏睡状態に陥ったが、
何故かアーロンは……無傷だった。
というより、アーロンには魅了による魔力の侵食がほとんどなかったという。
潜在意識の中で魅了による魔力に争った痕跡が一切見られなかったというのだ。
王宮魔術師は言った、
アーロンにはもともとマリオン=コナーに対して
恋情があったのだろうと。
アーロンは僕の側近候補であるために
常に僕と行動を共にしていた為、マリオン=コナーと接する時間も長かった。
だからきっとそうなんだろう。
アーロンは、魅了になど掛けられなくても最初からマリオン=コナーに心を捧げていたのだろう。
アーロンはひょっとして
マリオン=コナーが僕たちに魅了を掛けた事を、
彼女が禁術に手を出した事がわかっていたのかもしれない。
アーロンは
ベイリー公爵家の嫡男で、
シュザンヌの双子の兄だった。
その②に続きます。
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